○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
有機フッ素化合物、PFASについて質問します。
PFASによる環境汚染は、米軍の横田、嘉手納基地の周辺、ダイキン工業や三井・ケマーズフロロプロダクツの周辺、会津若松や四日市の半導体企業の周辺並びに吉備中央や神戸の産廃処分場の周辺など、全国各地に広がっております。
基地周辺や製造企業周辺の住民あるいは元従業員からは、PFASの高い血中濃度が検出されております。
資料一に示しましたが、日本フルオロケミカルプロダクト協議会によりますと、PFASは、図の緑色の部分、フロンガス、フッ素樹脂、フッ素ゴムなどを含めて一万種類以上あります。しかし、日本では、この三角のてっぺん、赤い部分のPFOA、PFAS、PFOA、PFOS、それからペルフルオロヘキサンスルホン酸だけしか規制されておりません。しかし、世界ではそうではありません。
資料二は、永遠の汚染プロジェクトが発表したイギリスとEU全体のPFASによる汚染の規模を明らかにした地図であります。この赤い点は、十ナノグラム・パー・リットル以上の濃度が測定された約一万七千か所。青い点は、消火剤が使用されたなど、汚染の可能性が高いところであります。汚染は、ヨーロッパ全土の約二万三千か所に及んでおります。
永遠の汚染プロジェクトというのは、欧州の十六の報道機関が国境を越えて、分野を超えて協力している組織であります。こうした調査でPFAS汚染がヨーロッパ全土に広がっていることが明らかになり、欧州化学品庁は、昨年二月、PFAS規制案を公表しました。
食品安全委員会に聞きます。この欧州化学品庁の規制案では、PFAS規制の対象範囲、人と環境への影響、効果についてどうなっていますか。
○政府参考人(中裕伸君) お答え申し上げます。
まず、委員御指摘いただきました食品安全委員会のホームページ上の食品安全関係情報データベース、ここに掲載している情報につきましては、食品安全委員会が海外機関等の公表情報をできる限り原文に忠実に和訳、要約しているものであり、公表に際しては、食品安全委員会が確認、推薦しているものではない旨を注意事項として明示しているところでございます。
したがって、その内容につきましては、食品安全委員会の見解と異なる、あるいはそもそも所管しないものも含まれ得るものでございます。この点をまず確認させていただいた上で、委員御指摘いただきました欧州化学品庁、ECHAのPFAS規制案の翻訳の該当部分について読み上げさせていただきます。
本規制の対象となる全てのPFAS及び、又はそれらの分解生成物の主な懸念は、非常に高い残留性で、REACH規則の附属書十三による非常に残留性が高い、ベリーパーシステントという基準をはるかに超えていることである、PFASとその分解生成物は、ほかのどの合成化学物質よりも長く環境中に残留する可能性がある、少し飛ばしまして、環境にあるPFASの蓄積量が増加する過程は不可逆的であり、人及び環境への暴露を伴うため、PFASの排出を最小限に抑えることが必要であると記載されております。
以上でございます。
○山下芳生君 今述べていただいたように、欧州では一万種類以上あるPFAS全体を禁止する動きになっております。それはなぜなら、そういう、今、残留性、不可逆性などがあるからだということなんですが。
更に食品安全委員会に聞きますが、この欧州化学品庁の規制案では一万種類以上ある全てのPFASを禁止することになるわけで、これ相当広い範囲で影響があると思われますが、どういうところで使用されている、あるいは用途として使われているPFASが対象になるんでしょうか。
○政府参考人(中裕伸君) お答え申し上げます。
お尋ねのECHAの規制案における、ECHAの規制案においては、PFASの使用分野と用途についても記載がございまして、先ほど申し上げました和訳においては、繊維製品、内装、皮革、衣料、カーペット、食品接触材料及びその包装、金属メッキ及び金属製品の製造、化粧品、消費者用製品類、洗浄剤等、スキーワックス、フッ素化ガスの応用、医療機器、輸送、電子機器と半導体、エネルギー分野、建築材料、潤滑剤、石油と鉱業の十四分野と記載されております。
以上でございます。
○山下芳生君 今読み上げられた欧州食品庁のですね、あっ、欧州化学品庁の規制案は資料の三に載せております。一番最後のところに今の十四分野が載っています。
非常に広い分野で使われているPFASを全体を禁止しようということなんですが、続いて食品安全委員会に聞きますが、それでは日本のPFAS評価書案ではPFASの用途についてどのように記載されていますか。
○政府参考人(中裕伸君) お答え申し上げます。
PFASの用途について、食品安全委員会が取りまとめ、本年二月二日からパブリックコメントを実施した評価書案におきましては、OECDの報告書等から引用し、幾つかの化学的因子により撥水性及び撥油性並びに物理的及び化学的な安定性を併せ持ち、溶剤、界面活性剤、繊維、革、紙、プラスチック等の表面処理剤、イオン交換膜、潤滑剤、泡消火薬剤、半導体原料、フッ素ポリマー加工助剤等、幅広い用途で使用されていると記載しております。
○山下芳生君 今お答えいただいたように、日本におけるPFASの用途もヨーロッパと変わらない。繊維、革などの表面処理、潤滑剤、半導体原料など、日本でも広い分野でPFASが使用されているということであります。
しかし、欧州では広い用途で使用されているPFASの全てを禁止する規制案が提案されているのに対し、日本では一万種類以上あるPFASのうち製造、使用の禁止は、先ほど示した三角の一番上、三種類のみとなっているわけであります。
経産省に聞きます。今、日本国内で汚染が深刻になっているPFOA、PFOSを製造、販売していた企業はどこですか。
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
PFOSにつきましては二〇一〇年に、PFOAにつきましては二〇二一年に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく第一種特定化学物質として指定しており、製造が原則禁止されているところでございます。
PFOS、PFOAの製造、輸入に関して、PFOAにつきましては一般化学物質としての届出が過去行われておりましたが、化審法に基づく届出を行った個別の事業者名につきましては、その公表により事業者の競争上の地位を損なうおそれがあるため、公表していないところでございます。
○山下芳生君 それでは別の角度から聞きますが、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の二〇一二年のフッ素マテリアルフローでは各段階での主要な企業が掲載されておりますが、経産省、どのような企業が掲載されていますか。
○政府参考人(定光裕樹君) お答え申し上げます。
委員御指摘の鉱物資源マテリアルフロー二〇一三におきましては、PFASを生産している企業としての記載は、そのものはございませんけれども、例えばPFASを含むより広い概念であるフルオロカーボン類については、その生産企業の主な企業として旭硝子、ダイキン工業、三井・デュポンフロロケミカルが記載されてございます。
○山下芳生君 資料四に今読み上げられた分を、もう少したくさんの企業名が載っておりますけれども、掲載しております。
それで、経産省に伺いますが、先ほど食品安全委員会が答弁された日本におけるPFASの用途である表面処理剤、半導体原料、フッ素ポリマー加工剤などを現在製造、使用している企業はどこでしょうか。
○政府参考人(浦田秀行君) お答え申し上げます。
重ねてのお答えになりますけれども、JOGMECが過去公表している鉱物資源マテリアルフロー二〇一三によりますと、PFASを含むフルオロカーボン類の国内主要生産企業は、旭硝子、ダイキン工業、三井・デュポンフロロケミカルなどと記載されているところでございます。
○山下芳生君 極めて狭いところしか答えられないんで、私の事務所で独自に調査した資料を資料五に添付いたしました。資料五からA4で都合八ページにわたって企業名が掲載しております。
これはPFASを製造、販売している日本フルオロケミカルプロダクト協議会、それからフルオロカーボンを普及している協会、さらに、フッ素樹脂を製造、販売している工業会、そしてPFASを含む化学品を製造、流通している化学工業協会、これらの業界団体に参加する個々の企業の資料を基に、PFASの製造拠点と立地している都道府県、自治体を明らかにいたしました。個々の企業の公表資料を全部一ページ一ページ見ながら、今明らかになっている分だけでもこれだけあるという資料です。それからまた、PFASを使用する半導体販売業界及び半導体製造装置協会に参加する主な企業の製造拠点や立地自治体も記載いたしました。
この結果、私たち、まあまあ、私の事務所で手作業で調べるだけですから、もちろん全部調べ尽くせてはいません。しかし、今判明しているだけで、日本フルオロケミカルプロダクト協議会で十七都府県、二十八自治体で、それからフルオロカーボン協会で十五都県、二十自治体で、弗素樹脂工業会で二十五都府県、四十一体で、四十一自治体で、それから化学工業協会で三十五都道府県、百七十二自治体で製造あるいは使用されているということが明らかになりました。
それから、半導体関連も合わせますと、四十三都道府県、約二百の自治体でPFASが製造されたり使用されたりしていることが明らかになりました。北は北海道から南は鹿児島までの全国でPFASが製造、使用されているということであります。
そこで、伊藤大臣に伺いますが、日本全国でPFAS汚染による不安が高まり、国際的にもPFASの規制が強化されようとしております。国民の安全、安心を守るために、PFASの製造、販売、使用をしている、私が今示した企業の生産、使用から廃棄までの適正管理について調査する必要があるのではないか、そして、不適正な管理になっているところがあれば必要な対策を取るよう働きかける必要がある、それは国の責任ではないかと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 先ほど食品安全委員会が答弁したとおりでございますが、欧州においてPFAS全体の製造、使用等を禁止する規制案が提案されております。そしてまた、現在様々な議論がなされているものと承知しております。
我が国の化学物質管理については、PFASに限らず、化学物質審査規制法等の関係法令に基づき、そのリスクに応じた規制が講じられているところでございまして、企業に対しても関係法令に基づく適切な対応を求めてきたところでございます。
現時点において、今回のEUにおける規制案を受けて特別な対応を行うことは考えてございません。
○山下芳生君 そういうことでいいのかなということが日本の科学者からも指摘されております。
資料六には、WHOのPFASにおける発がん性の評価が先日二ランクアップしまして、一番高いランクに位置付けられました。ここに、この評価に関わった日本の二人の研究者の方から、今大臣がおっしゃったような日本のPFASに対する行政の姿勢に対して厳しい指摘がされております。日本で実施した疫学調査の少なさが欧米に比べて際立った、国内での疫学調査を早急に実施する必要がある。それから、一万種類を超えるPFASには言及しないことは保守的で、今後のことを一切見据えていない、次の健康被害と環境汚染を未然に防止することが重要だと。
これがWHOでPFASの発がん性の研究に、評価に携わった日本人の研究者の方の率直な日本の行政に対する批判です。どう受け止めますか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 今、いろいろな御意見も伺ったことがございますけれども、そのことを含めて、今後も、諸外国におけるPFASの規制動向や、POPsですか、POPsの条約での議論等も踏まえて、我が国としても対応をしっかり検討してまいりたいと思います。
○山下芳生君 しっかり対応したいと言うんですが、資料七を御覧いただきたいと思います。
これは、日本経団連が先ほどのEUにおけるPFAS規制案に対してコメントを発表したものであります。
ずうっとありますが、一番最後に、「結論」というところに、規制の対象は、経済、社会への影響を考慮しつつ、科学的根拠に基づくリスク評価によって、人の健康又は環境への影響が認められるものに限定するべきであるとして、これだけ読みますと、科学的な影響があるものに限定すべきだというふうに、そう読めるんですが、しかしながら、このやはり化学物質による人の健康への影響を予防するといったような、予防原則というのがありますね。健康の影響がある、おそれがある物質については未然に防止する。そうでなければ、もう非常に大量に出回る可能性のある化学物質だから、それが有害だということが明らかになってから規制したのではもう間に合わないということもあると。したがって、EUではあらかじめ、こういう広い用途で使われている一万種類以上のPFASではありますけれども、今から規制しようじゃないかという検討がされているわけです。
ところが、それに、何といいますか、あらがうようなコメントを日本経団連がしております。経産省も、私、コメント見たら、全部で今現在五千六百四十二件、EUの規制案に対するコメントが付いているんですけれども、そのうち九百四十二件が日本の企業や業界団体から、今言ったような、もう規制は余りせんといてくれというコメントになっているんですね。その中には、経産省のコメントも同じ趣旨で入っております。
ですから、世界の動きを見ながらというように大臣おっしゃるけど、実際に業界団体あるいは経産省は、それに逆行するような圧力を現にこれだけ掛けているということも明らかになった。私は、そういう圧力に屈してはならないと思うんですが。
もう一遍、食品安全委員会に聞きますが、EUの規制案では、PFASの社会的コスト、全PFASの禁止を遅らせたらコスト負担が逆にどうなるかということを明記していると思いますが、そこを紹介してください。
○政府参考人(中裕伸君) 申し訳ございません。そこの部分につきましては、私どもちょっと通告をいただいておりませんでして、申し訳ございません。失礼いたします。
○山下芳生君 それじゃ、また資料の三に戻っていただいて、その部分、大事なことが書いてあるんですね。最終的に、何もしないことによる社会的コストは、PFASの使用を禁止することによるコストを常に上回ると、PFAS、PFASsの禁止を遅らせることは、健康や環境への影響からコスト負担を将来世代に転嫁することになると明確に書かれております。
要するに、今禁止することによるコストよりも、禁止しないことによる将来世代におけるコストの負担の方が、これがはるかに大きくなるおそれがあるということで、今規制しようじゃないかという動きになっているわけですね。これが世界の流れであります。その流れと逆行する動き、まあ残念ながら力が働いていると。
私、今、政治と金の問題、非常に国会の大テーマになっておりますけれども、実は、これも関係ないと思い、関係していると思います。
住友化学の会長でもある日本経団連の会長が、二〇二二年、自民党の政治資金団体、国民政治協会に五千万円の政治献金をしております。こういうことが経団連のコメントにも影響しているんじゃないかというふうに思うんですが、住友化学の会長ですからね、もろ業界ですよ。
人の健康又は環境への影響が認められるPFASの政策をゆがめるような企業・団体献金は禁止すべきだと思いますが、大臣、いかがですか、この点。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 環境省としては、人の命を守るという観点から、このPFASに関する総合研究、これを進めております。十四件の応募がありまして、専門家の御意見を踏まえ、環境省において三つの課題を採択し、三月十八日に報道発表しているところでございます。
これは、PFASについては、どの程度の量が体に入ると健康への影響が出るのか、これ今、まだ十分な知見がないわけですね。この研究事業によりPFASの有害性に関する知見を高めてまいりたいと思いますし、これらの研究成果やこれ以外の科学的知見も踏まえて、国民の不安払拭に向けて確かな科学的知見に基づくPFAS対策を進めていきたいと、そのように考えております。
○山下芳生君 時間が参りました。
私が調べた事業所の所在する都道府県、自治体をプロットすれば、恐らく全国こういう地図になるわけですね。同じですよ。片やそれを全部禁止しようとする、片やそれを野放しにしようとする。それで本当に国民の安全守れるのか、健康守れるのか、そのことに政治と金の関係が作用しているんじゃないかという疑いがあるということを指摘して、終わります。