日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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マイナ保険証強制 施設の高齢者・障害者を困難に追い込む 健康保険証廃止法案 参考人質疑

地方デジタル特別委員会 2023.5.17
速記録 動 画

 

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(写真)質問する山下芳生議員=17日、参院地デジ特委

健康保険証を廃止してマイナンバーカードの取得を強要するマイナンバー法等改定案の参考人質疑が17日、参院地方創生デジタル特別委員会で行われました。日本共産党の山下芳生議員は、カードの取得・管理が介護施設に与える負担などをただしました。

全国保険医団体連合会の竹田智雄副会長は、同会のアンケートで介護施設の約83%が利用者・入居者の保険証を管理していると説明。120人の特別養護老人ホームでは、不測の事態にすぐに対応できるようほぼ全員の健康保険証を原本で預かり、年間で140件の受診の付き添いをしていると実情を語りました。

山下氏は、そうした実態がある中で、「マイナ保険証を施設で管理できるのか」と質問。竹田氏は「マイナ保険証と暗証番号を施設で管理する責任はあまりにも重大だ。担い手不足と新型コロナ対応で苦労を重ねている職員に、さらに重大な責任を負わせるような進め方は切にやめていただきたい」と訴えました。

自身も脊髄損傷などの障害を抱える「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会」の家平悟事務局長は「障害者や介護を必要とする高齢者など、社会的に弱い立場に置かれている人たちをより困難な状況に追い込むことになる」と強調。山下氏は「弱い立場に置かれている人々が排除されるようなことは、絶対にあってはならない」と主張しました。

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○地方デジタル特別委員会 鶴保庸介委員長 ただいまから地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会を開会いたします。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺いたいと思います。

御出席いただいております参考人は、中央大学国際情報学部教授石井夏生利君、全国保険医団体連合会副会長竹田智雄君及び障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局長家平悟君でございます。

この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げたいと思います。

本日は、お忙しいところ、こうして御出席を賜り、本当にありがとうございます。

皆様の闊達な御意見を賜りまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いをいたします。

次に、議事の進め方について申し上げたいと思います。

まず、石井参考人、竹田参考人、家平参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをしていただきます。

また、発言の際は、挙手を軽くで結構ですからしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをいただきたいというふうに思います。

なお、御発言は着席のままで結構でございます。

それでは、まず石井参考人からお願いをいたします。石井参考人。

○参考人 石井夏生利 中央大学国際情報学部教授 中央大学国際情報学部の石井と申します。着席のまま失礼いたします。

本日は、マイナンバー法等の一部改正案について意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変光栄に感じております。

私からは、今回の改正法案について五点の意見を申し上げたいと思います。

まず第一は、マイナンバー法の利用範囲の拡大と情報連携に係る規定の見直しについてです。

マイナンバー法が二〇一三年五月に成立してから約十年が経過いたしました。その間、様々な社会の変化が生じております。ビッグデータ、クラウドコンピューティング、SNS、IoT、ここ最近ではメタバース、ウェブ3、生成AIなどが次々と登場し、情報分野の技術発展、新たなサービス展開が多様化するとともに、スピードもますます加速している状況にあります。こうした状況変化によって公的分野においてもDXが求められるようになりましたが、いまだ道半ばの状況にあると認識しております。

私自身も、大学以外からの御依頼をお引き受けする際に、承諾書ですとか報酬に関わる書類を郵送でやり取りすることが多く、件数がかさむと負担を感じることもあります。公的部門のDXを進める上では、国民に悉皆的に番号を付与し、行政機関の保有する情報を効果的にやり取りする仕組みであるマイナンバー制度を円滑に運用する重要性は極めて高いと考えております。

マイナンバー法の理念規定の中にも、一、個人番号及び法人番号の利用について、社会保障、税及び災害対策以外の行政分野における利用を促進するとともに、行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮すること、二、行政事務以外の事務処理において個人番号カードの活用が図られること、三、社会保障制度、税制、災害対策以外の行政分野における情報提供ネットワークシステムの利用を促進すること、特定個人情報以外の情報の授受に情報提供ネットワークシステムの用途を拡大することなどがうたわれておりまして、マイナンバー法の基本理念の中に個人番号、特定個人情報、情報提供ネットワークシステムそれぞれについての用途の拡大が盛り込まれているところであります。

今回の改正は、それらの中でも、個人番号の利用範囲を拡大し、情報連携に係る規定を見直すものであって、法が本来目指す理念を実現する方向の改正であると考えております。

第二は、今回の見直しの範囲についての意見です。

改正法案は、事務の範囲については三分野以外の行政事務を対象とすること、個人番号の利用範囲については法定の事務に準じる事務とすること、情報連携の範囲は個人番号の利用が法律上認められているものに限るとされており、過度な拡大を意図したものではないという理解でおります。改正法の定め方においても、拡大される行政事務は国家資格等一部の事務、準ずる事務は事務の性質が法定のものと同じものに限るということで、拡大の範囲にも配慮がなされているものと考えます。

特に、情報連携については、別表二に基づいて情報提供ネットワークシステムを介して新たに情報連携を行おうとすると、法令改正のために一年単位の期間が掛かり、スムーズな情報のやり取りの支障となってしまう面があります。今回の改正はそうした問題を解消するためのものと理解しております。

ただし、この点に関しまして、留意すべき事項を述べさせていただきます。

元々別表二を設けた趣旨は、個人情報保護への配慮に基づくものでありました。また、行政機関が適法な行政活動を行うためには法律の規定にのっとる必要があります。そのため、主務省令で情報連携を行えるようにすることは、制度の柔軟性を高める一方で、個人情報保護、法律による行政の観点からは慎重な見方も必要になってまいります。ついては、主務省令を通じた情報連携を行う際には、法定の事務に基づいていることを適切に確認するプロセスが重要であろうと思料いたします。

主務省令が改正される場合にはパブリックコメント手続に付されるわけですが、この手続自体が必ずしも国民に広く浸透しているわけではないと思いますので、どのような手続において情報連携がなされているかは、別途、デジタル庁のウェブサイトなどを通じて周知を図っていくことが望ましいと考えます。

また、一般法である個人情報保護法においても、行政機関等が個人情報を保有するに際しては、法令の定める所掌事務又は業務を遂行するために必要な場合に限るということをうたっておりますので、一般法の基本的な考え方を逸脱しないという観点も重要であると考えます。

そして、国民は、自己の情報のやり取りを確認する手段として、情報連携の記録をマイナポータル上で照会できるようになっており、利用登録者数も約六千万近くに上っていると伺っております。マイナポータルは、国民が自己の情報の取扱状況を確認する重要なツールであって、用途も拡大しておりますが、国民がマイナポータルを積極的に使えるような環境整備も求められると思われます。

第三は、プライバシー、個人情報保護との調整についての意見になります。

マイナンバー制度は、国が全国民に唯一無二の番号を悉皆的に割り当てて個人情報を取り扱う制度ですので、個人情報保護の要請に対しては一定の譲歩を求めるという性質を持ちます。この点は、制度創設時の検討において論点が整理されておりまして、一、番号をキーに個人の様々な個人情報が名寄せ、突合されて一元管理されるのではないかという国家管理への懸念、二、番号を用いた個人情報の追跡、名寄せ、突合による外部漏えいや、本人が意図しない形の個人像が構築されたり、特定の個人が選別されて差別的に取り扱われたりすることへの懸念、三、番号や個人情報の不正利用等により財産的被害を負うのではないかという懸念を想定いたしました。

マイナンバー制度は、これらの懸念に対処するために、システム上は個人情報を機関ごとに分散管理し、制度上の手当てとしては手厚い個人情報保護措置を講じております。具体的には、独立監視機関である個人情報保護委員会の設置、個人番号の利用範囲の法定、特定個人情報の収集の制限、個人番号の取得時の本人確認、特定個人情報を提供する際のポジティブリスト方式、特定個人情報保護評価に加えて委託や再委託への制限、個人情報保護法よりも重い法定刑などが制度上手当てされております。

令和三年の最高裁判決においても、こうした様々な保護措置を踏まえ、行政機関等がマイナンバー法に基づき特定個人情報を利用、提供等する行為は憲法第十三条を侵害するものではないと判断されております。

今回の改正においても個人情報保護制度に変更は生じませんが、個人番号の利用範囲や情報連携の範囲が拡大した後も、独立監視機関である個人情報保護委員会を中心に、マイナンバー法における個人情報保護措置が適切に担保されるように十分な監督を行っていただきたいと考えております。

なお、個人情報の利活用については、もっと広く民間を含めて利活用すべきだという議論もあろうかと思われます。確かに、行政分野以外に個人情報を使うことは可能性としてマイナンバー法の理念にもうたわれておりますので、そのような議論もあり得るかとは思います。他方、マイナンバー制度の主眼は、行政手続における本人確認をスムーズに行い、国民の利便性を高めることにありますし、個人情報保護の観点からも、識別強度の高い個人番号の利用を民間に広げるというような議論は、その適法性の担保や個人情報保護委員会の監督が十分に及ぶかという点に懸念が生じます。

マイナンバー制度を社会のインフラとして機能させるためには、まずは、マイナンバー法の目的を達成するに適した行政分野での利活用を一層進めるということが求められるべきと考えます。そのため、利用範囲の拡大に際しては、行政分野での個人番号の利用が円滑に行われるということを軸に据えた上で、民間での利用可能性があるにしても、あくまで法の目的を実現するに資する範囲に絞るべきというように考えております。

第四は、マイナンバーカードについての意見になります。

マイナンバーカードに関しましては、なぜ持つ必要があるのか、持つことでどのようなメリットがあるのかといったことを取材などを通じてよく質問されてきました。

元々、マイナンバー制度設計時には、マイナンバーカードを国民が保有せずとも制度を運用できるようにしておりましたので、カードの申請状況や交付率自体は、主に国民のマイナンバー制度に対する受容性を図る指標であると捉えておりました。マイナンバーカードの交付開始後も、国民からの関心はなかなか得られず、あるいは個人情報保護への懸念があったということを承知しておりますが、ここ最近になって申請率や交付率が急激に伸びたのは、マイナポイントなどの政府の施策が徐々に効果を生じてきたことによるものと思われます。

交付率を高めることによってマイナンバーカードを国民のデジタルIDとして使うことが可能になってくるわけですが、それに向けた大きな取組が、保険証の廃止とマイナンバーカードによるオンライン資格確認であると考えます。

これは、マイナンバーそのものを使うのではなく、カードの本人確認機能を使ってオンラインの資格確認を行うための措置でして、この仕組みが普及すると、マイナンバーカードのデジタル身分証としての利便性は高まると思いますし、医療機関側の事務負担や検査費用の軽減等にも資することになります。また、顔写真のない健康保険証と比べて、身分証明の際の成り済ましのリスクも格段に減ることが期待されると思います。

他方、一般国民にしてみると、マイナンバーが券面に記載されたカードは気軽に使いにくい面があろうと思います。カードを使ってマイナンバーが漏れると大変なことになるのではないか、オンラインで身分を証明する手続がマイナンバーを使っているのかそうでないのか分からない、保険証で用が済むうちはマイナンバーカードを使う気にならないといった理由から、保有はするものの使うことには積極的になれない方もいらっしゃるでしょうし、最近発生しました住民票などの誤交付についても、マイナンバーカードを使った手続ですので、国民に心配を与える原因になってしまったと思われます。

このようなことから、マイナンバーカードについては、マイナンバーを使った手続であるのか、本人確認機能を使った手続であるのかが国民に分かるように説明される必要があると思います。

あわせて、ICチップに記録される個人情報に機微なものが含まれないことや、暗証番号を何度か間違えるとロックが掛かるなど、カードを紛失、盗難しても機微な情報が取られるわけでもなければ、マイナンバーから機微な情報が引き出される仕組みになっていないことなど、国民がマイナンバーの記載されたカードに触れることについて過度な心配をしなくて済むような説明は必要であろうと考えます。

あわせて、マイナンバーカードの正しい理解や、今後広がっていくであろうメリットを説得的に国民に伝えるためには、マイナンバーカードの利用者側である個人から前向きな情報発信があるということが望ましいと考えます。政府が懸命に説明を行っても国民には伝わりにくい傾向が見られると感じておりますので、ユーザーからの前向きな評価を得ることがマイナンバー制度が真に受容される上で求められることであると考えました。

また、今後は、マイナンバーをカードに記載しているインターフェースの妥当性についても見直しを検討すべきであろうと考えます。

第五は、公金受取口座についてです。

口座情報を国に把握されることについては国民の間に一定の抵抗があることは承知しております。しかし、特別定額給付金の支給時に混乱が生じましたように、マイナンバー制度がありながら、給付事務を円滑に進めるべきときにそれが円滑に進まないということは避けるべきであると考えます。今後も災害又はそれに類する事態が生じることが予想されますので、その際に迅速な給付を行えるよう、給付事務に限っては公金受取口座の登録を促進することが望ましいと考えました。

その際に問題となるのが、個人情報の取扱いに関する同意です。法的に有効な同意を得るためには、自由意思で承諾をすることが必要になります。例えば、本人に対して、一定期間内に回答がない場合には同意したものとみなす旨の電子メールを送り、当該期間を経過した場合に、本人の同意を得たと見ることはできない旨の解釈が個人情報保護委員会から出されております。

今回の改正法案は、公金受取口座の登録率の低い年金受給者を念頭に、既に行政機関等に提供している年金受取口座を公金受取口座に利用するためのものであって、新たな情報提供を求めるものではないこと、同意については書留郵便で回答を求めること、書留郵便等で回答を求めること、登録結果を通知すること、回答を行わなかった結果、登録に至ったとしても、事後的にいつでも抹消できること、本人が郵便物の到達や内容を把握しにくい場合には同意したものとしないことなどを保障し、本人の自由意思を担保するための措置は講じられているものと考えております。

以上五点が私の意見となります。ありがとうございました。

○鶴保庸介委員長 ありがとうございました。

次に、竹田参考人にお願いをいたしたいと思います。竹田参考人。

○参考人 竹田智雄全国保険医団体連合会副会長 竹田でございます。済みません、失礼いたしました。

資料を御用意しております。手元に併せて御覧いただけましたら幸甚でございます。よろしくお願いいたします。

私は、全国保険医団体連合会副会長の竹田でございます。竹田智雄と申します。岐阜県の開業医でございます。

全国保険医団体連合会とは、十万七千人の医科、歯科の保険医の医療運動団体でございます。多くは開業医であります。国民医療の向上と会員の生活と権利を守ることを理念として掲げ、活動しております。

本日は、発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。行政手続法における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律などの一部を改正する法律案につきまして、医療現場の実態から意見を申し上げさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

オン資義務化、保険証廃止で医療崩壊が加速に向かっているということについて申し上げたいと思います。

まず、医療機関の現状でございます。

マイナ保険証によるオンライン資格確認の前提となるオンライン資格確認のシステム整備が全ての医療機関に今年四月より義務付けられました。顔認証付きカードリーダー設置を起点として、審査支払機関のサーバーに常時アクセスが可能となる閉域通信回線網の整備、電子機器などの保守管理やセキュリティー対策などが求められます。

政府は、このシステムを医療DXの基盤と位置付けており、オンラインでの資格確認にとどまらず、医療情報、薬剤情報など高度な医療情報を常時やり取りすることを想定しています。医療機関側がシステムの常時稼働に伴うサイバーセキュリティー対策等のリスクも負うこととなります。

電子機器の品不足やベンダーの多忙などにより、システム整備の遅延など六類型の理由により五万五千件の医療機関が本年九月まで猶予措置の適用を受けており、二四年秋の保険証廃止までに閉院、廃院との理由で約千件の医療機関が猶予を届け出ております。

資料六ページ上段を御覧ください。

昨年十一月に施行した保団連調査では、コロナ禍による受診抑制、経営困難、スタッフ不足や高齢などの理由で一五%の医療機関が導入しない、導入できないと回答いたしました。

十二ページに飛んでいただきまして、上を御覧ください。

ここに理由が述べてあります。当会加盟団体の調査では、約一割の保険医療機関が閉院、廃業を検討と答えております。実際に本年三月末時点で各厚生局に廃止届出を出した保険医療機関は医科、歯科で千百三件と、かなり高い水準でございます。また、調査では、システム整備に伴い、半数以上の医療機関が補助金を上回る費用の負担を強いられており、新たな設備投資やスタッフの確保が困難、情報漏えいやセキュリティー対策への不安などから、長年培った患者さんとの信頼関係に涙を流しつつ閉院を余儀なくされているのが実態でございます。もちろん閉院、廃院の理由は、経営困難、高齢化など複合的な要因によります。しかし、コロナ禍で奮闘してきた医療機関の閉院を加速化させたことは間違いございません。医療の質向上を掲げたシステム整備の義務化により医療機関が閉院、廃院に追い込まれることは本末転倒と考えます。地域医療崩壊を加速させていると言わざるを得ません。

十三ページ御覧ください。下の方を御覧ください。ちょっと横になっております。見にくくて恐縮でございます。

医療現場でのマイナ保険証の利用実態について述べます。

厚労省発表では、本年三月分のオンライン資格確認システムの利用は、全国で一億千八百四万件です、一番下の段、合計の下を御覧ください、が、そのうちマイナ保険証利用は約二百六十七万件と、僅か、右の青色でございます、二・三%にすぎません。残りの九七・七%が現行の健康保険証でオンライン資格確認を実施されています。オンラインでの資格確認においてマイナ保険証は必要ないというのが医療現場の実感でございます。

八ページへ戻ります。お願いいたします。

また、昨年十一月の保団連調査では、運用開始医療機関が二四%の段階で、運用を開始した医療機関の四割でトラブルが発生したと回答いたしました。主なトラブルは、これ九ページの上に参ります、六割が有効な保険証が無効と判定された、四割が顔認証付きカードリーダーの不具合でございました。

現行の健康保険証の廃止には、四ページへ参ります、四ページ下を御覧ください、六五%が反対と回答しており、賛成は僅か八%にすぎません。健康保険証廃止による医療機関、患者への影響につきまして、マイナカード利用に不慣れな患者への窓口対応の増加、システム不具合時に診療継続が困難となる、カードの紛失、盗難などトラブル増加などでございます。

政府はマイナ保険証によるオンライン資格確認の準備で医療機関の事務負担が軽減されるとメリットを強調していますが、顔認証付きカードリーダーの操作に戸惑う高齢者などへの対応や紛失などのトラブルがマイナ保険証利用者の増加に比例し増加します。

十五ページを御覧ください。

これは、本年四月一日以降、義務化がなされた後の状況ですが、本会、当会加盟の大阪府保険医協会が実施した調査では、半数以上の医療機関でオンライン資格確認のトラブルを経験しており、状況に変化はございません。トラブルは改善されてきていると厚労省は説明していますが、マイナ保険証での利用者がまだまだ少ないにもかかわらず、運用開始当初と同じシステムの根本的なトラブルを多く抱えています。

トラブルの種類は、資格確認データの不備、電子機器のシステム障害、電子カルテなど院内システムが動作不良となった、患者とのトラブルなど多様ですが、現行の保険証では、健康保険証では起こり得ないトラブルであり、いずれも診療継続に支障を来すものばかりでございます。そのため、多くの医療機関が現行の健康保険証が廃止されたときの対応に強い不安と懸念を示しております。

要介護高齢者のカード管理困難と、これが犯罪の温床につながる懸念について述べます。

健康保険証の廃止は、要介護高齢者など、マイナンバーカード取得、利用、管理が困難な方に重大な影響をもたらします。健康保険証廃止に伴う高齢者施設等への影響を明らかにするために、本年四月に、全国の特養、老健などを対象に調査を実施いたしました。

千二百十九件、二十三ページを御覧ください、下でございます、回答があり、八三・六%の施設で入所者、利用者の健康保険証を大事にまずお預かりしております。医療機関の受診の際にはそれを利用して受診するわけでございます。

二十四ページの上を御覧ください。九三%の施設が、本人の意思確認ができない、手間や労力が掛かるなどから、利用者、入所者のマイナンバーカードの申請代理には対応できないと回答しております。

二十五ページ下を御覧ください。また、九四%の施設が、暗証番号、二十六ページの下も御覧ください、暗証番号を含むカードの紛失責任が重く、管理が困難などの理由で、利用者、入所者のマイナンバーカードを管理できないと回答しております。

健康保険証が廃止され、マイナ保険証利用が基本となると、利用者、入所者の医療へのアクセスが著しく制限されます。同時に、介護、高齢者福祉関係者にとって多大な負担となり、利用者、家族との無用な混乱、トラブルを招くことが危惧されます。有効期限が一年で被保険者本人の申請が必要な資格確認書でも手間は変わりません。高齢者施設の職員、利用者、入所者とその家族は健康保険証の存続を願っております。

マイナカードのICチップに搭載された電子証明書を利用した公的個人認証サービスは、公的手続だけでなく、銀行、証券口座開設やローン契約など百七十四社の民間サービスにも利用できます。要介護高齢者や認知機能が低下した方など、マイナカードを自己で管理できない人にマイナカードを無理やり所持させた場合に、第三者が本人に成り済まして銀行や証券口座の開設、保険契約などを本人の意思に反して行われる危険性がございます。公的には本人が当該契約を交わしたことになり、犯罪、成り済ましが発覚しにくい状態です。しかも、署名用電子証明書はコンビニで初期化できます。実印と印鑑証明に加え、銀行印の機能も兼ね備えたマイナカードは、意思能力がある人、自己で管理できる人に限定すべきだと考えます。

続きまして、無保険扱いとなる人を生み出していいのかということに関して申し上げます。

保険者が全ての被保険者に被保険者証、健康保険証を発行、交付することは、公的医療保険制度の根幹であります。法令上も義務付けられております。改正法案では、任意取得が原則のマイナカードによる電子資格確認が原則となり、例外として、電子資格確認を受けることができない状況にあるときに資格確認書が発行されます。法令上は、資格確認書の発行対象がマイナ保険証を持たない人に限定されており、有効期限が一年以内とされ、保険者への申請が必要となります。申請漏れ、申請遅れにより、有資格者であるにもかかわらず、資格確認が困難なため無保険扱いとなる人が必ず発生いたします。要介護高齢者、在宅高齢患者など、制度からこぼれ落ちる患者、国民を生み出し、国民の医療へのアクセスが妨げられます。

誰しも突然のけがや病気によって受診が必要となる可能性があり、無保険扱いの状態は本来あってはなりません。発行・交付義務から申請主義への転換は無保険扱いとなる人を政策的に生み出すもので、被保険者、国民に大きな不利益をもたらします。国は、資格確認書の申請漏れ等への対応として、被保険者本人の申請によらず保険者の職権で交付する仕組みを附則第十五条で規定し、保険者が申請勧奨を行うことで全ての被保険者に必要な保険診療が受けられる仕組みをすると答弁しております。こうした仕組みを構築するには、保険者がマイナ保険証を有しない国民を常時把握することが必要となります。

厚労省は、二四年秋の健康保険証廃止に向けて、マイナ保険証を登録していない国民に対して、保険者が資格確認書の申請勧奨を行い、有効期限到来時に手続の案内を送付すると答弁していますが、こうした仕組みの構築は、保険者、被保険者双方に多大な負担を課すことになります。

以上の懸念は、健康保険証を存続させれば全て解決いたします。一人の無保険者を生み出すことなく国民皆保険制度を守るためには、健康保険証の廃止は撤回していただきたいと考えます。

デジタル化、医療DX推進の名目で、患者、国民、医療者が切り捨てられかねない、国民皆保険制度の根幹を揺るがしかねない状況にあると言わざるを得ません。あくまで健康保険証による資格確認を前提とした上で、マイナ保険証による医療情報、薬剤情報の取得、活用はあくまで付加的なサービスにとどめるべきと考えます。

マイナカードをコンビニで利用し、他人の住民票や戸籍を取得できた問題、マイナ保険証の誤登録で別人の薬剤情報等が閲覧された問題など、この間の拙速かつ制度設計が不十分な中で問題が噴出しております。国民、患者、医療従事者、保険者に押し付け、しわ寄せとなるデジタル化は本末転倒でございます。国民皆保険制度を維持発展させるために、健康保険証廃止を含むマイナンバー法等の撤回を強く要望して、発言を終わります。

以上でございます。ありがとうございました。

○鶴保庸介委員長 ありがとうございました。

それでは、引き続き、家平参考人にお願いをしたいと思います。家平参考人。

○参考人 家平悟 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局長 それでは、発言させていただきます。

障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の家平といいます。障害者、家族の立場で発言させていただきます。

現在、国会で審議されているマイナンバー法等の一部を改正する法案は、現行の健康保険証を廃止し、任意取得のはずのマイナンバーカードを健康保険証と一体化させることで実質的な強制取得を推進するものであり、大きな問題です。

また、このマイナ保険証の強要は、これまで長年にわたって築き上げられてきた、全ての国民が安心、安全に医療を受ける権利を保障する国民皆保険制度を崩壊させるとともに、特に、日常的に医療が必要不可欠な障害者や介護が必要な高齢者などの医療を受ける権利を奪いかねないものであるだけに、私たち障全協は、同法案に断固反対し、以下の意見を表明いたします。

初めに、私自身の医療の必要性ですが、私の障害は、首の骨を折ったことで全身に麻痺が残ったいわゆる頸髄損傷者です。首の上部を傷つけたために、呼吸器にも障害があり、風邪や肺炎などで重症化するリスクが高いため、首からすぐにたん吸引ができるように気管切開もしています。そのため、二週間に一度は訪問診療を受けており、緊急時には二十四時間体制で医師が駆け付けてくれます。この医療体制のおかげで何度命を救われたか分かりません。私のみならず、多くの障害者は命と健康を守るために医療は欠くことのできないものですが、この重要な医療へのアクセス権が後退しようとしています。

マイナ保険証の問題性についてですが、国民皆保険を破壊させ、障害者に不利益をもたらします。

現行の健康保険証には保険者の発行・交付義務がありますが、この責任がなくなり、自己責任に基づく申請主義に変更されれば、多くの無保険者がつくり出されます。こうした制度変更の影響を大きく受けるのは障害者や介護が必要な高齢者であり、特に、最も多くの社会的困難を抱える自己決定や意思表示が難しい人たちが不利益を被り、知らないうちに無保険者になるリスクが極めて高くなります。医療を最も必要とする人たちが医療を受けられなくなることは絶対にあってはなりません。

では、なぜこうした指摘をせざるを得ないかといえば、マイナンバー法の一部改正法案は、マイナンバーカードの申請、取得、管理、利用に最も困難を抱える人たちを置き去りにしておきながら、まことしやかなメリットだけを強調して取得を推し進めるからです。

政府は、同法案の説明で、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を受けることができない状況にある方は資格確認書を発行するとし、そうした状況にある人の具体例として、介護が必要な高齢者や子供など、ここに障害者が含まれると思われるんですが、そういう人を挙げています。

しかし、そもそもマイナ保険証を作ることが難しい人や資格確認書を発行せざるを得ない人たちがいることを前提にすること自体が大きな問題です。

現行の健康保険証廃止によって、任意取得としながらマイナ保険証を取らざるを得ない状況に追い込みながら、一方では、医療を最も必要とする人たちの医療受給権に支障が出る事態があることを、任意取得を言い訳にして放置しているとしか思えません。

日本には、全ての国民を公的医療保険で保障するという世界に誇る国民皆保険制度があるにもかかわらず、今回の改正法は国民に医療を受ける権利の不平等を持ち込むことにほかなりません。

加えて、政府は資格確認書の発行で対応することを強調しますが、資格確認書は一年更新であり、自分で申請しなければ更新されない点においても現行の健康保険証の利便性とは全く違うものです。マイナンバーカードは情報漏えいの問題などがあるため任意取得を確保する必要がありますが、取得しても取得しなくても同じ条件で医療が受けられなければ、受けられることを大前提とするべきです。

では、マイナ保険証の申請、利用についての障害者の困難な実態を報告します。

今回の法案の最大の問題は、健康保険証の廃止を決めていることですが、特に障害者の場合、マイナンバーカードの申請、取得、管理、利用のそれぞれに大きな問題を抱えています。そのことを放置し、しっかりとした対応や具体的な支援が示されないまま医療を受ける権利の根幹を変えてしまおうとするのです。この間、私たちの団体に寄せられてきたマイナンバーカードやマイナ保険証の申請や利用における問題事例の幾つかを報告します。

申請時、申請却下の事例です。

顔写真の背後に車椅子のヘッドレスト、まあ僕が後ろに付けているようなものですが、こういうものが写っているから却下されたというような事例があります。幾ら説明、行政の窓口で説明しても、それがないと駄目だと、それを取らないと駄目だということを言われたということです。障害者の中には、首を固定するためのこういうヘッドレストが必ず必要で、そんなことは取れないと言うにもかかわらず、そういう意見も聞かないという実態もあります。

次に、全盲で、病気のため黒目がないというような人についても、黒目がないから写真を撮り直せというような指導が幾つもあったというようなことも聞いています。障害者の証明写真については、横を向いているだとか視点が合っていないだとか、そういう数々のことでトラブルが起こっているというのも現状です。

で、意思表示ができないというようなことなどを言ってしまうと、交付がされないというような事例もあります。

そして、事業者の方からでは、申請の補助や代理について、意思決定が難しい障害、人の暗証番号などをどう取り扱うべきかの国としての方針もないまま福祉現場任せにすること自体が大きな問題。また、個人情報などの重要なプライバシー情報を管理する責任の重さを担保する制度的保障も全くないのが実態で、にもかかわらず代理申請をさせるのかというような強い意見もあります。

これらの問題について、私たち障全協が四月に行った厚労省との医療交渉の中でも、意思表示ができない人には成年後見制度を付けないとマイナンバーカードが交付できないのではないかというような質問に対して、資格確認書などの職権交付などできめ細かく漏れないように対応するというような回答でしたが、どのような対策が取れていくのかということがやはり曖昧なまま健康保険証の廃止だけが先行しているということは本当に許されるような問題なんでしょうかということです。

次に、利用時、マイナ保険証を取得した人が利用時に、医療を受診するときの問題です。

先ほど、保団連の方から言われることも本当にありますし、行った障害当事者の人からは、通院時の顔認証にエラーがなると。不随意運動があったりとか、一定のところに顔を置けない人なんかについては、そんなこと、カメラの認証が、動かないだとか、暗証番号の入力は難しいというような実態だとか、まあそれができないならば言葉で伝えてやってもらうということになるんですが、そんなことも、個人番号の情報を伝えることの怖さというのもあるというのが当事者の方からも挙がっています。

次に、じゃ、そういうことを代行して、代行というか、付添いをしたり代行したりする施設や介護者からの意見もあります。

施設が行う支援として通院がありますが、マイナンバーカードを預からなければならないが、施設がマイナンバーカードを預かるのが大きな問題だと。暗証番号も教えてもらわないと保険証として使えない場合があるのですが、そこまで個人情報を扱えないと。障害者本人や家族も抵抗感があるし、今後、通院支援ができなくなるかもしれないというようなことも挙げられています。

居宅介護サービスについても通院支援というのがありますが、特に居宅の通院支援については、病院の送り迎えが基本ということで、障害者の場合、通院の介助も中の院内の介助もしたり実態に合わせてしているんですが、基本は看護師にお願いするというような状況になるにもかかわらず、その都度、そうした重要な情報を個人に、他人に任せてやらざるを得ないというようなことについては、障害者側にも介助する側にも、双方に重い責任が課せられるというような問題が生じます。こうした問題があるがゆえに、個人情報を集約させたマイナ保険証ではなく、保険証の機能だけにとどめている現行の健康保険証が存続することが一番の解決策だということです。

あわせて、福祉現場では非常勤職員が多く、きちんとした身分保障がないようなパートやアルバイトで支えられているというのが実態があります。特にグループホームなどは、全く福祉現場で働いたことのない人が、今日採用されて、その晩から働くというようなこともあります。このような脆弱な支援体制しか確立されていない障害者福祉や介護現場において、マイナンバーカード等の重要な個人情報を取り扱う責任を課してよいのか、そういうような根本的な問題があるという、こうした実態に対して政府はどのように対応しようと思っているのか、見解を明らかにしてほしいと思います。

さらに、こういう懸念も挙がっています。政府が福祉現場にこれまで以上の個人情報の管理や利用を担わせようとする中で、こうした高度な管理について別途費用を徴収して行うようなことになるのではないかというような不安も挙がっています。

現在の福祉サービスは、事業者と利用者の直接契約となっており、営利目的の企業参入も増えている中で、人材不足や人手不足が常態化している福祉現場において、実費負担を行うことによって対応せざるを得ない状況にも追い込まれることが考えられます。今までどおり医療を受けるために、必要な申請手続に行く費用、例えば移動支援のヘルパーの同行などの費用を始め、マイナ保険証や資格確認書をもらうための別途支援の費用が必要ということになれば、大きな制度的後退です。政府はこうしたことについても想定して対応しておられるのか、疑問に思うところです。

一方、個人情報の取扱いについては、情報漏えいの不安も広がっている中で、特に難病や内部疾患、精神障害者などからは、見られたくない個人情報が医療を受けるときにいつも見られてしまうことへの懸念や不安の声が多く寄せられています。また、医療情報等の民間事業者に共有されることへの不安、悪用、給付抑制とか医療費の削減などに利用されるのではないかという声も多く聞かれます。

このように、障害者にとっては、健康保険証の廃止、マイナ保険証の利用についての問題が山積しているにもかかわらず、政府は、来年秋の廃止だけを決定するような事項として、障害者や介護が必要な高齢者への対応策を曖昧にしたまま、同法案を強行成立させようとしています。こうした実態を無視したやり方はやめていただきたいと強く訴えます。

あわせて、社会保障制度をゆがめているという問題です。

マイナ保険証の導入に伴い、現行の健康保険証とマイナ保険証を利用する人では診療報酬に違いがあり、それゆえに自己負担額にも違いが生じていることです。

現行の保険証を使う人の方が自己負担が高いというのは、無差別平等であるべき社会保障の根幹をゆがめていきます。にもかかわらず、政府は、マイナ保険証のメリットとして自己負担が安くなることを挙げています。これ自体、制度的不平等を政府が推進するという、考えられない暴挙だと言わざるを得ません。

障害者の場合、上記に挙げたように、マイナ保険証の利用には大きなハードルがあり、利用するには、国、公的責任によるマイナンバーカードの申請、取得、管理、利用のしっかりとした支援が確立されない限り利用はできないにもかかわらず、診療報酬に格差を付けることは制度的差別に当たり、絶対に許されません。

また、政府は、マイナンバーカードの取得を強引に推し進めるために、マイナンバーカードやマイナ保険証を申請するとポイントを付与するなど、特典を強調して利用推進、促進を図ろうとしています。そして、これに三兆円の予算をつぎ込んでいます。

しかし、本来、国がまずやるべきことは、誰一人として無保険者をつくらないという姿勢を示すことであり、それを担保する公的責任に基づく制度的保障です。介助が必要な障害者や高齢者の支援策を構築することにこそ税金を使うべきであって、そうした検討がすっぽり抜け落ちた、いる今回のマイナンバー保険証の、あっ、マイナンバーの改正案には断固反対し、少なくとも現行の保険証を存続し、医療権を守っていただくように、改めて強く要請いたします。

最後に、マイナンバーカード、マイナンバー改正法案は、明らかに制度の後退であり、いつでもどこでも誰でもが医療が受けられる国民皆保険を崩壊させます。と同時に、障害者や介護を必要とする高齢者など、社会的に弱い立場に置かれている人たちをより困難な状況に追い込みます。

こうした国による社会的弱者をつくり出す法制度の改悪は、障害者や高齢者など支援を必要とする人たちの社会的地位を大きく引き下げ、障害者を厄介者、いなくてもよい者など、人間としての生きる価値や意味までもおとしめることにつながります。政府関係者の皆さんや国会議員の皆様については、深くこのことを考えていただきたいと思います。

かつて、障害者の尊厳や人権を踏みにじった優生保護法やらい予防法……

○鶴保庸介委員長 参考人、少し時間が過ぎておりますので、簡潔におまとめください。

○家平悟参考人 済みません。はい。

障害者自立支援法など、そういうような法律があったということも重く受け止めていただいて、今回の改正法の現時点ではそういう差別が起こり得るということも重く受け止めていただきたいということも訴えて、憲法二十五条や権利条約に示された人権保障の立場に立った法改正になるよう、再度検討をお願いしたいと思って、発言を終わります。

済みません、長くなりましたが、ありがとうございました。

参考人への質問

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

お三方、ありがとうございます。

まず、竹田参考人に、介護施設の実態について何問か続けて聞いていきたいと思います。

保団連のアンケートでは、介護施設の八三・六%が利用者あるいは入居者の保険証を管理していると回答されていますけれども、実際に介護施設でどの程度の入居者の保険証を預かっているんでしょうか。入居者の一部か全体か、いかがでしょうか。

○参考人 竹田智雄 全国保険医団体連合会副会長 お答え申し上げます。

私は、特別老人ホームの嘱託医はしておりますけれども、勤めているわけではありませんから、老人ホームの方から伺ったお話をお伝えさせていただきます。

百二十人の特別養護老人ホームの方から聞き取ったお話です。ここでは、ほぼ全員の健康保険証を原本で預かっておられ、預かり書を発行し、施設内で鍵付きの棚で管理しています。

それがお答えでございます。

○山下よしき じゃ、何で保険証を預かる必要があるのか。それは入居者御本人の実情、あるいは御家族の実情があるからでしょうか。

○竹田智雄参考人 お答え申し上げます。

入所者の方というのは、もう医療とは切っても切り離せない、医療を受けておられない方はまずいないと言っても過言ではないと思います。そういった方が、私、今回出てくる前にその特別養護老人ホームで呼ばれて行ってきまして、緊急搬送を一つ、それから、紹介状を書いて、あと、紹介先へお届けするというようなことをしてきました。

つまり、医療とは切っても切り離せない、いつ急変するか分からないということがあります。発熱であったりとか転倒して骨折であったりとか、様々なことがございます。そういったときに、預かっていない場合、御家族様、転ばれて足を痛がっておられます、おいでいただけますか、医療機関に連れていってください。えっ、今日、私仕事があります、できません、申し訳ない。じゃ、それ、あしたになりますか、あさってになりますか、一週間先ですかと。そんなことになっては、治るものも治らないです。ということで御理解いただき、健康保険証の原本を預かるというのが、今システムとしてといいますか、習慣としてそういったところでは行われている実情がございます。

○山下よしき 介護施設ではどれくらいの頻度で医療機関への受診に付き添っておられるのでしょうか。

○竹田智雄参考人 百二十人の施設で年間で百四十件というふうにお聞きしています。およそ二日半に一回、まあ二日に一回と言ってもいいと思います。外部の医療機関への受診に対応です。受診には、三百六十五日の交代勤務をする約十名の生活相談員や看護師などの職員の誰かが付き添うこととなります。これで迅速に医療にアクセスができるわけです。

○山下よしき お話伺っていますと、介護施設ではかなりの頻度、二日に一回程度、しかもほとんどの利用者の方の保険証を預かって、職員の方がそれを持参して医療機関に付き添っておられるということだったんですが。

政府は、マイナカードの管理の在り方の留意点を整理しながら施設と入所者双方が安心してマイナカードの管理をできる環境づくりを推進していくとされていますけれども、今お聞きした現状から考えて、保険証を廃止した後に施設でマイナ保険証を管理できるとお考えでしょうか。

○竹田智雄参考人 お答え申し上げます。

マイナ保険証は、紙の健康保険証以上に厳重な保管、管理が求められます。マイナ保険証と暗証番号を施設で管理する責任は余りにも重大だと思います。施設長が金庫で厳重に管理し、受診のたびに金庫から出すことをしなければなりません。受診に付き添う職員は、マイナ保険証とともに暗証番号までも医療機関に伝えなければならないことになります。万一紛失して個人情報漏えいが起きた、不正利用の形跡があったなど、重大事故が起これば大問題になります。担い手不足と新型コロナ対応で苦労を重ねている高齢者施設の職員に更に重大な責任を負わせるような進め方は決して好ましくないと思います。切にやめていただきたいとお願い申し上げます。

○山下よしき 施設の入居者などで本人の申請が難しい場合に、本人の意思を基にケアマネなどが代理申請することが可能だとされておりますけれども、この代理申請に現状の介護の現場で対応できるのか、いかがでしょうか。

○竹田智雄参考人 お答え申し上げます。

ケアマネに代理申請、代理交付申請補助を求められても、説明、申請など本来業務ではありませんので、まずできません。それから、マイナ保険証を紛失、悪用されても自己責任になり、利用者の権利は守れませんし、ケアマネにはこれはできない仕事と承知しております。

○山下よしき じゃ、誰がするのかということが本当に宙ぶらりんになっていると思います。

介護施設以外でも、訪問・在宅医療あるいは高齢独居など、マイナ保険証や資格確認書の申請、管理は難しいのではないかと思われる方がおられますが、これらの場合、どのようにお考えでしょうか。

○竹田智雄参考人 お答え申し上げます。

政府は家族の代理申請を想定されていると思いますが、実際は、高齢で、まあ家族がなさって、家族が頑張って何か連れていって作ってきましたというところも私が在宅で訪問しているところの家族にはございます。もう大変でした、一日掛かりでしたなんて言われますけれども、そういう思いで何とか、医療とは、もう保険証なくなる、大変だ、マイナ保険証作らなきゃということで、頑張って行って作っておられます。

もう写真は何回も撮り直したとか、顔が真っすぐ前向けないとか、後ろが白地じゃないと駄目だとか、もうさんざんいろんなことを言われながら、それでも、泣く泣く、とにかく医療を受けるためにはやむを得ないと思って頑張ったとおっしゃいます。

それはそれで、家族の代理がある場合は結構ですけれども、実際は高齢で独居の方が非常に多くなっているという現状がございまして、近い将来、認知症の方が一千万人を超えるとも言われています。その中で、在宅独居の方をいかに支えていくか。

そういった人たち、私が訪問している患者さんの中にも数名そういう方があります。実際、じゃ、マイナンバーカードを取られますか、取られましたかというと、もう全員取っていません。取っていない方が今後どうなるかということに対しても、物すごいこの先の不安がございます。何とか保険証が残ればなとか、医者というのは保険証でかかるものじゃないですかとか、当然言われます。ごもっともなんですけど、それが今、世の中がこういうふうに変わろうとして、保険証がなくなって、マイナンバーカードというのはないといけないんですよ、それを保険証にしなきゃいけないんですよとお話ししても、ううん、まあ私には無理だとか、知らないとか、縁がないとか、そういった対応になってしまい、非常に混乱して困っているという実情がございます。

○山下よしき 非常にデメリットがかなり出るんですけれども、一方で、政府は、メリットとして、医療情報がいろいろ寄せられると、より良い医療を提供することができるというふうに言っていますけれども、この点、メリット、いかがでしょうか、お感じでしょうか。

○竹田智雄参考人 メリットは、常々おっしゃるように、医療情報、お薬の情報が見れる、それから健康診断の情報が見れるなど、おっしゃっていることはごもっともで、そのとおりだと思います。それから、全国医療情報プラットフォーム、それがそういう情報として共有できるというところも確かにメリットとして挙げられているものとして私は承知しておりますけれども、じゃ、それがその本人のためになるかといいますと、甚だどうかという思いもないでもないです。保険証でも十分この方は対応できるなという方がほとんどのように今は感じています。

現在の保険証でも、入居者本人は、在宅の方でも、保険証をなくすことは日常茶飯事であります。認知症の方ですと、物がどこかへ置いてしまったとか、そういったことはしょっちゅうあります。在宅の方でそういった方はあり、それから、高齢者を対象とした詐欺などもある中で、被害者を増やすことも心配で、大きな懸念です。

そういったことがありまして、あと、介護施設でもそうですし、非常に大きな問題となっておりますし、介護施設においては、マイナ保険証、資格確認書を申請してくださいといっても、そういったことすら忘れる方がやっぱりございますので、なかなか、医療を受ける権利が剥奪されてしまうということに対して、施設の高齢者、それから在宅の高齢者についてもやはりちょっと心配しているところでございまして、やっぱりじわじわとこういったところから国民皆保険制度が崩壊していってしまうことを大変懸念しております。

○山下よしき 国民皆保険制度の崩壊というのは非常に重大な御提起だったと思います。

家平参考人に伺いたいと思います。

私も、発言を聞いて、山田委員と同じく、マイナ保険証が障害のある方にいかにフィットしにくいシステムであるかということを深く認識させられました。

その上で、家平参考人は、法案は、障害者や介護を必要とする高齢者など社会的に弱い立場に置かれている私たちを置き去りにして、置き去りにして、より社会的に困難な状況に追い込む、支援を必要とする人たちの社会的地位を大きく引き下げ、障害者を厄介者、いなくてもよい者など、人間として生きる価値や意味までもおとしめることになるというふうに述べられました。強烈なメッセージだと私思いましたけれども、その思い、あるいはその背景にある歴史的教訓などを含めて、改めて訴えたいことがあればお述べください。

○参考人 家平悟 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局長 ありがとうございます。

そこにも最後に書いているんですけど、私、障害者自立支援法の違憲訴訟の七十一人の原告の一人やったんですね。これは、国と和解して、今その制度設計、総合支援法という名前に変わって、まあこれにも問題はあるんですが、変わりました。そのときに、応益負担という制度が大きな問題になって、障害の、まあ僕もそうですけれども、支援がたくさん必要な人ほど負担が増えるという、まあサービスを使えば使った分だけ費用が、負担が掛かるというようなことになれば、まあそうなったんですけども、それは障害を、社会的に必要な支援をお金を出さなければ生きていけないという状況になって、これが大きな問題としてこの僕たちも訴えましたし、そういうことを国は反省して法案を変えるというような、新しい制度にするということで、課題はありますが、そうなったんですよね。

もうそのときにやはり思うのは、やっぱりそういう、僕も一生懸命作業所で働いて、一万円だとか五千円だとかいう給料から始まって、六万円という給料になって、それが、利用者負担が急に妻の収入によってもう四万円も五万円も取られるような状況になったら、やはり本当にこの人と生活していけるのかというのを家族全体で話し合わなければならないような状況に陥ったということでは、本当に人間としての尊厳が傷つけられたなというふうにすごく思ったんですよね。

この法案が、今回のマイナンバー法の法案というのがそんなことに全然関係ないのかというと、やっぱり、例えば家族の負担が、これ申請主義に変えられて、それがまた家族が管理をしなければならないと。そのことが、高齢者同士の例えば夫婦だったら、そのことを忘れていたからその人が医療を受けれなかったというようなことで、全額負担になるような状況があって、それがあるからもう医者が行けないみたいなことで、その人が亡くなったみたいな状況になったら、本当に介護している側にもやっぱり精神的というか、非常につらい思いになりますし、そういうことになるならやっぱり、高齢者、障害者がやっぱり不利益な存在だということの存在になってしまうというような現状が今までもずっとあったわけなので、そのことをやっぱり、しっかり分かっていただきたいという思いで、きつい言葉ではありますけれども、書いたというようなことなんです。

だから、やっぱりそういうこと、不利益を、社会的におとしめるようなものにやっぱりこれがなってしまうというようなことをどう解決していくのかということを抜きにして、マイナンバーカードの利便性みたいなことだけを言うということ自体、そして強行してしまうみたいなことだけはないことを改めて最後に発言したいと思います。

ありがとうございます。

○山下よしき ありがとうございました。重い言葉だと思います。

もう最後ですので、石井参考人にお伺いしたいと思います。

今の発言も受けてですけれども、私は、デジタル化で社会全体が便利になる、新たなサービスが誕生するとうたわれる一方で、それに対応できない弱い立場に置かれている人々がより困難となったり排除されるようなことが絶対にあってはならないと、そう考えますけれども、デジタル情報分野でいろいろ研究されている石井参考人、御認識いかがでしょうか。

○参考人 石井夏生利 中央大学国際情報学部教授 ありがとうございます。

山下委員のおっしゃるとおりだと考えております。

社会の技術発展がもう目覚ましいスピードで進んでおりますので、行政手続のところだけ紙が残ったりオフラインの手続でずっといくとなってしまうと、社会全体の動きと乖離してしまうという面があると思います。ですので、公的部門のDXはまず必要だとは思っていると、それが全体的な政策の在り方としてはそうだと考えます。

他方で、困難を抱えておられる方のケアがきちんとできない制度設計を推し進めてしまうというのは、それは非常に慎重に考えないといけないところだと思いますので、例えば、本日のお話を伺っていて感じたところを申し上げますと、顔写真付きのマイナンバーカードを取得させることに困難がある場合にはその例外を設けるですとか、あとは、資格確認書の申請主義、それの問題があるということですので、その申請主義を改めるような手当てができないか、さらには、保険証自体を預ける運用自体に問題があったんじゃないかと思いますので、マイナンバーカードになると更にリスクが高まるという面はあろうかと思います。その運用の問題も含めて、改めて今後対応を考えていくということは必要であろうと思いました。

以上になります。

○山下よしき ありがとうございました。終わります。

○鶴保庸介委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

参考人の皆様に一言御礼を申し上げたいと思います。

参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見を賜りましたこと、改めて御礼を申し上げます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

本日はこれにて散会いたします。