日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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国が安全性の確保を 奈良太陽光 「偽装」を告発

参議院環境委員会 2023.3.17
速記録 資 料 動 画
写真

(写真)質問する山下芳生議員=17日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は17日の参院環境委員会で、奈良県平群町における盛り土造成地でのメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業について質問しました。

同事業では、雨水を排出するための接続水路が、急勾配で「偽装」申請されていることが住民の指摘で施工後に発覚しました。実際は、勾配は緩く十分な排水ができません。昨年6月に県の命令により工事が一時停止しました。

その後、変更申請が出されましたが、それについても50年に1度の雨量で調整池から水があふれだすことが、住民による厳密な計算で明らかになりました。しかし、県は簡易な計算で同申請を認めました。周辺住民の間では不安が募っています。

山下氏は「県任せでは安全が確保できない。(国が)確認すべきだ」と主張しました。国土交通省の審議官は「県の判断となるが、今後注視したい」と答弁。西村明宏環境相は「地域とのトラブルになっているのは残念」「土地の安定性が確保されるのは重要だ」と答えました。

速記録を読む

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
前回、日本での再生可能エネルギーの導入が二〇三五年までに七割まで可能だというアメリカの国立研究所のレポートを取り上げました。再エネの大量導入を進める上で、地域住民の合意、安全の確保が重要だと考えます。
その観点から、今日は、奈良県平群町で進んでいるメガソーラーの問題を取り上げたいと思います。
資料一にメガソーラーの計画地の航空写真を添付しました。この赤い部分、生駒平群発電所と示された場所がメガソーラーの予定地ですが、甲子園球場の十二倍、四十八ヘクタールの山林に太陽光発電のパネルを並べる計画ですが、十分な住民の合意なしに事業が進められ、人口一万八千人の町で千人が集団訴訟を起こしました。
住民が不安を抱く問題の一つが、果たして安全が確保されるのかという問題です。この予定地は、山の中の谷筋を産廃混じりの盛土で埋め立てて造成されました。そこに大量のソーラーパネルを設置しようとしております。この写真にあるように、予定地の直下には集落があります。その下流には密集した住宅があり、二千五百戸に五千七百人を超す人々が住んでおります。住民は、数年前に発生した静岡県熱海市での盛土崩壊による土石流災害のようなことが起こらないかと不安を募らせています。
そこで、計画では、メガソーラー予定地に降った雨水を水色の線で示した水路二本で排出するということにしています。
さらに、資料二に添付した生駒平群発電所土地利用計画図がありますけれども、この図は資料一の赤い部分を九十度右回転させたものなんですが、この計画図の水色の部分に調整池を四か所設けて、水路に流し切れない水をここにためて、水路があふれないように調整することにしております。
ところが、工事が着工された後、この事業の計画書に偽装があることが発覚いたしました。資料一に戻っていただいて、この上側の水路の勾配が上流から下流まで一律に一八%という、まるで滝のような急勾配とされていて、流速二十ないし三十メートル毎秒という、まさに滝のような流速で雨水を排出するということになる計算がされていたわけであります。しかし、実際の水路の勾配は七%ほどしかなく、十分に雨水を排出できないことが分かりました。
実は、奈良県はこの偽装に気付かないまま計画を認めて、工事が着工された後で住民の方、まあ土木の専門家の方もいらっしゃいますので、見付けて指摘をした。で、指摘を受けて、奈良県は昨年六月に工事の一時停止命令を県として出しました。こうした指摘を受けて、事業者は、この実際の勾配が七%しかなかった水路の一部を拡幅すると、幅を広げるという計画の変更を行いました。
ところがですね、ところが、ところがなんですけれども、変更された計画にも大きな問題があることが分かった。五十年確率の雨量の場合、十二時間で調整池全体の容量を上回ってしまい、調整池から水があふれ出すことが分かったわけです。
資料三に、住民の中の土木の専門家が国交省の技術指針に基づいて調整池の貯留量の変化を計算し、グラフ化したものを掲載いたしました。横軸を経過時間、縦軸を貯留水量としています。
五十年確率の降雨を見ますと、この青い棒で示したように、降雨量には短時間に大量の降雨が集中するピークがあることが分かります。降雨にはこういう高いピークがあることを考慮して、十分単位に調整池の貯留水量の変化を厳密に計算した結果がこの赤い曲線で示されております。
御覧のように、降雨ピーク時の直後から調整池から水があふれることになる、実はこれも行政ではなく住民が指摘したものなんですけれども。にもかかわらず、奈良県はこの変更申請を認めてしまっております。
したがって、この住民は本当に安全は大丈夫なのかと一層不安を募らせているわけですが、私、二年前、この平群町のメガソーラー計画について当委員会で質問いたしましたが、当時、小泉大臣は、全国で、事業者の進め方、また地域の皆さんの思いがうまくまとまらず、再エネ全般に対するイメージが悪くなっている、危機感を持っていると答弁されました。
そこで、西村環境大臣に伺いたいんですが、残念ながら、報告したように、この平群町では住民の不安は解消されることなく、新たに募っております。不安が解消されることのないまま事業が強行されております。私は、こんなことが続けば再エネ全般に対するイメージがますます悪くなってしまうんじゃないかと。ゆゆしき問題だと大臣は思わないでしょうか。

○国務大臣(西村明宏君) この奈良県の平群町の案件に関しましては、先ほど委員からもお話あったように訴訟係属中ということで承知しておりますので、これに関する言及は差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げますと、いかなる規模の再エネでありましても、地域との合意形成を怠ったり、また環境への適切な配慮がなされないことなどによりまして地域とのトラブルに発展する事業があるということは大変残念に思っております。このようなことがないように地域共生型の再エネ事業を推進することは重要であるというふうに考えております。
環境省としては、本件のように法や条例のアセス対象にならない規模の太陽光発電事業につきましても、適切に環境配慮がなされて、そして地域との合意形成が図られた事業が実施されることを目的といたしまして、太陽光発電の環境配慮ガイドラインといったものを策定しております。事業者においても、このガイドラインを踏まえて地域との合意形成を丁寧に図るということが必要だというふうに考えております。
また、環境省といたしましても、自治体の方から御相談がありました場合には丁寧に対応してまいりたいというふうに考えております。

○山下芳生君 この平群町のメガソーラー事業には、環境省だけではなくて各省庁が関係しております。住民の不安が払拭されるように各省庁が責任を持って対応する必要があると考えますが、国交省、経産省、林野庁のこの問題での御認識、伺いたいと思います。

○政府参考人(菊池雅彦君) お答えいたします。
奈良県平群町のメガソーラー事業によって造成される盛土につきましてお答えを申し上げます。
御指摘の盛土造成地につきましては、奈良県において盛土造成地の計画を審査した上で、宅地造成等規制法に基づき許可を行ったものと聞いております。
同法に基づく許可は奈良県の判断となりますが、国土交通省といたしましては、奈良県を通じて今後の事業の状況等を注視してまいります。
以上でございます。

○政府参考人(山田仁君) お答え申し上げます。
再エネ特別措置法におきましては、再エネ特措法におきましては、発電事業者に対しまして他省庁所管の法令や条例を含む関係法令の遵守を求めておりまして、違反した場合には指導や改善命令、認定取消しも含めまして厳正に対処していくこととしております。
また、地域との適切なコミュニケーションを努力義務として求めているところでございまして、議員御指摘の事案につきましても、地域と共生しながら適切に再エネ事業が行われるよう、経済産業省としても、事業者や関係省庁、関係自治体にも継続的に状況を確認しながら厳格な対応を行ってまいりたいと考えております。

○政府参考人(小坂善太郎君) 林野庁でございます。お答えさせていただきます。
奈良県の平群町で計画されているメガソーラー事業につきましては、令和元年十一月に林地開発許可がされたものの、その後、議員御指摘のとおり、開発計画に誤りがあることが判明したことから、その誤りを是正した変更計画を再度奈良県が審査し、森林審議会による審議を経て、本年二月二十四日に許可されたというふうに聞いております。
御指摘の洪水調整池の、洪水調節池の設計についてでございますけれど、奈良県の場合は、開発予定地が大和川流域における総合治水の推進に関する条例の対象流域にある場合は、林地開発の許可に当たって当該条例に基づく基準を、より厳しい基準を満たす必要があるというふうにしておりまして、本計画においても本基準により適正に審査されたものというふうに聞いております。
また、地域の住民の方々、開発計画に対して災害の発生への懸念を抱いているということに対しましては、奈良県としても、許可に当たって、事業者への、着工前に地域住民への説明を実施するよう指導しているというふうにも聞いております。
農林水産省といたしましても、開発行為の適正な実施等により住民の方々の懸念の払拭が図られるよう、引き続き、開発状況を注視しながら、必要に応じて奈良県に対して助言するなど、そういった取組を進めてまいりたいと考えているところでございます。

○山下芳生君 私が何でこんなことが起こるのかなとちょっと思うのは、要するに土木の専門家の方が、資料三に示したような五十年確率の雨量の場合、貯水池はあるけども、排出する量よりも雨量がたまっていく量、その時間的経緯によるとあふれちゃうという計算を十分間隔で厳密にやっているんです。ところが、オッケーとなっているわけですよ。
国交省に伺いますが、国交省の宅地開発に伴い設置される浸透施設等設置技術指針というのを私手元に持っております。この五ページに、オフサイト貯留施設の調節容量算定手順というものが記されております。読み上げます。調整池等のオフサイト貯留施設の洪水調節容量は、開発後における洪水流量を開発事業区域下流河川等の許容放流量の値まで調節するために必要な容量であり、その算定は次の手順によるものであると。要するに、川があふれないように調整するのが調節池、調整池なんだと。その調整池の容量は次のような手順によると、一、二、三、四、五、六とあるんですけれども、四番目に簡易式による必要調節容量の概算とあります。で、最後、六番目に厳密計算法による貯留追跡計算とあります。
資料三は、厳密計算法による貯留追跡計算、この国交省の技術指針にのっとって土木の専門家がやったものなんですよ。ところが、奈良県の事業者、平群の事業者は、この厳密計算ではなくて簡易式による概算でしかやっていないということが指摘されています。
これ、国交省、これ六番までやらないと技術基準に違反することになりませんか。

○政府参考人(菊池雅彦君) お答えいたします。
御指摘のありました開発に伴う調整池整備につきましては、開発行為に伴う雨水の貯留を適切に管理する観点から、奈良県において県が作成した技術基準に基づいて判断しているものというふうに考えております。
以上でございます。

○山下芳生君 じゃ、これ、守らなくてもいいという基準なんですか。何のためにあるんですか。

○政府参考人(菊池雅彦君) 繰り返しになりますが、御指摘のありましたこの調整池整備につきましては、奈良県の方でその雨水の貯留量、流水量を適切に管理する観点から、県が作成した技術基準に基づいて判断しているというようなことになってございます。
以上でございます。

○山下芳生君 答弁になっていないんですけどね。
私は、奈良県のその基準はこの基準にのっとっていないと、簡易式で終わっちゃっていると。しかし、厳密な、厳密計算法によれば、あふれるということが指摘されているわけですよ。今の答弁だけだったら、無責任ですよ。
奈良県がどういう基準でやったのか、ちゃんとこの指針にのっとった基準になっているのか、国交省は調べるべきだ、そして林野庁も同じく調べるべきだと。奈良県が言っているからいいですではならないんじゃないですか。実際にこの命の危険が具体的にはこの国交省の技術基準に基づいて心配されているんですから。いかがですか。

○政府参考人(小坂善太郎君) 林野庁でございます。
林野庁の方におきましても、奈良県に確認しているところでございます。
大和川の、済みません、大和川の基準というお話をさせていただきました。そのときに、一ヘクタールまでの開発の場合は、大和川流域調整池技術基準、これを用いて計算すること、さらに、五ヘクタールを超える場合は、宅地及びゴルフ場等開発に伴う調整池技術基準、より厳しい基準で計算すること、その二つを比較して容量の多い方を選択することというふうに奈良県の方では基準を作っているというふうに聞いております。
今回の場合は五ヘクタールを超えますので、いわゆる簡易かどうか分かりませんけれど、いわゆる大和川の基準が低い方じゃなくて、より厳しい宅地及びゴルフ場等開発に基づく基準に基づき計算し、特に地域の方が言われている狭窄部、細いところがあふれるかどうかということ、そこも加味して計算しているというふうには奈良県から聞いておりますので、そういったことで奈良県が判断されたのかなというふうに思っているところでございます。

○山下芳生君 あのね、奈良県の判断では心配だと住民の方が言っているんですよ。これに、この国交省の技術指針を踏まえられていないんじゃないかと、住民の方は国交省の技術指針で計算したらあふれるということになっているんですからね。奈良県が奈良県が言っている場合じゃないでしょう。
国交省、奈良県にどういう計算したのかちゃんと確認するべきではないですか。当たり前じゃないですか。

○政府参考人(菊池雅彦君) お答えをいたします。
御指摘のありました件でございますが、これは奈良県において宅地造成規制法に基づいてこの造成の計画を審査した上で許可を行ったものでございます。同法に基づく許可は奈良県の判断となるところでございます。
国土交通省といたしましては、奈良県を通じて、今後の事業の進捗などをしっかりと注視してまいりたいと思っております。
以上でございます。

○山下芳生君 ちょっともう環境大臣に聞きましょう。ちょっと役人の方ではのりを越えられないというか、またそののり自身がおかしいなと私思いましたけど。
こういう本当、具体的な技術基準を踏まえた心配がされております。こういうことをどんどこどんどこやっていると、再エネの大量普及には逆行する、マイナスイメージが広がると思いますね。
ちょっと奈良県の状況、大臣からも各省庁とも相談して、どういうこの基準でこれが進められているのか、やっぱりちょっと奈良県の状況をお聞きいただく必要があると思いますが、いかがですか。

○国務大臣(西村明宏君) これから再エネというのはしっかり進めていかなければならないというふうに思っております。その上で、今の議論聞いておりましたけれども、こういった事業を行うにおいてのその土地の安定性含めた基準というものはしっかり確保されていくということがこの再エネの進展にとって重要だというふうに考えております。
ちょっと国交省の基準とその県の基準というところの整合性について私承知しておりませんけれども、しっかり土地の安定性を含めた地域住民の皆さんの安全、安心な気持ち、そして状況、これをつくり上げていくように努力してまいりたいというふうに思っております。

○山下芳生君 是非よく見ていただきたいと思いますね。
それで、もう時間がちょっとたっちゃったんで、PFAS、PFOAについてはもうできませんので、私、もう非常にこれは健康に大きな影響がある、心配されている方がたくさんいらっしゃると、次回やりたいと思います。
今日は終わります。ありがとうございました。