日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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石炭火発アセス 山下氏 健康より事業を優先

参議院環境委員会 2021.4.6
資 料 動 画

写真

(写真)質問する山下芳生参院議員=6日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は6日の参院環境委員会で、神戸製鋼石炭火力発電所の環境アセスに対する環境相意見を作成する際、大気汚染や温暖化などの重要な問題について、経済産業省の要求で記述の削除や表現の後退があった問題を追及しました。

経産省は、大臣意見の大気汚染に関する記述から「人口密集地」や「人口150万都市」の削除を要求していました。山下氏は「評価に不可欠の要素。まともにアセスをやるつもりがない」と批判しました。

また、住民による公害調停申し立ての事実を「国が是認したことになる」と経産省が削除を求めたことについて、山下氏は「かつて大気汚染が深刻で公害認定患者もたくさんいる地域だ」と指摘。「環境影響評価で社会的・歴史的観点を踏まえるのは当然だ」と追及しました。

山下氏は「事業者の側に立って、事業推進の妨げになる記述は削除させようとしている。健康より事業を優先させる立場だ」と批判。「経産省の圧力に屈したら環境省の使命は果たせない」と指摘しました。小泉進次郎環境相は「言うべきことは盛り込んでいる」と答弁し、山下氏は「そうはなっていない」と批判しました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生でございます。
今日は、神戸製鋼が建設している石炭火力発電所の環境影響評価に対する環境大臣意見に対して経済産業省が事前に変更を求めていた問題について質問します。
神戸製鋼は、既に神戸発電所の二基、計百四十万キロワットを稼働させており、加えて神戸製鉄所の構内に新たに二基、計百三十万キロワットを建設し、稼働させようとしています。合わせて四基、二百七十万キロワット、大量のCO2とともに硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんなど、大気汚染物質を出します。
資料一は、新たに石炭火力発電所が建設される場所を上空から撮った写真です。
神戸市灘区の住宅密集地に、文字どおり隣接して造られることになります。この赤線で囲んだ製鉄所の敷地と住宅地との距離は百メートルです。黄色線で囲んだ発電所予定地との距離でも四百メートルしかありません。
資料二は、私が昨年現地に調査に行ったときの写真ですが、建ち並んでいるこの高層住宅の高層階のベランダから撮影した写真ですが、御覧のように、高速道路を挟んでもう目と鼻の先に神戸製鉄所があります。構内がよく見える距離なんですね。私は率直に言って、よくこんなところに新たに石炭火力発電所を造るなと、よくこんな計画が認められたなと思いました。
資料三は、発電所に係る環境影響評価の手続のフロー図であります。
発電所の環境アセスメントは、環境省所管のアセス法の特例で経済産業省所管の電気事業法に組み込まれ、経産省の管轄で行われることになります。
御存じのように、アセスには、配慮書、方法書、準備書、評価書の四段階がありますが、環境省は、配慮書と準備書の段階で二回経産省に意見を述べることができることになっております。これは、資料四に示した一般的な環境アセスの手続と比べると、発電所のアセスは環境大臣が意見を述べる機会が少ないということが分かると思います。
ところが、この神戸製鉄所の構内に新たに造る石炭火力発電所のアセスでは、この二回しか述べられない環境大臣の意見に対して経産省が事前に注文を付け、環境省が指摘した環境保全上重要な問題点の記述が削除されたり表現が後退させられたりしていることが分かりました。
この資料五から九までにそのやり取りが生々しく記録された環境省の文書の抜粋を載せておきました。私、これ見て、まるでテストの添削のようだと思いましたね。もう大事なところが線引っ張られて、赤い線で消されたり書き換えられたりしているわけですよ。
具体的な中身を見ていきたいんですが、資料五見てください。これは、事業実施予定区域がどういう場所かに関わる環境大臣意見であります。
上段の赤枠で囲んだ部分にある、事業実施想定区域は人口密集地帯に隣接しという記述があります。さっき写真で御覧いただいたとおりの指摘です。まさに人口密集地帯に隣接しております。
これに対し経産省は一次意見で、人口密集地帯という記述については、客観的基準に基づくものではないとして修正を求めています。客観的に誰が見ても人口密集地帯でしょう、これは。辞書引いても人口密集地というのありますよ。
それに対し環境省二次意見、環境負荷の回避、低減に十全を期す必要性について、事業実施想定区域の背後地の状況から述べたもので、より具体的な記述に修正する。まあ背後地の環境を低減する必要があるという、そういう立場からこれ書いたんだと、当たり前の、当然の主張だと思います。そして、環境省は、赤枠に戻っていただいて、この青い下線部にあるように、人口百五十万都市である神戸市に位置しという具体的な記述に修正をいたしました。
そうしたら、また経産省二次意見は、人口百五十万都市であることが人の健康の保護及び生活環境の保全が求められるための必要な条件ではないと考えられるとして、この記述は削除されたいとまた求めているんですね。開いた口が塞がらない、私はこのことだと思いましたね。
環境影響評価に際して、事業実施予定地がどういう場所かを考慮するのは最も重要なことであります。人が誰も住んでいない砂漠の真ん中で石炭火力発電所を造るのと神戸市のど真ん中に造るのとでは、人の健康や生活環境への影響は全く違います。同じものを造っても周辺環境によって影響は違ってくるんですね。
だから、人口密集地帯とか人口百五十万都市という記述は、環境への影響を評価するに当たっては不可欠の要素だと思います。それにあれこれの理由を付けて、私に言わせれば、理由にもならない難癖を付けて削除を求めるというのは、最初からまともなアセスをやるつもりがないということだと。経産省、そういうことですね。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 環境影響評価法及び電気事業法に基づく環境アセスメントにおきまして、環境大臣の意見の発出に当たりまして、事前に経済産業省と環境省の間で事実関係や技術、制度などに関する確認をさせていただいております。これは、事業者において環境アセスメントの結果を踏まえた環境保全措置が適正に行われるようにするために必要なことというふうに認識しております。
このようなことを経まして、事実確認、関係等の確認を経まして環境大臣の意見の内容については修正が加えられますけれども、環境大臣として御主張されることは盛り込まれているものと承知しております。

○山下芳生君 全く答えになっていないですね。
事業者に環境アセスを適切に行わせるためにだったら、この人口密集地とか人口百五十万都市というのは削除したらあかんじゃありませんか、ちゃんとさせようと思ったら。それ削除させているんですから、言っていることとやっていることが違いますよ。
資料六を見ていただきたい。これは、事業実施予定地が過去に深刻な大気汚染による健康被害が発生した地域であり、現在も大気汚染に関わる環境基準を達成していない地点が存在することを述べた環境大臣意見であります。
ところが、赤線で囲んだ部分、本事業に対しては、地域住民等が兵庫県公害審査会に公害紛争処理法に基づく調停を求めるなど、大気環境保全の観点からも懸念が示されているという、この記述について経産省一次意見は、あたかも国が調停への申請内容を是認するかのような誤謬も与えかねず、また実際以上の規模の方々が調停を求めている印象を与えかねないことから削除願いたいと、こう言っているんですね。目を疑いました。何でこんな認識になるのか。あたかも国が調停への申請内容を是認するかのような誤謬を与えかねずと言いますけど、公害調停の申立てがある事実を述べることがなぜそんな認識になるのか。なりようがないですよ。
なぜこの地域で公害調停が起こったのか。この地域は、かつて工場や国道四十三号線など大気汚染が深刻で、公害認定患者もたくさんいる地域です。そうした方々が、私たち患者はこの神戸の製鉄所の跡地にまた石炭火力発電所が造られたら症状が悪化しないか不安があると、そういう立場で公害調停の申立てに加わっておられます。その数は二百五十五人です。それを実際以上の規模の方々が調停を求めている印象を与えかねないと言うのは、私は、公害患者の皆さんの思いと行動に対する冒涜だと率直に言わなければならないと、そう思っております。
患者の皆さんは、小さな子供やお年寄りが新たな患者にならないか心配と声を上げて、これまでも企業に環境対策を取らせる活動を懸命にやってこられたんですね。ですから、人の健康や生活に与える影響を考えるときに、社会的な観点あるいは歴史的な観点を踏まえて考慮するのは当然だと思うんです。
経産省に伺います。経産省はそうではないと、環境影響評価に社会的な観点、歴史的な観点は必要ない、そういう立場ですか。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 この意見につきましては、この調停の内容について誤謬を与えかねないということについての懸念を述べさせていただいたものでございまして、また、アセスメントの手続が、調停、公害調停によって、とは別手続であるということもありまして、このような意見を述べさせていただいているものでございます。

○山下芳生君 ちょっとかみ合わないので、もう一偏聞きますけど、何で誤謬を与えかねないんですか。

○長浜博行 環境委員長 後藤審議官。どうぞ。(発言する者あり)
時間を止めてください。
〔速記中止〕

○長浜博行 環境委員長 速記を起こしてください。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 この公害の問題については、調停の委員会で第三者的、専門的に公害なのかというのを別手続でしっかりと進めていただくというものでございまして、アセスのこの当省の意見において記載する必要はないという認識で書かせていただいております。

○山下芳生君 だから、それがおかしいんですよ。調停は別なんですよ、アセスとはね。別なんですよ。だから、別なんだから、こういうふうに書いたって何の影響も受けるはずないんですよ。それをこんなふうにあえて削除させるというところに、社会的な問題、そして歴史的な観点、これ全く無視していいと思っているとしか思わざるを得ないんですね、経産省は。それでまともなアセスができるはずがないと思いますよ。
結局、経産省は事業者の側に立っている、事業推進の妨げになるような記述はできるだけ削除させる、修正させる、こういう基本認識、姿勢に立っているということです。周辺に住む人々の健康や生活環境よりも事業を優先させるというのが経産省の立場ですよ。だから、私は、ならば環境省が待ったを掛けなければならないと思うんですが、そうなっていないんですね。
資料五に戻っていただきますと、経産省から人口密集地帯、人口百五十万都市の記述を削除されるよう求められたら、一番最後、環境省は結局、意見のとおり削除すると認めてしまいました。
それから、資料六、経産省から公害調停の記述を削除するように求められた環境省は、了解しましたと、こうなっているんですね。
環境省、どうしてこういう結論になるんですか。これでは環境省の責任を果たしたことにならないんじゃないんですか。

○和田篤也 環境省総合環境政策統括官 お答え申し上げます。
まずもって、事実関係のところから申し上げますと、環境大臣意見の形成に当たって、事実関係の確認でありますとか、技術的、専門的事項のファクトの確認でありますとか、それからアセス法自体の制約というのは確かにございます。他方では、環境省は環境保全を体系的、全般的に有する責任官庁でありますので、そこでひよってどうするんだというのは御指摘のとおりかと思います。
ただ、今御指摘のこの個別の事項につきましては、まさに事実関係などのところについて修正はございましたけれども、環境保全の観点から、例えば温暖化対策の観点から、それから大気汚染対策の観点からなどなどのところの観点から、いわゆる緩めたような環境大臣意見ということにはしないというような前提で環境大臣意見の形成も行ってきましたとともに、特にこの地域は阪神工業地帯ということもございますので、昔でいえば大気汚染防止法の総量規制基準の対象工場ということで、私自身も大阪で勤務していた時代に大気汚染の非常に厳しい地域であるというところも理解している関係もありまして、意見でひよることなく、環境保全措置の観点、それから環境保全の観点から責任官庁であるというところを忘れることなく、しっかり取り組んでまいりたいと思っています。

○山下芳生君 ひよってどうすると自分でおっしゃっていますけど、そのとおりのことが起こっちゃっているんですよ。
それから、環境問題についてはとおっしゃったけど、これ今日もう時間ないからそこ行けませんけど、大気汚染物質が以前より増えないように求めたところがばっさり削除されているんですよ。認めちゃっているんですよね、それ。経産省の圧力に屈したら、私は、使命を果たせない、もうひよっていると言われても仕方ないと思います。
最後に、小泉環境大臣、こういうことが起こっているということを御存じでしたか。どうしますか、これ。

○小泉進次郎 環境大臣 環境大臣として言うべきことはしっかり盛り込んでいるとは思います。
その意見として、事業リスクが極めて高いことを改めて自覚し、二〇三〇年度及びそれ以降に向けたCO2排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案して検討することなどをこの事業者に対して求める厳しい意見を述べています。
ただ、このやり取りの中で、環境省と経産省の中での調整を見れば、これは私も今までいろんな文言の調整やったことありますが、絶対に勝ち取らなければいけないものを勝ち取る中で、どこで闘うべきかとかなど、いろんな相手ありますけど、一文字たりとも変えないことが美学みたいな、こういう中で闘っているような世界なのもよくあるなと、この世界はと。
だから、そういったことを含めても、環境省として絶対に言わなければいけない意見を、曲げずに、ゆがめられずに言っていく、交渉力も含めてしっかりと強く付けていかなければいけないと。ただ、環境大臣として言うべき意見はちゃんと盛り込んであります。

○山下芳生君 時間が来ましたからもう終わりますけど、続きやりますけど、そうなっていないですよ。人口百万都市神戸とか、人口密集地帯、これを削除された後の文章見てください。伝わりませんよ、具体的なイメージが。引き続きやります。
終わります。