日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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生物多様性損失させる開発規制せよ

参議院環境委員会 2024.4.11
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(写真)質問する山下芳生議員=11日、参院環境委

十一日の参院環境委員会で、政府が企業等の生物多様性増進のための「自然共生サイト」の計画を認定する「地域生物多様性増進活動促進法」が可決。日本共産党は賛成しました。同法質疑で、日本共産党の山下芳生議員は、生物多様性の保全には開発の規制が必要だと提起しました。

山下氏は沖縄県辺野古の基地建設や、山口県上関町での原発関連施設のための埋め立て、広島県竹原市のハチの干潟でのLNG基地の建設を取り上げ、いずれも「環境省が指定する生物多様性を保全する上で重要な海域等に指定されている」と指摘し「保全すべき」と迫りました。

伊藤信太朗環境大臣は「事業者の適切な環境配慮に期待する」などと答弁。山下氏は「まるで他人事だ。ネイチャーポジティブ(自然再興)というなら、真っ先に保護すべきだ」と追及。都市の生物多様性上重要な街路樹の、東京都神宮外苑や、大阪市(一万九千本)の伐採計画についても「やめさせるべきだ」と迫りました。

また、山下氏は同法の「自然共生サイト」に関わって、北海道石狩市で東急不動産が巨大な風車を十五基建設する事業の住民向け資料で、「自然共生サイトへの申請」とあり「開発を行いながら免罪符にしようとしている。グリーンウォッシュではないか」と追及。環境省の白石隆夫局長は「見せかけの効果をうたう事業は認定しない運用とする」と答弁しました。

また山下氏は、生物多様性保全のため、二〇三〇年までに陸域と海域の三〇%を保護地域とする「30by30」に関わって、「国土の七割を占める森林で、持続可能な森林づくりである自伐型林業などの取り組みと連動し、登録の拡大に努めるべき」と要求しました。

速記録を読む

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
世界的に、ネイチャーポジティブ、すなわち二〇三〇年までに生物多様性の損失を食い止め回復させること、そして、そのためにサーティー・バイ・サーティー、すなわち二〇三〇年までに陸と海の三〇%以上を健全な生態系として保全することが目標とされるようになりました。
私は、生物多様性損失の主要な要因として開発による自然破壊があると考えますが、伊藤環境大臣、この点についての御認識伺いたいと思います。

○国務大臣(伊藤信太郎君) この生物多様性条約、COP15において採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組によれば、生物多様性損失の最大の要因は土地と海の利用の変化だとされております。二〇三〇年までに生物多様性の観点から重要性の高い地域の損失をゼロに近づけるという目標がそれにおいて盛り込まれたところでございます。
昨年三月に改定した生物多様性国家戦略においても、開発を含む土地と海の利用の変化や乱獲といった生物の直接採取など、人が引き起こす生物多様性への負の影響を日本の生物多様性が直面する危機の一つと位置付けております。他方、我が国においては、自然に対する人間の働きかけが縮小、撤退することによる生物多様性への負の影響もございます。これについても生物多様性の危機として位置付けられてございます。
生物多様性国家戦略や昆明・モントリオール生物多様性枠組を踏まえながら、二〇三〇年ネイチャーポジティブの達成に向けて積極的に対応してまいりたいと考えております。

○山下芳生君 最大の要因は開発なんですね。
資料一に、WWF、世界自然保護基金が発行している生きている地球レポート二〇二二から、WWFが自然と生物多様性の健全性を図る指標としている生きている地球指数、括弧、一九七〇年から二〇一八年を紹介しました。今回の指数は、野生生物五千二百三十種について約三万二千の地域個体群を調査対象とし、個体数の変動を測定して算出したものだとされています。その結果、この五十年足らずの間に、地球全体でこの指数が平均六九%減少したことが明らかになりました。
このレポートは、私たちの住む地球が生物多様性の損失と気候変動という二つの危機に直面しており、今がその二つの危機に対応できる最後のチャンスだともしています。私たちにとって非常に重要なレポートだと読みながら感じました。
通告しておりませんけれども、伊藤大臣、このWWFのレポート、生きている地球指数について、受け止めいかがでしょうか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 非常に重要な資料であり、指摘だと思います。

○山下芳生君 さて、世界が生物多様性の損失を食い止め回復させようとしているときに、日本では、生物多様性を維持する上で極めて重要な自然が開発によって壊されようとしていることを告発せざるを得ません。
資料二は、沖縄辺野古の米軍新基地建設に関わって、三十団体に上る環境NGOが、いのちの海とサンゴ礁を守れとして発表した共同声明であります。声明は、辺野古、大浦湾海域は、アオサンゴ群集や日本では絶滅のおそれが最も高い哺乳類であるジュゴンが生息するなど大変生物多様性に富む沿岸域であり、環境省のラムサール条約湿地潜在候補地の一つに選定されていること、生物多様性を保全する上で重要度の高い海域の一つとしても検討されており、確認されているだけでも絶滅危惧種二百六十二種を含む五千三百種以上の海洋生物の生息地であることを指摘しております。
資料三は、山口県上関町での原子力発電所建設計画に対して、海岸の埋立て中止を求めるWWFジャパンの声明です。現在、使用済核燃料の中間貯蔵施設の建設が検討されております。声明では、長島や祝島周辺の海域は生物多様性のホットスポットであり、絶滅が危惧されるスナメリやカンムリウミスズメ、ハヤブサなどの繁殖やその可能性が指摘されている。この海域は、環境省が定めた重要海域でもあります。
資料四は、広島県竹原市、ハチの干潟の保全を求めた日本貝類学会多様性保全委員会などの要望書であります。ハチの干潟は海浜性生物の種の多様性が著しく高く、カブトガニを始め、絶滅危惧種を始めとする希少種も多数生息する極めて貴重な干潟で、環境省による重要湿地、重要海域にも指定されております。瀬戸内海では干潟がほとんど埋め立てられ、ハチの干潟は良好な状態で残されている数少ない場所であるにもかかわらず、まともにアセスも行われず、干潟の西端にLNG基地が建設されようとしております。
伊藤環境大臣、今三つの具体的な例を紹介いたしましたが、いずれも環境省自身が生物多様性にとって重要な湿地、重要な海域として指定した地域の自然が失われようとしております。保全すべきではありませんか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 御指摘の重要湿地は、生物多様性の観点から重要である、これだけではなくて、地域住民等が湿地の重要性を認識し、保全、再生の取組が活性化することを目的として、環境省が平成十三年に選定し、平成二十八年に見直しを行ったものでございます。
また、御指摘というか、重要海域、これについて申し上げれば、海洋の生物多様性の保全と持続可能性の、持続可能な利用の推進に資することを目的として、我が国の周辺海域における生物多様性の保全を推進する上で重要度が高い海域について環境省が平成二十八年に選定したものでございます。
いずれも、これらに選定されることで直ちに法的な規制が生じるものではございませんが、これらのうち全国的な見地から国として保護すべき区域については、国指定鳥獣保護区や沖合海底自然環境保全地域等に指定し、それぞれの法律に基づく開発規制等を行っております。
保護地域の内外にかかわらず、事業者等においてはこうした情報も参考にしつつ、それぞれの地域の自然的、社会的状況に応じて適切に環境配慮を行っていただくことを期待しております。

○山下芳生君 環境省が指定した重要湿地であり、重要海域なんですよ。そこが潰されようとしているときに、そんな人ごとのような答弁されちゃ困ると思います。私は、ネイチャーポジティブ、サーティー・バイ・サーティーを掲げるんだったら真っ先に保全されなければならない地域だと思うし、逆に、このような貴重な自然の破壊に目をつぶるようでは、掲げたネイチャーポジティブがうそになるということを言わなければなりません。
次に、生物多様性に、済みません、淡水域の多様性が大きく減少している問題は、ちょっと時間の関係で省きます。
生物多様性にとって街路樹がどういう役割を持つか見てみたいと思います。
まず、環境省、街路樹の生物多様性上の重要性について述べてください。

○政府参考人(白石隆夫君) 街路樹の生物多様性上の価値ということでございます。
環境省といたしましては、街路樹と生物多様性の関係につきましては、街路樹があることだけをもちまして生物多様性の保全上重要だということは申し上げておりませんが、街路樹が生物の生息、生育地や生態系ネットワークの拠点として機能することで、生物多様性の保全にも資する場合があるというふうに認識しております。

○山下芳生君 何かえらい腰の引けた御答弁ですけれども。
環境省も認めているんですが、東京都港区の、資料六にですね、生物多様性緑化ガイドから、緑の拠点を街路樹でつなげると書かれた部分を紹介しました。赤線を引いた部分、連続した緑豊かな街路樹は生き物の移動経路となり、供給地、拠点となる緑地を結びますとあります。つまり、都市部において貴重な一つ一つの緑地を街路樹でつなぐことによって動物たちが緑地間を移動し、緑地の生物多様性が更に高まるということであります。さらに、次のページ。一本の高木にも様々な中小動物が生息する小生態系がある、街路樹一本一本ごとに小生態系があり、生物多様性が維持されているということであります。
つまり、街路樹は生物多様性上重要な役割を担っているということだと思いますが、国交政務官、街路樹を管理する国交省も同じ認識でしょうか。

○大臣政務官(こやり隆史君) 街路樹でございますけれども、道路利用者の快適性の確保、あるいは美しい景観の形成のほかに、先ほど環境省からも御答弁ありましたけれども、周辺の野生動植物の生息、生育空間としての機能を含む沿道環境の保全の役割も果たしているというふうに考えております。
国交省では、このため、街路樹を含む道路の緑化に当たりましては、既に技術基準を定めておりまして、各道路管理者が道路交通機能を確保することを前提としながら、道路空間や地域の価値向上に資するよう努めていくとともに、交通の安全、周辺環境との調和に留意しつつ、適切に維持する、維持管理することが重要であるというふうに考えております。

○山下芳生君 ところが、都市部の貴重な緑、街路樹があちこちで損失の危機に瀕しております。その典型が神宮外苑だと思います。樹齢百年を超える、文化的にも歴史的にも貴重な樹木が、多数伐採されようとしております。これはもうかなり多くの人が知るところになっております。
さらに、もう一つ紹介したいのは、資料七に添付した大阪市の公園樹、街路樹の伐採、撤去計画も深刻であります。
一万九千本もの樹木を伐採しようとしているんですが、元々、大阪市は緑が少ない町なんです。私も、奈良から生駒を越えて大阪に入ってくると、もう緑一面、車のフロントガラスが美しい光景だったのが、生駒を越えたら全部灰色になるんですよ。本当に緑が少ない、そう感じるのが大阪市ですよ。元々、そうですね。だから、東京都区部の緑被率が二五%なのに対して、大阪市は一〇%しかありません。ただでさえ緑が少ないのに、一万九千本もの伐採をしたら、生物多様性にとっても大きな打撃になることは疑いないと思うんですね。
伊藤環境大臣、今度はちゃんとこの問題について答えていただきたいんです。都市部における生物多様性を維持するために、このような、東京や大阪で行われているような街路樹の大量伐採は止めるべきではないでしょうか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 神宮外苑地区における町づくりに関しては、東京都が、都市計画法に基づき、地区計画を変更して進めているものと承知しております。また、大阪市が管理している都市公園、道路においては、樹木に起因する事故等を未然に防止するため、そのリスクがある樹木の撤去や植え替えが行われていると承知しております。
いずれも、法的には、環境として見解を申し上げる立場にありませんが、一般論として申し上げれば、様々な条件や課題がある中で事業者が適切に環境配慮を行うことが重要であると考えております。

○山下芳生君 いかにも環境配慮に逆行する事態が東京でも大阪でも起こっているんですね。
それから、大阪市が事故の未然防止だと、安全のためだと言っていると紹介されましたけれども、伐採が計画されている公園では、樹木医が対象となっている樹木を鑑定いたしましたところ、そのほとんどが市民の安全、安心に支障を来すとは考えられないと、こう結論付けられているんですね。ですから、伐採の本当の目的は、経費の削減と公園の運営を民間に委託して稼ぐ公園にするためだと言われております。そういうことを本当に今許していいのかと、生物多様性の面からもこれは止めなければならないと思います。
次に、OECMと共生、自然共生サイトについて聞きます。
私は、これらを申請する事業者が、一方では開発で自然破壊を行いながら、その免罪符として自然共生サイトへの登録が行われるようなことがあってはならないと考えます。そういうやり方はネイチャーポジティブの理念に反するからであります。
懸念される具体的なケースを紹介します。北海道石狩市で東急不動産が陸上風力発電事業を計画しています。この計画は、パイロットファームの跡地で現在草地や植林地となっている場所に、さっぽろテレビ塔を超える高さ百八十メートルの風車を十五基建設するものです。
資料八に東急不動産の住民向け説明資料の一部を添付いたしました。ここにあるように、生物多様性保全に向けた取組として、自然共生サイト、OECMの申請とあるんですね。しかし、現在草地や植林地である場所に巨大な風車を十五基も造り、そのために林道を拡幅すれば、生物多様性が損失することは明らかであります。現に東急不動産の説明資料でも、この上の方に書いていますけれども、当社は、生物多様性の損失を可能な限り抑えた事業とした上で、さらに回復軌道に乗せていくための取組を行っていきますとあり、生物多様性の損失を前提とした計画になっています。ですから、実際は生物多様性を損なう開発を行いながら、自然共生サイトを申請することで免罪符にしようとしている。これではグリーンウオッシュと言われても仕方がないと思います。
環境省に伺いますが、自然共生サイトへの登録がグリーンウオッシュとならない担保措置はありますか。

○政府参考人(白石隆夫君) お答え申し上げます。
委員御指摘の個別の話じゃなくて、一般論として申し上げます。
本法案に基づく認定は、真に生物多様性の増進に値する計画を対象とすると、見せかけの効果をうたうような計画については、厳正な審査の上、認定をしない運用とすることが重要だと考えております。
現行の自然共生サイトにおきましても土地利用の変遷等を確認をしておりますが、本法案に基づく実施計画認定におきましても、審査の段階におきまして、土地利用の変遷等に照らして生物多様性の増進に値する計画かどうか、また計画内容が具体的かつ確実に遂行し得るものなのかどうかを確認する必要があると思っています。
さらに、認定後におきましても、活動の実施状況について国に報告を求めることができる規定を設けておるほか、万一、万が一ですね、計画に基づく活動が実施されておらず、改善の見込みがないと判断される場合、あるいは計画に沿った活動の実施が困難と判断される場合には認定を取り消す旨の規定も設けております。
いずれにいたしましても、環境省として、制度全体の信頼性が損なわれることがないように適切な制度運用を行ってまいりたいと考えております。

○山下芳生君 大臣にも一言。グリーンウオッシュのような活動を認定してはならないと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) グリーンウオッシュにならないように、この本法案に基づく認定は、真に生物多様性の増進に値する計画を対象とし、見せかけの効果をうたうような計画については、厳正な審査の上、認定しない運用をすることが必要だと考えております。

○山下芳生君 自然共生サイトのサーティー・バイ・サーティーへの貢献について聞きます。
現在登録されている自然共生サイトの面積は、国土面積に比してどのぐらいになるんでしょうか。

○政府参考人(白石隆夫君) お答え申し上げます。
現在、百八十四か所の自然共生サイトを認定をしております。合計面積約八・五万ヘクタール、これは東京二十三区や琵琶湖を超える大きさとなっておりまして、国土面積に占める割合は約〇・二%ということでございます。

○山下芳生君 〇・二%ですから、現在の自然共生サイトをOECMに登録するだけでは、サーティー・バイ・サーティーの達成は到底無理ですね。現在、陸域の国立公園など保護地域と指定されている面積は二〇・五%ですから、それに〇・二%足しても、とても三〇%にはなりません。したがって、三〇%達成のためには国土面積の七割を占める森林をOECMに位置付けることが重要となると思います。
ところが、我が国の林業は、歴代政権の外材依存政策の下で木材価格の低迷が続いて、林業労働者は減少するなど、危機に瀕しております。
さらに、林業の成長産業化路線で、森林の多面的な機能が著しく軽視され、大規模化した合板、集成材企業やバイオマス発電企業に安価な木材を大量に供給することが優先され、国有林、民有林問わず、植林後約五十年の森林の大規模な皆伐が拡大しています。しかし、伐採後の再造林はコストが賄えずに三分の一程度しか進められておりません。
一方で、持続可能な森林づくりの取組として、小規模で、林道なども最低限のものに抑え、人手も掛けて間伐や択伐を繰り返し、森林を持続的に活用する自伐型林業が注目されております。自伐型林業は、人手を掛け、森林を持続的に活用することから、従来型の大規模林業と違い、多くの林業従事者を生み出し、地域の町おこしにもなり、これまで六十八の自治体がこれを支援しております。
今日は農水政務官にも来ていただいておりますが、こうした持続可能な森林の保全につながる取組と連動して自然共生サイトの登録を進めるなど、森林のOECM登録の拡大に努めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(高橋光男君) お答え申し上げます。
委員御指摘の自然共生サイトにおきましては、例えば、徳島県那賀町における森林所有者自らが間伐を繰り返し行い、針葉樹と広葉樹の混交林を育成している事例や、三重県大台町における企業の有するFSC認証森林などが登録されていると承知しております。
農林水産省としては、自伐型かどうかや森林認証の有無にかかわらず、林業経営に関わる様々な方が、立場の方々が生物多様性に配慮した持続的な森林経営に取り組まれるよう森林整備活動を支援してまいります。

○山下芳生君 終わります。