日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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再資源化、企業責任で 資源循環法で参考人

参議院環境委員会 2024.5.7
速記録 動 画

参院環境委員会は7日、資源循環法の参考人質疑を行い、日本共産党の山下芳生議員が質問しました。

山下氏は、ペットボトルの回収率は9割と高いが、元のペットボトルに活用される比率(約2割)は低い点について質問。リサイクル業を営む加藤宣行氏は、きれいにごみを出しても、回収車の中で混載するごみがペットボトル自体を汚し、リサイクルから取り除かざるを得ない状況があると説明しました。

同志社大学の原田禎夫准教授は、欧州では製造者が廃棄にいたるまで責任を負う拡大生産者責任を社会の仕組みにして、EU(欧州連合)指令でデポジット(預かり金)制度を導入し、フィンランドでは自動の返金機を設け、品質をキープし、ほぼ100%を回収し、7割を元のペットボトルにリサイクルしていると指摘。さらに、原田氏は、日本は「世界最大のプラスチックごみの純輸出国になっている」と語りました。

廃棄物処理の責任についての山下氏の質問に、上智大学の北村喜宣教授は「一般廃棄物の収集、運搬、処分は市町村の責任になっているが、これを変えていくかどうかがポイント。産業廃棄物は排出事業者の責任を強化すべきという議論があり、再資源化、再商品化、減量化について十分な仕組みになっていない」と指摘しました。

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
お三方、ありがとうございました。
まず、原田参考人にペットボトルの問題点について伺います。
私も以前の当委員会の質問で、日本では、ペットボトルの回収率は九割前後と非常に高いんだけれども、生産量がもう圧倒的に多くて、たった一割だけれども、大量に海に流れてマイクロプラスチック化していろんな悪影響を与えているということを指摘したことがございます。
また、今日の陳述では、回収率九割でもボトル・トゥー・ボトルのリサイクル率は非常に低いということでした。
なぜこうした現状になっているのか、問題点と解決の方向性について、先ほど先生がおっしゃったヨーロッパのデポジット制度の御説明も併せて御意見いただければと思います。

○参考人(原田禎夫君) ありがとうございます。
私よりも加藤参考人の方が現場のことはよく御存じかと思いますが、回収されたペットボトル、皆様が御家庭で洗ってラベルも外してキャップも外して出されているものばかりではございません。異物が混ぜられている、例えばたばこの吸い殻がぎっしり入ったものもございますし、あるいは本当に汚れた汚い中身が残っている、いろんなペットボトルがございます。そうしたものは、残念ながらボトル・トゥー・ボトルのリサイクルには向かないということで、品質の言わば劣るリサイクル、カスケードリサイクルといいますけれども、そうしたものに回っているものが決して少なくありません。むしろ多くを占めているのが残念ながら現状です。
ですので、回収の質を上げていく。例えば、ヨーロッパで導入されていますデポジット制度、これスーパーなどに行きますと、自動の回収返金機、機械があるんですけれども、これも法律で設置が義務付けられたりしています。それは、例えばラベルは外したりしなくてもいいんですね。というのは、バーコードで製品を識別したりしますので、これは工場でそんなに難しいお話ではない。あるいは、キャップは散乱防止のために、そもそもヨーロッパの場合はキャップは外れない構造になっています。これは本当に、お国柄といいますか、どちらが良いか悪いかの話ではないんですけれども、一つ大事なことは、中身が例えば残っている、異物が入っていると、これは機械が自動で検知をして、お金を返してもらえないわけなんですね。ですので、皆さん、本当にペットボトルを空っぽにして持っていくということが習慣として行われている、そういうことがございます。
このデポジット、金額は国によって様々です。例えば、私が昨年の夏、イタリアの後に訪ねたフィンランドに行きますと、二十セント、まあユーロでの二十セントですので今ですと三十数円になりますけれども、フィンランド、物価も高うございますので、そんなにめちゃくちゃに高い負担というわけではないんですが、ほぼ一〇〇%回収を実現しているというお話でした。
また、返ってくる、回収されるペットボトル、これは品質も非常に一定以上キープできていますので、正確な資料が今手元にあるわけではないんですけれども、聞き取り調査を行ったときには、ボトル・トゥー・ボトルのリサイクル率は七〇%ほどというふうにはおっしゃっていました。EU全体では四〇%台というのはあるんですけれども、これはもう東ヨーロッパ、言わば途上国のような状況の国も含めての数値ですので、ヨーロッパの中でも高い国もあれば低い国もあるというのは、様々ではあるんですけれども、現在、これも全ての国にデポジット制度を導入して、また、リサイクル率も順次高めていくというようなことをEUの指令として出していますので、これからますます高まっていくのではないかなと思っております。
日本では、なかなかこの業界団体の皆さんはデポジット制度導入に、まあコストが掛かりますので、残念ながら余り積極的ではないというふうな御意見もあることも申し添えておきます。
以上です。

○山下芳生君 加藤参考人、現場ではどういう実態か。

○参考人(加藤宣行君) ありがとうございます。
ペットボトルを弊社は四つの役所の容器包装プラとして回収をさせていただいて、リサイクルできる状態にして出荷をしております。具体的に申し上げると、大手飲料メーカーが複数年前から、市場にあるペットボトルのみの材料として新しい飲料であるペットボトルを作るという発表をして、会社の戦略としてもいいことですし、また、それを実行するために弊社に一定のペットボトルがあるということで来ていただきました。初め、私もそれは驚いたんですけれども、今になってみれば、その企業の正しい方向性を見えたかなというふうに思っております。
じゃ、現実はどうかというと、ペットボトルを回収する以外の混載するごみがペットボトル自体を汚したりもするんですね。こういったことも、多分先生方が聞いてなるほどと思うことがあるんですよ。回収する車の中は、一軒一軒のごみを回収して、その中を混載させます。つまり、どんなにきれいにごみを出していただいた家があっても、一部の、例えば、ソースとかべたっとしたものを、作ったものを入れてしまうと、車の中で混載時に付着するんですよね。こういったことも、残念ながら私たちとしては、洗浄したり、また、負荷を掛けるということに備わっていない工場ですから、不備として取り除いております。
中には、工場で洗ってくれればいいのにという人もいます。確かに、技術的には可能なんですが、それにはまた別の負荷が掛かって、水の処理ですとか、まあペットボトルはきれいになるけれども、それをきれいにするためのまた新しい環境汚染を生むということを余り御存じでない人にとってはそういう意見が出たりもします。
じゃ、どうしようかということなんですが、やっぱり教育が地道ではありますけど必要だし、また、知ることがまず第一だと思います。ほとんどの人は今の話を知りません。また、知るすべもないです。まず知ること、そして何かを感じて反応して、そして次の行動に出るという初歩がまだまだ少ないのかなと思っております。
ちょっとまた余談ですが、この再生材を作って再生品として使ってもらうかというこの壁があるんですよ、先生。このペットボトルに限らず、世の中、私たちの同業者の中には、再生品に命を懸けて行動、処理をしている既に工場が存在します。例えば、再生砕石というのがそれですね。こういったものは、コンクリートジャングルと言われたビルをスクラップ・アンド・ビルドして、この再生材によみがえらせるために物すごい自助努力を繰り返して立派な材料になっております。使っても問題ないんです。ところが、使う側にとっては怖いんですよ。それはなぜか。初めて自分でトライした後の問題になった方が嫌なんです。これは都道府県もそうです。ですから、再生材を作って、それを第三者に委ねて見てもらってオーケーが出てもなかなか使わないという世界もあるというのを先生には是非分かっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
以上です。

○山下芳生君 ありがとうございました。
原田参考人にもう一問聞きます。
大量生産を前提とした経済社会である日本では、世界第二位の輸入大国になっている一方で、同時に、廃プラスチックでは日本が世界有数の輸出国になっていると。インフラが整わない途上国などで汚染を引き起こすリスクがあるというふうに聞いておりますが、日本が先進国として国際的にどのような姿勢で臨むべきか、ちょっと大きな話になりますけれども、御意見伺いたいと思います。

○参考人(原田禎夫君) ありがとうございます。
今委員御指摘のとおり、日本は輸入、そしてごみの輸出ということも大きな規模に上ると。ある推計によりますと、これは金額ベースになりますが、世界最大のプラスチックごみの純輸出国、輸入と輸出の差ですね、純輸出国は圧倒的に日本だという、そういう推計もございます。輸出額自体はドイツが一番多いんですけれども、ただ、ドイツはEU各国から輸入もしていますので、純輸出ということで見ると日本が最大になるということのようですが、その行き先としては、さきに挙げた資料のとおり、東南アジアが多くございます。まあアメリカもあるということで、アメリカの研究者の友人は逆に驚いていたりもしたんですけれども。
で、じゃ、これは、もちろん本当は自国で出たごみは自国の中で処理するというのが大前提だとは思うんですけれども、もちろんすぐに、すぐにできるわけでもございませんし、また、この表の中にございます韓国あるいは台湾は非常に高度なリサイクルを既に行っている国でもございます。そういう意味では、バーゼル条約、日本の提案によってプラスチックごみの輸出が原則禁止となりましたけれども、一〇〇%これが完全にモニタリングできているかというと、私もテレビの取材に協力したこともございますが、バーゼル条約発効後も紛れて輸出をしている、そういうケースも実際に記者さんが取材をされたりもありました。今は恐らく随分と減っているとは思うんですけれども。
改めて、このアジア、ヨーロッパがEU全体となって取り組んでいるように、アジア全域で日本がどういうふうに管理をしていくのか、あるいは技術の支援をしていくのか、あるいは台湾や韓国のような廃棄物処理では日本よりも進んだ技術をお持ちの国もありますので、そうした国からは学ばせてもらうということも大事でしょうし、本当にアジアの、例えば台湾なんかに行きましても、台湾、今日のこのネクタイは実は台湾の環境省でいただいたものなんですけれども、日本から学んでいることもたくさんあるんだよということを先方の局長さんもおっしゃっていました。
国際協力というのはよく言われますけれども、特に廃棄物の分野ではここをおろそかにしてしまうと、もう一挙に不法な輸出であったり処理といったことが横行してしまうと思います。特に途上国の場合はモニタリングの制度も整っておりませんので、ですので、世界というより、アジアの中で日本がどんなリーダーシップを発揮するのかということは、高度成長期のあのごみ戦争を乗り越えた日本だからこその経験もたくさんありますし、また、今のこの新しい、EU発でいろいろ提起されている問題もございます、それをまずはしっかり枠組みをつくって議論をして、そして制度化していくということが、アジアの中でやっていくことが日本としてやるべきことじゃないかなと個人的には思っております。

○山下芳生君 北村参考人に伺います。
日本では、廃棄物処理の責任が生産者ではなく自治体と廃棄物処理業者に負わされているのではないかと感じているんですけれども、先ほど先生も生産者がほとんどリスクを負っていないじゃないかというちょっと憤りを込めておっしゃっていましたが、こうした現状でごみ問題が解決するんだろうかというふうに強く思っております。もう少し、ここに踏み込むべきだという政策的な提起がありましたら、お願いしたいと思います。
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○参考人(北村喜宣君) 自治体に処理責任があるのは一般廃棄物、家庭ごみですよね。これは六条の二というところに「市町村は、」というふうに書いてございますから、これはクリアなんですね。事業系については、一般廃棄物でも産業廃棄物でも、「事業者は、」と、こういうふうに書いてありますから、誰に責任あるのかというと事業者らにあるということになっているわけですね。
じゃ、事業者の側でいかに減量化とかあるいは再資源化とかができるのかとなってまいりますと、これは法律を作ってもらわないとなかなかそこには進まないわけですね。家庭ごみはどうでしょうかと。まさか、日本の廃棄物処理法は結構古典的な法律でして、自分の家庭ごみは自分で減量化しろと書いてあるんですね。まさか庭で燃やすわけにはいきませんので、やはりこれはほとんど市町村の処理にお願いすると、こういうふうになっております。
ここで、先ほどもお話にありましたEPRについては、結局、生産者の方が消費者の段階で廃棄されるものについての責任を何ら負っていないのではないかと、こういうところが問題になりまして、だからこそ再商品化ということで一部を肩代わりしろと、こうなっているんですね。全部ではありません。廃棄物処理、一般廃棄物の処理責任は市町村にありますから、全部じゃなくて一部でも肩代わりしろと。
問題は、その一部をどれぐらいにするかなんですね。今はその、先ほどの原田参考人の表にもありましたけれども、収集、運搬、処分というのはまだまだ市町村の責任となっていると。これを変えていくかどうかというのは一つポイントであろうかと思います。
産業廃棄物につきましては、基本的に処理業者の責任じゃなくて、排出事業者の責任なんですね。ただ、適正価格を負担してくださいと、で、適正処理を実現してくださいと、こういうふうな立て付けになってあります。
しかしながら、昨今、その排出事業者の責任を強化すべきだと、先ほども議論ございました。とするならば、この古典的な廃棄物処理法の仕組みの中でいかにそれを実現するのかと、こういうことになってまいります。
廃棄物処理法は、適正処理の実現というところについてはかなり絞った、規定を強化して、法律改正によって変わってきているんですけれども、例えば再資源化、再商品化、減量化ということについてはまだ十分な仕組みになっておらないということがございますので、政策的な可能性といたしましては、これを縦割りの個別リサイクル法でやるのか、この法案もそうですけれども、横割りの横断的な法律でやるのかは別にいたしまして、そこについての切り込みというのがまだまだ政策的な余地としてあるのではないかと、このように考えております。

○山下芳生君 ありがとうございました。終わります。