日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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微細プラ抜本対策を 山下氏「地球に残すな」 参院環境委

参議院環境委員会 2021.6.1
資 料 動 画

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(写真)質問する山下芳生議員=1日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は1日の参院環境委員会で、資源循環促進法案にかかわって、「全てのプラスチックは、紫外線によって断片化・微細化し、マイクロプラスチック(MP)になる」と指摘し、プラスチック自体を減らす抜本的対策が必要だと強調しました。

山下氏は、MPが海洋で増加し続けており、誤飲した魚介類が先細りし、資源が縮んでいくと強調。またMPには生殖などに影響を与える添加剤が含まれているとして、食物連鎖で濃縮されて魚に取り入れられ、人間が食べることになると指摘しました。

小泉進次郎環境相は、化学物質の影響について「国民の関心事で、解明しなければならない」と答弁しました。

山下氏は、「MPがさらに細かくなりナノプラスチックになれば、小腸などから血管に取り込まれる。空中を漂い、脳に直接到達するという研究もある。プラスチック素材はリサイクルにはなじまない。地球上に残さないようにすることが、次世代に対する責務だ」と主張しました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
今日から新法であるプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の審議に入りますが、海鳥や鯨など海洋生物がプラスチックの破片やレジ袋などを大量に飲み込んで、生態系に悪い影響が出ていることは多くの人に知られつつあると思います。浜辺のプラスチックごみを清掃する活動は貴重であり、取り組んでいる方々に敬意と感謝を表したいと思います。
同時に、近年、五ミリメートル以下の大きさに小さく砕けたマイクロプラスチックの存在と環境への影響が最新の科学によって詳しく解明されてきました。
最近放送されたNHKの「二〇三〇未来への分岐点」、第三回「プラスチック汚染の脅威 大量消費社会の限界」という番組でも、世界の科学者たちの研究による新たな知見が紹介されていました。小泉大臣、御覧になりましたでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 見ました。シリーズ1、2、3と、まるで今国会の四法案に合わせたような中身で、大変有り難いと思いました。

○山下芳生君 私もそう思いました。本当に審議にも生かしていきたいと思う番組でしたけれども、番組は、プラスチックという素材がどういう性質を持っているのか、環境や人体にどういう影響を及ぼすのか、映像と解説で最新の研究成果が非常によく分かるものとなっていました。
この番組にも刺激を受けましたので、今日、私たちの生活の中に様々な製品として存在しているプラスチックという素材がどういう性質を持っているのか、私たちの社会はこの素材とどう向き合っていけばいいのかについて議論したいと思います。
資料1に、番組にも登場された東京農工大学の高田秀重先生、教授から提供していただいた図を掲載いたしました。タイトルに、「全てのプラスチックは遅かれ早かれマイクロプラスチックになる」というタイトルがどんと付いております。これは大事な命題だと私は思いました。

化粧品の容器、家電のボディー、建設資材、人工芝、タイヤ、ペットボトル、レジ袋などの素材として使われている全てのプラスチックは、紫外線によって劣化し、破片化し、微細化する。
プラスチックは腐らないとか非常に安定した素材というイメージがあるんですが、実はプラスチックは紫外線によって劣化し、海に流れ出ると波の力によって破片化し、微細化する。こうして微細化したマイクロプラスチックとして海中に長期にわたって存在し、魚介類が取り込むということなんですが、小泉大臣、私たちの生活の中に存在する全てのプラスチックは遅かれ早かれマイクロプラスチックになる、この認識を国民の中で共有することは私たちの社会がプラスチックにどう向き合うかを考える上で重要な土台になると思いますが、大臣の御認識いかがでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 そうですね、マイクロプラスチックという形で気付かぬうちに我々が体内に取り込んでいる可能性がもう既にあること、そして、このまま行けば海の中は魚よりもプラスチックごみの方が多くなる可能性があること、こういったことが多くの方に認知をされることで対策は進んでいくと思います。

○山下芳生君 大事な御認識だと思います。
NHKの番組では、マイクロプラスチックを魚や貝が誤飲すると、本来の餌の摂取量が減って成長が阻害され、繁殖に影響すると、それがそうした魚介類を餌にする、より大きな海洋生物の繁殖にも影響すると指摘しておりました。
資料二枚目に、番組で紹介された、これは九州大学の磯辺篤彦教授の研究ですけれども、海水中のマイクロプラスチックの量が一立方メートル当たり千ミリグラムに達すると魚介類に悪影響が出るという研究結果で、この磯辺先生は、世界の六百地点で海水のサンプルを集めて、そのデータを基にマイクロプラスチックの海水中の濃度をシミュレーションによって解析されました。


それを見ますと、日本近海などで既に赤色の部分、一立方メートル当たり千ミリグラムを超えている可能性のあるエリアが浮かび上がっています。このまま海洋中のマイクロプラスチックが増加すると、二〇五〇年には赤いエリアが三・二倍に拡大すると。魚介類が先細りし、生態系が縮んでいくという傾向でした。
大臣、長い間、日本と世界の食生活を支え、食文化をつくってきた豊かな海洋資源が、マイクロプラスチックの増加によって先細りし、縮んでいくと。これ、ゆゆしき事態、問題だと思いますが、いかがでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 まず、このプラスチックに関しては、より詳細な調査、そして実態の把握は不可欠だと思います。今我々が世界的に進めているプラスチック対策も、よりデータを強化しなければ、各国の排出が実態として今言われている数字と果たして本当に合っているのだろうかと。これも含めて、より世界での共通基盤をつくること、こういった中での対策が私は不可欠なのではないかなと。それを待っていてもどんどん進行していくので、今各国でそれぞれ独自の取組をやられている中で今回の日本の法案は、世界的に見ても全てのプラスチックを対象とする上で非常に先進的な内容になっていると思っております。

○山下芳生君 まあ、いいでしょう。次にまた聞きますけど、ちょっと問いに対する答えじゃなかったんですけどね。
要するに、マイクロプラスチックが非常に増えてきているのではないかという科学者からの研究に基づく提起があったわけですね。これをやっぱりしっかり受け止める必要があると思うんですが。
次に、資料3を御覧になっていただきたいんですけれども、これも番組で紹介された九州大学の大嶋雄治教授の研究結果なんですけれども、大きさが違うマイクロプラスチックをメダカに与えた後にきれいな水の中で飼育する実験を行われたと。

グラフにあるように、大きさが二百マイクロメートル、二十マイクロメートルのマイクロプラスチックは、メダカに与えても二十日ほどで、きれいな水の中で生活するとふんとともに全て体外に排出されるけれども、大きさが二マイクロメートルの微細なマイクロプラスチックになると、一部は排出されずに体内に残留すると、メダカの腸の細胞組織の間に取り込まれることが分かったというんですね。大嶋先生は、このままいくと大変なことになると、この影響を科学的に調べて対応を早めに取ることが大切と語られました。
これは、さっき言ったマイクロプラスチックを誤飲しておなかが膨らんで、食べる餌が食べられなくなって成長を阻害されるということではなくて、もう体内に取り込まれてしまうということまで起こっているという警告であります。
小泉大臣、影響を科学的に調べて対応を早めに取ることが大切という警告、これは政治として重く受け止める必要があるんじゃないでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 そこは国民的な関心事だと思っています。やはりこれだけプラスチックがあふれていて、マイクロプラスチックも様々なところにあって、自然と我々がもう飲み込んでいるかもしれない中で、これが健康に対してどのような影響を今後与えるのだろうか。この観点から、国としてもどのように原因や今後の影響や解析をしていくのか、これは大事なところだと思っております。

○山下芳生君 マイクロプラスチックについては、そこに含まれる添加剤の影響も解明されてきました。プラスチックは紫外線で分解されてしまうために、それを抑えるための紫外線吸収剤、あるいは燃えにくくするための難燃剤などが生成過程で混入されます。
NHKの番組では、難燃剤の一部は動物実験で脳神経の発達を阻害することが明らかになり、二〇一〇年から国際条約で使用、製造が禁止されていること、それから人への影響では、母乳における蓄積量が多いほど子供の知能指数が低いという報告が出ていることなどが紹介されました。非常にショッキングな報告でしたけれども。紫外線吸収剤についても同様の議論が出ていると紹介されました。
資料4は、先ほど紹介した東京農工大の高田教授からまた提供いただいた図なんですけれども、今度はタイトルに、マイクロプラスチックは食物連鎖を通した添加剤の運び屋になるというタイトルが付いております。紫外線吸収剤や難燃剤など、添加剤を練り込んだマイクロプラスチックを動物プランクトンが食べると。

高田教授は、微細化されるほど添加剤は溶け出しやすくなり、魚介類の脂肪に蓄積すると、直接ちょっと聞いたらそういうふうに説明いただいた。つまり、マイクロプラスチック、細かくなればなるほど混入されている添加剤がしみ出してきやすくなるということなんですね。それが動物プランクトンによって摂取され、その動物プランクトンを魚が食べる。NHKの番組では、魚が海水から直接マイクロプラスチックを取り入れるよりも、マイクロプラスチックを食べた動物プランクトンを食べる方が魚の身から検出される添加剤の量は十倍多いということが紹介されました。いわゆる食物連鎖による濃縮でありますけれども。
こうして添加剤が身の中に濃縮している魚を最後は人間が食べることになるということなので、もちろん大臣に認識聞きますけど、大臣、横須賀が御地元なので魚は大好きだと思いますけれども、こういうことになっている可能性がある、感想いかがでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 化学物質、詳しいところは局長答弁するかもしれませんが、こういったメカニズムが仮にあるとしたら、それがどういうふうな我々の健康に影響を与えるのか、これも本当に国民の関心事だと思います。
私として、横須賀という海に囲まれた町の中で、新鮮な海産物も特産の一つでもありますし、日本というのはやはり海洋国家でもありますので、こういった問題、まさに人ごとではなく、我々として大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを掲げて、先進国の中でも特に対策を強化してやっているということは、今後、しっかりとリードし続けなければいけない、その中で、こういった先生御指摘のところもより解明されなければいけないことだろうというふうに考えております。

○山下芳生君 マイクロプラスチックが運び屋になって生物の体内の中で有害な化学物質がしみ出すと、それが食物連鎖で魚の身にたまったものを人間が食べるということなんですが、ここで、高田先生によると、プラスチックよりも添加剤の方が環境や生物、人体への影響のメカニズムが今分かっているんだとおっしゃるんですね。例えばということで、これちょっと資料に添付できませんでしたけれども、ヨーロッパでは、大規模な調査の結果、成人男子の精子数が過去四十年で半減したという報告が出されております。プラスチックに生殖に影響を与える添加物が入って、それがマイクロプラスチックになって、生物に取り入れられ、最終的には人に入るからだとも言われています。こういう大規模調査の結果からそういうことが類推されるわけですけれども。
これで、私は、そうなりますと、結論的に今述べてきたことから言えるのは、やっぱり全てのプラスチックは遅かれ早かれマイクロプラスチック化する、そして、魚介類を通して人体に入ってきて、プラスチック自体若しくは添加剤が悪影響を及ぼす可能性がある、要するに素材自体の問題だということなんですよね。
したがって、大量にリデュース、リユース、リサイクルという対策ではかみ合わないんじゃないかと、社会の中に存在あるいは流通するプラスチック自体を減らす抜本的な対策が必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 私は、その方向性に、間違いなく、今までとは違う非連続の一歩を歩み出すのがこの法律だと思っています。今までプラスチックというものに着目をした法律はありませんでした。さっき松澤次長から、柳田先生からごみの関係の法律が幾つあるんだというふうに言われて説明をした中で、容器包装リサイクルとか、家電リサイクル、食品リサイクル、建設リサイクル、自動車リサイクルとか、この製品ごとのリサイクル法はあったんですけど、全てのものに使われているプラスチックというものに着目をした法律は史上初です。
それからすれば、しかも対象は、何かの製品のプラスチックではなくて約一千万トン全てのプラスチックに掛けていますから、先生御指摘の点でいえば、間違いなく今までとは違う次元に、この日本としても法律としてプラスチックに対して向き合う環境ができるということであると思います。

○山下芳生君 本当にそうしなければならないんですけどね。要するに、もうプラスチックを社会から減らしていくと、もうなくしていくと、そうでなければ、必ずマイクロプラスチックになって、海洋に流れればどんどんどんどんマイクロプラスチックが蓄積されていくわけですから、これはもう減らすしかない、使わない、作らないようにするしかないというふうに思うんですね。
資料五枚目に、これは、長崎大学の中谷久之教授が電子顕微鏡で詳細に分析した結果、小さなプラスチックが次々生まれるメカニズムが明らかになったと、これも番組で紹介されたんですけれども。

プラスチックは、太陽光や微生物によって酸化劣化してひびが入ると。これ、ひびが入ってうろこ状の薄い形になって、そのひびに水が入ると剥がれ落ちやすくなって、波の力等で剥がれると。マイクロプラスチックがもう絶え間なく発生するメカニズムがこういうことなんだと。
さらに、これ一ミリメートルの千分の一、一マイクロメートル以下の突起が、ここにちょこっちょこっと白いのがありますけど、これが剥がれ落ちるとナノプラスチックになるということなんですね。ナノプラスチックということがもう存在しているだろうと、確実だと。科学者はこのナノレベルでどんな影響があるのかを調べる必要があると。
資料六枚目に、京大の田中周平准教授が実際にナノプラスチックを収集する技術を開発されて、日本の川の水から八百ナノメートル、〇・〇〇〇八ミリの、細菌に近い大きさのナノプラスチックを採取して、田中先生は、もう今のうちに実態を把握して、生態系に迷惑を掛けないような管理の仕方を人間は考える必要があると言っていますけど、ナノプラスチックの対応、今どうなっていますか。

○山本昌宏 環境省水・大気環境局長 ナノプラスチックに特化した対応というのは今のところまだ取られておりませんが、ナノプラスチックを含めて、マイクロプラスチックに関する様々な影響については、知見を収集し、今進めているところでございます。
具体的に申し上げれば、昨年、海洋プラスチックごみに関する既往研究の今後の重点課題ということで、先ほど先生から御指摘のありました添加剤の影響とかも含めて、内外の論文などを収集して、そういった影響、どういったところに今後の重点課題があるかというようなことを整理して公表しております。
また、先生今日御紹介のありました高田先生あるいは磯辺先生にも御参画いただきまして、平成三十年度からは環境研究総合推進費によりまして、海洋プラスチックごみ及びそれに含まれる化学物質の生物影響評価に関する研究ということを実施しております。
ただ、まだまだ人体への影響、健康影響に関しましては、科学的な影響、知見が乏しい状況にありますので、引き続き、しっかり関係者と連携しながら、知見の蓄積に努めてまいりたいと考えております。

○山下芳生君 人体への影響についてはまだ知見が乏しいという話でしたから、資料7、ちょっと紹介したいと思うんですけどね。ナノプラスチックになったら、もう小腸などから血管に入る可能性があると指摘されています。

これ、NHKの番組で、スイスの研究で五十ナノメートルのプラスチック粒子が胎盤に蓄積する可能性が指摘されておりました。粒子が胎盤組織に入り込んで、赤ちゃんに必要な栄養素やホルモンが十分に届かないということがあるのではないかということが言われております。
それから、資料8に、福岡工業大学永淵修博士が、これ大分県のくじゅう連山の樹氷を採取してみたところ、その中に七十マイクロメートルのマイクロプラスチック、杉の花粉と同じぐらいの大きさのものが一リットル中五千から一万個見付かったというんですね。

博士は、確実にこれは吸い込んでいると、北京などから飛んでくるのではないかと思われていますけど。プラスチックは寿命がないわけですね。細かく分かれるけど、分かれたらもうそのまんま存在すると。何百年も分解しない。ふわふわ、これは地球で漂っているということでありました。
資料9に、そういう空気中を漂うナノプラスチックは脳内に入り込むということが最近明らかになっております。

これ、鼻から吸い込む空気が嗅球を介して脳に直接到達してしまうという研究も出ておりますので、もう余り、人体に対する影響の知見がないと言って、のんきなこと言っている場合ではないんじゃないかと。やっぱりきちっと直ちに打つべき対策を打つと。もう特に添加剤についてはもう影響はっきりしてきていますので、そういうことから手を着けるなど、新しい対策というふうに大臣おっしゃったんだから、新しいそういう政策必要だと思うんですね。
最後に、高田教授の言葉を紹介します。
長期的には、毒がしみ出し、回り回って人に入る、影響が数十年、あるいは世代を超えて出るところが怖いところだと、生産の末端から上流まで含めて全部変えていかないと、二〇三〇年までにシフトチェンジをしようという合意を形成し、一斉に変える方向にかじを切らないと未来は変えられない。アメリカの先住民のことわざに、我々、今を生きる人間は、子孫からこの大地を借りて生きている存在である、プラスチックが地球上に残らないようにして次の世代に引き継ぐのが我々の責務だとおっしゃっていました。科学者からのこのメッセージを政治がどう受け止めるのかが今問われているということで、引き続きこの問題、議論していきたいと思います。
終わります。