日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

国会論戦Pick Up

掲載のない会議録については、国会会議録検索システムをご利用ください
会期を選択できます

再エネ大量導入可能  原発推進転換求める

参議院環境委員会 2023.3.9
速記録 資 料 動 画
写真

(写真)質問する山下芳生議員=9日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は9日、参院環境委員会で、再生可能エネルギーの大量導入は可能だと主張しました。

山下氏は、再エネは「安定供給に不安がある」「コストが高い」「日本は適地が少ない」などと言われるが、米ローレンス・バークリー国立研究所の最新のリポートによれば、日本でもこれらの問題を克服し、2035年には再エネの比率を70%にまで増やす大量導入が十分可能だと指摘しました。

また、同研究所の費用最小化に基づく分析では、再エネコストが石炭火力を下回るほか、当面は太陽光と蓄電池の普及を進めながら、中長期的には風力発電と送電線網の整備を進めれば、電力の安定供給を確保したうえで再エネの大量導入が可能だとされていると紹介しました。

西村明宏環境相は「今後の再エネ拡大に参考になる」と答弁。山下氏は「科学が明らかにした可能性をどう確実のものとするか、ここに政治の役割がある。石炭火力の延命と原発推進政策の転換が必要だ」と主張しました。

速記録を読む

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
三月一日、米国のローレンス・バークリー国立研究所などのチームが、二〇三五年日本リポート、電力脱炭素化に向けた戦略を発表しました。資料に、著者の一人である同研究所の白石賢司氏による同レポートの説明資料を配付しております。
このレポートでは、日本において、二〇三五年の時点で再生可能エネルギーを電源構成の七〇%まで導入することが可能であるとしています。日本における再生可能エネルギー導入の大きな可能性を科学的に明らかにしたものだと注目いたしました。
西村環境大臣、このレポートについて御存じでしょうか。

○国務大臣(西村明宏君) 今御指摘ございました米国エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所が、二〇三五年に向けた日本の電力システムの脱炭素化に関するレポート、これを発表したことは承知しております。
つい先日発表されたレポートを短期間で読み込まれて御質問いただいている山下委員の精力的な活動に敬意を表したいと思います。
このレポートでは、再エネなどのクリーンエネルギーを二〇三五年までに発電電力量の九〇%まで引き上げた場合に、電力コスト、安定供給の確保、温室効果ガスの排出削減の観点から便益があるとの内容が記載されておりまして、今後の再エネ導入拡大に向けて参考になるものと受け止めております。
二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現にはあらゆる施策を総動員することが必要でございまして、このレポートも含め、引き続き、様々な知見を参考にしながら再エネ導入拡大の取組を進めてまいります。

○山下芳生君 精力的にという御評価いただきましたが、是非大臣に再エネ導入のために精力的に頑張っていただきたいと思っております。
再生可能エネルギーについては、しばしば、安定供給に不安がある、あるいはコストが高い、日本には適地が少ないなどと言われてきましたが、このローレンス・バークリー国立研究所などのチームの最新のレポートは、日本でも再エネの大量導入が十分可能であることを示しております。
私は、この科学が明らかにした可能性をどう現実のものにするか、そこに政治の役割があり、行政の役割があると考えております。その立場から、まず、このレポートがどういう分析方法を用いて日本でも二〇三五年に電源構成で七〇%の再エネ導入が可能であるという結論に至ったのか見てみたいと思います。
このレポートの分析方法の第一の特徴は、一日二十四時間の電力の安定供給を行うために必要な一時間ごとの電源構成、原発、あるいは再エネ、あるいはLNGなどの電源構成を一時間ごとに検討し、その上で季節による変動を加味することによって、一年を通じて電力の安定供給が可能となることを前提にした分析となっていることであります。つまり、電力の安定供給を前提にしても二〇三五年に再生可能エネルギーで七割を賄うことができるということを示したレポートになっております。
資料五ページの下の図を御覧いただきたいんですけれども、これは、一日二十四時間の電源構成の変動を表したものです。月別に若干の違いがありますけれども、太陽光発電の量が多い昼間に発電量が多くなっております。上側にグラフが盛り上がっていることからそれが分かります。この余剰電力を、図の下側への盛り上がり、つまり蓄電池や揚水式水力発電を用いて蓄電すると。その蓄電した電力を夜間に使うということになっております。LNG火力が電源構成の一〇%を占めることに二〇三五年の時点でもなっており、そのLNGで需給の調整を図るというモデルであります。
資料六ページの図は、こうした手法で夏と冬のピーク時、電力需要のピーク時でも電力の安定性が確保できることを示しております。
西村大臣、再エネを大量導入しても電力の安定供給は十分可能であるというこのレポート、大変大事な提起だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(西村明宏君) このレポートは、二〇三五年の電源構成として再エネ七〇%を前提に電力の安定供給を確保できるものとしているわけでございます。
再エネの導入拡大に向けて参考になるものと評価できると思います。
我が国では再エネを最大限導入していく方針でありまして、一方で、再エネ事業の実施に当たりましては地域の合意形成が必要でございます。特に、風力発電に関しましては、長い工期が必要であります。こういった留意すべき点も考慮していかなければならないと思います。
環境省としては、電力の安定供給を図りつつ、再エネの導入拡大を進めるために、今、再エネ設備や蓄電池の導入を支援しているところです。また、環境アセスメント制度や地球温暖化対策推進法、これに基づく促進区域の仕組みなどを適切に運用して、地域における合意形成を図りつつ、環境に適正に配慮し、地域に貢献する再エネ事業を推進してまいります。

○山下芳生君 我が国でも最大限再エネを導入するというふうにおっしゃられましたが、二〇三〇年における再エネ導入の目標を見ると、スペインは七四%、ドイツ六五%、EU全体で七〇、あっ、五七%、アメリカのカリフォルニア州六〇%、ニューヨーク州七〇%となっておりますけれども、日本は御存じのとおり三六ないし三八%ということで、最大導入すると言いながら非常に少ない目標になっているわけですね。これが現実なんです。ここを変えようということがこのレポートから提起されているというふうに受け止めていただきたい。
このレポートの第二の特徴は、費用最小化という手法を用いていることであります。すなわち、費用が最小になる電源構成にするということであります。中期的に見ますと、再生可能エネルギーの導入コストは下がっていく、また化石燃料の燃料費を下回ることになり、コストとして一番安くなると。資料七ページに、再生可能エネルギーの大量普及が世界で進み、そのコストが安くなっていることが、まあ簡単なグラフですけれども、示されています。その結果、資料八ページ上にいろいろなシナリオを分析しておりますけれども、左端のベースのシナリオでは電源構成の七割を再生可能エネルギーが占めることになっていると。シナリオによっては最大再エネが七六%導入することも可能であるということが示されております。
それから、資料八ページの下は、再エネの導入に掛かった固定費よりも、この真ん中の化石燃料の輸入が、輸入費が減っていきますから、そちらの方が大きいんですね。したがって、再エネ導入のコストよりも化石燃料の費用の方が下がり方が大きいわけですから、十分これは採算取れるということになっております。
九ページの上の方を見ていただきますと、再生可能エネルギーの導入で化石燃料の輸入が八五%削減できるということになっております。現在、日本のエネルギー自給率は一〇%ほどしかありませんので、エネルギー安全保障は今大きな問題になっておりますけれども、これ大幅に強化することができるということにもなります。
西村大臣、再生可能エネルギーの大量導入が経済性の面でもエネルギー安全保障の面でも大きな効果をもたらすということは、これはもう明らかではないかと思いますが、大臣の認識伺いたいと思います。

○国務大臣(西村明宏君) このレポートにおきましては、最新のデータ、また将来の不確実性などを考慮してモデルを作成しているということで、再エネ大量導入に向けての参考になるものと考えております。
一方で、再エネのコストにつきましては、米国の将来見通しをベースとして分析しているものでございまして、我が国においては、太陽光の導入拡大に伴い、平地における適地が減少しつつあること、そしてまた、海底地形が急、急深、急に深くなっているもので、洋上風力の拡大に技術的な課題がある、こういった様々な特有の事情があることも考慮する必要があるというふうに考えております。
我が国では、低コストで再エネ導入に向けて、例えば経済産業省のグリーンイノベーション基金等を活用した技術開発の加速化や立地地域における人材育成等、こういったものを通じてコスト低減に取り組んでおります。また、環境省におきましては、再エネ設備と蓄電池の導入を支援することで、コストの低減を促進しているというところでございます。

○山下芳生君 何でアメリカのコストを参照にしているかというと、これはもう説明されているんですけど、このレポートに、国際的に再エネの普及がどんどん広がっているので国際的なコストが低減するということで、これは日本ではなくて米国の数字を用いているということが説明されております。だから、日本の特殊事情もあるでしょうけど、国際的に見て再エネ導入のコストは大きく下がっていくということは間違いないと思うんですよね。
それで、これ後でも出てくるんですけれども、やはりいろんな日本の特別な事情も加味しながら、実際に再エネ導入、この可能性が七割あるというふうに最新の分析で明らかになった、それをいかに実現するかというこの政治の姿勢、構えが問われているんではないかと思うんですが、やはり欧米は、高い炭素価格、カーボンプライシングを設定して、同時に石炭火力発電の廃止の目標期限も決めて、再生可能エネルギーの大量導入に動いております。
特に、ロシアによるウクライナ侵攻以降は、エネルギー安全保障の観点から、自国エネルギーである再生可能エネルギーの大量導入がより進められております。EUでは、再エネの比率がLNGを追い抜いたということになっております。
このレポートの発表に際して開催された日本におけるシンポジウムでは、日本はエネルギーのほとんどを海外に依存しており、一〇〇%国産の太陽光、風力、地熱、小水力、潮力などの再生可能エネルギーを大量導入することは、経済的にもエネルギー安全保障的にも他国に比べて効果が高いということを専門家は指摘しております。
残念ながら今輸入に頼っているだけに、逆に再エネを大量導入することによってコスト面でも経済安全保障面でも非常に効果が大きいということになっておりますが、今そういうことに踏み切るべきではないか、いろいろ導入できない困難挙げるよりも、思い切ってそこに踏み込むことがそういう効果を実際にもたらすことになるんじゃないかと。
これは環境大臣の大きな使命だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(西村明宏君) 先日閣議決定いたしましたGX実現に向けた基本方針、ここにおきましては、例えば直ちに取り組む対応として、太陽光発電、これの適地への最大限導入、また、中長期的な対策といたしまして、系統の整備や出力変動への対応の加速といった内容を盛り込まれておりますけれども、こういったものを活用しながら、しっかりとした対応というのは進めていかなければならないというふうに考えております。

○山下芳生君 今大臣おっしゃったことに関わって、このレポートの分析報告の第三の特徴は、再エネの導入の方法について、今すぐ導入が実現できるもの、今すぐ実現可能なものと、中長期的に準備を進めて導入していくものというふうに分けて、時期をずらして段階的に大量導入することを前提にしているということだと思います。当面は太陽光発電と蓄電池を推進し、中長期的に洋上風力と送電線網の整備を行って再エネによる電力確保を行うと。
おっしゃるように、いろいろ準備が掛かるものもありますからね。しかし、今から準備もしなければならない。
九ページ下には、想定している導入量がどのぐらいの規模と速度になるのかということを九ページ下に示しております。これを見ますと、日本において再生可能エネルギーの新規導入が単年度で最も多かった二〇一五年の導入量九・七ギガワットと比較しても、無理のない導入量になっているわけです。このペースで導入量をだんだん増やしていけば、七割を再エネで賄うことができると、十分達成可能なんだということなんです。
それから、十ページの上、御覧になっていただきたいんですけれども、再生可能エネルギーの、再生可能エネルギー、それから蓄電、それから地域間送電網の整備などに必要な二〇三五年までの累積設備投資額は三十八兆円という試算が出ております。十年余りで三十八兆円ですので、決して高くはないと思われます。先ほど大臣が言った政府のGXでは、今後十年余りで官民百五十兆円の投資が必要となっておりますから、こっちの方がはるかに安くて効果大という試算にもなっているわけであります。
西村大臣、こうして英知を集めれば、日本の豊富な再生可能エネルギーの潜在力を実際の電力として活用することができる、そして経済的にも安全保障的にも非常に大事な効果上げることができる。これ、本当真剣に検討して進むべきじゃありませんか。

○国務大臣(西村明宏君) 再エネの最大限の導入、特に今委員がおっしゃったような、まずは太陽光と蓄電池、そして中長期的に風力というお話ございますが、こういったものをできるだけ速やかに比率を高めていきたいと思っておりますが、今留意すべき、また考慮すべきものとして、太陽光パネルの設置の適地が先ほども申し上げたように徐々に少なくなってきているということ、そしてまた、その設置方法において様々な地域におけるトラブルが生じているというのも事実でございます。
こういったものをよく加味しながら、できるだけ、委員おっしゃるように、再エネの比率を上げてまいりたいというふうに考えております。

○山下芳生君 日本の再エネのポテンシャルの高さは環境省がもう何度も試算しております。電力需要の七倍賄えるんだということも言われております。それを現実化していくのが、私は政治の役割、特に大臣の決意だと思うんですが。
適地が少ないってさっきから何度も言われるんですけど、例えば環境省の調査では、屋根置き太陽光発電の設置可能量だけでも、これまで設置された屋根置き太陽光発電の三十五倍あると。非常にたくさん余力あるわけですよね。それから、ソーラーシェアリング、非常にこれは農業と再エネのセットで進めるという意味で非常に大事な役割を今発揮させつつあるし、広がりつつありますけれども、これも農地の一%にも満たないということになっておりますので、導入の余地は大いにあると。
だから、こういう太陽光の活用を大いに当面進めながら、今から送電網を整備して、五年後、十年後に向けて洋上風力の導入進めるのは可能だと、こういうことをやっぱり環境省が可能だということを示さないで一体誰が示すんだと。難しい難しいと言っているだけでは進みませんよ。
せっかくこういうものが出たんだから、真剣に参考にすると言うんだったら参考にして、こうやりましょうということを出すべきじゃないですか、大臣。

○国務大臣(西村明宏君) 適地が減少してきているというのは事実関係として申し上げているところで、やらないということでは全くございません。事実、その農地における太陽光の設置においても新たな仕組み、そしてまた屋根置きに関しましても自己負担なくやる方法、そういったものも様々検討、そして実証を開始しつつございます。
日本としてできる再エネの導入、これ、アメリカのようにネバダの砂漠のような広大な平地があるわけではございませんので、日本に適した形で、今御指摘あったような屋根置きを含めた、そういった形での再エネの導入、これはしっかり今も検討しつつ、実証化に向けて進めているところでございます。

○山下芳生君 私、再エネ導入がなかなか進まない大きな要因として、やはり日本においては石炭火力発電にしがみついていると、それから原発、このレポートも原発は前提にしているんですけど、原発が推進されているということと非常に大きな関係があると思います。
もう原発、石炭火力はこのレポートには選択肢に入っていないんですよ。二〇三五年、日本において石炭火力ゼロということができると、そうしなければ再エネ普及しないということになっていまして、ましてや、アンモニア混焼って今からやろうとしていますけど論外だと。これコスト合わないですよ。現実可能性も疑問符が付いている。そこに巨額の投資をすることが果たして未来ある投資と言えるのかと。投資するんだったらこっちじゃないかということが問われている。
そして、原発も、私は、地震大国で、かつ東京電力福島第一原発の大きな事故を経験した日本において原発を再稼働し、ましてや新増設など、これは論外だと思います。これだって、どこに造るのと、それこそ適地があるのということになりかねないし、使用済核燃料の問題、一たび事故が起きれば最悪の環境破壊を引き起こし、日本経済に計り知れない被害を長期にわたって与え続けると。それは原発ですからね。やっぱりそういうリスクのない再エネにかじを切るべきだというふうに思います。
最後に、そのために、資料十ページに具体的な政策提言が、あっ、十ページじゃないか、あっ、十一ページですね、されております。これ是非真剣に検討していただきたい。

○委員長(滝沢求君) 山下委員、申合せの時間が参りましたので質疑をおまとめください。

○山下芳生君 分かりました。はい。
まとめます。
これ、書いているとおりです。再エネ発電の導入、石炭火力発電の段階的廃止の目標を設定すること。カーボンプライシングをちゃんとやりなさい。これ炭素価格を上げるべきだと。
今、CO2一トン当たり二百八十九円ですけれども、三五年までに六千円に引き上げれば、石炭火力採算が取れなくなって、九九%がもう廃止されるというふうに見込まれていると。やっぱりそういう政策を導入することによってこの可能性を現実のものにするべきだという提言ですけれども、これ是非具体的に検討すべきじゃありませんか。

○国務大臣(西村明宏君) もう時間も参りましたので、もうとにかく環境省といたしましては、引き続き地域と連携した上で再エネの最大限導入、導入のための取組をしっかりと推進してまいります。

○山下芳生君 終わります。