高齢者施設や病院 モニタリング 変異株の確認
「新型コロナウイルスを封じ込めるために大規模検査を拡充する。それを国が本気でやることがいま大事だ。やろうじゃないか」―。日本共産党の山下芳生副委員長は19日の参院予算委員会で、菅義偉首相にこう迫り、行き詰まりと破綻に陥った政府の新型コロナ対策の転換を求めました。
山下氏は、首都圏4都県での緊急事態宣言について「解除の条件はない」と指摘。十分な補償、医療機関への減収補てん、大規模検査が必要だと強調し、とくに志位和夫委員長が12日に政府に申し入れた大規模検査実施の緊急要請を示して、政府の姿勢をただしました。
高齢者施設や医療機関への社会的検査を、職員に頻回・定期的に行う提案について、多くの自治体で高齢者施設は3月中に1回で、医療施設は対象外だと指摘。「できるだけ頻回に」と言う政府コロナ対策本部分科会の尾身茂会長の見解を示し、政府として定期検査の基準や予算を設けるよう求めました。
田村憲久厚生労働相が「4月以降、定期的にやってもらいたいとお願いしている」と答えたのに対し、「自治体任せでは進まない」と批判しました。
山下氏は、モニタリング検査の1日10万件規模の実施を求める提案について、「いまが格段に増やす絶好の機会だ」との尾身会長の見解を紹介。西村康稔経済再生担当相は「まずは1日1万件を目指す」としか答えませんでした。
山下氏は、変異株の疑いを確認する検査の割合の大幅引き上げも主張。東京では3~5%しか検査していないが医師会は全数検査を求めているとして、政府が予算や検査に必要な試薬を十分に提供するよう求めました。
三つの提案に対し、菅首相は「方向性はほぼ一緒だ。ただ量が違う」と答弁し、山下氏は「ぜひ量の拡大を」と迫りました。
その後、新型コロナウイルスで苦しむシフト制労働者への支援の拡充を求めるとともに、シフト制の働き方そのものの理不尽を正す「新しいルールをつくろう」と迫りました。
10割補償が56%
山下氏は、シフト制の非正規労働者への休業支援金について、中小企業では昨年4月以降、休業前賃金の8割を支給する一方、大企業では昨年4~6月で、賃金の6割しか支給されないと指摘。「なぜこんな差別をするのか」と追及。厚労省調査では大企業が支払った休業手当のうち10割補償は56%、6~7割補償は22%だと示し、「10割補償が半分以上だ」と指摘しました。
山下 6割補償に合理的理由はない。
田村憲久厚生労働相 8割に満たないところとの公平性を考えた場合に理解が得られない。
山下 シフト制労働者に休業手当を支払う大企業がどれだけあるのか。「公平性」は何の根拠にもならない。
山下氏は「出し惜しみせずに平等に休業支援金を給付すべきだ」と主張しました。
山下氏は、シフト制労働者は職場で正社員と同等の重要な役割を果たす一方、「その働き方には数々の理不尽がまかり通っている」と強調。当事者への聞き取りをもとに、▽シフト減で休んだのに休業手当が出ない▽直前までシフトが確定しない▽急なシフト取り消しへの補償がない▽シフト減で生活が苦しくなり退職しても「自己都合」になる―問題を挙げ、「労働者としての権利の侵害だ」と告発しました。
厚労相 シフト制にもいろいろある。そういう働き方を望んでいる人もいる。
山下 実例を示して聞いている。厚労相が「望んだ」などと言うのか。労働者が救われない。
山下氏は、理不尽にさらされている当事者の声に背く答弁を厳しく批判しました。
その上で、観光バス大手に勤める3人の労働者は、コロナ禍の影響が広がっていた昨年3月の雇用契約書で、「勤務日数・労働時間」が大きく切り下げられた(図)と指摘。「使用者が勤務日数や労働時間を都合よく決めることができ、『0』にもできる」と述べました。
シフト悪用拡大
「『3~5日』を『0~5日』にすれば、労働基準法をかいくぐり、解雇時の事前通知や予告手当も不要になる。労働者保護のルールをことごとく突き崩す」と批判。「コロナ禍でシフト制の悪用が広がっている。乱用を防ぐ新しいルールが必要だ」と強調しました。
山下氏は、欧州連合(EU)が2019年、賃金を保証する最低限の労働時間数・シフト決定の事前告知期間・取り消し期限の明示や、シフトに関する労働者の拒否権、補償を受ける権利などを定めた「指令」(加盟国に国内法の整備を求めるもの)を成立させたとして政府に迫りました。
山下 日本でもこういう、理不尽を希望に変えるルールをつくろう。
厚労相 各国の対応を注視・検討したい。
山下氏は、シフト制労働の理不尽の根本には、自民党政治による労働法制の緩和があると批判。「働く貧困層が増えるほど、大企業の内部留保は増え潤っている。ゆがんだ社会を変えるため、人間らしい雇用のルールが必要だ」と強調しました。
「東電に疑念やむ得ず」
原発扱う資質問われ首相
菅義偉首相は19日の参院予算委員会で、東京電力柏崎刈羽原発への不正侵入防止の機能喪失に代替措置を取っていなかった問題について、「東電の組織の体質や原発を扱う資格にまで疑念をもたれてもやむを得ない」と述べました。日本共産党の山下芳生議員への答弁。
山下氏は東電の経営方針に「再稼働の実現」による「収益」増加とされていることに触れ、「収益力を上げるために再稼働を急ぐ姿勢が今回の重大事態を生んだのではないか」と指摘。「再稼働どころか原子力事業者としての資格が根本から問われる」と批判しました。
菅首相は「組織的な管理機能については抜本的な対策を講じる必要がある」と述べました。
【議事録】
山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
総理は、1都3県に対する緊急事態宣言の解除を示しました。しかし、現状を見ると、新規感染者が下げ止まって増加傾向にある、変異株の流行が広がり重大な懸念材料になっている。こういう状況から見て、私たちは、解除の条件はない、今解除することには反対という立場であります。
同時に、ただ続ければいいというものでもありません。新規感染者の封じ込めができておりません。第4波の危惧も指摘されます。これは、政府の対策の行き詰まり、破綻を示すものです。だから、ただ続けたらいいというものではありません。
日本共産党は、一つ、自粛要請に対しては生活できる十分な補償を行うこと、二つ、医療機関全体に減収補填を行うこと、三つ、感染を封じ込めるための大規模検査を行うこと、この3点がどうしても必要だと考えております。とりわけ検査は大事です。3月12日に志位委員長から菅首相宛てに、「コロナ封じ込めのための大規模検査」を行うよう要請いたしました。今日はこの内容について総理の見解をうかがいたい。
第一は、高齢者施設、医療機関などへの社会的検査を職員に対して頻回、定期的に行う、週1回程度行うという提案です。その点で、高齢者施設や医療機関のクラスターがいまだに起きているのはとても深刻だと思います。直ちに職員に対する定期、頻回の検査が必要だと思うんですが、ところが、高齢者施設は多くの自治体で3月中までに1回、1回やろうというんですね。医療機関はその対象にもなっておりません。こうした段階での検査について、政府の新型ウイルス対策本部分科会の尾身会長は、これまでの審議の中で、1回だけやるのはほとんど意味がない、最低でも2週間に1回は必要、できるだけ頻回にと見解を示しています。
そこで、総理、政府として定期検査の基準を示して、予算もつけて、クラスターを起こさないための検査を直ちに具体化するべきではないでしょうか。
田村憲久 厚生労働大臣 われわれも同じような考え方であります。でありますから、3月に実施計画を作っていただきました。
言われるとおり、1回だけと言われるところもあります。でありますから、4月以降、定期的にやっていただきたいと。これは、国の方が事実上は全額国費でやるような対応を考えさせていただいております。
ただ、問題は、保健所等々でありますとか自治体においても、その各施設で、それこそ鼻腔ならば鼻の奥から取らなきゃいけない。まあ唾液の検査というのもあるのはありますけれども、PCR検査みたいな話になってくるわけで。そういうような形の中で、なかなか自治体等々でそこまでの計画を出していただけないところがございますので、4月以降、定期的にやっていただくようにということで再度、今自治体に計画を作っていただいてやっていただくようにお願いをさせていただいております。
山下よしき 自治体まかせでは進んでいないんですね。1回だけの自治体が多いんですから。やっぱり政府が基準を示して、定期、頻回の検査の、予算もつけてやるべきだと思います。
第二に、モニタリング検査ですけれども、13都道府県で「1日1万件を目指す」というのが政府方針ですけれども、これあまりにも少ないと言わなければなりません。
先日の当委員会の中央公聴会で、わが党の小池書記局長が、感染拡大の予兆をつかむために「1日10万件」の規模に検査を広げていく方針を政府の方針として示すべきだと提起いたしましたら、尾身会長は、「今検査のキャパシティーを格段に増やす絶好の機会だと思う、国が高い目標を持って決意を示してやることが重要だ」と答えられました。
総理、「今モニタリング検査のキャパを増やす絶好の機会」と、尾身会長、そうおっしゃっています。やろうじゃありませんか。「1日10万件」の高い目標を持とうじゃありませんか。
西村康稔 経済再生担当大臣 お答え申し上げます。
モニタリング検査、私も共産党さんからご要請、ご要望お受け取りいたしました。私どもも、まずは1日1万件、これを目指して各都道府県と調整をしておりますし、また、民間事業者等活用ということで調整も進めておりますし、場所をどこでやるか、あるいは協力していただける大学や事業所、こういったところとも調整を進めております。
その上で、この1万件だけで私ども予兆をつかもうとは思っておりませんで、これも大事なもちろん検査なんですけれども、あわせて行政検査も、今ですと日々5万件、6万件やっていると思います。それから、民間で各社が独自に新宿とか八重洲とかいろんなところでやっています。これ、1日1万件程度やっている会社もあります。そういったところのデータもわれわれ提携をしてもらうようにしております。
そういったものも合わせて分析をして、さらには今の高齢者施設でのやっている検査の結果、さらには繁華街で、例えば宮城が今度国分町でやりますけれども、重点検査、こういったもののデータをすべて合わせて予兆を人工知能なども使って分析をしていきたいというふうに考えております。
山下よしき やはり、予兆をつかむんですから、ごくわずかの感染を発見するためには、全国で1日1万件では少ないと思いますね。これ目標を持つべきです、10万件とかね。ぜひご検討いただきたいと思います。
第三に、変異株を確認する検査の割合を大幅に引き上げるということを提案いたしました。変異株について政府は、検査を陽性者の40%まで引き上げると述べられています。ただ、東京では3%ないし5%しか検査していない。「技術的なことは障害にならない」というのが専門家の意見ですし、医師会などは全数検査を求めています。
総理、行政検査はもちろん、民間会社でも遺伝子解析ができるように、これは政府が仕組みをつくる、予算も検査に必要な試薬もちゃんと行うと、これ大事なんじゃないでしょうか。
田村厚労相 今言われたとおり、われわれも今できる限りのところでどこまでだということで、40%という昨日これ目標を出しました。いくつか技術的な問題があります。といいますのは、今PCRのスクリーニングは2回やることになります。1回やって陽性が出た後に2回目、その陽性の検体を今度はスクリーニングで変異株かどうかを見ると、こういう話になります。すると、やはりそれなりの検体の量が必要だということがありまして、そこをちゃんと確保まずしなきゃいけない、そういうようには初めから取っておりませんから、そこのところがどうかという問題があります。
それから、いろんな検査会社が民間もありますから、われわれ国としては、グリップできるところは、そこに費用を出してそこでやっていただこうというふうに思っております。今、その中で最大限できるというのが40%ということを先般厚生労働省の中で検討しまして、まず40%を目指してやっていこうということでございますが、なるべく早く見つけて、これ本当は、専門家の方々に聞くと5%から10%で傾向は分かると言われるんですが、われわれは早く見つけて、それを囲い込んで、なるべく変異株が広がらないようにしようというのが一つの目的でございますので、できる限りこれからも努力してこのスクリーニングの方はやってまいりたいというふうに考えております。
山下よしき 尾身先生は、「国がしっかりやるという意思を持てば技術的には可能だ」とおっしゃっていますからね。やっぱりそれ大事だと思うんですよ。
総理に最後ご答弁いただきたいと。私、三つ提案いたしました。高齢者施設などリスクの高い場所での社会的検査、無症状の感染者を把握するモニタリング検査、そして変異株の検査、この三つの検査を大規模に拡充することによって感染拡大を封じ込める、これ今、国が意思を示す、本気になってやることが今大事だと思いますが、総理、ご認識いかがですか。
菅義偉 内閣総理大臣 方向性というのは私どもの発表したこととほぼ一緒だというふうに思います。
ただ、量が違うわけでありますけれども、政府として行うことについても、これは専門家委員会の先生方に相談をした上で政府としてはそういう数字を決めて対応させていただきたい、こういうふうに思っています。
山下よしき 方向性も大事ですけど、量も大事ですから、ぜひ量の拡大を要請したいと思います。
次に、東京電力柏崎刈羽原発のテロ対策装置が長期間にわたって故障していたという深刻な問題が明らかになりました。原発の安全管理に関する新潟県技術委員会委員で原子力コンサルタントの佐藤暁さんは、米国でもセキュリティーに関する問題で赤評価を聞いたことがない、米国では設備異常の報告を怠って赤と判定された原発の担当者が起訴され刑事裁判に至った例がある、公衆を危険にさらすのは大罪に当たると言われています。公衆を危険にさらすのは大罪。
総理、通告した問いの前に一つうかがいたい。今回の事態の異常さ、深刻さ、どう考えておられますか。
菅首相 安全対策をしっかり実行しなければならない東京電力が柏崎刈羽原発においてこの度極めて重大な、不適切な事案を起こしたことは大変遺憾であり、そして深刻に考えています。地元の方々の信頼を損ねる行為であり、また、東京電力の組織の体質や原発を扱う資格にまで疑念を持たれてもやむを得ない、そうした事案だったというふうに思います。
東京電力には、高い緊張感を持って、責任を持ってまずは規制委員会の検査に真摯に対応すべきだと考えております。その上で、東京電力の組織的な管理機能について抜本的な対策を講じる必要があると考えています。
山下よしき 福島第1原発の重大事故を起こした東電には、適格性が当時から問われておりました。
保安規定の認可にあたっては、「経済性より安全性を優先する」ということを書き込んで認可されました。ところが、東電の「新々・総合特別事業計画」では、「収益改善」の項目で、柏崎刈羽原発について、「安全最優先」と一応は言いつつ、「再稼働を実現する、これにより、事業を継続的に実施でき、かつ、より安定的、持続的に賠償、廃炉に必要な資金を確保できる収益力を目指す」とあります。収益力を上げるために再稼働を急ぐ姿勢が今回の重大事態を生みました。安全性よりも経済性を優先する姿勢と言わなければなりません。
総理、地元の人が言っているんじゃなくて、総理の認識を聞きたい。東電には適格性がない、原発を運転する資格がないことは明白ではありませんか。総理の認識うかがいたい。
菅首相 私もそこは、先ほど申し上げたのは、まさに重大、不適切な事案を起こしたことは遺憾であり、深刻に受け止めています。そして、東京電力の組織の体質や原発を扱う資格にまで疑念を持たれてしまうことも、ここはやむを得ないことだと思っています。
そういう中で、東京電力においては、まずはこれ規制委員会でしっかり検査をされるわけでありますから、その検査に真摯に対応をすべき、このことがまず大事だと思います。その上で、組織的な管理機能については抜本的な対策を講じる必要がある、このように考えています。
山下よしき 東電が10年前に起こした福島では、事故を起こした福島では今も事故が続いております、被害が続いております。それなのに安全性より経済性を優先する。私は、再稼働どころか、原子力事業者としての資格が根本から問われるということを改めて指摘したいと思います。
次に、コロナ禍が長引く下で、非正規雇用労働者に様々なしわ寄せが行っております。
労働基準法26条は、使用者は、休業期間中、労働者に平均賃金の6割以上の手当を払わなければならないとしています。ところが、いわゆるシフト制で働く非正規雇用労働者には、コロナで企業が休業になっても休業手当が出ないという事態が広く起こりました。多くの当事者の皆さんが声を上げ、国会でも問題になる中で、救済制度として国が直接労働者に給付金を支給する「休業支援金」制度がつくられ、まず中小企業で働くシフト制労働者が対象になり、続いて大企業で働くシフト制労働者も対象になりました。大きな前進だと思います。
総理は、大企業で働くシフト制労働者と面会されました。この面会が休業支援金が大企業の労働者にも拡大される一つの転機となりましたが、総理、労働者の声を聞かれてどうお感じになったのか、なぜ決断されたのか、お聞かせください。
菅首相 先般、大企業に勤めておられる非正規雇用労働者の方と直接お会いをして、緊急事態宣言の中で休業手当が取られず、お困りの状況をうかがいました。私自身はかねてから、国民の雇用と暮らしを守っていくのは、これは政治の責任である、こう言ってきました。そのお話を非正規の雇用労働者の方からうかがって、その場で私は検討をしますと申し上げました。
そういう中で、休業支援金というのは雇用調整助成金の活用がままならない中小企業の労働者を早期に支援するために創設されたものであり、休業支援金を安易に大企業まで認めると、企業が休業手当を払って雇用を維持するという取り組みが行われなくなるという懸念がある。このために、大企業であっても休業手当を受け取りづらい勤務形態の方については休業支援金の対象とするように、私は厚生労働大臣に命じました。
山下よしき 私は、政府が大企業で働くシフト制の労働者にも休業支援金の給付対象を拡大したことは、シフト制で仕事が減らされたことも休業に当たると国が認定し、救済に踏み出したものであり、大きな意義があると思っております。
そこで、厚生労働大臣に休業支援金について二点要請したい。
一つは、せっかくできた休業支援金制度があまり利用されておりません。野村総研の調査では、シフトが5割以上減ったのに休業手当を受け取っていない人が全国で150万人、そのうち女性が100万人以上に上ると推定されています。今年2月時点です。この人たちは休業支援金の対象となるはずですが、申請は20万件ほどしかありません、対象月ごとにカウントしますと。
厚労省の休業支援金のホームページを見ましたけれども、まったく分かりづらいです。私もこうやって黄色線や赤線いっぱい引きましたけど、わかりにくいんですね。自分が対象なのか、いつの分はもらえて、いつの分はもらえないのか、すぐには分からないです。
まず大臣から、「大企業で働く非正規の方も支給されます。相談してください」とテレビやラジオで訴えるなど、周知と丁寧な対応を抜本的に強化することが大事ではありませんか。
田村厚労相 私も記者会見等々ではもう申し上げております。大企業、本来大企業は休業支援金の対象にならなかったんですが、非正規でも大企業は多く雇調金もらっていただいております。
問題はシフトという働き方でありまして、これは毎月決まった日数働くというふうに限っているわけではありません。そういう形態の中で、急に仕事がなくなって収入がなくなると、こういう方がおられるものでありますから、大企業でもこういう方々は雇調金の対象になりづらい。もちろん、シフトでも対象にしている大企業もありますが、そういう方々に対して、シフトに限って、今回この休業支援金、大企業でも対応をさせていただいたわけであります。
まだ十分にご理解いただいていないという部分があろうというふうに思いますので、さらに、われわれといたしましても、大企業のシフトの方々に関しましては、これは休業支援金の対象になるということをさらに広報してまいりたいというふうに考えております。
山下よしき もう一つ、休業支援金を申請した労働者に対して企業の側が嫌がらせをすると、シフトを減らすとか、中には解雇を迫るなど悪質なケースもあると聞きます。
こういう報復的な行為を未然に防止し、労働者が安心して休業支援金を申請できるようにすることも大事だと思いますが、簡潔にどうぞ。
田村厚労相 窓口つくっておりまして、そこに来ていただければ、企業の方にまずこういう状況ですねと確認をした上で、決して企業がそれに対して認めないということは、まあ多分こういう状況ですねと言えばそうですという話になりますから、それでも支給できるようにしております。
なお、言われるとおり、それによって不利益な取扱いすることは、これは許される話ではございませんので、そのようなことがあればしっかり対応してまいりたいというふうに考えております。
山下よしき もう一点問題提起したいと思います。(資料提示)
同じように休業しているのに、中小企業の労働者に対しては、「昨年4月以降、すべての休業」に休業前賃金の「8割」が支給される一方で、大企業のシフト制労働者に対しては、「昨年4月から6月に限定」して、しかも休業前の賃金の「6割」しか支給されない、対象期間が狭く、支給水準も低いということになっています。
当事者からは、「6割補償では低過ぎる」と、「大企業で働いているだけで差別しないでほしい」という声が上がっていますが、何でこんな差別するんですか。
田村厚労相 大企業、補助率が10分の10でございませんでした。そういう意味では、大企業の中の正規、それから非正規の中でもシフトじゃない方々は、先ほども申し上げましたけれども、雇調金たくさんもらわれていると申し上げましたが、6割の方々がたくさんおられます。そことの公平性を考えた場合に、シフトだけ8割というわけにはいきませんので、そこで6割というような判断をさせていただいております。
山下よしき 大企業で休業手当もらっている人は6割の方が多いということなんですが、次のパネルをちょっと見ていただきますと、大企業が既に支払った休業手当の賃金補償割合の分布がどうなっているか、厚労省から資料いただきました。ここに、これ見てください。厚労省の調査では、10割補償している大企業が56%ですよ。6割~7割補償は22%ですよ。圧倒的に10割補償している企業が半分以上あるじゃありませんか。
厚労大臣、10割補償じゃなく6割補償にする合理的理由ないんじゃないですか。
田村厚労相 8割よりも満たないところが4割あるというふうに思っておりますけれども、その方と比べて、後から本来雇調金で対応しなければなりませんけれども、雇調金で払っていただかないからということで新たな特例で対応したところがその方々よりも多いというのは、それはやはり逆に、もう大企業の方で雇調金をもらわれている方々との公平性を考えた場合に、そこはやはりなかなかご理解いただけないのではないかというような、今まで8割よりも低いところでもらっている方々に対してですね。
そういうようなことから今回6割ということをお決めをさせていただいたわけでありまして、大変申し訳ないですけれども、そこはやはり公平性ということもございますので、ご理解をいただきたいというふうに思います。
山下よしき ご理解されないと思いますよ。だって、今大企業の中で非正規雇用に、じゃ、雇調金で休業手当出すところが何人あったんですか。これ聞いたって、厚労省つかんでないですよ。今問題になっているのは非正規雇用の労働者ですよ、シフト制の、シフト制。中小企業は8割、大企業のシフト制は6割。今大臣がおっしゃったことは何の根拠にもなりません。
総理にうかがいたいと思います。
大企業で働くシフト制の労働者の方が賃金が高いわけではありません、シフト制の労働者。同じように非正規雇用で最低賃金すれすれで生活は厳しいです。差別する根拠はありません。
総理と面会した女性労働者は、面会後、「大企業まで対象が拡大されてうれしいが、企業規模で給付内容に差を付けるのはおかしい」と語っています。差別はやめて平等に給付すべきではありませんか。いま一度検討すべきではありませんか。
菅首相 先ほど厚生労働大臣が言っていましたように、すでに雇用調整助成金を支払っているケースとのバランスなどを考慮した結果、大臣が考えたというふうに思います。私は、大臣に指示をしまして、従来の方と変にならないような形で出させていただきたい、そう思っています。
山下よしき いや、残念ながら変になっちゃっているんですよ。10割の方が56%で多いんですからね。これは逆に変になっていますよ。
大企業の非正規雇用労働者を休業支援金の内容で差別する合理的根拠はありません。コロナ禍で仕事が激減し困窮する労働者が急増しているときに、政治が頑張らずして一体誰が頑張るのかと。私は、大企業の非正規雇用労働者にも出し惜しみせずに、平等に休業支援金を給付することを改めて求めたいと思います。
シフト制で働く労働者の矛盾は、休業手当の問題にとどまりません。私はこの間、様々な分野、業種でシフト制で働く労働者の皆さんの実態を聞かせていただきました。シフト制というのは、勤務日や勤務時間がその都度決められていく勤務形態のことですが、話をうかがって強く感じたのは、シフト制で働く労働者の皆さんがそれぞれ職場でとても大事な重要な役割を担っているということです。
飲食大手でシフト制で働くAさん、30代女性は、主にホールで接客の仕事をされている。店舗は店長以外全員シフト制で、Aさんはお客様のクレーム対応、調理の補助、新人アルバイトの教育も担当されています。店舗が入居している商業ビル全体の店長会への出席や衛生検査の対応など、店長不在時には店長としての役割も担っておられます。
イベント警備大手でシフト制で働くBさん、40代男性。サッカーや野球の試合などたくさんの人が集まる大規模イベントの会場を警備する仕事ですが、担当するエリアで50人から100人のスタッフを管理するのがBさんです。Bさんはスペイン語が堪能で、海外のサッカー選手の通訳をすることもあると。シフトが減る前は月収25万ないし29万円あったと。
観光バス大手、シフト制のCさん、女性、仕事はバスガイドです。元々正社員でしたが、出産により退職をされ、その後、家庭の事情から非正規雇用でバスガイドに復職されました。週5日、50時間以上働いていた。1日で昼コース、夜コースの2回乗車し、14時間ぐらい働くこともあったと、こういうことでした。
私は、勤務形態はシフト制だが、正社員と変わらない、あるいは正社員以上の役割を果たしている方もある、そして主たる生計者として家計を支えている方も少なくないと思います。
総理にうかがいます。
シフト制で働く労働者が果たしている役割について、総理、どう認識されますか。
菅首相 シフト制で働く方を含め、すべての労働者の方々は、雇用されている企業はもちろん、社会にとってそれぞれ重要な役割を担っているというふうに認識をしています。
政府として大切なのは、どのような働き方であっても、納得した待遇の下で、1人1人の希望に応じて多様で柔軟な働き方をできる社会を実現していくことだと思います。
山下よしき シフト制で働く労働者の皆さん、やりがいと誇りも話聞いていて伝わってまいりました。Aさんは、「みんなで力を合わせてお客様に喜んでもらうことがうれしい」と、Cさんは、「東京の町を全国の方々にガイドして、最後にありがとう、楽しかったと言ってもらえることがやりがいです」とおっしゃっていました。
この人たちのおかげで、私たちの社会が潤いのある安全で楽しい社会となっているとも言える。敬意と感謝を表したいと思います。総理もそう言われました。にもかかわらず、シフト制の労働者は最低賃金に張りつくような低賃金に置かれた上に、その働き方には数々の理不尽がまかり通っています。
私が聞いた内容をパネルに整理しました。シフトが減らされて休んでいるのに休業手当が出ない、これさっき言いました。AさんもBさんもそうでした。イベント警備のBさんは、3月から仕事が激減し、4月からもうほぼゼロになって、生活に困窮したそうです。
それから二つ目、直前までシフトが確定しないで、先の予定が入れられないと。これ、大体3日前に決まるそうですが、当日朝の場合もあると。3日前だとしても、翌週の友人との約束はできない。シフトが入るかどうか待っていないと駄目なので、ほかの仕事も入れることができないということでした。
三つ目、確定していたシフトが急に取消しになっても補償がない。イベントの人の出が少ないので、昼から、今日はもう上がってくれと言われたけれども、まったく補償は当然のようにされなかったなどですね。
そして四つ目、シフトが減らされて生活が苦しくなって退職しても「自己都合」になるということであります。
あまりの人権侵害、あまりの労働者としての権利侵害だと、話うかがえばうかがうほど感じたんですね。
総理、こういうことを理不尽だとは思いませんか。どんな働き方をしてもとさっきおっしゃったけど、これはどんな働き方をしてもこんなことがあってはならないと。理不尽だと思いませんか。
田村厚労相 シフトっていう働き方はいろんな形態があるんだと思いますけれども、シフトといっても一定程度、ある程度日数を決めて働く働き方もあれば、毎月、毎週入れる日が変わってくるというようなシフトもあると思います。
それで、それはある意味そういう働き方を望んでおられる方々もおられます。一方で、安定した働き方をされたい方々には、もっと安定した働き方をしっかりとしていただくために、厚生労働省としてもそういう働き方に誘導させていただくべく、いろんな職業訓練、いろんなことがあるわけであります。
それで、最後の、このシフトが減らされて生活が苦しくなっても、退職しても自己都合という話に関しては、あらかじめ月どれぐらい入るというようなことが決まっている、契約で結ばれているのにそういうものを極端に減らすということになれば、これは不利益変更になりますので、その折には、これは休業補償に関しても特例の対応になるということでございます。若しくは時給等々が85%になった場合、こういう場合も、そういうものを受け入れられないといって退職された場合、これは自己都合でも、これは事業主が対応したことによる要するに解雇というような形になる、と同じ扱いになりますから、そういう意味ではそういうような割増しの期間が適用されるという形でありますので、それぞれシフトの形態によって変わってまいりますから、ちょっとシフトと一概におっしゃられても、われわれとしてもどのように理解をすればいいのか分かりません。
山下よしき 私、さっき事例示したでしょう。ほとんどもう正社員と同じように働いている人たちがこういう仕打ちを受けているんですよ。その人たちから聞いた言葉なんですよ。
それを、望んだことだと、厚生労働大臣が、こういうことを望んで労働者が働いているなんて言っていいんですか。むちゃくちゃですよ。労働者は救われませんよ、そんなのは。そういうことを私は聞いているんです。一人ひとりに掛かってくるんですよ、理不尽さは。全体のことを言っているんじゃない、一人ひとりにかかってくるんですよ。
何でこんなことが起こるのか。観光バス大手のシフト制労働者Cさん、Dさん、Eさんの雇用契約書から勤務日数、労働時間の欄に記載されていた内容をパネルにいたしました。
ご覧いただきたいんですが、まず、3人ともコロナの前と後でシフト制労働者にとって極めて重要な勤務日数と労働時間が大きく切り下げられております。Cさんは「週5日40時間」から「週3日24時間」に減りました。Dさんは「週2日16時間」から「勤務シフトによる」と。それから、Eさんは、「週3日ないし5日」、「20時間ないし40時間」だったのが、「週ゼロないし3日」、「週20時間未満」ということになっております。
これでは、この「勤務シフトによる」、「ゼロ」、「未満」、これでは使用者が労働者の勤務日数や労働時間を都合よく決めることができてしまうんです。勤務日数「ゼロ」、労働時間「ゼロ」にだってできるんですね。こういう契約がシフト制労働者の理不尽な働かされ方の根源にあると思います。だから調整弁だという言葉が出てくるし、休業手当が出ないのも、「あなたはシフトがなくなりました」、「あなたの勤務は今週ゼロ日・ゼロ時間です」ということから来るわけですね。
総理、勤務日数「ゼロ」、労働時間「ゼロ」、こんな雇用契約おかしいと思いませんか。
田村厚労相 もう、これ極端な例ですので、こういう場合はですね……(発言する者あり)いや、だから、こういう場合は、要はご本人、これ合意をせずにお辞めに自己都合でなられれば、これは会社都合で辞めさせたことになりますから、先ほど言われました雇用保険の対象になる、対象というのはその割増しの期間の対象になるということでございますので、こういう契約自体は非常に不利益変更の契約であるということであります。
山下よしき 確かに、これ本当、コロナ前と後でものすごい不利益変更された。口で言うだけじゃなくね、こういうのが横行しているんですよ、今、コロナ禍の中で。それを取り締まるのが、労働者を守るのがあなたの役割ですよ。ぜひ頑張っていただきたい。
それで、この「ゼロ」とかいうことにしたら、これ労基法上の解雇規定もかいくぐれることになっちゃうんですね。「ゼロ」にしただけだということになったら、事前通知や解雇予告手当も不要ですし、休業手当も不要になる。積み上げてきた労働者の権利がことごとく突き崩されることになる。シフト制の悪用、濫用が今広がっているということなんですね。だって、労働者が労働時間「ゼロ」を希望するはずないじゃないですか、働くことを望んでいるんですから。
それで、シフト制のこの濫用をいかにして防止するか、それから、さっき田村さん、断ったらいいとおっしゃった、こんな不利益など断ったらいいとおっしゃったので、私、この人たちに聞きました、何でこんな契約を結んだんですかと。そうしたら、「これまでと何も変わらないと説明された」と。これ、虚偽による不利益変更。これはひどい。ぜひ、こういうのは本当横行していますから、しっかりと取り締まってほしい。
同時に、私がこれはと思ったのは、「断ったらシフトが減らされるかもしれないと考えた」と、この声が多いんですよ、この声が。シフトを減らされるかもしれないと理不尽を拒否できない。このこと自体が勤務日数や労働時間が固定されていないシフト制労働の根本的な問題点を示していると私は思いました。そこを見なきゃ。誰も望んでやっているんじゃないんですよ。嫌々強いられているんですよ、弱い立場で。
私は、シフト制の濫用をなくすためには新しいルールが必要だと思います。その点で参考になるのが、2019年6月に成立した「EUにおける透明で予見可能な労働条件に関する指令」です。
この第4条、「通知義務」、ここには「最低保証賃金支払時間数」とありますね。最低週何日、何時間は賃金を支払う時間ですとあらかじめ労働者に通知する義務が課せられているんです。これだと労働時間がゼロになるようなシフトの契約を規制できる、休業手当不払もなくなります。それから、「最低事前告知期間」、「あしたシフトに入ってください」というのはなくなります。「取消しの最終期限」、「明日のシフトはキャンセルです」、これもなくなります。
それから、第10条、「最低限の労働予見可能性」。一、「以下の労働条件をいずれも充足しない限り、労働者は使用者によって労働を求められることはない」。「(a)事前に決定された参照時間及び参照日の範囲内で労働が行われる場合」。「(b)合理的な事前告知期間を置いて使用者が労働者に作業割当てを通知する場合」。つまり(a)は、「私が働きたいのは月、水、金です、それ以外に火もシフトに入れてもいいですよ」ということをあらかじめ「参照時間」、「参照日」として合意しておこうということです。それから(b)、「1週間前ならシフトに入れる」、シフトを入れることができますけれども、1週間切ったらもう入れることはできませんよという、こういう取決めなんですけれども、労働者はこれで自分の労働の予見可能性が出てくることになります。
それから二番目、この「(a)、(b)のうち一つでも満たさなければ、労働者は不利益な結果をもたらすことなく作業割当てを拒否する権利を有するものとする」。これ、さっきの「断ったらシフトが減らされるんじゃないか」という心配もこれでなくなります。
そして、三項、「労働者が既に合意した作業割当てを使用者が一定の合理的な期限後に取り消した場合には労働者は補償を受ける権利を有する」さっきの話ですね、「近づいてからシフトをキャンセルしたらキャンセル料をちゃんと払ってもらいます」ということなんですが。
私は、この間、シフト制の方々の理不尽な実態をさんざんたくさんたくさん聞いてきた。本当につらい気持ちになってきたときにこれを発見して、ああ、こういう本当に悔しい思いに対してこういうルールを作ったところがあるのかと、驚きと感動を覚えました。これは理不尽を希望に変える新たなルールだと、そう思います。
総理、日本でもこういうルールを作ろうじゃありませんか。
田村厚労相 まず、シフトでも先ほどいろんな形態があると申し上げました。ですから、きちっとしたシフトの中での契約を結んでいただいて、その中で仮に理不尽なことをされた場合に、例えば雇い止め等々、この場合に期待権が生ずるというような、そういうような形でのいろんな契約を結んでいただくということが非常に重要だというふうに思います。
その上で、一方で、自分が都合のいいときに働きたいという、そういうご要望のシフトの方々もおられると。この方は、先ほど言われた方は違うと思いますけど、そういう方々もおられるというのでシフトという働き方が成り立っているんだと思います。
EUでもオンデマンド労働というような、日本の多分シフトに近いんだと思いますけれども、そういう働き方がある中でこのEU指令が出てきたというふうに私も理解いたしておりますけれども、諸外国、つまりこのEU指令において各国がどういう対応をされておられるのか、われわれとしてもちょっと注視をさせていただいて、しっかりとそれを検討させていただいた上でどうあるべきか、これはわれわれも考えてまいりたいというふうに思います。
山下よしき ぜひ注視していただきたい、調査していただきたいんだけども、今目の前でコロナ禍の下で苦しんでいる人たちはいますから、これぜひ急いで日本でどういうルール作るのかを検討する必要があると思います。人権を擁護し、労働者を保護するために必要なルールを議論し確立して、これはEUですけど、こうした努力は私たちの社会でも切実に求められていると思います。とりわけ、政治が果たす役割は大きい、政労使ですけどね。コロナの後は人間らしい雇用のルールをと、そういう立場で私たちは頑張りたいと思います。
次に、シフトが減らされて生活ができなくなって退職しても自己都合退職の形にされる場合が多いと先ほど紹介しました。これも本当に理不尽なんですけれども、しかも、自己都合退職の形で失業給付等手続をしますと、「2か月の給付制限」が掛かります。貯蓄の乏しい非正規雇用労働者の場合、2か月間失業給付がもらえないとなると、とても苦しい、生活できません。救済の道をつくる必要があると私は思います。
厚労大臣、厚労省のパンフレットを見ますと、「『解雇』等により離職した者」の中に、「(4)賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べ85%未満に低下したため離職した者」とあります。これは、シフトが減って賃金が低下した場合も該当し得るんじゃないかと私は思いましたけれども、いかがですか。
田村厚労相 これは、時給が85%、15%切られるということになれば、これは賃金が85%以下だということでありますから対象になるというふうに思います。
なお、これ自己都合という話でございますが、先ほど話がありましたけれども、今までの契約を極端に不利益な契約に変えられる、こういう場合に、それを受けずに自己都合で辞めた場合は、当然これは自己都合ではなくて、事実上は会社側のまあ要するに都合ということでございますから、そういう意味ではこの対象にはならないということになるだろうというふうに考えております。
山下よしき 時給が85%以下という考えですけどね、それではシフトが減った人は救われないじゃないですか。だから、やっぱりこれもっと救う手だてを考える必要がある。
そこでもう一つ提案したいんですけれども、リーマン・ショック時には、「期間の定めのある労働契約の期間が満了かつ当該労働契約の更新がないことにより離職した者」を「特定理由離職者」として、「解雇・倒産」による離職者と同じく給付制限なしで速やかに給付されるようにいたしました。これは、派遣切り、非正規切りの嵐の中で労働者を救済する道をつけたんですね。
これは、厚労大臣、今回もコロナ危機の下で雇用が傷んでいますから、この「特定理由離職者」に「シフトが減少したことにより離職した者」を加えること、決断すべきじゃないですか。
田中誠二 厚生労働省職業安定局長 お答えをいたします。
現在の雇用保険法においても、「特定理由離職者」の制度はございます。その中で、期間の定めのある労働契約が更新を希望したにもかかわらず更新されなかったことにより離職した方につきましては、現在の取扱いでは、これ暫定措置でありますが、給付制限期間なしということで取り扱わせていただいております。
山下よしき ぜひ弾力的に救ってほしいんですよ。リーマンのときもやっていましたから、今回もぜひ、救うべき労働者、本当に全員救ってほしい。
それからもう一つ質問したいと思いますが、「求職者支援訓練」についてです。
失業者約200万人弱のうち、今失業給付を受けている人は月ごとに40万人から50万人です。したがって、150万人は失業給付を受けずに求職活動をされています。
こうした雇用保険の受給資格のない人が対象になっているのが「求職者支援制度」、これはもう要は最後のとりでだと思います。このパネルにあるように、無料の職業訓練、「求職者支援訓練」を受講すると、月10万円の給付金が支給される。これもリーマン・ショック後につくられた制度ですが、利用者は2012年度の約10万人から2019年度の約2万人へと年々下がっております。減り続けております。
この間、NHKの「クローズアップ現代」で、この制度を利用した当事者の方が、「月10万円の給付金でアルバイトもしないで職業訓練を休まず―8割以上出席しなければなりません―暮らせというのは困難だ」と指摘をされていました。
この「求職者支援訓練」をより有効に活用するために、この給付金の額を10万円から20万円に倍額にしたらどうですか、せめて。
田村厚労相 でありますから、これは、いつも総理もおっしゃられますが、シフトの方々、収入要件等々を緩和して、今まで8万円までだったんですが、12万円まで収入あってもこれが訓練給付が受けられると、訓練受講給付がもらえるというふうな形にしました。いろんな意味で、出席等々の要件も緩めまして、働きながら要するに求職者支援訓練が受けられるというような、本来この求職者支援訓練は働いていただきながら受けるということも一つ考え方の中にありますので、日々働いていただいて一定の収入を得ていただいた上で、その上で訓練を受けていただいて、全体のその受講時間でありますとかそういうものも、もうちょっと短いやつ、こういうものもつくっておりますので、こういうものでしっかり訓練いただいて、言うなれば正規につなげていただきたいと。
昨今は伴走型というものもつくっております。個別・伴走型で、受けられた能力、そういうものを含めて就職先までつなげるというような支援もさせていただいておりますので、そういうものもご利用いただきながらしっかりと、正規を望まれるんなら正規の職業の方にお就きをいただければ有り難いというふうに考えております。
山下よしき 正規の職を望まれるのなら正規をと。正規の職に就くためにスキルアップしようと「求職者支援訓練」を利用したいと思っているのに、今いろいろ改善したとおっしゃいました、収入要件を引き上げるとか出席要件を緩和するとか。
しかし、一番労働者にとってきついのは、月10万円では、これなかなか東京で月10万円で独り暮らしできないじゃないですか。一方で、出席ちゃんとしなければ、してこそスキルが身につくわけですから、肝腎要の月10万円がそのまま据え置かれておいて、足らずは働いてくれというのが今の提案なんですよ。しかし、生活の心配しないで集中して職業訓練を受けることができてこそ、条件の悪い仕事から抜け出すことができる。
やっぱり、要は月10万円引上げなんですよ。少なくとも20万円。真面目に検討すべきじゃないですか。
田村厚労相 そういう方のために緊急小口、総合支援貸付けがございますので、これは無利子でございますから、こういうものをお借りをいただいて、ご承知のとおり返済するときに住民税非課税ならばこれは償還免除という形になりますから、こういうものもご利用いただきながら対応いただきたいと思いますし、求職者支援の方でも貸付けの方はやっておりますので、そういうものをご利用いただければ有り難いというふうに思います。
山下よしき 本当に苦しんでいる人に貸付けというのは、これは元気出ませんよ。やっぱり、せっかく訓練受けたいという人がいるんだから、しっかり受けられるようにしてほしいという要求、応えていただきたいと思います。
もう時間参りましたので、私は今日はシフト制で働く労働者の問題いろいろ取り上げてまいりましたけれども、この問題はコロナ危機で表面化しましたけれども、大本には非正規雇用が大きく増やされてきた問題があります。
赤い線は、非正規雇用労働者の比率です。1980年代の1割台から増え続け、今や4割近くにまでなりました。これ、自然現象ではありません。労働者派遣法を作り、原則自由化し、製造業にも派遣を解禁する、そして期間の定めのある有期雇用契約を規制することをまったくやってこなかった。労働法制を次々規制緩和してきた長年の自民党政治の私は結果だと思います。同じ時期に、見てください、青い棒グラフ、大企業の内部留保です。どんどんどんどん膨らんでいきました。働く貧困層が増えれば増えるほど大企業が潤う。
こんなゆがんだ社会を変えるためにも、人間らしい雇用のルールを作ることは急務となっている。そのために力を合わせようということを呼びかけて、質問を終わります。