日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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PFAS健康調査と対策行え 環境省の姿勢を批判

参議院環境委員会 2023.6.15
速記録 資 料 動 画
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(写真)質問する山下芳生議員=15日、参院環境委

東京・多摩地域や沖縄、大阪・摂津市周辺などで有機フッ素化合物(PFAS)汚染の拡大が明らかになっています。日本共産党の山下芳生議員は15日の参院環境委員会で、前回の質疑で環境省の神ノ田昌博環境保健部長が、(1)PFAS等の血中濃度と健康影響との関係の科学的知見は十分ではない(2)血液検査をしても住民の不安解消にはつながらない―と答弁した問題をただしました。

山下氏は「知見が十分でないということは、血中濃度と健康影響は関係がないということではないのではないか」と質問。神ノ田氏は「もちろん(血中濃度が)高ければ相対的に健康影響のリスクは高い」と認めました。

山下氏は「不安解消にならないと言うが、摂津市の住民が求めているのは、単なる血液検査ではない。血中濃度の高さと、自分や子どもたちの疾病との因果関係を科学的に調べてほしいということだ」と指摘。神ノ田氏は「PFASと健康影響との関係はしっかり研究をしたい」と答えました。

山下氏は「アメリカでは大規模な調査を行い血中濃度の基準を設けている。日本でも疾病との因果関係を科学的に調査し、血中濃度の基準をつくり、対策を進めるべきだ」と主張。西村明宏環境相は「専門家会議で議論している」と述べました。

山下氏は質疑の内容を専門家会議に伝えるよう要求。西村環境相は「非常に突っ込んだ議論をいただいた。事務方を通じて中身を話したい」と答えました。

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
有機フッ素化合物、PFASの健康影響について質問します。
ダイキン由来の大阪摂津地域、米軍由来の沖縄、同じく米軍由来が疑われる東京多摩地域など、全国各地でPFASによる環境汚染が広がり、住民の血液から高濃度のPFASが検出されております。
資料、ちょっと多いんですけど、四と五にあるように、東京の多摩地域では二十七自治体、六百五十人の血液検査を分析した結果、半数以上から、米国で健康被害のおそれがあると定められる血中濃度の指標を超過するPFASが検出されました。PFASに関する国民の関心と不安が高まっていると思います。
西村大臣の認識を伺う前に、今日は資料一に、四月二十五日、当委員会での私の質問の会議録を添付いたしました。当日、私は、大阪摂津市でPFOAの血中濃度が高かった住民の不安の声、摂津市議会が全会一致で採択した意見書を紹介し、PFOAと疾病との因果関係を科学的に明らかにするために健康影響調査と疫学調査を行う必要があると提起いたしました。それに対する神ノ田環境保健部長の答弁が当日はよく理解できなかったので、会議録に沿って今日は一つ一つ確認させていただきたいと思っております。
資料を一枚おめくりいただいて二十九ページから、赤線引っ張っている辺りをちょっと聞いていきたいと思うんですが、まず、現時点では、PFOA等につきましては、血中濃度と健康影響との関係を評価するための科学的知見は十分ではないという御答弁ですが、この意味するところはどういうことでしょうか。

○政府参考人(神ノ田昌博君) お答えいたします。
個人の健康影響を予測するためには、過去も含めた経年的な暴露状況をしっかり把握する必要がございます。血液検査では、検査を受けた時点のPFOS、PFOAの濃度しか把握できませんので、過去どのような形で暴露をし、その後半減期で減少していくわけですけれども、そこら辺の経緯が分からないと暴露の量も分かりませんし、それによる健康影響も分からないということで、世界的に見ても、一点の血液検査をもって健康影響を評価するということは非常に難しいということでお答えをさせていただきました。

○山下芳生君 PFOAの血中濃度と健康影響とは関係がないということを述べたわけではないんですね。

○政府参考人(神ノ田昌博君) お答えいたします。
摂津市からは、不安を解消するために血液検査の基準を設けてほしいと、また、それを、基準を設けた上で血中濃度の検査をしてほしいと、そのような要望であったと受け止めております。これは、個人の評価をすることを目的にそういった検査をしてほしいと、そういう要望だと受け止めております。
そういった意味では、個々の対象者について、血中濃度を一時点で測ったとしてもその人の健康影響について評価することは難しいと、そういうことで申し上げたところでございます。

○山下芳生君 私聞いているのは、PFOAの血中濃度と健康は関係ないということをこの答弁言っているわけではないですよねということを聞いています。

○政府参考人(神ノ田昌博君) もちろん、高ければ相対的に健康影響のリスクは高いんだろうと、そういうことだと思います。申し上げたのは、この基準を下回っていれば安全だとか超えていたら必ず健康影響が出るとか、そういったような基準を設けることは、世界的に見てもそのような科学的知見は集積されていないということを申し上げたところでございます。

○山下芳生君 分かりました。
その次、そういった状況の中で血液検査をしてもその結果の解釈が困難である、住民の不安解消にはつながらないというのは、今言ったようなことですか。もう一遍、ここの意味は。

○政府参考人(神ノ田昌博君) 個人、その検査を受けた方の検査値が幾ら、これぐらいの濃度でしたということが分かったとしても、それをもって安心することもできないし、また仮に高値だとしても今の技術ではその血中濃度を下げるということができません。医療的な措置も難しいわけですので、そこら辺で不安を与えてしまうんではないかということを答弁申し上げたところでございます。

○山下芳生君 住民の皆さんは、摂津住民の皆さんの不安の声を私紹介しました。自分の血中にPFOAが高い値で入ってしまっていると、そして自分やあるいは自分の子供たちにいろいろな病気が発生していると、この関係を調べてほしいと、明らかにしてほしいと、それを言っているわけですよね。それが明らかにならなければ不安は拭えないというのが住民の皆さんの声なんですよ。
ですから、このぐらいの値を、この値を超えたら出る出ないということを今、神ノ田さんおっしゃったんだけど、いや、そこまで行かずとも、因果関係があるかないかもう全く分からないというところで不安を感じているわけなので。
私はね、そこまで分かればいいと思いますよ。神ノ田さんおっしゃったように、どの値を超えればどの程度出るか、二倍出るか、三倍出るか、分かればいいですよ。しかし、そこまで行かずとも、どの程度の、何というんですかね、このPFASと疾病との因果関係、影響があるやなしやということをちゃんと調査するということがこれは必要ではないかと。要するに、分かるために調査することが必要ではないかと、そういう調査をやってくださいよと言っているんであって、あんたの血液はこんだけ入っていますよということをぼんと言うだけ言われたって、それは不安解消になりませんよ。でも、そこから先、その血中濃度と各いろんな様々な疾病との因果関係を科学的に調べてくれと、その声に応える必要があるんじゃないですかと私は言っているんです。

○政府参考人(神ノ田昌博君) お答えいたします。
調査には二種類あるかと思っていまして、一つは、今回摂津市から、摂津市議会から要望の上がってきたような形、この地域における健康影響を把握するという、それを目的とした調査と、今先生が御指摘されたような最新の科学的知見、それを得るための調査と二つあるかと思います。
前回御答弁申し上げたのは前者の方ですね。摂津市、摂津市議会から出た要望を受けて、この地域における健康不安、これに対して調査をすべきではないかということについては、前回も御答弁申し上げましたけれども、自治体として、暴露ではなくてエンドポイントである健康影響の部分、がんがどれぐらい出ているかとか、低出生体重児がどれぐらい出ているかとか、それが異常に増えていないかどうかとか、そこを確認して、これ地域診断ということをいうんですけれども、まあ地域保健の基本です。その地域で健康課題があるかどうかというところをまず統計データで確認をして、それをもって判断するということが前者の調査についてはまずやるべきことであって、評価の難しい血液検査で、そこは評価基準も作れませんし、なかなか健康影響について評価することもできないと、そういうことを申し上げました。
今御指摘の新たな科学的知見を得るための調査については、これは環境省としてもエコチル調査でやっておりますので、そういったところでPFASとまた健康影響との関係、これはしっかりと研究をしてまいりたいと思っております。

○山下芳生君 PFASと疾病との関係を研究する必要はあるという御答弁でした。
それから、その中段に、世界的に見ても健康影響との関係というのが明らかでないというふうにおっしゃっている。これはどういう意味ですか。

○政府参考人(神ノ田昌博君) ここも、幾つか論文も見ましたし、今専門家にもいろいろ御議論いただいていますけれども、例えばデュポン、先生御案内のデュポンの論文見ましても、例えば二十一種類のがんのうち十一種類はむしろハザード比が下がっていたりとか、今回指摘されているのは、精巣がんという非常に希少がんについて増加しているとか、ハザード比が上がっているとか、そういうような形で、全体として見たらこのPFASの影響についての健康影響と言えるのかどうかというところですね。がんが増えるのかどうかというところは、なかなか評価は難しいのかなという論文として受け止めました。
また、潰瘍性大腸炎についても増えるというような、デュポンの調査で出ていますけれども、同じような自己免疫性疾患の中で、クローン病とか、ほかの幾つかあるわけです、1型糖尿病とか、あるいは多発性硬化症、そういった疾患については関係が認められなかったというようなレポートになっております。
したがって、ちょっと相関関係としていろいろデータは出てきているわけですけれども、また健康影響を示唆するようなデータは出ているところではありますけれども、その因果関係とか、どういう機序でそういうことが起きているかとか、そこら辺のところはまだまだ未解明のところが多いというふうに認識をしております。

○山下芳生君 資料二に今おっしゃったデュポン社の、これは裁判で和解によってデュポン社がお金を払って独立した科学調査会ができたんですよね。それで七万人の住民の血中濃度を検査して、そして様々な疾病との因果関係を洗い出して、この六つの疾病については因果関係があるだろうということを明らかにして言っているわけですよね。それを否定しますということでいいんですか、今、環境省は。

○政府参考人(神ノ田昌博君) 否定、断定は、このデュポンの調査でも示唆されるというぐらいの判断だったと記憶しています。
少々お待ちください。(発言する者あり)

○委員長(滝沢求君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕

○委員長(滝沢求君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(神ノ田昌博君) このデュポンの調査につきましては、PFOAの暴露と六つの疾患、御指摘のとおり、高コレステロール血症、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患、精巣がん、腎臓がん、また妊娠高血圧症の間には関連がある可能性があると、そのような結論が出されていると。これをもって和解に至ったというふうに理解しております。

○山下芳生君 違います。和解した上で、七千人の、あっ、七万人の調査をやって、この六つがさらに確定されたと。ちゃんと知ってから言ってください。これは、可能性があると言ったんだから、否定できないんですよ。これ、否定したらえらいことですよ。
さらに、この、じゃ東京の新聞報道で、資料五ですけど、これは記事の中の紹介ですけど、米国の学術機関、全米アカデミーズが二〇二二年、五千本以上の論文を分析し、腎臓がん、脂質異常症、抗体反応の低下、胎児、乳児の成長阻害の四つのリスクをまとめましたと、そして、米国の臨床上のガイダンスでは、PFAS七種の合計値が血中一ミリリットル当たり二十ナノグラムを超えた状態が長期間続くと健康リスクが高まるとされていますと。
これは、先ほど、前回答弁された、世界的に見ても健康影響との関係というのが明らかでないと。これは明らかじゃないということなんですか、これも。これは知見じゃないという立場ですか。

○政府参考人(神ノ田昌博君) 御指摘のガイダンスにつきましては、政府というよりは、学会の、全米科学・工学・医学アカデミーの特別委員会においてガイダンスとして取りまとめられたものということで理解しております。これは臨床医としての推奨をまとめたものということで、こういうレベルの血中濃度の患者さんが来たときにどういう対応をしたらいいかというところを臨床ガイダンスとしてまとめたものだということで理解しております。

○山下芳生君 それは一つの知見として見る必要があるんじゃないですか。

○政府参考人(神ノ田昌博君) 臨床の現場では、目の前の患者さんにどう対応するかということが問題になりますので、可能性のあるものについてフォローアップしていくというようなことがガイダンスとしてまとめられていると理解しております。

○山下芳生君 それは、知見に基づいてガイダンス作っているんですよ。これは否定できないんですよ。だから、現在の段階ではまだ不十分だということと全く明らかじゃないということは違うんですよ。まあいいです、もう時間ないですからね。
それで、私は、そういう態度で本当にずうっと調査を拒否し続けていったらやっぱりよくないと思います。だから、さっき疾病とPFOAの関係は調査する必要があるということはお認めになりました。これ、非常に大事なんです。
西村大臣にその点だけ確認します。疾病との因果関係がないということではない、因果関係を科学的に調査する必要がある、これは認めますね。もう認めるだけでいいです。

○国務大臣(西村明宏君) 今の御議論聞いておりまして、様々なものが出ている。そういったものをしっかり参考にしつつ、まさにちょうど今この時間帯において総合戦略検討専門家会議が開催されております。その中で、そういったものも含めて、科学的な知見でしっかりと検討を進めていくということが重要でございますので、様々な国際的な情報等も見極めながら、その専門家会議において御議論いただけるものと期待しております。

○山下芳生君 大臣に伺いますけれども、そうすると、日本でも全国に今汚染が広がって、血中濃度が高い方が相当広がっているわけですから、大阪、沖縄、東京多摩、したがって、血中濃度の基準を作る必要があると考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(西村明宏君) 今、至る所で、そういったPFASに関しましては、国民の皆様から不安、そしてまた更なる対策を求める声というのがあるのは承知しております。そうした声を真摯に受け止めていかなければならないというふうに考えております。
そうした中で、先ほどから申し上げているように、今まさにこの時間帯においても、一月に設置した専門家会議において、科学的知見に基づく検討、これを進めていただいているところでございますので、そうした専門家会議の議論の結果を受けて、そういった今委員御指摘の課題に関してもしっかり答えを出していければというふうに思っております。

○山下芳生君 いや、アメリカはもう血中濃度の基準作っています。ドイツも作っています。資料にあるように、EUでも作っています。日本でもこれだけ広がって、健康不安が広がっているんだから、この健康不安を解消するためには、しっかり調査をやって血中濃度の基準を作らないと、対策ができないわけですよ、対応できないわけですよ。
それ、当然、今、専門家委員会で検討しているんだけど、どうやってやるかとか、どの程度の基準作るかというのは専門家の判断でしょう。しかし、政治の判断として、環境行政のトップとして、日本でも血中濃度の基準を作ることが、これだけ広がっているんですから、求められるなという判断は当然されなければならないと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(西村明宏君) 先ほどから申し上げているように、国民の皆様の不安、そして更なる対策を求める声、これしっかり耳を傾けてまいりたいというふうに環境大臣としては考えております。
そうした中で、今、専門家会議の中で御議論いただいている中において、こうしてくださいと言うことは差し控えたいとは思いますけれども、専門家の大変優秀な皆さんが集まってそういった御議論をやっておりますので、当然しかるべきものが出てくるんだろうというふうに思っております。

○山下芳生君 そうしたら、専門家会議の皆さんに、今日のこの質疑をですね、やり取りがあったということをちゃんとお伝えいただけますか。

○国務大臣(西村明宏君) 非常に突っ込んだ御議論をいただいておりますので、こういった中身については、事務方を通じまして、今日の会議録等々を含めてお話をさせていただきたいと思っております。

○山下芳生君 私ね、やっぱり行政がやるべきことをやらなかったら大変なことになるというのは、さっき辻元さんが紹介されていた水俣病なんですよ。
水俣病は、一九五六年の発見、公式確認直後に、熊本大学医学部公衆衛生学教室が、疫学調査によって水俣病の共通原因は水俣湾の汚染された魚介類と考えられると見抜いていたんですね。しかしながら、その結論を、したがって、この原因食品は見抜かれていたんですよ、水俣湾に生息する魚介類だと。しかし、原因物質までは分からなかった。そして、食品衛生法を適用して、その原因食品から原因物質を突き止めれば更に先に進むのに、それをやらなかったんです。私はこれ、重大な責任があると思う。
その結果どうなったかというと、原因食品である水俣湾内の魚介類について、販売又は販売のための採捕の禁止と食品衛生法上ならずに、その後、被害が拡大した。さらには、原因物質が結局明らかにならず、水俣病の公式確認から十二年間もメチル水銀が排出され続け、その間にチッソのアセトアルデヒドの生産量が三倍化すると、被害が非常に大きくなった。これ、行政のやるべきことをやらなかった結果だと、私は今、いろいろ勉強して、大問題だと思いますよ。
環境省はその反省に立ってできたんです。水俣病が原点だというふうに言った。そのことが今、PFOA、PFOS、PFAS、この問題で問われているということを指摘して……

○委員長(滝沢求君) 申合せの時間が参りましたので、質疑をおまとめください。

○山下芳生君 大臣に一言感想をいただいて、終わります。

○国務大臣(西村明宏君) 今、山下委員からお話ありましたように、そういった過去の課題があったがゆえに、しっかりと科学的知見に基づいた検討を行ってまいらなければならないというふうに考えております。

○山下芳生君 終わります。