日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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「万博中止を カジノと一体 税金投入」 「首相も『統一教会広告塔』」 岸田首相を追及

参議院予算委員会 2023.12.8
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(写真)万博とカジノの関連性をパネルを示し質問する山下芳生議員=8日、参院予算委

万博中止を カジノと一体 税金投入 「インフラを共有」と指摘 岸田首相「担当大臣に質問を」

「カジノのための万博であり、カジノのためのインフラ整備だ」―。日本共産党の山下芳生議員は8日の参院予算委員会で、大阪・関西万博がカジノを中核とした統合型リゾート(IR)のインフラ整備のために開かれることを明らかにし、万博もカジノも中止するよう強く要求しました。

2025年に開催予定の万博と、30年秋ごろの開業を目指しているIRは、両方とも大阪市此花(このはな)区の人工島「夢洲(ゆめしま)」が予定地です。山下氏は、夢洲へのアクセスのための鉄道建設や上下水道整備など、万博関連事業の全体像は判明分だけで1・2兆円以上になると指摘。夢洲で万博とカジノが一体となって開発されているとして、その経過に言及しました。

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※(上)観光経済新聞(2018/11/24)(下)政府、大阪府、大阪市各発表および松井一郎氏著書をもとに山下事務所で作成

大阪府・市がIR誘致を決めたのが14年。15年末、安倍晋三首相と菅義偉官房長官、松井一郎知事と橋下徹元市長(いずれも当時)が忘年会を行い、松井氏はその席で「総理にお酒を注ぎながら、一生懸命、(万博の)持論を展開した」「『菅ちゃん、ちょっとまとめてよ』(安倍氏の)この一言で大阪万博が動き出した」と自身の著書で振り返っています。松井氏は16年、候補地から外れていた夢洲での万博開催を提案。カジノ誘致とセットで、万博も夢洲に誘致されました。

山下氏は、18年、万博の大阪開催が決定した翌日に米大手カジノ事業者ラスベガス・サンズが発表した祝福メッセージでは、万博とIR計画とは「密接な関係がある」「公共施設やインフラを必然的に共有することになる」と露骨に狙いを語っていると指摘。維新の馬場伸幸代表も9月28日の記者会見で「万博からIRというレールが敷かれていて」「そこは惜しみなく」「お金を出していく」とまで発言していることをあげ、政府の認識をただしました。

岸田文雄首相は、IR整備は「万博とは別のプロジェクト。関係者のやりとりは承知していない」などと答弁。「万博は西村(康稔経産)大臣と自見(英子国際博覧会担当)大臣が監督を担い、IRは国交相の所管だ。その経緯については担当大臣に確認を」などと答弁から逃げ回りました。山下氏は「担当大臣に聞いてもごまかすばかりだから、総理に聞いている」と返しました。

山下氏は「万博は一時的なイベントだ。万博終了後、パビリオンやリング状の大屋根がどうなるか知っているか」と追及。岸田首相は「基本的に撤去される」と答弁しました。

山下氏は「万博が終わればパビリオンも大屋根もすべて撤去される。一方、カジノは未来永劫(えいごう)、営業を続けることになる。大阪・関西万博のレガシーはカジノということになる」と指摘。「そのために何百億円、何千億円もの税金が使われることを国民が納得するはずはない」と万博中止を迫りました。

岸田首相は、万博もIR計画も「中止を考えてはいない」と答弁しました。

山下氏は万博中止の場合、補償上限額は来年4月までなら大屋根と同程度の349億円だが、それを過ぎれば835億円に倍増すると指摘。「リーダーに求められるのは決断だ。冬山登山には『引き返す 勇気が大切 冬の山』という格言がある。リーダーの優柔不断で、国民を遭難させるようなことがあってはならない」と諭しました。

首相も「統一協会広告塔」と追及

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(写真)質問する山下芳生議員=8日、参院予算委

「統一協会をアピールする広告塔となっている自覚はないのか」―。日本共産党の山下芳生副委員長は、8日衆院予算委員会で質問した塩川鉄也議員とともに、同日の参院予算委員会で、岸田文雄首相とニュート・ギングリッチ元米下院議長らとの面会が統一協会(世界平和統一家庭連合)をアピールするイベントの一つだったと告発し、首相が被害の拡大に加担した責任を追及しました。

岸田首相は自民党政調会長時代の2019年10月4日に自民党本部でギングリッチ氏らと面会。その際に、統一協会の関係団体「天宙平和連合(UPF)ジャパン」の梶栗正義議長が同席していたと報じられています。

山下氏は、統一協会の被害者が「(政治家は)単なる広告塔なんです。賛同するような、誤解を招くような行動は慎んだ方がいい」と声を上げているとして、「首相が統一協会と接点を持ったことで広告塔となり被害者や加害者を増やすことに加担してしまった可能性がある。どう責任を感じているか」と迫りました。

岸田氏は「(面会の)同行者に誰がいたか承知していない」と繰り返すのみ。山下氏は「承知していなくとも、写真を撮られれば、それを利用して信者を集めることに使っているのが統一協会のやり口だ。それに胸を痛められないなら『関係の断絶』などできない」と批判しました。

 

 

 

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
大阪・関西万博について質問します。
日本共産党は八月、「いのち輝く」とうたいながら建設労働者の命が軽んじられているなどの理由から、大阪・関西万博は中止すべきと提言しました。その後、世論も変化し、六八%の国民が万博は不必要と答えるなど、厳しい目が注がれています。物価高騰で国民の多くが生活費を切り詰める中、万博の経費だけが膨らんでいるのですから当然です。
総理は先日、透明性を持って全体像を示せるよう努力すると答弁されました。全体像は明らかになったんでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) おっしゃるように、万博については、国会においても、予算委員会においても様々な議論が行われてきました。
そして、その中で様々な数字がこの議論されたわけでありますが、その中で、この万博準備へのこの国民の理解を得るためには、透明性を持って経費を含む万博の全体像を示していくことが重要であると申し上げました。どのような形で全体像をお示しできるか、内閣官房、また経産省を中心に作業をするよう私からも指示を出しております。できるだけ早急にお示しするようにしたいと考えています。

○山下芳生君 このパネルは、しんぶん赤旗日曜版が政府や大阪府、大阪市などの発表に基づいてまとめた大阪・関西万博の全体像であります。関連事業であります。(資料提示)
大阪府、大阪市は、大阪湾に浮かぶ夢洲で二〇二五年に万博を開催し、二〇三〇年にカジノ、IRを開業しようとしています。航空写真の青い部分が万博会場、赤い線で囲んだ部分がカジノ用地です。万博会場とカジノ用地は隣り合わせとなっております。
この夢洲という場所は、大阪市から出るごみの最終処分場、また建設残土やしゅんせつ土砂の処分場として造られた人工の島です。ここで万博やカジノをやろうとすると、アクセスのための鉄道を通し、駅を造らなければなりません。高速道路も造らなければなりません。上下水道も整備しなければならないし、地盤の液状化対策やPCBなど土壌汚染対策もしなければならない。パネルに示したように、それぞれ何百億円、何千億円と掛かる事業となり、全体像をまとめると、判明しただけでも一・二兆円を超えます。
総理、透明性を持って全体像を示したら、こういうことになるんじゃないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の資料、お示しいただきました。ちょっと内容についてこれ精査しなければ、評価、判断は難しいと思います。
しかし、政府において、先ほど申し上げましたように、全体像をどのような形で示すのか、内閣官房、経産省を中心に検討をさせます。

○山下芳生君 政府が検討、精査しないから、しんぶん赤旗、こういう精査をいたしました。
これ、万博だけを切り出して全体像を示すことはできません。なぜなら、万博とカジノ、IRは一体の開発だからです。ここに造る鉄道も高速道路も上下水道も、これは万博もカジノも両方使われることになるんです。だから、全体で一・二兆円を超えることになるんですよ。これ、私たちのこの試算を総理は否定することはできませんでした。
では、どうして万博とカジノがこの夢洲で一体に開発されることになったのか、大阪のカジノと万博の誘致をめぐる経緯をまとめました。
二〇一四年、大阪府・市がカジノ、IR誘致を夢洲を軸にする方針を決定します。二〇一五年、大阪府が万博誘致構想検討会を設置し、このとき夢洲案はありませんでした。同年末に、当時の安倍首相、菅官房長官、橋下徹元大阪市長、松井一郎大阪府知事が忘年会をやります。この忘年会の席上、松井氏は、総理にお酒を注ぎながら一生懸命万博の持論を展開した、菅ちゃん、ちょっとまとめてよ、安倍氏のこの一言で大阪万博が動き出したと松井さんの著書の中で記されております。
この動き出した大阪万博の会場をどこにするか。検討会では、夢洲はアクセスが悪いとして候補地から外されていました。ところが、二〇一六年、万博基本構想検討会議で松井知事が突如、夢洲会場を提案します。これで万博も夢洲を会場とすることとなり、二〇一七年の立候補表明、二〇一八年の二五年大阪万博決定と続きます。
総理、カジノ誘致とセットで万博も夢洲に誘致した、だからインフラ整備に莫大な事業が掛かることになった。違いますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、IR整備は、これは万博とはこの別のプロジェクトであり、これ引き続き、IR整備法等に基づいて適切に対応していきます。
そして、大阪・関西万博の会場を夢洲とすることについては、これはこの予算委員会でも度々議論があったと思いますが、それまでその開催地について様々な議論がありましたが、二〇一六年に、有識者、大阪府・市、経産省、経済団体等で構成される二〇二五年万博基本構想検討会議において決定されたものであると考えます。
いずれにせよ、万博事業の実施主体である万博協会、それを監督する立場にある経済産業大臣、こうした関係者が協力する形で、費用抑制など会場整備に向けて万全を期していきたいと考えます。

○山下芳生君 総理も言うように、全く別のプロジェクトなんです。全く別のプロジェクトなのに、どちらも同じ夢洲会場となったのはどうしてか、これを問うております。
総理の言われた、紹介された二〇二五年万博基本構想検討会議、私、議事録持ってまいりました。第一回整備等部会の議事録であります。ここで、委員から問われて事務局がこう言っております。夢洲は、要は知事の試案ということで、知事の思いということで、この場所でできないかということでお示しをした場所でございますと、こう言っているんですね。つまり、候補地から外れた夢洲が復活したのは、カジノを推進する松井知事の思いからだったという説明を事務局がしております。
委員長、大阪万博の会場が夢洲に決まった経緯について、透明性を持って分かる資料を当委員会に提出することを求めます。

○委員長(末松信介君) 後刻理事会で協議をいたします。

○山下芳生君 BIE総会で二五年万博の大阪開催が決定した翌日、ある祝福メッセージが発表されました。当時、夢洲のカジノ事業に参入したいと手を挙げていた米大手カジノ事業者、ラスベガス・サンズのメッセージです。
ラスベガス・サンズは二〇二五年大阪・関西万博の開催を心よりお祝い申し上げます、大阪・関西万博は大阪が掲げる統合型リゾート、IR、カジノの計画と密接な関係があります、いずれも建設地は夢洲であり、公共設備やインフラを必然的に共有することになるでしょうと、こういうメッセージですね。カジノ事業者自身が、この万博はカジノ計画と密接な関係があると、公共設備やインフラを必然的に共有することになると語っています。
総理、ここに狙いがあるんじゃないですか。廃棄物の最終処分場だった夢洲、人っ子一人住んでいない夢洲にカジノ事業者だけがやってきても、鉄道や道路、上下水道などを造ることはできません。しかし、夢洲に万博がやってくれば、そうしたインフラを公共事業として整備することができる。だから、多くのカジノ事業者が万博誘致のオフィシャルパートナーとなり、誘致が成功したら祝福メッセージを出すんです。
総理、そう考えるのが自然ではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 関係者のやり取り等については、私は詳細承知しておりませんが、先ほども申し上げたように、IR整備、これは万博とは別のプロジェクトであります。国としては、引き続きIR整備法等に基づいて適切に対応してまいります。
今御指摘のような経緯等について御質問があるんであるならば、是非、経産大臣を始め関係大臣を委員会においてお呼びいただき、今とまた別の委員会等も活用していただき、確認をいただきたいと思います。

○山下芳生君 最高責任者の総理に確認するのが一番なんですよ。
さっき言いましたけど、カジノ事業者が万博とカジノは密接な関係があると自分で言っているんですよ。これはカジノ事業者だけの動機ではありません。大阪府、大阪市も、府民や市民の過半数が反対しているカジノ、民間ギャンブル施設のために、それだけにインフラ整備はできません。しかし、万博のためとなれば、国と一緒に堂々と税金を投入することができる。
先日、日本維新の会の馬場代表が、万博からIRというレールが引かれていて、そこは惜しみなくお金を出していくと述べました。分かりやすい発言です。大阪万博を主導してきた政党の代表が、万博とカジノは一体であることを、レールが引かれていると分かりやすい言葉で語っています。だから、惜しみなくお金を出すと正直に語っています。しかし、万博は一時的なイベントです。開催期間は半年しかありません。
総理は、万博終了後、パビリオンやリング状の大屋根がどうなるか、御存じですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員会でのやり取りを私も聞いておりました。基本的に撤去するということであると承知をしておりますが、様々な議論があるということも、予算委員会のやり取りの中で発言があったと記憶しております。

○山下芳生君 そのとおりなんです。万博が終わったら、この場所ではパビリオンも大屋根も全部撤去することになります。くい一本残してはならないという場所なんですね。
一方、カジノは未来永劫営業を続けることになります。ですから、大阪・関西万博のレガシーはカジノということになります。カジノのための万博であり、カジノのためのインフラ整備ということです。そのために何百億円、何千億円もの税金が使われることを国民が納得するはずがありません。
総理、この万博は今からでも中止すべきではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほども申し上げました、国としては、IRと万博、これは全く別のプロジェクトであります。そして、その関係者のやり取りについては承知しておりません。
そして、万博につきましては西村大臣、自見大臣がこの監督を担うということだと思いますし、IRについては国土交通大臣が所管大臣だと承知をしております。その経緯等につきましては、是非こうした担当大臣に確認をいただきたいと思います。

○山下芳生君 担当大臣に聞いてもごまかすばっかりだから、もう総理に聞いているんですよ。
経済効果ということをよく言われますけれども、IRの利益の大部分は、八割以上はカジノです。すなわち賭博です。国民の懐から巻き上げておいて、経済効果も何もありません。ギャンブル依存症で不幸になる家族を増やすだけなんですね。
BIEの規定によれば、大阪・関西万博を中止した場合の補償上限額は、来年四月十二日までなら三百四十九億円、今なら大屋根の建設費と同額で中止できる。それを過ぎれば八百三十五億円に倍増します。
総理、リーダーに求められるのは決断です。冬山登山には、引き返す勇気が大切、冬の山という格言があります。リーダーの優柔不断で国民を遭難させるようなことがあってはならない。万博もカジノも中止を強く求めます。いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 万博も、そしてカジノも、失礼、IRも、失礼、IR、(発言する者あり)はい、も共に、この法律に従って……

○委員長(末松信介君) 静粛に。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 取り組んでいくべき課題であると認識をしております。共に中止をするということは考えていないと承知をしております。

○山下芳生君 決断ができないなと思います。
最後、総理が自民党政調会長だった二〇一九年十月四日、元米下院議長のギングリッチ氏や統一協会の関係団体UPFジャパンの梶栗正義会長と自民党本部で面会していたと朝日新聞が報じました。
総理と面会した一行は、その翌日、愛知で開催されたUPFの会合、ジャパンサミットに参加しています。そこには、細田博之前衆議院議長の姿もあります。会合には統一協会の韓鶴子総裁も参加し、ギングリッチ氏、梶栗氏、そして山際大志郎元経済再生担当大臣らと並んで写真に収まっています。総理は承知していないと繰り返しますが、それで済むことではありません。
妹が統一協会の信者だった男性は、妹が霊感商法の販売員となり、被害者から加害者になっていくのが一番つらいと語った上で、政治家は単なる広告塔なんです、賛同するような、誤解を招くような行動は慎んだ方がいいと指摘しています。
総理、たとえ承知していなくても、統一協会と接点を持ったことで広告塔となり、被害者あるいは加害者を増やすことに加担してしまった可能性があることについて、どう責任をお感じですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 四年前、私が政調、自民党の政調会長時代に、元米国下院議長であるギングリッチ氏と元外務大臣という立場でお会いをいたしました。そして、その際の同行者にどなたがおられたということは承知していないと申し上げております。そして、その認識は今でも変わっておりません。そして、同じような、同じ時期に行われたほかの行事との関連を印象付けるということは適切ではないと思っています。まず、あくまでも元外務大臣として元米国下院議長と面会をした、そういった趣旨のこの会合であったと認識をしております。

○委員長(末松信介君) 時間が参っております。簡潔に。

○山下芳生君 もう一連の、一体の行事なんですよ。
それで、承知していなくたって、この写真撮られたら、これを利用して信者を集めるということに使っているのが統一協会のやり口ですよ。それに胸を痛められなかったら関係の断絶なんてできない、そのことを申し上げて、終わります。

○委員長(末松信介君) 以上で山下芳生君の質疑は終了いたしました。(拍手)