日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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G7交渉内容を偽る 環境省「要点」削除要求 熱中症死者エアコン未使用が大半 生活保護の夏季加算必要

参議院環境委員会 2023.4.27
速記録 資 料 動 画

G7「アンモニア混焼評価」と交渉内容偽るー環境省「要点」から削除要求

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(写真)質問する山下芳生議員=27日、参院環境委

日本共産党の山下芳生参院議員は27日の参院環委員会で、G7境大臣会合の合意文書の内容が、環境省がまとめた「要点」ではゆがめられている問題を追及しました。

日本は、既存の石炭火力発電所でのアンモニア混焼を「ゼロエミッション火力発電」と称して、合意文書の中で電力部門の脱炭素の柱の一つに位置付けようとしました。しかし、英国が「石炭火力の延命につながる」、米国も「エネルギー転換の先延ばしになり、コストもより高価になる」などとして厳しく批判、複数の国が合意文書からの削除を求めたと報道されています。山下氏が交渉経緯をただすと、西村明宏環境相は「ケリー米大統領特使が懸念を示した」と認めました。

こうした議論を踏まえ、G7合意文書では、アンモニア混焼について、「1・5度目標と整合する場合」などと厳しい条件が付けられた上で「検討している国があることにも留意する」との表現になりました。ところが、環境省がまとめた「合意文書の要点」では「脱炭素化に資するということが明記された」とされています。山下氏は「会議の到達を偽るものだ。削除すべきだ」と迫りました。

西村大臣は「『留意する』が正式な文書。要点は事務方が取りまとめた」と答弁。山下氏は「要点のまとめ方があまりに意図的だ。脱炭素に逆行し、国際社会の信用を失う」と批判しました。

 

熱中症死者エアコン未使用が大半ー生活保護の夏季加算必要

日本共産党の山下芳生参院議員は27日の参院環委員会で、熱中症対策について質問しました。

山下氏は熱中症による死亡者が世界でも日本でも急増しており「日本では熱中症死亡者の八割がエアコンを使用していなかった」と指摘。大阪生活と健康を守る会のアンケートでは、夏の電気代が三千円以上跳ね上がった人が50%以上おり、「エアコンをつけるために食費を削った」などの声を紹介。「熱中症対策として最も効果があるのは、電気代の援助だ」と生活保護への夏季加算を求めました。

羽生田俊厚労副大臣は「2014年調査では夏季に光熱費が増加していない。昨年の夏季の生活費全体も増えていない。慎重に検討したい」として消極的な答弁に終始。

山下氏は「熱中症による死亡者は2014年以降、急増している。電気代も上がっており『怖くてエアコンを一回もつけなかった』人もいる。新しいデータと知見を踏まえ、すみやかに実施すべきだ」と迫りました。

 

速記録を読む

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
気候危機、温暖化の進展は世界的に深刻で、欧州では昨年、熱波により少なくとも一万五千人が死亡したとされております。この資料一に、日本でも熱中症による死亡者が急増していることを示しました。僅か二十年間の間に、年間二百人前後の死亡者が、一千人を超えるというところまで急上昇しております。
資料二に、環境省の資料によりますと、昨年夏の東京二十三区での熱中症による死亡者二百六人のうち、屋内での死亡者が百九十四人と、ほとんど屋内で亡くなっている。さらに、その九割がエアコンを使っていなかった。したがって、熱中症死亡者全体の八割はエアコンを使っていれば助かっていたかもしれない人たちだということになります。
資料三は、昨年、大阪の生活と健康を守る会の皆さんが生活保護を受けている方に行った夏の電気料金、冷房費についてのアンケートであります。普通の月に比べて夏の電気料金が三千円以上跳ね上がった人が五〇%以上おられます。五千円以上跳ね上がった方も三〇%おられます。
資料四には、その方々の生の声を紹介しております。エアコンを付けるために食費を削ったとか、電気代が怖くてエアコンを一回も付けなかったなどの声が紹介されております。エアコンを付けなければ電気代は上がらないので、先ほどの数字は抑制された数字とも言えると思います。
今日は、羽生田厚生労働副大臣にお越しいただいております。ありがとうございます。
私は、こうした状況を踏まえるなら、特に低所得層の熱中症対策として、亡くなる人を減らす対策として最も効果があるのは電気料金の援助ではないかと思うんですね。生活保護には冬場の暖房経費を加算する冬季加算がありますけれども、熱中症対策としての夏季加算も実施すべきではないかと思うんですが、副大臣、いかがでしょうか。

○副大臣(羽生田俊君) 今お話出ました基準でございますけれども、生活保護基準ということにつきまして、一般国民の消費実態との均衡上の妥当な水準を維持する水準均衡方式の考え方の下、社会保障審議会生活保護基準部会における検証結果、あるいは社会経済情勢等を踏まえて厚生労働大臣がこの枠を設定しているというものでございます。
平成二十六年のこの生活保護基準部会では、冬季加算の検証を行っており、その中で夏季も含めた一年間を見ているわけでございますけれども、各月の光熱費の支出額を比較をしておりますけれども、その支出額が増加する月を確認したところ、夏季には光熱費の支出額が増加しているという実態が確認できなかったというのがこの基準の実態の結果でございました。
また、昨年の生活保護基準部会における生活扶助基準の検証では、低所得者世帯における各月の生活費全体の支出額の動向を確認したところ、夏季の支出額が年間平均と比較して高い水準にあることは、これも確認できなかったというものでございます。
これらの実態を踏まえれば、夏季加算の創設は慎重に検討していかなければいけないというふうに考えているところでございます。

○山下芳生君 副大臣、是非このデータをもう一遍見ていただきたいんですけど、大臣がおっしゃった平成二十六年の検証、その後ですね、ずっとこの熱中症で亡くなる方が急増しているんですよ。
それから、先ほど紹介した大阪の事例は、これは昨年の生活費の中の電気代ですけども、先ほど大臣、昨年の生活費全体の支出とおっしゃったけど、電気代は昨年非常に上がっている方が保護世帯で少なくないんですね、半分はもう三千円以上上がっているわけですから。したがって、それが怖くてエアコンを付けていない方いるわけです。で、亡くなっている方も少なくないわけですから、私は、こういう新しいデータ、知見を踏まえて、やはり生活保護の夏季加算を速やかに実施するよう真剣に検討すべきではないかと思うんです、こういう状況を見ればですね。
私、僣越ながら、大臣の経歴を見せていただきましたら、長年医師として健康を守りながら、国民を守りたい思いで政治の場に身を転じたというふうに書いておられます。まさに国民の身を守るという点で、大臣に最もふさわしいのがこの生活保護の夏季加算を実施するということではないかと思うんですが、もう一度新たな到達踏まえて、ペーパーいいですよ、もう、政治家として話しているんだから、そうですね、大臣。

○副大臣(羽生田俊君) 一般国民とのやはり消費水準というものとの均衡をどう図るかというところが非常に、大変大切なところだということは一つ言えると思うんですけれども、このためには、年間を通してのこの生活付与基準というものをつくらなければならないというふうに考えておりまして、これ一年間通して結果を出したわけでございますけれども、その間に、特に夏には、冬場は確かに高くなっておりますけれども、夏場には高くなっていないというのが実態でございますので、その点から、今いわゆる社会保障審議会の生活保護基準部会においてこの結果からどういったことをすべきだということが出てくるわけで、それによって大臣が設定をしているということになりますので、そういった基準から判断をしているわけでございますので、その判断はいわゆる全体的な社会情勢というものの中で余り差が付くというわけにはいかない。そういう基準に沿った形で生活保護の付与時にも、それを使って基準を出しているということでございますので、この点は御理解いただきたいというふうに思います。

○山下芳生君 極めて残念ですけどね。さっき生活費全体がとおっしゃいましたけど、私、事例で言いましたよね、電気代上がるの怖くて付けない、あるいは付けたら食費を削っていると。そうしたら生活費全体上がらないんですよ。そういう切実な実態が生活保護世帯の方にはある。それが猛暑の中で、温暖化の中でより深刻になり死亡者の急増につながっているということを見ないと、私は厚生労働行政として過つと思いますよ。
是非もう一度、真剣に検討していただきたいということを申し上げて、次のテーマに移りたいと思います。
言うまでもなく、CO2の排出を大幅に抑えて温暖化の進展を食い止めることが根本的な熱中症対策であります。しかし、先日の札幌でのG7環境大臣会合で、日本は議長国でありながら、他の六か国が石炭火力の期限を切った廃止を共同声明に盛り込むよう主張したことに対して、これに反対し足を引っ張った。極めて残念な恥ずべき態度だと、私は言わなければならないと思います。
一方で、日本は、既存の石炭火力発電所でのアンモニア混焼をゼロエミッション火力発電と称して、共同声明の中で電力部門の脱炭素の柱の一つに位置付けようとしました。しかし、他のG7諸国から批判が相次ぎました。
資料五に、アメリカから参加されたケリー大統領特使の、これは会合後のインタビューですけれども、掲載しております。ケリーさんは、アンモニア混焼について、既存の火力発電を維持し、エネルギー転換の先延ばしになるとか、コストもより高価になると厳しく批判をしておられます。いずれも的を射た指摘だと思います。
それから資料六に、毎日新聞のG7環境大臣会合の報道記事を載せておきました。赤い線引っ張っていますけど、日本は今回、混焼技術の推進に支持を得ることを狙ったが、英国などが混焼はCO2を十分に削減しないなどと反対、共同声明では条件付で利用を検討している国があることに留意するとの記述、記載にとどまったと。
それから資料七、これは日経新聞ですけれども、石炭火力でアンモニアを混焼する取組にも批判が相次いだ、アンモニアだけを燃やせば温暖化ガスを排出しないが、本格的な商用化の目標期限は四十年代以降になる、英国のシャップス・エネルギー安全保障・ネットゼロ大臣は、石炭の温存につながると指摘する、発電へのアンモニアの活用にはG7の複数の国が明確に反対し、声明からの削除を求めたということになっております。
各紙の報道では、他のG7各国からアンモニア混焼への痛烈な批判が続出したと伺いますが、西村大臣、こういうことだったんでしょうか。

○国務大臣(西村明宏君) G7の会合において様々な意見交換をさせて、議論をさせていただいたところでございますけれども、そうした交渉の内容について詳細にお話しするのは外交上控えさせていただきますが、その上で申し上げますと、ケリーさん始め、それぞれそういった思い、各国の代表としての考えというので、ケリーさんがこういった懸念を示したという状況はあったというふうに考えております。
ただ、そうした上で、各国様々、イギリスの話もありましたけれども、その国の状況を踏まえながら、各国が自らの国の考えを開陳して、そしてその上で、我が国としても、一・五度目標、これの達成のために石炭火力発電につきましてはできる限り発電比率を引き下げていくことが基本であるということを説明したところでございます。また、二〇三〇年に向けての非効率石炭火力のフェードアウトを着実に進めること、また、二〇五〇年に向けては、水素、アンモニア、CCUSの活用等によりまして脱炭素型の火力に置き換えていくという我が国の取組方針を説明したところでございます。
そうした上で、今回のコミュニケという形で取りまとまったわけでございまして、このコミュニケの中にあるとおり、気候変動への具体的な取組については、各国の実情を踏まえた多様な道筋や選択肢が存在する、一・五度目標の達成に向けて、引き続き、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェードアウトは重要であり、環境省としてもこういった取組を着実に進めていきたいというふうに考えております。

○山下芳生君 かなり厳しい意見が出たということを否定はされませんでした。
そういう議論を踏まえて、資料八に示したような共同声明がまとめられ、この資料八は、そのうち、水素、アンモニアとその混焼に関わる部分を抜粋したものであります。
赤線の前の部分で、水素、アンモニアは、排出削減が困難な産業、鉄鋼とかセメントだと思います、それから運輸、航空だとか船舶だと思います、では脱炭素化を進めるための効果的な排出削減ツールと評価されております。これは国際的に、こういう部門でなかなかCO2を出さないというのは難しいので、そこは水素で置き換えるということが、ここは合意されていることなんですが、しかし、その後の赤線引っ張った、発電部門での水素、アンモニアについては、多くのG7各国が削除を含めて反対が相次いだ結果、この赤線部分のような表現になったわけです。
要するに、日本が進めるアンモニア混焼、ゼロエミッション発電については、様々な条件が付けられた上で、そういう国があることにも留意しましょうという記述になっているわけです。
その様々な条件の一つは、大気汚染を回避することというふうになっております。アンモニアは燃焼すればNOxなどの有害物質が発生するわけで、二〇%でも出ますけれども、それ以上になったら、アンモニア混焼での有害物質の除去はまだ実証段階だと聞いております。
それから二つ目の条件は、一・五度への道筋及び二〇三五年までの電力部門の完全又は大宗の脱炭素化という我々の全体的な目標と一致する場合ということになっている。すなわち、決定的なこの十年の大幅削減に間に合うようにできるんだったらということですが、しかし、アンモニア混焼は技術的にも供給の面でも実用化のめどが立っておりませんので、この条件は全く満たす展望はありません。
それから三つ目、水素、アンモニア自身を低炭素及び再生可能エネルギー由来とすることも付されております。再エネで水素を作るか、アンモニア作るか、あるいは低炭素、つまりCCUSなど、CO2を回収することで作るかということですが、そのめどは立っておりません。また、コストも膨大なものとなります。
したがって、他のG7諸国は、アンモニア混焼が脱炭素を遅らせることになり、これを進める合理的理由はないとして、共同声明に盛り込むことに反対したんだけれども、議長国が進めるわけですから、まあまあそこは折り合い付けたということでしょうか、議長国の顔を立ててこういう表現になったということだと思うんですが、ちょっともう時間ないので、そのことについての感想は聞きません。
私は、こういう議論を経てこういうコミュニケになった。いろんな条件を付されて、本当はやりたくないんだけど、本当はもうやめた方がいいんだけど、まあそういう国もありますねというふうになったこのコミュニケが、資料十ですけれども、コミュニケの要点というところにどう記載されているかなんですけれども。これ見ますと、水素、アンモニアのところ、上から一、二、三、四ポツですね。水素、アンモニアが様々な分野、産業、ここで脱炭素化に資するというのはさっき言ったとおりです、運輸だとか鉄鋼、セメントではね、これはまあいいでしょう。しかし、その後です。さらに、ゼロエミ火力に向けた電力部門での脱炭素化に資するということが明記されたというふうに書いてあるんですよ。
これは、アンモニア混焼は脱炭素に逆行するという厳しい批判が出てコミュニケになったのに、それを要約したら、要点にまとめたら、電力部門での脱炭素化に資するとなっちゃっていると。これは、これは会議の議論の中身と到達を偽るものじゃないですか。これで私、説明昨日受けたんですよ、交渉に当たった官僚の方から。余りこんな、全文でこんなの説明しませんでしょう。この要点で説明しているんですよ。その説明する中心にあるゼロエミッション火力が電力部門の脱炭素化に資するなんてね、そんな議論に反するようなのを書いちゃ、これ駄目ですよ。
大臣、これは、これは、私、このままにしておくわけにいかないと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(松澤裕君) 先生御指摘のアンモニア、これを既存の火力発電所のレトロフィット対策として活用していく、これについては、IEAの二〇五〇年ネットゼロエミッションというレポートの中で対策の一つとして位置付けられています。
二〇五〇年のそのネットゼロ、そのときの水素とかアンモニア、いわゆる水素ベースの燃料による発電というのは、二〇五〇年におけます世界の発電量の二・五%、これがIEAが示している二〇五〇年ゼロエミッションシナリオの中に入っております。
そういったことを踏まえて、我が国はG7の今回の大臣会合において我が国の事情を説明して各国に理解を求め、G7の大臣会合のコミュニケでも、各国のエネルギー事情、産業、社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、それらがネットゼロという共通目標につながることを強調すると、このようにコミュニケに位置付けられています。
そういったことを踏まえて、先生が御紹介いただきましたパラグラフで、我が国が取り入れようと、チャレンジしようと考えているアンモニア混焼、最終的にはブルーアンモニアとかグリーンアンモニアによる一〇〇%専焼と、こういうところに持っていく必要があると考えておりますけれども、そういったことがこのような形で各国の理解を得て位置付けられたと。
それを踏まえて、御指摘のこの資料十、ゼロエミ火力に向けた電力部門での脱炭素化に資すると、このようにさせていただいたということでございます。

○山下芳生君 まあいろいろおっしゃいましたけど、G7環境大臣会合のコミュニケはこれなんですよ、資料八なんですよ。この中には今おっしゃったようなことは一切ないんですよ。懸念がいっぱい付されていて、やるんだったらこういう条件の下でですよねと、そういう国もありますよねとなっているだけであって、今あなたがおっしゃったようなこと一切書いてないですよ。要点というのはこの要点ですよ。この要点をまとめたのに、何で電力部門での脱炭素化に資するというふうになるんですか。反するという、逆行するという批判がいっぱい出たのにね。
これは、大臣、大臣に聞きましょう。ちょっとこれは、これで説明されるんですよ、みんな。私も昨日これで説明受けたんですよ。ちょっとずれています、ずれ過ぎていませんか。(発言する者あり)いやいや、もう大臣でいいですよ。さっきのもう説明、説明になってないんですから。大臣に、いや、大臣でいいです。あなたにもう聞きました。大臣、これはよく考えなければならない。私は、これ削除すべきだと思う、書き換えるべきだと思う。大臣、いかがですか。

○国務大臣(西村明宏君) この検討する国があることにも留意するというこの文書、これが正式な文書でございます。
そして、その要点をまとめるに当たっては、これまでの交渉の経緯等々、そしてその中身を熟知している事務方において要点として取りまとめたものだというふうに承知しております。

○委員長(滝沢求君) 時間が過ぎていますので、おまとめください。

○山下芳生君 はい。
もうその要点のまとめ方が余りにも意図的で、やはり石炭火力発電にしがみついている日本らしいまとめ方に残念ながらなっていると。こういうことをやっていると、脱炭素に逆行すると、世界からも本当に信用を失うということを申し上げて、終わります。