日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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土壌汚染 「PFOA」調査を急げ 山下氏 消極的な環境相を批判

参議院環境委員会 2021.6.8
資 料 動 画

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(写真)質問する山下芳生議員=8日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は8日の参院環境委員会で、有機フッ素化合物「PFOA」が、排出源であるダイキン工業の工場がある大阪府摂津市で、高濃度の土壌汚染が確認され、住民の血液からも検出されているとして、調査と対策を求めました。

フッ素樹脂加工などに使われるPFOAは、毒性、生物蓄積性などが指摘され、国内外で規制されています。PFOAを製造していたダイキンは、過去に大規模高濃度な河川と土壌の汚染を引き起こしており、摂津市では、地下水の濃度が日本一高くなっています。

山下氏は、小学校の土壌調査を求める保護者の不安を紹介し、「直ちに土壌調査と住民の血液検査を行い、対策を打つべきだ」と迫りました。小泉進次郎環境相は「分析方法が確立されていない」との答弁に終始。山下氏は「水俣やアスベストのような不作為につながる」と批判しました。

小泉環境相が血液検査について「健康被害は聞いていない」と述べたのに対し、山下氏は「米国の健康調査で、影響は明らかにされた。国内研究でも、低体重児の出生につながると明らかになっている」と追及。小泉環境相は「知見を集める」「ダイキンの取り組みを注視する」との答弁を繰り返しました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。今日は、化学物質による環境汚染について質問します。まず環境省に伺いますが、PFOSとPFOAという物質はどういう物質か、国際的にどのように規制されているのか、簡潔に説明いただけますか。

○田原克志 環境省大臣官房環境保健部長 お答えいたします。PFOSはペルフルオロオクタンスルホン酸、そしてPFOAはペルフルオロオクタン酸、あっ、失礼いたしました、PFOSはペルフルオロオクタンスルホン酸、それからPFOAはペルフルオロオクタン酸の略称でありまして、いずれも有機フッ素化合物でございます。撥水剤等として用いられる物質でございます。これらは、有害性、難分解性、生物蓄積性、それから長距離移動性を有する物質といたしまして、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、ストックホルム条約の規制対象物質となっております。例えば、有害性に関しては、動物実験等の結果から得られた知見により評価をされております。また、このストックホルム条約におきましては、我が国を含めて全ての締約国は規制対象物質について附属書の規定に応じた措置を行うこととしておりまして、PFOSにつきましては、国際的に特定の用途を除き製造、使用等が制限をされております。また、PFOAにつきましては、特定の用途を除き廃絶することとされております。

○山下芳生君 PFOSとPFOAは、用途としては例えばフライパンのテフロン加工ですとか泡消火剤などに用いられておりまして、ほとんど分解されない永遠の化学物質と、フォーエバーケミカルとも呼ばれております。これらの物質がストックホルム条約で禁止されるに至るまでには歴史がありました。アメリカでPFOAを開発したデュポン社は、既に一九八一年には動物実験によって有害な物質であることを認識しながら、工場外の環境中にPFOAの汚泥を廃棄するなどして地域の飲料水を汚染しました。集団訴訟が起こり、裁判の中でPFOAによる健康被害を調査する必要があるとされ、デュポン社が五百万ドルを拠出して、独立科学調査会が設立されました。約七万人に上る住民の血液検査と健康調査が行われ、これによってPFOAと六つの症状との関連が確認されることになります。六つの症状とは、一つ、妊娠高血圧症並びに妊娠高血圧腎症、二つ、精巣がん、三つ、腎細胞がん、四つ、甲状腺疾患、五つ、潰瘍性大腸炎、六つ、高コレステロールであります。集団訴訟が起こったのは二〇〇一年、独立科学調査会が設立されたのは二〇〇四年の和解後、そして健康被害の確認がされたのは二〇一二年ですから、十年余りに及ぶ闘い、裁判の結果、こういうことが判明したわけですね。小泉大臣、アメリカのこうした歴史、これ通告ありませんでしたけど、御存じでしたでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 そこまで詳細には存じ上げませんが、今まで、山下先生以外からも、他の委員会でもこのPFOS、PFOAについては度々御質問いただいていますので、その中で一緒になって考えさせていただいております。

○山下芳生君 実は、日本でも歴史があるんです。二〇〇三年、京都大学大学院医学研究科の小泉教授らのグループが全国八十か所で調査を行いました。河川水や水道水でPFOA汚染が確認されました。資料1は、この二〇〇三年の調査を後追いで報道した産経新聞の記事などであります。

ほとんどの河川では一リットル中のPFOAは数ナノグラムないし十数ナノグラムでしたけれども、大阪市に流れる淀川では百四十ナノグラム、兵庫県尼崎市に流れる猪名川では四百五十六ナノグラムと高濃度でした。それから、大阪市では、水道水からも仙台市の水道水の数百倍のPFOAが検出されております。大阪市の住民の血中濃度は、国際的にも一桁高い値となりました。資料2は、さらに地域を調べたところ、淀川支流の安威川という川に面した下水処理場の処理水から六万七千ないし八万七千ナノグラムと極めて高いレベルのPFOA汚染が確認されます。

それから、周辺の井戸水も汚染されていることが分かりました。この下水処理場と地下水の汚染源は、大阪府摂津市にある空調大手ダイキン工業淀川製作所であることが後に明らかとなります。この淀川のついねきにダイキン工業の工場があるんです、今もあるんです。環境省、日本にもこういう歴史があったんですけれども、今、日本におけるPFOA、PFOSの規制はどうなっているか、最近の全国調査とその結果も併せて報告いただけますか。

○山本昌宏 環境省水・大気環境局長 まず、法律による規制についてお答えします。まず、先ほどのストックホルム条約締約国会合での結果を受けまして、PFOSとその塩については、平成二十二年に化学物質審査規制法において第一種特定化学物質に指定し、製造及び輸入が原則禁止となっております。また、PFOAとその塩につきましては、本年四月二十一日に同じく第一種特定化学物質に指定する政令が公布されまして、本年十月二十二日を施行の予定ということでございます。あと、水環境に関しましては、水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについてということで、中央環境審議会の中でこの問題も議論されまして、その結果としまして昨年五月に答申が得られまして、PFOS、PFOAについては、環境基準ということではなく、水環境の保全に係る管理体系上の要監視項目という位置付けがなされまして、暫定的な目標値としてPFOS、PFOAの合算で五十ナノグラム・パー・リットルという目標値が設定されました。あと、全国での調査につきましてですが、令和元年度に環境省において実施しました全国の存在状況の把握調査におきましては、これは、排出源となり得る施設の周辺の河川あるいは地下水等において調査を実施しまして、昨年六月にその結果を取りまとめて公表してございます。全国河川、地下水等百七十一地点のうち、十三都府県三十七地点で先ほど申し上げた目標値の超過が確認されました。最大値は大阪府摂津市の地下水で、PFOS、PFOAの合算で千八百五十五・六ナノグラム・パー・リッターでございました。

○山下芳生君 今報告のあった環境省による全国調査は、資料3以降、四枚載せております。三枚目に赤線を引っ張ったのが先ほど紹介のあった最高値である大阪府摂津市の地下水でありまして、先ほど紹介された千八百十二ナノグラム・パー・リットルが検出されております。

この調査結果を新聞報道で御覧になった摂津市の住民の方から、昨年の夏、先ほど述べた、紹介した小泉先生に連絡あって、これ心配ですからね、他の研究者も参加して新たな調査が行われました。結論から申しますと、ダイキン工業淀川製作所周辺の地下水がいまだPFOAに汚染され、地下水をかんがいに使った畑の土壌が汚染され、その畑で作った農作物が汚染され、それを食べた人の血液中のPFOA濃度が高いということが分かったわけですね。以下、ちょっと資料を使って説明しますけれども、資料4にこの小泉先生の昨年の大阪府摂津市周辺での調査結果が載っております。

まず、三人の住民の方、Aさん、Bさん、Cさんの血漿中の濃度を検出すると、百十・四四ナノグラム・パー・ミリリットル、あるいは四十一・九一、五十三・八五という高い数字が出ておりまして、これは非汚染地域の住民の平均二・六ないし三・〇のもう十倍以上、三十倍ぐらい出ているわけですね。そういうことになりました。それから、地下水を利用した畑1、畑2というのがあるんですけど、その場所は資料の6に、ダイキン工業のすぐ塀の横ぐらいに畑がありまして、その畑1は地下水を利用したかんがいがされている畑ですが、その地下水は井戸からくみ上げているんですけど、その井戸の濃度は、先ほど言った千八百三、一万八千ですね、先ほどじゃない、一万八千三百六十六ナノグラム・パー・リットルと、こういう値です。

それから、その畑1の土壌表層は二千五百二十二・三、土壌下層は二千六百四十三・三という高い値が出ておりまして、そこで取れた作物、例えば、ナスからは三百十七・三、ジャガイモからは百二十四・三という高い値が出ております。それから、その隣の畑2、ここは以前地下水でかんがいし、二〇一二年以降は水路の水、これも、水路の水も大阪府の調査で百三十ないし三百七十ナノグラム・パー・リットルの汚染があったと報告されている、この水でかんがいしている畑2ですけれども、土壌の表層、大根、キャベツ、白菜とその畝の間の土壌ですけれども、三千六百四十七ナノグラム・パー・キログラム。それから、土壌の下層、八千二百九十・六という数字が出ております。それから、キャベツ、二百六十五・二、大根、七百二十一・九、白菜、四百四十六・九という高い数字がいずれも出ているわけであります。要するに、先ほど申しましたように、ダイキンは既に二〇一五年にはPFOAの製造、使用は停止しております。停止したんだけれども、地下水や土壌にはまだPFOAが残留していると、それが畑の作物から人間に摂取されていると、で、血中濃度が高くなっているということが明らかになった。これ深刻な事態だと思いますが、小泉大臣、私は、こういうまだ残っている化学物質に対して対策を行っていく上で、まず汚染の状況を把握し、どのように暴露が起こったかをこれは行政として明らかにしていく必要があると思うんです。そのためには、土壌調査と、それから住民の血液検査などの健康調査が必要不可欠だと思いますが、いかがでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 まず、御地元で不安をお持ちの方、その御懸念については真摯に受け止めたいと思います。ただ、その上で土壌調査ということが先生からありましたが、これは、今土壌中のPFOAの分析方法の確立がされていないということで、これ国際的にもそうだそうです。ですので、環境省としては、毒性評価に関する国際的な知見の収集や分析方法に関する調査研究をしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っています。そして、血液検査という話もありました。健康調査ですね。これにつきましても、今お住まいの方々に健康被害が生じているという情報は我々も聞いてはおりません。ただ、地元の自治体と密接に連携をして情報収集に努めてまいりたいと思いますし、まず大事なのは、PFOAについて我々が新たに摂取する量を減らしていくこと、これが重要だと思っています。我々、化審法による製造、輸入禁止措置、そして、昨年の五月に設定した、先ほど答弁があったように、河川や地下水の水質の暫定目標値を活用した、飲むことによる暴露の防止、こういったことをできることから取り組むことが大事だと考えております。

○山下芳生君 ちょっと残念な答弁なんですね。もうこれだけの血中濃度が、因果関係も明らかに、研究によってなっているにもかかわらず、健康、土壌の調査方法が確立されていないから手をこまぬいているという、そんなことでいいのかなと。そういうことをやっていた結果、水俣だとかアスベストという不作為が生まれたんじゃないですか。やはりここは、検査方法がないんだったら確立してでも調べるのが私は行政のあるべき姿だと思います。ちょっと住民の声を紹介したいと思います。ダイキンの工場のすぐ近くに住んで子供を小学校に通わせる保護者からの声です。大阪府や摂津市は、周辺の地下水は飲用利用がないとして、それ以上の調査や対策を行っていない。しかし、小学校のすぐ近くの住民の所有する畑の土壌や作物からも、またその住民の血漿からも、血液からも、井戸水を飲用していないにもかかわらず高濃度のPFOAが検出されたとの報道があった、大変衝撃を受けた。子供たちは、小学校内で作った農作物を持って帰り、家庭で食べるということを行っている。PFOAは大人以上に子供への影響が強いとも言われている。親として、子供たちが毎日通う小学校の汚染状況はどうなのか大変心配だ。水や農作物、畑、グラウンド等の土壌などの全般的な小学校のPFOA汚染の状況を早急に調査することを強く要望しますと述べておられます。大臣も子供さんをお持ちで、子供さんの話になると本当に真剣な答えが返ってきますけど、同じ親からこういう声が出ている、分析方法がないからよく見て、様子見ますでいいんですか。やはりすぐ何らかの対応をすべきじゃないですか。

○小泉進次郎 環境大臣 子供に関わることだけでなくほかも真剣に答弁をさせていただいていると思いますが、今、先生に、何もやらないんですかということは、さっき私の答弁聞いていただくと、国際的な知見もまだない中で、その情報収集や分析方法に関する調査研究はしっかりやらなければいけないという答弁をしているんですね。なので、今まだ土壌の中からどうやって分析するかも確立されていない中で、その中で何が我々できるだろうか。だからこそ、できる限り取り込まないで済むような対策、そういったことも含めて今やっているという答弁を先ほどさせていただいたので、どうかそこは御理解をいただきたいというふうに思います。

○山下芳生君 摂津市のこの問題、環境省として、この研究の後追いをやるんですか。

○山本昌宏 環境省水・大気環境局長 委員から先ほど御指摘あったように、ダイキン工業そのものでは今使用を全廃しているということでありますのと、あと、敷地内のPFOAを含む地下水の処理等ということで、くみ上げで処理をするということはしております。その状況につきましては、大阪府もしっかりと指導をしながら対策を講じているというふうに理解をしてございます。大阪府のその指導の下で今取組が進んでいるということで、その周辺につきましても、大阪市、大阪府は継続的に調査をしているということでございますので、そういうような状況をしっかりと環境省としても注視していきたいと思っております。あわせて、大臣から申し上げましたように、土壌汚染に関しましては、本年度から環境研究総合推進費を用いまして、土壌中にどういうふうに挙動するのかと、そういう挙動予測、あるいはどうやってそれを効率的に除去できるのかという除去技術の開発ということもテーマとした研究をしておりますので、並行してそういった研究はしっかりと進めてまいりたいと考えております。

○山下芳生君 じゃ、このお母さんの心配はほっとくということですか。

○山本昌宏 環境省水・大気環境局長 PFOS、PFOAの問題は我々も深刻な問題と捉えて、先ほど申し上げましたように、中央環境審議会においてもしっかりと議論をして、その時点での内外の知見を集積した上で、今監視、要監視項目という位置付けをして、これ全国の自治体にも御協力いただきながら監視をしっかりしていくと。それと並行して、それが検出された場合に、やっぱり飲み水を通じて人の体内に入るということは極力避けなければいけないということで、ここは厚生労働省とも連携をして対策のための手引をまとめて、それも昨年周知をさせていただきました。そういうことに基づきまして、今の段階でできることはしっかりと取り組んでいるということでございます。

○山下芳生君 極めて残念ですけれども、本当にそれでいいのかと。健康被害との関係はおっしゃいましたけど、国内でも健康被害は既に確認されております。資料の、その次に、資料8ですね。「クローズアップ現代」で二〇一九年五月に紹介されましたけれども、北海道大学の岸玲子特別招聘教授らの研究ですけれども、この研究は、札幌市の妊婦五百人を対象に、母親とへその緒の血液などを調べた研究です。

PFOSの母親たちの血中濃度は日本人の平均と変わらなかったんですが、しかし、その分布を詳しく見ると、母親のPFOSの濃度によってある傾向が浮かび上がったと。母親の濃度が比較的高いグループは、低いグループに比べて赤ちゃんの体重が軽くなったり、精子の形成に関わるホルモンの濃度が四割低かったというんですね。こういう結果がもう出たと、五百人調べてですよ。赤ちゃんが成長してからもこうした影響が続くのではないかということで、継続的な調査が重要だということで、北海道大学では二万人の対象に広げてこれを調査をする。子供さんが子供を産む親になるまで調査を続けるというんですよ。そのぐらい、さっき言ったように、PFOS、PFOAというのはなかなか分解しない、ずっと体内でも継続性があるんじゃないかということで、こういう慎重な既に健康への影響の調査が始まっている。  それから、その次の資料に、これは小泉先生のまた研究結果になりますけれども、実際に沖縄では米軍基地の周辺の水道水にPFOAがかなり高いという値が出ています。

その周辺の低出生体重児の出生頻度がほかと比べて六・四三対七・三一で有意に高いと。それから、大阪の先ほど、摂津市、守口市も全国と比べて八・九対九・四で有意に高いと。こういうことが出ているわけで、やはりこれは、発達毒性というのはかなり明確にPFOS、PFOAについてはあるということが明らかにもうなりつつあるときに、分析方法とか健康との関係はとか言っている場合ではないんじゃないかと、本当、環境省はもっと積極的に、予見できるものはまず防ぐという立場でやらないと駄目なんではないかと思いますけれども、最後に、大臣、一言どうぞ。

○小泉進次郎 環境大臣 このような様々な知見を生かして、我々として、もちろん、先生言うように、子供の命、そして国民の健康、守らなければならないと考えております。今回、ダイキン工業の話になりましたが、環境省としても、しっかりダイキン工業における対策について、大阪、そして関係の自治体とも連携をして注視をしていきたいと思いますし、我々としても、土壌の分析の方法の確立や、そして、健康とこのPFOA、PFOS、そういったものの因果関係、こういったことについてもしっかりと研究を深めていかなければならないと感じております。

○山下芳生君 終わります。