○山下芳生君 今日は、私の都合で質問の順序を変えていただきまして、維教さん、民主さんにはお礼を申し上げたいと思います。また、委員の皆様にも御理解ありがとうございます。
今日は、気候変動対策について質問をいたします。
昨年十一月から十二月にかけて行われたCOP28では、初めて化石燃料からの脱却が合意されました。しかし、日本政府は石炭火力に固執し、G7で唯一石炭火力の廃止期限を設けていない国となっております。こうした状況に国の内外から批判が強まっておりますし、同時に、同じ資本主義国、先進国なのにどうして日本だけがいつまでも石炭火力にしがみつくのかという疑問も広がっております。
そこで、資料一に、機関投資家に情報提供している英国の非営利組織の研究機関、インフルエンスマップが二〇二〇年、日本の五十の主要な経済業界団体を選出し、そのロビー活動などを検証して、気候変動、エネルギー政策への関与の度合いをそれぞれ数値化して評価した調査の報告書を一部ですが添付いたしました。
この調査の結果、国内総生産、GDPの一割に満たないごく一部の業界が、日本の気候変動・エネルギー政策に大きな影響を与えていることが分かりました。パリ協定と整合する政策に後ろ向きの態度を取っている鉄鋼、電力、自動車、セメント、電気機器、石油化学、石炭関連、この七つの産業が業界団体を通じて国の政策に働きかけています、強く働きかけていると。一方、GDPでは七割以上を占める金融や小売、電子機器などの業界は、パリ協定と整合する政策に前向きですが、政策立案への働きかけが弱いと指摘されました。
資料二枚目に、このインフルエンスマップの団体評価の例が示されています。見ていただいたら分かるように、各団体の姿勢にプラス二からマイナス二のスコアが付けられる。気候変動対策に積極的だとプラスになるわけですね。
気候変動政策に対する否定的な姿勢の例として経団連が挙げられて、IPCCが推進する気候変動対策の必要性に反対している、二度Cに沿った目標設定に反対しているということをホームページや提言から評価し、スコアはマイナス〇・八九と低い評価になっております。
一方、気候変動政策に対する肯定的な姿勢の例としてその下に、JCLP、日本気候リーダーズ・パートナーシップという、気候変動に対して危機的意識を持ち、国会でもロビー活動をされている経済人の組織が挙げられています。ここでは、一・五度目標に沿った温室効果ガス排出削減対策の必要性を支持しているということがホームページや意見書から見られるので、スコアは一・〇八と高い評価になっております。
このインフルエンスマップの報告書には、気候変動対策に後ろ向きの七つの産業が日本最大の経済団体である経団連の中で大きな影響力を持っている点を指摘し、日本のエネルギー政策の決定に経団連が重要な役割を果たしているとしました。そして、結果的に、経団連はそれら特定の会員の声を優先的に聞き入れていると見られ、それが大部分の会員の意見を反映しているとは考え難いというふうに報告をしております。つまり、経団連に参加している大多数の企業の利益ではなくて、気候変動対策に後ろ向きな一部の企業の意向が経団連を通じて政府の政策にも反映されているのではないかということを科学的な調査分析で明らかにしているわけです。
伊藤環境大臣、経団連はいろんな提言されていますけど、決してその企業全体の意見が反映されたり経済人全体の意見が反映されたりしているわけではない、とりわけ気候変動対策についてはこういう偏った意見が集約され、政府に持ち込まれているというシンクタンクの分析による結果ですが、どう受け止められますか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 今御指摘のあった英国の民間団体、インフルエンスマップが日本における気候変動・エネルギー政策に対する企業、経済団体の関与や影響に関するレポートを公表していることは承知しております。今、資料も拝見しました。
海外の民間シンクタンクの調査内容に関して政府として個別にコメントすることは差し控えたいと思います。この点だけでいいですか、はい。
○山下芳生君 いやいや、それでは余りにも議論が深まらないんで、それをどうやはり受け止めるのかと聞いたわけですから、まあ、言います、次行きますので、また聞いて答えていただきたいと思います。
資料三を御覧になっていただきたいんですが、これ、インフルエンスマップが団体の関与と働きかけの強度を分析し、数値化した、五十の団体の一覧であります。
これ、見ていただいたら分かるように、電気事業連合会、日本鉄鋼連盟、日本自動車工業会、セメント協会、日本電機工業会、石油連盟、石炭エネルギーセンター、ここまでが気候変動政策への関与、働きかけの強度が、まあいろいろ分析して数値化しているので、十以上の、強く政府に働きかけている業界団体だとされております。
私は、ちょっと大臣、角度を変えて聞きますけれども、なぜこんな国際シンクタンクが、機関投資家に関わるシンクタンクがこういう調査をするのかと。これは、二〇〇六年の国連責任投資原則で、ESG課題と整合した投資が求められているということが提起されたことがあると思います。したがって、機関投資家、各国の機関投資家が、こうしたインフルエンスマップによる、企業や業界団体が政府にどのような働きかけを行っているのか、要するに気候変動対策にプラスかマイナスか、そのことを情報として示していることを投資の際の重要な判断資料にしているということだと思うんですね。
したがって、今のような日本の企業の気候変動対策への後ろ向きな姿勢が改まらなければ、これは国際的な資金が日本に集まらないということにもますますなってくるというふうに思われますが、そういうことを示しているんだという点、大臣、御認識いかがでしょうか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 物事にはいろいろなお考えもあって、委員のようなお考えの方もいらっしゃると思います。
○山下芳生君 いや、ちょっと、国会を軽視しているんですか。私、これ事実に基づいて提案しているんですよ。委員のような考えもあるでは済まないんですよ。大臣として、気候変動に責任を負っている大臣として、こういう調査が行われ、結果は出ている、どう認識するのかを聞いております。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 前段に申し上げましたように、民間のシンクタンクの発表した結果について政府の立場でコメントすることは避けたいと思いますし、それから、いろいろ民間の、複数のシンクタンクがありまして、また違う見解を出しているものとも認識しております。
○山下芳生君 気候危機に一番熱心に取り組まなければならない環境大臣が、そういうこの、データを見て、報告書を見て、そんなの、何というんですかね、もう他人事のような態度でいいのかなと率直に思います。
もう一つ、この七つの業界は口を出しているだけではありません。長年の政権党である自民党に多額の献金を行っております。
資料四は、インフルエンスマップの報告書でも指摘された、排出削減に後ろ向きな、温室効果ガスの排出が多い業界団体のこの五年間の献金額、国民政治協会への献金額をまとめたものであります。自動車工業会が五年で約四億円、日本製鉄連盟は三億円、石油連盟は二億五千万円など、九つの団体で五年で十二億七千万円以上の献金がされております。
また、資料五は、エネルギー起源でCO2排出量が多い五十の、これは業界ではなくて個々の企業の献金額と天下り、天上がりについてまとめたものであります。
網が掛かった企業が献金若しくは天下り、天上がりを行っている企業ですが、五十社中三十社あります。この五十社のエネルギー起源のCO2排出量の合計は二億八千万トンを超え、この五十社だけで日本の排出量の約三割を占めるということになっております。
排出量が最も多い日本製鉄は、献金額が一億三千万円以上と多いだけでなく、天下りを七人受け入れ、天上がりが十人もいます。それから、排出量二位のJFEスチールは、六千五百万円の献金に加え、天下り三人、天上がり五人。排出量三位のENEOSは天上がりを二名出し、献金は石油連盟を通じて行っていると思われます。
政府全体での天上がりの人数は、二〇〇一年に四百二十二人だったものが二〇二二年には二千六百七十四人と、六倍に増えております。その中でも、経産省と国交省、そして環境省の人数が多いんですね。経団連は、更に政策立案の中枢に関与できるように任用枠などによる増員を求め、特に内閣官房や内閣府での増員を求めていることになっております。
大臣、こうした莫大な献金と人的癒着によってCO2大量排出企業の意向が国に反映されていることは明らかではありませんか。これ、お答えください。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 私は見解を異にします。
○山下芳生君 じゃ、なぜ見解を異にするのか、根拠をお示しください。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 私、環境大臣でありますけれども、環境行政を始め政府の政策決定プロセスにおいては、国民の皆様の声に加え、有識者、専門家等、関係者の議論を丁寧に積み重ねた上で政策を決定しており、そういう意味で御指摘は当たらないというふうに考えております。
○山下芳生君 その丁寧な議論の中身がゆがんでいるんじゃないかということをこのシンクタンクが指摘して、献金や天上がり、天下りでもやっぱりそうなっているじゃないのということを指摘しているのに、国民の声を広く聞いてというのは、それはちょっと説得力に欠けると私は思わざるを得ません。
それから、重大なエネルギー政策の中心でありますエネルギー基本計画、先ほどもちょっとやり取りありましたけれども、経済業界団体においては、インフルエンスマップはこう指摘しているんですね。経済業界団体においては、気候変動・エネルギー政策への関与、働きかけは、とりわけエネルギー基本計画やパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略、地球温暖化対策などの主要政策に対してなされているという特徴を示している、さらには、主要な政府の委員会に参加し、こうした政策に影響を与え、政府との協議において詳細にわたり提言を行うという特徴が見られると指摘しております。そして、とりわけ、エネルギー基本計画は、経済産業省によって考案され、日本のエネルギーに関する政府の方針を定めるとともに、エネルギーミックス検討の基礎となるものである、それゆえ本計画は、日本の電力会社やエネルギーを大量消費するセクターによる戦略的政策関与の対象になっていると指摘しております。
資料六、御覧になっていただきたいんですが、そのことを具体的に、これはインフルエンスマップの資料ですが、示しております。
エネルギー基本計画はどう作られるのかということは、エネルギー政策基本法で定められております。総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて、経済産業大臣が案を作成するとなっているんですが、この総合資源エネルギー調査会の総会、この上の方ですね、それから各調査会、分科会、下の方に一覧載せておりますけれども、ここに経団連や先ほどの後ろ向きな業界の代表が多数参加していることが分かります。特に、日本経済団体連合会、経団連は、エネルギー資源、総合資源エネルギー調査会の様々な分科会にもうほとんど全部人を派遣しているわけですね。こういうことになっているわけですが、気候変動対策に後ろ向きな業界の意見がこういう形で、金だけじゃなくて人、しかもこの政策を決定するような会合への参加というところで大きく反映されているというのはもう明らかじゃないですか。
この点、いかがでしょうか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 私は経済産業大臣でありませんので、その件について直接のコメントは差し控えたいと思います。
○山下芳生君 経済産業大臣として聞いているんじゃないことはもちろん当然なんです。
でも、エネルギーミックスで原発をどうするか、石炭火力をどうするか、逆に太陽光、風力、再生可能エネルギーをどのぐらいの比重にするかというのが決まっていくわけですよね。地球温暖化、気候変動で一番大事なのは、このエネルギー由来のCO2をいかに抑えるかだというのはもう常識じゃないですか。そこを一番決める根本にあるエネルギー基本計画を決める舞台で、CO2を大量に排出している、そういう業界の団体がこういうふうに配置されてですよ、その基本政策を決める上で重要な役割というかウエートを占めた活動をしているということはこれを見ただけで一目瞭然だと思うんですね。
逆にですよ、もう一つ紹介しますけど、資料七に、これ先ほども出てきたJCLP、日本気候リーダーズ・パートナーシップという大企業の経営トップなんかも参加しているそういう団体で、国会にも度々来られて、気候危機対策で国会が役割を果たしてほしいということを要望されています。
これ見ますと、この要望書は、例えば、二〇三五年までの電力部門の脱炭素化、それは日本の競争力の維持につながりますと。経済人から見て、脱炭素化が競争力の向上につながるんだと。
それから二番目、再エネ最優先での最大限導入加速と石炭燃料への依存の低減、これも日本の競争力の維持に必須ですというふうに、脱石炭、化石燃料からの脱却、再生エネルギーへの転換が日本の経済の発展にも資するんだということをもう一貫してもうぶれずにおっしゃっています。
こういう方々の声は、先ほどのインフルエンスマップでは余り評価されて、声が大きくないというふうになっているんですけれども、私はこの声こそ環境大臣が政府に、まあ政府にというか、政府の中でしっかり主張すべき要求だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) お答え申し上げます。
御指摘のありました日本気候リーダーズ・パートナーシップ、JCLP、これは気候変動対策に積極的な企業グループであり、二〇〇九年の発足以来、ビジネスの立場から脱炭素の取組を先導されていると承知しております。私自身、環境大臣として、昨年末に開催されたJCLP主催の気候危機に取り組む国会議員と企業の交流会に出席し、COP28の交渉結果について、日本政府代表団として、団長として報告を行ったところでございます。
委員御指摘の二〇二三年の意見書については、電力部門の脱炭素化、再エネの最大限の導入拡大など、いずれも脱炭素、産業競争力強化、エネルギーの安定供給を同時に実現するための方向性として重要なものというふうに認識しております。
引き続き、このJCLPを始めとした企業関係者等の様々な意見、これをしっかり伺いながら、ネットゼロの実現に向けて、関係省庁と連携し、国内外の気候変動対策を加速してまいりたいと、そのように考えております。
○山下芳生君 そのとおりなんですね。非常に大事な意見で、これこそ政策に反映させるべき意見だという点は一致するんですが、この意見を反映させようと、政策に、思ったら、もっと別の逆行するような意見がもっとでっかい声で集まっていると。それと対抗することなしにこれが日の目を見ることはないんですよ、実際の力関係からして。
そのことは、今回、インフルエンスマップによって、科学的な検証、調査によって明らかになったんですから、私は、環境大臣であるならば、この声を代表するために、いかにしてゆがんだ声を批判するか、指摘するか、間違いだということを堂々と言う必要があるということを指摘して、終わります。