日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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CO2削減目標強化を 政府の対策遅れ批判

参議院環境委員会 2023.11.16
速記録 資 料 動 画

日本共産党の山下芳生議員は16日、参院環境委員会で、気候危機対策の遅れを指摘し、CO2(二酸化炭素)排出削減目標の強化と石炭火力発電の廃止に踏み出すよう求めました。

山下氏は、IPPC(気候変動に関する政府間パネル)報告書(3月)が、世界各国の2030年削減目標を合わせても「1・5度目標」達成には不足すると警告し、国連事務総長が、先進国に対して①目標強化②2030年までの石炭火力廃止を提起したことを紹介。「排出量世界5位の責任を果たすために日本こそ国連の提起にこたえるべきだ」と迫りました。

伊藤信太郎環境相は「日本の目標は1・5度目標と整合している」と強弁。

山下氏は、「あまりに危機感がない。世界で現状のCO2排出が続けば、気温上昇を1・5度に抑えるために許容される排出量(カーボン・バジェット)は6年で使い切る」と指摘。日本はG7のなかで①2030年削減目標が4割台と最低レベル②石炭火力を使い続ける唯一の国であることを示し、「このままCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)に行くのか」とただしました。

伊藤氏は「各国多様な道筋がある。COP28で国際社会をリードし、わが国の取り組みを発信する」と答弁。

山下氏は、「リードできるはずがない。EU(欧州連合)理事会はCOP28に向けてEU各国の目標引き上げを決めた。日本がリードするというなら目標強化は不可欠だ」と述べました。

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
気候変動について質問します。
伊藤信太郎環境大臣の所信を聞いた十一月七日は異常に暑い日でした。東京都心で気温が二十七・五度を観測し、百年ぶりに十一月の最高気温を更新いたしました。今年の夏の暑さは異常でしたけれども、それが秋まで続いている感じであります。
実は今、こうした個々の異常気象に地球温暖化がどれほど影響しているか定量的に評価するイベントアトリビューションという新しい手法が登場しております。
資料一に、イベントアトリビューションの概念図と実際の例を示しました。高精度の気候モデルとスーパーコンピューターを用いて、温暖化ありの場合と温暖化なしの場合、それぞれの気候をシミュレーションし、両者を比較することで温暖化の影響を定量的に評価するものであります。
〔委員長退席、理事阿達雅志君着席〕
資料二は、東京大学や気象庁気象研究所などの研究チームがこのイベントアトリビューションの手法で分析した結果、今年の七月下旬から八月上旬の記録的な暑さは地球温暖化による気温の底上げがなければ起こり得なかった、発生確率は限りなくゼロに近かったことが明らかになったと報じた記事であります。
資料三は、文科省と気象研究所の報道発表ですが、今年の梅雨期の大雨に対してイベントアトリビューションを実施した結果、地球温暖化によって六月から七月上旬の日本全国の線状降水帯の総数が約一・五倍に増加していたと見積もられました、また、七月九日から十日に発生した九州北部の大雨を対象に地球温暖化の影響を評価したところ、総雨量が約一六%増加していたことが確認されましたとあります。
資料四に、その九州北部の大雨に関する気象庁の画像データなどを紹介しました。発達した線状降水帯が二本同時に九州北部に現れ、福岡県と大分県だけで、死者七名、住家全壊九棟、半壊五棟、床上浸水二百七十四棟など、大きな被害をもたらしたことが分かります。
実は、環境省も、この勢力を増す台風二〇二三、我々はどのようなリスクに直面しているかという分かりやすいパンフレットを発行されています。甚大な被害をもたらした最近の二つの台風を例に、地球温暖化が進行し、世界の平均気温が二度あるいは四度上昇した場合に、この二つの台風にどのような影響をもたらすようになるのか、スーパーコンピューターを活用して予測したものであります。
〔理事阿達雅志君退席、委員長着席〕
資料五に、環境省のパンフレットから、地球温暖化が進行した将来の平成三十年台風二十一号の姿を抜粋しました。この台風二十一号は私の地元大阪を直撃した台風で、関西空港で秒速四十六・五メートルの風速が記録されました。関空では、タンカーが連絡橋に衝突する事故も発生いたしました。高潮で、海に浮かぶ関西空港が浸水いたしました。この台風が、世界平均気温が二度上昇した場合、風速が秒速八・六メートル増加し、高潮で大阪湾の最大潮位が二七・六%上昇することが明らかになったということであります。
資料六には、令和元年東日本台風に関する予測も添付しております。
そこで、伊藤環境大臣、今までの科学的な知見を紹介した上で、地球温暖化は現在既に日本国民の暮らしと命を脅かしています。そして、地球温暖化が進行すれば、国民の命と暮らしが更に大きなリスクにさらされる、そのことが最新の科学によって改めて証明されました。環境大臣として、こうした科学的知見、科学による警告をどのように受け止め、何をなすべきと認識しているのか、見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 御指摘のように、近年、想定を超える大雨や記録的な高温など異常気象が毎年のように発生しております。今年も秋田県などの各地で水害が発生したほか、夏は全国的に記録的な猛暑になるなど、既に気候危機の時代に入ったことを身にしみて感じております。
委員御指摘のイベントアトリビューション研究や将来の気候変動を考慮した台風勢力の予測シミュレーション、IPCC評価報告書などの科学的知見を踏まえますと、気候変動によって既に大雨等の異常気象の強度と頻度が増加しているだけでなく、温暖化が進めば更にその傾向が進むことが予測されています。
このような科学的知見も踏まえ、気候危機に対しては気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を削減する緩和策とともに、気象災害や熱中症などへの対策となる適応策を両輪で進める必要があると考えてございます。

○山下芳生君 今年の三月、IPCCは最新の統合報告書、第六次評価報告書を発表しました。
この報告では、世界の平均気温は産業革命前から既に一・一度上昇しており、二〇三〇年代には一・五度に達する可能性が高いことを御指摘しました。にもかかわらず、現在までに世界各国が示している二〇三〇年排出削減目標では、全部合わせても一・五度目標を達成するには不足していると。今後十年の対策が人類や地球に数千年にわたる影響を与えると警告いたしました。
このIPCCの警告を受けて、国連のグテーレス事務総長は、一・五度目標を達成するため、開いた地獄の扉を閉じるためですね、先進国に対して、一つ、二〇四〇年にできるだけ近い時期にネットゼロ、排出ゼロにする目標の前倒しを行うこと、二つ、二〇三〇年までの石炭火力の廃止を決めること、これを求めました。これは人類と地球の生死に関わる重要な提起だと思います。
その上で、グテーレス事務総長は九月、気候野心サミットを主催し、この提起に応えて排出ゼロ目標の前倒しと石炭火力の廃止に向けて精力的に努力している国々を招き、世界がこの気候危機対策の先行者と実行者から学ぶ機会といたしました。気候野心サミットには、カナダやEU、南アフリカやブラジルなど新興国を含む三十以上の国の代表が参加いたしました。
そこで、伊藤大臣、排出ゼロ目標の強化、石炭火力の廃止、日本はこの二つの基準をクリアできずに、この気候野心サミットに呼ばれませんでした。日本の取組は遅れていると自覚することが大事だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 我が国は、パリ協定の一・五度C目標と整合的な形で、二〇五〇年カーボンニュートラル、二〇三〇年度は四六%削減、さらに五〇%の高みに向けた挑戦を続けるという目標を掲げております。その実現達成に向けて地球温暖化対策計画に基づく対策、施策を進めることで、二〇二一年度には二〇一三年度に比べ約二〇%の削減を達成するなど、各国と比べても着実に実績を積み重ねてきていると考えてございます。
また、石炭火力については、目標達成に向けて、電力の安定供給を大前提に、再生可能エネルギーなどの脱炭素電源を最大限活用する中で、できる限り発電比率を引き下げていく方針でございます。具体的には、二〇三〇年に向けて非効率石炭火力のフェードアウトを確実に、着実に進めるとともに、二〇五〇年に向けては水素、アンモニア、CCUS等の活用により脱炭素型の火力発電に置き換える取組を促進してまいります。

○山下芳生君 危機感が本当に伝わってこないんですね。
世界は、今大臣が言われた二〇三〇年目標を全ての国がやり切ったとしても一・五度の目標達成できないと、これは明らかになったんですよ。だから、もっと目標を前倒しせよ、石炭火力は全廃せよとグテーレスさんは警告し、目標を提起したわけですね。それにかなっていたら、気候野心サミットに岸田さん呼ばれていましたよ。これスケジュールが合わなかったから行かなかったんじゃないですよ、遅れているから呼ばれなかったんですよ。私は、この遅れが地球と人類にとってどれほど深刻な遅れなのかをよく理解する必要があると思います。
大臣は、カーボンバジェットという言葉を御存じでしょうか。ちょっと説明いたしますが、これまでの科学者たちの観測によって、世界の平均気温の上昇と過去に人間の活動によって排出された累積のCO2排出量に比例関係があることが分かっております。つまり、CO2の累積排出量に比例して世界の平均気温は上昇すると、これは科学の知見であります。
二〇二一年の時点で、これまで排出されたCO2の累積量は、約二兆四千六百億トンに上ります。最新の研究では、既に一・一度に上昇しているものを一・五度に抑えるためにあと排出が許容される残りのCO2の利用、これがいわゆるカーボンバジェットですが、これは今年一月の時点で約二千五百億トンしか残っていないということが明らかになりました。つまり、これまで二兆四千六百億トン排出したんだけど、今後排出が許されるのは二千五百億トンしかない、今まで出した分の十分の一しかもう残っていないというのが今の現状であります。
資料七を御覧いただきたいんですが、この残り少ないカーボンバジェットをいかに長もちさせるのかが、人類にとって重要になっております。この資料七は、日本気象協会が作成した世界の温室効果ガス排出量の推移のグラフを示しましたが、この縦軸は年間の温室効果ガスの排出量、横軸が年代であります。一八〇〇年代、産業革命後にCO2排出量が増え、とりわけ第二次大戦後に急上昇していることが分かります。
IPCC第六次統合報告書は、この一・五度に抑えるために、今すぐ急速で大幅な排出削減が必要としております。それを表しているのが、この右側の青い線のカーブなんですね。ここに乗せないと一・五度は達成できないということでありまして、このカーブの描かれ方見ていただきたいんですけれども、温室効果ガスの排出量、初期に急降下させた後に、やがて緩やかに降下する曲線となっております。これは、コストが安く削減効果が大きい対策を初期に採用し大きな削減を実現することによって累積排出量を抑えることができる、長もちすることができるという考えでありますね。まあそうなっている。
で、実際に今どうなっているかと言いますと、この上の赤い線ですね。この赤い線は、二〇二〇年、現在の排出量でずっといっちゃうとこうなるということなんですが、四百トン、億トンの排出レベル、このまま続きますと、資料八に示しましたけれども、あと六年でもう一・五度は超えちゃうということであります。それぐらいの危機になっている。
それから、また元の資料七に戻っていただきたいんですが、重大なのは、パリ協定で各国の二〇三〇年目標が全て達成された場合でも、一・五度の経路に乗るのにはさらに削減が必要と、先ほど言ったことをグラフ化したらこうなると。この破線でこんだけ差がありますよと書いているのがそういうことであります。
だから、グテーレスさんはこういう警告をした、先ほどの警告をしたわけですね。
大臣、もうこれは、先ほどのような悠長な御答弁では、今のこの世界の危機的状況を世界と力を合わせて克服することにはならないと思います。
グテーレス事務総長が述べている、日本が排出ゼロの目標を二〇五〇年からより二〇四〇年に近づけるように前倒しすること、そして石炭火力発電所は廃止することを二〇三〇年までにやることを決断すべきではありませんか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) IPCCの第六次評価報告書では、地球規模モデルの解析において、世界の気温上昇を一・五度Cに抑える経路は、世界全体の温室効果ガスの排出量を二〇一九年の水準から二〇三〇年までに約四三%、二〇三五年までに約六〇%それぞれ削減し、CO2の排出量を二〇五〇年前半には正味ゼロにするものであるということが示されております。
我が国は、このパリ協定の一・五度C目標と整合的な形で二〇五〇年カーボンニュートラル、二〇三〇年度四六%削減、さらに五〇%の高みに向けた挑戦を続けるという目標を掲げております。まずはその実現達成に向けた取組を着実に進めてまいります。また、石炭火力については、電力の安定供給を大前提に再生可能エネルギーなどの脱炭素電源を最大限活用する中で、できる限り発電比率を引き下げていく方針でございます。
その上で、三年ごとの地球温暖化対策計画の見直しの検討や、二〇二五年までの提出が奨励されている次期NDCなどの機会を見据え、IPCCによる科学的知見や排出削減の実績等を踏まえつつ、目標とそれを実現するための対策施策について関係省庁とともに連携しながら検討を進めてまいりたいと思います。

○山下芳生君 日本は頑張っているという認識でしたけど、本当にそれでいいのかと。資料の九に、先進国が一番減らす責任があるわけですが、その先進国のG7の各国の到達と目標を示しました。この表の一番左側の欄、一九九〇年比のCO2削減実績です、これは。大臣、頑張っているとおっしゃいましたけど、これ見てください。二〇二二年の時点で見ますと、日本は僅か二%しか減っておりません。イギリス四二%、ドイツ三七%と、大きな差があります。それから、二〇三〇年削減目標もほかのG7各国が五〇%以上、あるいは六〇%以上になっていますが、四六%にとどまっている。
先ほど、これで頑張っているんだと言うが、先進国はもっと頑張りなさいというのが世界の要請なんですね。カナダは二〇三〇年削減目標が日本と同程度ですが、既に発電部門の再エネ割合が六八%になっておりますので、頑張っている、だからカナダは気候野心サミットに招待されているということになるんです。
それから、表の一番右の欄、二〇三五年の電力部門の目標を見ますと、ほかのG7各国が脱炭素化、すなわち石炭火力廃止を目指しているのにもかかわらず、二〇三五年までに、日本は石炭火力を使い続けようとしております。ちなみに、イタリアは空欄ですけれども、二〇三〇年の再エネ目標が七〇%になっておりまして、これはもう電力部門の脱炭素化にめどが付いております。目標もめども付いていないのは日本だけということになります。
大臣、このままCOP28にこれ行くんですか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 状況が許せば、CPP28には参加したいと思っております。
我が国は、先ほども申し上げましたけれども、一・五度目標と整合的なものとして今進めておりまして、石油は積み重ねていると思います。石炭火力については前段御説明したものでございますけれども、それぞれの国、ネットゼロの達成に当たり、各国の地理的条件等に応じた多様な道筋が認識されておりまして、それがG7の広島サミットの合意とも整合しているわけでございます。
また、今月末から、COP28には諸般の情勢が許せば私も出席し、国際社会の議論をリードしてまいりたいと思いますが、こうした様々な機会も活用しながら、我が国の取組、方針を積極的に発信してまいりたいと思います。

○山下芳生君 これでリードできるはずないじゃないですか。G7の中でもう二〇三〇年目標も、それから石炭火力の問題も全部最下位ですよ、断トツの。リードできるはずがないじゃないですか。EUはもっと進もうとしています。EU理事会は各国に目標の上積みをしなさいということを要請しておりますよね。それをCOP28で世界に向けて脱化石燃料ということを提起しようとしております。もう脱石炭じゃないんです。脱化石燃料になっている。
先ほど質問でありましたけれども、今度のCOP28では、グローバルストックテーク、各国の取組が評価されるということになっておりますので、こんなまま行ったらまた大変な批判を受けることになると思います。脱炭素という国際的な流れの中で、今後日本がどう取り組むかということが注目されております。そのときに、会議に参加して考えるんじゃなくて、もう世界は前倒しで、考えてから、行動しながらCOP28でイニシアチブを発揮しようとしているときに、これは大変問われると思います。
日本は世界の排出量第五位ですよね。この五位の日本が、先進国として、ちゃんと世界に追い付き、もっとリードできるような、そういう目標をちゃんと設定して大臣が行くことによって、私は、今の地球の現状に貢献できると、リードできると初めて言えると思いますが、大臣、一言、何かあればどうぞ。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 委員の御意見も踏まえて、リードできるように最大限の努力をしてまいりたいと思います。

○山下芳生君 終わります。