日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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温暖化 地球のシステム根本変化の可能性 石炭火力前提では対応できない

参議院環境委員会 2024.4.9
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(写真)質問する山下芳生議員=9日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は九日の参院環境委員会で、政府が二〇二〇年に行ったカーボンニュートラル宣言が、二〇五〇年まで石炭火力発電を使い続けるJERAの計画を前提にした宣言であることを、当時の官房長官の発言も示して告発しました。

さらに山下氏は、二〇二三年の世界と日本の平均気温が観測史上最高となり、上昇幅も最大だったことを気象庁のデータにもとづいて指摘。この気温上昇について、英国の科学雑誌『ネイチャー』で、米国航空宇宙局・NASAの研究所所長ギャビン・シュミット氏が、①これまでの気候モデルでは説明できない気温上昇が起こっている、②すでに地球の気候システムが根本的に変わっているのかもしれない、と警告していることを紹介し、伊藤信太朗環境大臣に「深刻に受け止めるべきではないか」とただしました。

伊藤氏は「十年間に本気の気候変動対策をしなければ取り返しのつかないことになる」と答弁。山下氏は「ならば石炭火力発電はやめるべきだ。やれることは全部やる必要がある」と迫りました。

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
今日は、気候変動について議論させていただきます。
資料一は、菅政権発足以降の政府の気候・エネルギー政策の流れをまとめたものであります。
二〇二〇年九月十六日、菅内閣が発足しますが、当時、パリ協定を批准する百八十九か国・地域中百二十二が二〇五〇年排出ゼロを宣言しており、日本も宣言を迫られておりました。
そうした中で、同年十月十三日、日本最大の石炭火力発電事業者であるJERAが、アンモニアを石炭火力で混焼し、将来的に専焼を目指すことを中心にしたJERAゼロエミッション二〇五〇を発表します。すると、その直後の十月二十六日、菅首相は所信表明演説で、二〇五〇年排出ゼロ、カーボンニュートラル宣言を行うわけであります。
この経緯を見れば、菅内閣のカーボンニュートラル宣言はJERAの計画を前提にしたものだと考えることができると思いますが、伊藤環境大臣の御認識伺います。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 御指摘のように、我が国は、二〇二〇年十月二十六日、当時の菅内閣総理大臣が所信表明演説において、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言いたしました。
この宣言は特定の企業の見解を考慮したものではなく、気候変動が一因と考えられる異常気象が世界各地で発生し、地球規模で地球変動対策や脱炭素化を進めることが喫緊の課題であることや、脱炭素による経済成長は世界の潮流であり、もはや環境対策は経済の制約ではなく次の成長の原動力になること、これを踏まえたものと認識してございます。

○山下芳生君 確かに、動機は国際的に気候危機を止めると、そのための宣言だと思うんですが、ただ、資料二を御覧いただきたいんですけど、これは菅首相がカーボンニュートラル宣言を行ったその日に当時の加藤勝信官房長官が記者会見で述べた見解であります。カーボンニュートラル宣言の中の石炭火力発電政策の抜本的な転換ということについて、加藤官房長官は、火力発電は燃焼時にCO2を排出するという従来の発想を抜本的に転換する、まさに化石燃料を燃焼時にCO2を排出しない水素やアンモニアといったカーボンフリー燃料に改質して利用するというふうに宣言、まあ言われています。
つまり、JERAの現行の、つまり既存の石炭火力発電所でのアンモニア混焼、そして専焼を目指す計画が菅政権のカーボンニュートラル宣言の前提とはなかなかおっしゃらないでしょうけど、その中身としてこういうことを盛り込んでカーボンニュートラル宣言がされたというのは、この加藤当時官房長官の発言でもこれは明らかじゃないんでしょうかね。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 先ほど申し上げましたけれども、我が国のカーボンニュートラル宣言については特定の企業の見解を考慮したものではございません。
その上で、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、既存の技術を最大限活用するとともに、イノベーションを創出し、新たな脱炭素技術を社会実装していくことが必要だというふうに考えております。政府全体ではこうした大きな方向性に基づいて、現在、GX推進戦略等に基づく取組を進めてございます。
環境省としても、地域、暮らしといった需要面での、需要側での脱炭素化に向けた取組を中心に、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて着実に取り組んでまいりたいと考えております。

○山下芳生君 大臣、イノベーションの創出とおっしゃったんですが、資料三を御覧になっていただきたいんですけど、JERAのゼロエミッション二〇五〇の工程表ですけど、このイノベーションは極めて不確かなものだということがこれを見ると分かるんですね。この石炭の代わりに一〇〇%アンモニアを燃焼させる、専焼化で初めてCO2排出ゼロ、ゼロエミッションになるんですが、これは二〇四〇年に専焼化開始を目指すと。二〇五〇年で専焼できない発電所も残るというふうに書いてあります。
つまり、元々JERAの計画は、二〇五〇年までに石炭火力を使い続けるという計画になっている。しかも、LNGよりも多くCO2を排出し、CO2削減にほとんど貢献しない二〇%混焼ですらいまだに実証段階であり、燃料の調達やコストなどの面で大きな課題があって実用化のめどは立っておりません。
伊藤大臣、このJERAのゼロエミッション計画、不確かなものであること、そして、それに依拠したカーボンニュートラル宣言は危ういものであると、こういう認識ありませんか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 三度目の繰り返しになりますけれども、国のカーボンニュートラル宣言は特定の企業の見解を考慮したものではございません。
その上で申し上げれば、石炭火力については、電力の安定供給を大前提に、再生可能エネルギーなどの脱炭素電源を最大限活用する中でできる限り発電比率を引き下げていくことが政府の方針でございます。
これ、二〇三〇年度の削減目標の達成に向けて、電源構成の一%程度を水素、アンモニアで賄うことを目指しており、アンモニア混焼等は移行期の技術として火力発電から排出されるCO2を削減するものでございます。その上で、二〇五〇年のネットゼロに向けて、最終的には専焼化等により脱炭素型の火力に置き換えていくこととしてございます。
環境省としては、脱炭素型の火力として、環境を適切、環境に適切に配慮された形でアンモニア発電等の導入が進んでいくように、経済産業省などの関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと思います。

○山下芳生君 あのね、JERAの発電量というのはもう全電力会社の三割ですよ。そこはもうほとんど石炭火力ですから、大量にCO2を排出しているんです。これがこういう不確かな計画になっている。ゼロエミッションなんてまやかしではないかということを提起しているのに、何か紙に書いたことを読むだけで環境大臣としての役割を果たせるのかなと、私は率直に思いました。
JERAの計画に依拠し続けたらどうなるかというと、いつまでも石炭燃料から脱却できないということなんです。もう最悪のシナリオだと思いますよ。現に、G7の中で石炭火力の期限を切った廃止目標示していないのは日本だけであります。その背景には、こういう日本最大の石炭火力発電事業者の計画に依拠したカーボンニュートラル宣言があるんじゃないかということを提起しております。
私は、前回、イギリスの研究機関、インフルエンスマップが、日本政府の気候、エネルギー政策が鉄鋼や電力などCO2を大量に排出している業界の声に大きく影響されていることを指摘しましたが、この問題はまさにその典型であるということを指摘しておきたいと思います。
次に、しかしながら、今の気候危機の現状はそんなことをやっている場合ではないんじゃないかということを少し議論したいと。
資料四に、気象庁のホームページから、日本の年平均気温の偏差を表すグラフ、それから資料五に同じく世界の年平均気温の偏差を表すグラフを添付いたしました。このグラフですね。気象庁に今日来ていただいておりますけれども、このグラフ、簡潔に御説明いただけますか。

○政府参考人(室井ちあし君) お答え申し上げます。
世界の平均気温及び日本の平均気温はいずれも年々の変動を繰り返しながら上昇しており、世界の平均気温は百年当たり〇・七六度、日本の平均気温は百年当たり一・三五度の割合で上昇をしております。
近年においては、世界では一九九〇年代半ば以降、日本では一九九〇年代以降高温となる年が多くなっております。特に二〇二三年の気温につきましては、世界と日本の平均気温はいずれも統計開始以降最も高い値となりました。

○山下芳生君 ちょっと、せっかく来ていただいているので、このグラフの見方について伺いたいんですけどね。
ここにある、偏差という言葉があるんですね、偏差。このグラフは、日本も世界も一九九一年から二〇二〇年の平均を基準値として、そこからどれだけ上振れしているかを偏差としていると思います。しかし、これは十年ごとにこの単位が変わるわけですね。ずっと遡っていくと一九〇〇年頃まで遡れると思うんですが、そうやってこの基準値が変わっていく間でも偏差というのが取られているとすると、その偏差の大きさが、今回、二〇二三年の偏差よりも大きく上振れしているような年は過去あったんでしょうか。

○政府参考人(室井ちあし君) お答え申し上げます。
先ほど二〇二三年の気温は統計開始以降最も高い値となりましたと申し上げましたけれども、世界では一八九一年、日本では一八九八年から統計を取っておりまして、平年値につきましても、過去遡って取り直しますと、その上昇傾向を見ることは可能というふうに考えております。

○山下芳生君 この上昇傾向の上振れが、二〇二三年を超えて上振れをしているような過去のデータってあるんでしょうかね。さっき電話でちょっと聞いたら、ないというふうにお答えいただいたんですけど。

○政府参考人(室井ちあし君) 過去よりも上振れしているデータというのを明確に示すことは非常に困難ではございますけれども、この一九九一年、あるいはその十年前、二十年前といったスケールで申し上げますと上昇しておりますので、二〇二三年は暑い年だったと言えるというふうに思います。

○山下芳生君 あれ。ちょっと事前に担当者の方から聞いたところ、このずっと遡って、基準値が変わっていくわけですけど、段々上がるわけですけれども、しかし、この基準値よりも上振れする、幅がね、こんなに上がった年はないと思われますという答えでしたので、そういうことにしておきます。多分それが正解なんだと思います。
つまり、これは、グラフ見てください。平均気温ですから、自然現象ですから上下するわけですね、当然。しかし、上下しながら、段々上昇傾向としては上に行っている。この赤線がその上昇傾向ですけれども、この赤線よりも日本でも世界でも二〇二三年は飛び抜けて上がっているわけですね。これが偏差だと思いますが、この上がり方も過去最高だったというふうにこのグラフ見れば分かると思うんですよね。
これは、大臣にお聞きしますけれども、この次元の違う気温上昇が昨年起こったと、これについてどう御認識されていますか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) まさに、国連の事務総長がおっしゃったように、気候危機、彼がおっしゃったように、地球爆発という表現、地球沸騰という表現が正しいかどうか分かりませんけれども、大変な危機だと思いますし、我々は心して全力を挙げてこの気候危機、気候変動を、もっと言えばその気温上昇を抑えるための努力をしていく必要があるというふうに思っております。

○山下芳生君 だったら石炭火力を早くやめた方がいいと思いますが、次に行きたいと思います。
資料六に、この二〇二三年の異常な気温上昇はなぜ起こるのかということを世界の科学者が探求いたしました。世界の科学者たちの予想を超える昨年は気温上昇だった。そのうちの一人、米国航空宇宙局、NASAのゴダード宇宙研究所の所長、ギャビン・シュミット氏が英国の科学雑誌ネイチャー三月二十一日号に寄せた気候モデルでは二〇二三年の猛暑の異常を説明できない、私たちは未知の領域にいる可能性があると題する論文を紹介しました。
赤線引いておりますけれども、シュミット氏は、この突然の暑さの急増は、過去の観測に基づく統計的気候モデルによる予測を大幅に上回っています、この食い違いには多くの理由が提唱されていますが、今のところ、それらの組合せは、私たちの理論と起こったことを調和させることができませんでしたとしております。
非常に重要な指摘だと思いますが、この論文の二枚目から三枚目にかけて、科学者たちは、ラニーニャ現象、エルニーニョ現象の影響、二〇二二年のトンガでの火山噴火の影響、二〇二〇年の海運業の硫黄排出量削減義務付けの影響などなど、様々な要因について分析し、気温上昇を予測しておりますが、それらの組合せでは二〇二三年の気温上昇を説明することができないと述べているんですね。
伊藤大臣、これまでの気候モデルでは説明できない気温上昇が起こっていると。どう受け止められますか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) この御指摘のシュミット博士の論文、和訳読ませていただきました。
気候変動の要因というのは、シュミット博士が指摘する以前から複数あると言われております。そして、その複数が、まあ重回帰分析という手法が正しいかどうか分かりませんけど、どれぐらいの重要度を置いて、またその複合的なことも含めて起きているかということは一〇〇%まだ知見が集積されていないと思います。
いずれにいたしましても、今我々は、ティッピングポイントというか、これから十年間で本当に全力を挙げてこの地球の温暖化を防ぐための政策を実行していかないと、本当に危機的な状況になって、地球における生態系、人間も生態系の一部でありますので、生態系が持続不可能になれば、人間の生存も持続不可能になります。そういう状況にあるというふうに大変な危機意識を持っております。

○山下芳生君 大変な危機意識という点はいいと思うんですね。
もう一つ、論文で、最後にこのシュミットさんは、先ほど紹介したような検討を行った上で、三枚目の赤線を引いた文でこう述べております。これは、地球の温暖化が、科学者の予想よりもはるかに早く、気候システムの仕組みを根本的に変えていることを示唆しているのかもしれないと。
大臣、深刻度が、もう既に地球のシステムが根本的に変わっているかもしれない、これはちょっと今までの認識では駄目だということだと思うんですね。このシステムがもう変わっているかもしれないという指摘に対して、これ深刻に受け止めるべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 博士がおっしゃられている、システムが変わっているかもしれないという、そのシステムがどこの部分のどこまで指しているかによりますけれども、いずれにいたしましても、今までの気候変動に対する学説だけでは説明し切れない状況が起きていると思いますし、それから、さっきティッピングポイントという言葉も使いましたけれども、我々がやっぱりクリティカルな十年間に本気で気候変動対策をしなければ取り返しの付かないことになると、そのような認識だと私は思います。

○山下芳生君 あと僅かな時間ですけど、大臣からティッピングポイントという言葉が出ましたので。
そのとおりなんですね。科学者たちが警告しているのは、地球全体の環境が急激にかつ大規模に不可逆的な変化をもたらす現象、すなわち地球そのものが制御できない状況になっていくティッピングポイントを超える危険性があるということであります。
IPCCは、二〇二三年の第六次評価報告書で、温暖化が更に進むと、ティッピングポイントに達したときに、気候システムの突然の及び、又は不可逆的な変化が発生する可能性と影響が増大すると警告しております。
資料七には、このティッピングポイントを引き起こす可能性がある要素、ティッピングエレメントについて、科学雑誌サイエンス、二〇二二年九月に発表された論文を基に説明した図を添付しております。ちょっと難しい図なんです、私も理解するのに苦労したんですけれども。
この図にあるように、この論文は、グリーンランドの氷床融解あるいは西部南極氷床融解など十六のティッピングエレメントを掲げて、それぞれの現象が転換点、すなわち徐々に進行している現象が一気に急速に進行するという転換点に達する気温上昇の閾値について評価しております。このいろんな事象ごとに閾値の予測がされているんですが、場合によっては既に閾値を超えちゃっている現象ももうあるんじゃないかということが指摘されております。
そして、その具体的に超えているんではないかと指摘されているのがグリーンランドの氷床融解なんです。グリーンランドが氷床融解しますと、大量の淡水が海に流れ込む、その影響で地球の海洋全体の大循環が支障を来すということも言われております。
グリーンランド近郊の大西洋の北の方ですね、ここで冷たく冷やされた海水が凍るとかいうことになると、凍ることによって塩分濃度が濃くなる、冷やされることによって塩分濃度の濃い、そして冷たい、重い海水がずっと下の方に沈んでいく、それがずっと北から南に移動する、その代わりに、表層では温かい海温の海流が南から北へと上がってくる。したがって、イギリスは緯度は北海道よりも高いけれども温暖だというのは、そういう現象があるからだと説明されております。
ところが、氷がグリーンランドで解けるようになってくると、逆にこの海水が薄められて塩分が低くなる、温度も高くなる。そうすると、沈み込みが起こらなくなって、南極でも同じようなことが起こる。これ、大循環、南北循環というそうですけれども、千年に一回ぐるっと回るような大きな循環だそうですけれども、この二つのポンプが、北と南のポンプが弱くなる、あるいは止まってしまう、こういうことになると、この大循環が弱まる、止まってしまうこともあり得ると。そうなると、それによって非常に大きな気象への、地球環境への影響が起こり得るということを警告しているわけですね。
ティッピングエレメント一つ一つが合流して大変な事象になるということですが、もう時間参りました。こういうことが今起こっているのではないか、そしてまた、さっきのシュミットさんの話では、もうそういうシステムが変わってしまったんじゃないか、そこをちゃんと考えて、私はやれるべきことは全部やらないと今いけないと思います。石炭火力はもうその一つですけれども、やれるべきことを全部やる必要があると。大臣の御認識伺って、終わります。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 御指摘を踏まえて、環境省としてやるべきことをしっかりやりたいと、緊迫感、スピード感を持って進めてまいりたいと、そういうふうに思います。

○山下芳生君 終わります。