日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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石炭火力支援やめよ 参院委で山下氏 政府の対応を批判 温暖化対策推進改定法案が成立

参議院環境委員会 2021.5.25
資 料 動 画

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(写真)質問する山下芳生議員=25日、参院環境委

地球温暖化対策推進法改定案は26日の参院本会議で採決され、全会一致で可決、成立しました。

日本共産党の山下芳生議員は25日の参院環境委員会で、20~21日のG7気候・環境大臣会合の共同声明に「石炭火力発電を全廃する」との文言がないと指摘。「(全廃に)日本が反対した」との報道に触れて見解をただしました。資源エネルギー庁の小野洋太政策統括調整官は、「交渉過程や議論の詳細は控える」としか答えませんでした。

山下氏は、G7加盟各国が持つ期限を区切った廃止方針を日本だけが持っていないと指摘し、「全廃に反対する必然性があるのは日本しかない」と批判しました。

また、共同声明で石炭火力の廃止や国外支援停止には「排出削減対策が講じられていない設備」との条件がついており、日本の「高効率」石炭火力であれば、政府は輸出支援もできるとして、「『高効率』というごまかしで例外を設けて、国内でもつくり、輸出もするということはやめるべきだ」と迫りました。小泉進次郎環境相は「G7で化石燃料依存型経済から変革をすすめる合意ができた」とはぐらかしました。

山下氏は、「途上国の再生可能エネルギーへのシフトを促進するためにも、石炭火力への支援はやめるべきだ」と主張しました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
五月の二十日、二十一日、G7気候・環境大臣会合がオンラインで行われました。小泉環境大臣も参加をされております。聞きますと、G7の大臣会合が気候・環境大臣でセットされたのは今回が初めてだということであります。G7の議長国がイギリスということで、六月のですね、今度十一月に開かれるCOP26の議長国もイギリスということもあってこういうテーマが設定されたのではないかと思いますが、G7のCO2排出量は世界全体の約三割ということですので、極めて意義深い会合だったと思います。
この気候・環境大臣会合で採択された共同声明、ちょっと私も政府の仮訳いただきましたけど、これ読みますと、冒頭のところに、我々は気温上昇を一・五度に抑えることを射程に入れ続けるという文言、これ繰り返し出てまいります、こういう表現が。目指すところは二度未満ではなくて一・五度であることが明確にされました。これは大事な認識だと思います。
ケリー米大統領特使気候変動問題担当大臣は、米国は一・五度目標に徹底してのっとると保証する、一・五度目標は今後十年間に行われなければならない選択を規定するもの、どの決定もその枠組みで行われなければならないと述べたと報じられております。
極めて意欲的、積極的な発言だと思いますが、私、いただいた、小泉環境大臣と梶山経産大臣のG7での発言の、これが全部じゃないですけど、メモというのをいただきました。これ、ぱらっと全部見たんですけど、この中に一・五度という言葉がないんですね、見当たらなかったんです。両大臣から、G7として一・五度を目指すべきだとか、あるいは日本として一・五度を目指すという発言はされなかったんでしょうか。

○小泉進次郎 環境大臣 私からは、一・五度という言及はありませんが、日本の二〇五〇年ネットゼロ、そして二〇三〇年の目標、そして今進めている政策の方向性、こういったことについてしっかりと国際社会に打ち込めたと思います。そして、大事なことは、その一・五度については、先月の日米気候パートナーシップ、この中でも一・五度は入っています。そして、今回のも入っているということで、改めて、世界、先進国、特にG7においてその一・五度というものを認識をして、各国一丸となって前向きなところでワンボイスをつくることができたことは、このG7、画期的だったと思います。

○山下芳生君 この共同声明で、各国国内の石炭火力について述べたパラグラフ、三十二パラグラフを見ますと、ここの冒頭に、「我々は、石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因であることを認識し、」というのがあるんですね。石炭火力が唯一最大の気温上昇の原因だと、これは非常に明快にすぱっと言い切っています。それから、その結論として、「二〇三〇年代の電力システムの最大限の脱炭素化に今コミットする。」という結論になっております。
こうなりますと、当然、ここから導き出される行動目標は、石炭火力発電は全廃するということに当然なってしかるべきだと思うのですが、残念ながらこの共同声明にその文言はありません。石炭火力を全廃するという文言はないんです。その代わりに入ったのが、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電設備からの移行云々ということになっております。
認識と行動計画がねじれているんじゃないかなと私はこれを見て感じたんですが、海外の報道を見ますと、日本の報道から紹介しましょう、日本の報道では、政府関係者によると、事前の協議で国内も含む石炭火力の全廃を声明に盛り込む案が示されたが、日本が反対したというふうに、これ毎日新聞、五月二十二日ですけど、こうあります。それから、海外の報道でも、これアメリカの有力ネットメディア、ポリティコ、五月二十一日ですけれども、日本政府は英国主導による二〇三〇年までに石炭火力を廃止するという提案も妨害したというふうに書かれております。
そういうことを日本はやっちゃったんでしょうか。

○小野洋太 資源エネルギー庁・資源エネルギー政策統括調整官 お答え申し上げます。
閣僚声明に関する交渉過程や会議における議論の詳細につきましてはお答えを控えさせていただきたいと存じます。

○山下芳生君 まあ、そういうふうに言われるんでしょうけど、そう言われるんじゃないかなと思って、資料一に、これはG7加盟国の石炭火力の方針を示した、イギリスのシンクタンク、E3Gの報告書などから作成した、これ朝日新聞の一面に載っていた図ですけれども、これによりますと、フランスは二〇二二年、英国は二〇二四年、イタリアは二〇二五年、カナダは二〇三〇年、ドイツは二〇三八年までに石炭火力を廃止する方針になっています。米国も二〇三五年までに発電部門の脱炭素化ですから、これ石炭だけではなくて、ガスも含めてやめようという方針なんです。
このG7の中で日本だけが石炭火力の期限を切った廃止方針がないと。高効率の施設を使い続けるという方針ですけれども、こういうことから、客観的にすればですよ、G7の共同声明に石炭火力全廃の表現が盛り込まれることに反対する必然性があるのは日本だけじゃないかとなるんですが、やっぱり日本が反対したんじゃないんですか。

○小野洋太 資源エネルギー庁・資源エネルギー政策統括調整官 お答え申し上げます。
繰り返しで恐縮でございますけれども、閣僚声明に関する交渉過程につきましてはお答えを控えさせていただきたいと存じます。

○山下芳生君 それではこの疑念というか、この報道を否定はできないんですよね、残念ながら。
それでちょっと中身に踏み込んでいきたいと思うんですけれども、この共同声明は、三十二パラグラフの中でさっき紹介した、「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電設備からの移行」というふうに言っているわけね、全廃じゃなくてね。この「排出削減対策が講じられていない」というのは、G7で統一した見解はあるんでしょうか。

○小野洋太 資源エネルギー庁・資源エネルギー政策統括調整官 お答え申し上げます。
この共同声明にありますとおり、「排出削減対策が講じられていない」、この一言でございます。

○山下芳生君 要するに、これ各国がそれぞれ自由に理解しても構わないという曖昧な文言になるんですね。
じゃ、聞きますけど、日本政府としては、これはどういう認識なんですか。

○小野洋太 資源エネルギー庁・資源エネルギー政策統括調整官 排出、CO2の排出を実質的に低減させる、そのような措置が講じられているというふうに理解しているところでございます。

○山下芳生君 もうちょっと具体的に聞きますけど、その中に超超臨界、USC、これは講じられているという認識ですか。

○小野洋太 資源エネルギー庁・資源エネルギー政策統括調整官 これは、その時々のエネルギーの情勢や、それから技術開発の状況等によりますけれども、排出削減措置、排出削減に係る技術、そのような措置が講じられているものが含まれるという理解でございます。

○山下芳生君 含まれるという御認識なんですね。
それで、よくそういうことをおっしゃるんですよ。超超臨界、USCは排出削減講じられているんだと言うんですが、じゃ、その超超臨界とは何かというと、発電効率がいいんだと言うんですね。発電効率というのは、石炭一キログラム当たり得られるエネルギー量のことであって、CO2の排出量に直接結び付くものではありません。
ですから、超超臨界になったからといってCO2の排出量が大きく変わるわけではありません。一キロワットアワーの発電当たりCO2をどれだけ排出するか、これは排出係数で見る必要がありますけれども、この排出係数で見ますと、再エネはゼロです。それから、LNGは〇・四キログラムです。で、石炭火力は〇・八キログラムです。ですから、これが超超臨界になろうが、LNGの倍、〇・四から〇・八ですか石炭は、これはほとんど変わらないんですね。これで排出削減の措置が講じられたというふうにみなすのは私は無理があると思いますけども、いかがですか。

○小野洋太 資源エネルギー庁・資源エネルギー政策統括調整官 先ほど御答弁申し上げましたとおり、この排出削減措置が講じられたというところの解釈でございますけれども、そのときのエネルギー情勢や、各国のですね、それから技術開発の状況等を踏まえて実質的に排出削減が講じられていると、このようなものを指すという理解でございます。

○山下芳生君 いや、だから、実質的に排出削減が講じられるという意味は、超超臨界の場合は発電効率が他の石炭火力よりはいいということでしょう。だけど、それはエネルギーの取り出しが効率がいいだけであって、CO2の排出を抑えるということとはまた違うわけですよね。それをそういうふうに強弁するのはいかがかなと思わざるを得ません。まあ、そういう認識だということはよく分かりました。
それから、共同声明は、続いて三十二パラグラフで国際的な支援の在り方について述べています。ちょっと読みますと、「我々は、途上国におけるクリーンエネルギーへの移行を支援するため、官民の国際的な資本の流れを、パリ協定に則った投資に向け、高炭素な発電から離れていくことを促進することにコミットする。」というふうに書かれてあります。これはいいことです。ただ、その下のところに、「それぞれの国の裁量による限られた状況以外では、炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する政府の新たな国際的な直接支援をフェーズアウトしていく。」と。つまり、「それぞれの国の裁量による限られた状況以外では、」という条件が付いて、炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する支援をフェーズアウトしていく、まあやめていくということなんですが、ここに条件が付いているんですね。この、それぞれの国の裁量における限られた状況以外ではというのは、これ、G7の統一見解はあるのか、あるいは日本政府の認識はいかがなものか。どうですか。

○南亮 資源エネルギー庁 資源・燃料部長 これ、先生おっしゃるとおり、今回のG7の閣僚レベルの合意のパラグラフ三十三では、「それぞれの国の裁量による限られた状況以外では、」というふうに定められておるところでございまして、ここについては、まさにそれぞれの国がそれぞれの国の状況、また支援する途上国の状況、またその国が有している技術など、そういったことも含めてこの以外の場合というのは検討していくという、そのような理解になっております。

○山下芳生君 日本の場合はどういう状況なんですか、条件なんですか。

○南亮 資源エネルギー庁 資源・燃料部長 これ、今、現在、昨年、日本の政府でこの途上国に対するプラント輸出の方策、これ定めておりまして、これ昨年末に発表しておりますが、その中で、途上国の幾つかの要件掛かっておりますが、途上国の脱炭素に実質的に貢献していくかどうかというところで、途上国の脱炭素に実質的に貢献しているようなものを支援していこうと、このようになっております。

○山下芳生君 今の条件、厳格化の中にもやはり日本の高効率石炭火力の要請があった場合と、さっきと同じなんですよ、高効率石炭と。
それから、その同じ海外への支援の問題、パラグラフの中にやはりさっきと同じ表現があるんです。「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の全面的な終了に向かっていく具体的なステップを二〇二一年中にとることをコミットする。」と。今年中に石炭火力発電への支援を全面的に終了させていこうというのはいいんですよ。だけどやっぱり条件が付いていて、排出削減対策が講じられていないと。日本の場合は超超臨界だったらオッケーというふうになっているんで、これは例外になっちゃってるんですね。日本はこれからも輸出しようということに残念ながらなってしまうわけですね。
私は、もうこういう条件を付けて、例外を設けて、国内でもつくるし輸出もするというのはやめた方がいいと思うんですよ。これは、高効率という名の下で脱炭素というような、こんなごまかしはやめた方がいいと思いますよ。
ちょっとこれ、ここからは大臣にも認識伺いたいんですけど、日本が途上国に輸出しないと中国が進出し、より効率の悪い石炭火力が造られるという声を、昨日も経産省から聞きました、そういうことをね。これはそうなんだろうかと。私は違うと思うんですよ。こんな抜け穴つくっちゃったら、中国だって抜け穴、じゃ、石炭火力輸出しますよ。やっぱりG7が一致結束して石炭火力の輸出はもうやめようとなってこそ、中国に対する圧力が強まる、強めることができるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

○小泉進次郎 環境大臣 いや、だからこそ、G7は今回、前向きな点で一致を見て、コミュニケをまとめていくことができたと。そして、その中で、他の主要排出国に対しても同じようなものを求めるという、そういった文言も入っているわけですから、今回、様々な各国の事情も勘案したような要素も含めてまとめなければいけないのが外交交渉の現実ですから、そういった中でいえば、何が画期的だったかといえば、G7が化石燃料依存型の経済から新たな産業構造への変革を推し進めていくことで合意ができたこと、これは非常に歴史的なG7じゃないでしょうか。
ちなみに、中国がこれやるんじゃないかという話ありましたけど、まあ中国、何言ったって、やるものはやると思います、そういう国ですから。ただ、大事なことは、G7一致結束して、排出を世界最大でするような国々に対して、パリ協定の下にいるわけですから、協調した対策を求めていく上で、まずG7という先進国が模範となるような姿勢と政策を進めていく決意を示していくことは非常に重要ですし、このコミュニケはそういった意味で高い評価を受けてしかるべきだと思っております。

○山下芳生君 まあ残念ながら、アメリカのさっきのポリティコは、そうは評価していないんですよね。日本が抵抗したと、会議を通じて日本は、日本の石炭資金、石炭技術の輸出を抑えようとするG7の努力に抵抗した、日本は世界第三位の石炭資金供給国であると、日本が難色を示すようであれば中国政府へのメッセージを薄めることになりかねないと。やっぱり私と同じ認識しているんですね、海外メディアは。
やはり小泉大臣、中国へのプレッシャー、G7以外の国々のね、あるというんだったら、私は一致結束して、本当にもう、一・五度いかに抑える必要があるということに認識するんだったら、これ脱石炭しなければできないということは、小泉大臣も繰り返しおっしゃっていることですよ。せっかくのそういう、日本が二〇五〇年カーボンニュートラル、二〇三〇年四六%削減というふうに一歩大きく踏み出したときに、直後にまだこういう、残念ながら過去の認識に引きずられるような対応をしているのでは非常にまずいと思います。
それから最後に、私は、途上国支援というんだったら、再エネ支援こそ途上国の発展を資するものだと思うんですよね。再エネというのは、石炭火力等に必要な大規模な送電網が要りません。地域分散型の電力で、燃料の輸入も要らずに、途上国にこそ向いているのが再エネだと思います。逆に、石炭火力というのは、石炭火力は安いとされていますけれども、初期投資が膨大で、建設すれば四十年、五十年と動かさなければ採算、投資を回収できません。
途上国に長く石炭火力の稼働を迫ることになるのが石炭火力の輸出ですよ。逆に、再エネをちゃんと促進する、支援することこそ、途上国にふさわしい発展があるんじゃないかと思います。この点は大臣、どうですか。

○小泉進次郎 環境大臣 全く同感です。それは、日米の気候パートナーシップにも、インド太平洋地域にも含めて再エネをしっかり支援をする、こういったことも位置付けておりますので、そこをしっかり進めたいと思います。
なお、さっき山下先生が、日本が高効率なものをやらないと中国がやっちゃうという、それは違うんじゃないかというその理屈は、私も同じことを申し上げていました。日本がどうであろうと、そんなに他国が言ったからといって行動を変えるような幻想は抱いていません、私は。だけれども、やはり日本としての責任を考えたときに今後どうあるべきかという中で、私は大臣就任直後から、この石炭の海外に対する公的支援の在り方を変えるべく訴えてまいりました。その最大のポイントは、原則と例外を転換させるべきだということをずっと言っていました。今回、このコミュニケは、私はそれが反映されていると思っています。

○山下芳生君 国際的な見方が残念ながらそうはなっていないということを私は紹介したんですが、逆に、やっぱり再エネをうんと支援をするということにシフトするためにも石炭火力の国外への支援はやめた方がいいということを申し上げて、終わります。