日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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1.5度目標と整合せず 石炭火力の延命やめよと迫る

参議院環境委員会 2022.5.17
速記録 資 料 動 画
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(写真)質問する山下芳生議員=17日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は17日の参院環境委員会で、「島しょ国にとって2度の温度上昇は死刑宣告だ」として、「COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)では気温上昇を1・5度に抑える目標に合意した」と指摘し、政府の姿勢をただしました。山口壮環境相は1・5度目標は「実行していかないといけない」と答えました。

山下氏は「CO2(二酸化炭素)の累積排出量と温度上昇は比例しており、1・5度まで残された排出可能なCO2の量(カーボンバジェット)は、今のペースでは世界では10年、人口割での日本分は6年で使い切ってしまう。石炭火力は日本のCO2排出の4分の1を占めており、1・5度目標と整合しない」と追及しました。

山口環境相は石炭火力のアンモニア混焼で脱炭素型にするとしながら「実験は進んでおらず、“いつですか”という気持ちはある」と答弁。山下氏は「展望がない。水素、アンモニアを名目に全国で老朽石炭火力が延命されれば、気候危機が一層深刻になる。石炭火力の廃止期限を決め、『公正な移行』計画を確立し、円滑な脱石炭、脱化石燃料を進めるべきだ」と迫りました。

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
さきの大臣所信に対する質疑で、COP26が石炭火力発電を段階的に削減することにCOPとして初めて合意したということを紹介し、石炭火力の削減についての山口大臣の認識を聞いたんですが、その際には明確な御答弁がありませんでした。少し残念だったんですが、そこで、改めて、温暖化対策にとって石炭火力の削減がいかに重要か、大臣の認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(山口壯君) この石炭については、去年の閣議決定の、秋の閣議決定の中で三二を一九なりに落とすということも言われているわけですけれども、この発電量当たりのCO2排出量に関して、石炭火力はLNG火力の例えば約二倍と。したがって、石炭火力発電から排出されるCO2を削減することは極めて重要です。
一方で、その二〇五〇年カーボンニュートラルへの道のりというものは各国いろいろあって、先ほど柳田議員とのお話の中でも、柳田議員、ドイツとフランス、ここにグリッドが通じているから万が一ドイツで足りなくなってもフランスから融通できる、こういうことが日本についてはないわけですよね。それから、資源についても非常に限られていると。そういう中で、この各国のエネルギー事情、あるいは脱炭素技術の開発の動向によってこの道のりは様々だと思います。
その意味で、このエネルギーを考える上では、脱炭素化エネルギーとそれからエネルギーの安全保障、併せて考えなければいけないんではないかなと思います。
二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けては、何よりも再生可能エネルギーの主力電源化をまず徹底すると、その中で、石炭火力についてはこの排出されるCO2を削減し更にその比率を引き下げる、そうすると早期に脱炭素化と、こういうふうなイメージでいます。

○山下芳生君 石炭火力が大量のCO2を排出しているので減らす必要があるということは共有されているんですけれども、しかしながら、本会議でもそうでしたけど、海に囲まれた資源のない日本においてはということが必ず付いてきて、できるだけ削減していくということに、これは官房長官もそういう答弁でした。
そこで、そういうできる限り引き下げるということでいいんだろうかということを今日は少し考えてみたいんですが、資料一に、昨年のCOP26、CMA3でのグラスゴー気候合意の重要な内容を示した資料を付けております。合意には、二度よりも影響がはるかに小さい一・五度に抑える努力を決意を持って追求と、一・五度目標が明記されました。
これには経過があります。
二〇一〇年にメキシコ・カンクンで行われたCOP16では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から二度未満に抑えることを合意いたしました。これだと二十一世紀後半の半ばに実質ゼロにするということを意味するわけですが、さらに、二〇一五年のCOP21でパリ協定が採択をされまして、二度を十分下回り、一・五度にも努力することが目的とされました。この一・五度に言及された背景には、二度目標が達成されたとしてもその後も海面上昇の影響は明らかだということで、小島嶼国などの要請を取り入れて一・五度というものに言及されたわけです。
そして、昨年のCOP26ということになりますが、これは本会議でも紹介しましたけど、冒頭、COP26では、カリブ海の島国バルバドスのモトリー首相が、一・五度目標は生き延びるために必要だと、二度は死刑判決だということを表明されて、排出削減の切迫性を各国首脳に訴えたと。
もう御存じのとおり、このCOP26の直前に、UNEPが各国の削減目標を足し合わせても残念ながら二・七度の上昇になるということを報告し、これで危機感が更に共有されて各国が目標を引き上げたことで、一・八度までに抑えることができる可能性が示されるというところまで来たと。そうしてCOP26では一・五度に抑えるという決意を確認したわけです。それがグラスゴー気候合意であります。
そういう経過はもう御存じのとおりなんですが、大臣にその上で確認したいんですけど、日本政府も一・五度目標に合意したという認識でいいんでしょうか。

○国務大臣(山口壯君) この一・五度に合意たどり着くというのは、それは結構大変でした。ただ、日本の貢献度が物すごく大きかったんです。
というのは、パリ協定六条、市場メカニズム、これについてずうっとまとまっていなかったと。それが日本が提案今回させてもらって、いろんな仕組みを提案させてもらう中で、あっ、やっと六条まとまりそうだなと、じゃ、一・五度についても何とかまとめようかというのがまずこの経緯でした。
そういう意味では、日本自身がこの一・五度目標について非常に大きな貢献してそこにたどり着いたというところもあるので、まず日本もそこは実行していかなきゃいけないと思っています。

○山下芳生君 貢献した、実行するという決意でした。
現在、地球の平均気温は、産業革命前、一・一度ということになっております。山口大臣も、私の本会議質問への答弁で、もう今それでも気候危機と言われるような状況だと。当然気温が上昇するほど被害は激甚になり、頻度は多くなるということでありますが、ですから、一・五度は日本でも世界でも真剣に追求されなければならない目標だと思います。
そこで、グラスゴー気候合意には、残余のカーボンバジェットの急速な減少に警戒と懸念というふうにありますが、ちょっとこれ通告ないんですけど、環境省、簡単なことですから、カーボンバジェットとは何ですかと、簡潔に御説明いただけますか。

○政府参考人(小野洋君) お答えいたします。
言わば人為的なCO2の排出量と、あと気候変動、温暖化、気温上昇というのはほぼ比例関係にあるというふうに言われておりまして、そうすると、一・五度に抑える、二度に抑えるためにはどのぐらいのCO2を排出できるかということが比較的、科学的に明らかになってくるということでございます。
ですから、カーボンバジェットというのは、残り、一・五度に抑えるために残りどのぐらいCO2を排出することが、することができると言ったらおかしいんですけど、に抑えなければいけないかといったことであるということでございます。

○山下芳生君 ありがとうございました。
おっしゃられたように、カーボンバジェットというのは科学の重要な到達点であると思います。その前提は、IPCCの二〇一三年の報告書でも明らかにされた、今おっしゃられた世界の平均気温の上昇はCO2の累積排出量とほぼ比例関係にあるという事実であります。
資料二を御覧いただきたいんですが、そのことを示すグラフであります。
こういうグラフになっているんですけど、横軸はCO2累積排出量ですね。縦軸は世界の平均気温です。このようにきれいな比例関係にあるわけであります。こういうふうに平均気温の上昇とCO2累積排出量が比例関係にあるということは、先ほど御説明あったように、平均気温を何度までに抑えるかという温度目標が定まれば、おのずと今後排出できる残余のカーボンバジェットも定まってくるということであります。
COP26が合意した温度目標一・五度といたしますと、残余のカーボンバジェットは四千億トンになるとIPCCの報告書は公表しております。四千億トンというのはどのぐらいになるかといいますと、近年の世界の年間排出量は約三百五十億トンもありますので、このままだと十年余りで残余のカーボンバジェットが使い切られて一・五度に抑えることができなくなるという状況で、これからの十年の削減がいかに重要かがよく分かると思います。
大臣にもう一つ聞きたいんですが、グラスゴー気候合意がこの十年の取組が決定的に重要としたのは、こうしたカーボンバジェットを始めとする科学的な根拠があると私は考えますけど、大臣の御認識、いかがでしょうか。

○国務大臣(山口壯君) 科学的根拠があると思います。その意味で、どういうふうに全体を合意に持っていくかということの一つの契機になったわけですけどね。そこは科学的根拠に基づいて我々も危機感を持っています。

○山下芳生君 科学的根拠があるということですが。
資料三は、気候ネットワーク代表の浅岡美恵さんの作成された資料なんですけど、そのカーボンバジェットの観点から日本の排出削減の責任がいかに大きいかを考える上で私は重要な資料だというふうに思って見ました。
世界の残余のカーボンバジェット四千億トンのうち、日本には幾ら残されているのかということを試算しているんですね。世界における日本の人口割合で換算すると、六十四億ないし六十五億トン程度となると。まあ一つの考え方だと思います。日本の年間CO2排出量は約十一億トンもあるわけですので、このままでは六年で日本の残余のカーボンバジェットを使い果たしてしまうという計算になるわけですね。日本にとっていかに切迫した課題かが分かるということだと思います。
加えて、これ現在の排出量ですけれども、先進国である日本はこれまでの累積排出量がやはり多いわけですね。したがって、気候正義という観点からすれば、より早く、より多く削減することが求められていると思いますが、大臣に伺いたいのは、COP26で合意した一・五度目標、そしてそれに見合う排出削減に対する私は日本の役割と責任はより大きいと、そのことを自覚することが大事だと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(山口壯君) 今カーボンバジェットにも触れていただいたんですけれども、このカーボンバジェット自身は世界全体の推定値で、そういう意味では、IPCCあるいは昨年開催されたCOP26においても、これを国別に割り当てるという、割り振るというような議論は行われていません。だけど、我々はその一・五度とそれから日本の言ってみればリーダーシップが大事だというところはもう十分に認識していますので、だから最初に岸田総理行かれたときにも大きなコミットメントさせてもらって、そのことによって全体がまとまったという経緯もあります。
ですから、今カーボンバジェットというところはいろんな議論ありますけれども、今例えばCO2ってもう国境ありませんからね、日本だけで減らしてもしようがない、全体でもって減るように、一番大きいところは中国で、その次アメリカで、ロシアも大きいんですよね、今ロシアめちゃくちゃなことやっていますけど。だから、そういう中でこの全体を減らしていくための日本の役割というのは非常に大きいと思っています。

○山下芳生君 おっしゃるとおりだと思いますね。国境ないんですから、みんなで減らしていかなければならない。
しかし、それぞれの国には、これまでの排出量あるいは今出している排出量などから見て、やっぱり責任の大小あると思うんですね。そういう意味で責任は大きいと、役割は大きいということだと思いますが、それをひとつ分かりやすくする指標としては、こういうやり方は私意味があると思うんですね、日本のカーボンバジェットの残余はこのぐらいだと。つまり、日本が思い切って削減していかないと、世界全体のカーボンバジェットの残り十年間を早く食い潰すことに日本が残念ながら寄与してしまう関係にあるということだと思います。
そこで、石炭火力からの排出量がやはり日本の全体の十一億トンの中で二億六千万トン、年間ね、石炭火力だけで出ています。四分の一あるわけですが、限られたカーボンバジェットを少しでも長く有効に使うためには、先ほど、冒頭おっしゃった石炭火力が一番CO2を出しているわけですから、やはりここから脱却して再生可能エネルギーへの切替えに向かうことは急務だと思います。
逆に言うと、石炭火力発電を廃止しないで一・五度に見合う、そういうカーボンバジェットの使い方は不可能ではないかと私は考えるんですが、残念ながら、この間繰り返し指摘させていただいているように、石炭火力は延命されて、新規建設まで進んでいるという状況なんですが、これでカーボンバジェットを有効に使う、長もちさせるということにはならないんじゃないかと、石炭火力と相矛盾するんじゃないかと。
日本は島国とかというのは先ほどおっしゃられていたと思うんですが、しかし、本当に世界が一致団結して、国境ないんですから、日本の事情を言っている場合ではない。そういう点では、石炭火力を日本も早く削減の、廃止の期限を決めてそこに向かうべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(山口壯君) 二〇一一年の福島原発事故の後、日本は原発をとにかく止めて、それで石炭に取りあえず頼ってしのいできました。今そういうことも踏まえながらいろいろ考えなきゃいけないとは思うんですけれども、二〇三〇年度の排出削減目標の達成、あるいは二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて、環境省としては、再生可能エネルギーの主力電源化の徹底と、その中で、石炭火力については排出されるCO2を削減しその比率を引き下げる、早期の脱炭素化と、そういうまず立場です。
石炭火力については電力の安定供給がこれはもう大前提だと、そこはもう現実としてそうだと思います。その意味で、二〇三〇年までに非効率石炭火力のフェードアウト、あるいはアンモニア二〇%混入、あっ、失礼、混焼の導入等を進めと、進める、二〇五〇年に向けてはアンモニアやCCUS等を活用することで脱炭素型の火力発電に置き換えていくと、そういう取組を促進していきます。
ただ、山下議員と私もそこは認識を共有しているところは、それはJERAで今アンモニア混焼の実験やっていると。でも、去年六月から進んでおらず、まだバーナーの実験にとどまっているんですね。で、二〇二四年までに実験やって、二〇二〇年代で実装して、二〇三〇年代の初めに全部二〇%やると。それで、二〇四〇年代で二〇から四〇、六〇、八〇、一〇〇と。ちょっと待ってください、いつですか、それはという気持ちはもちろんあります。だから、私的にはもうどんどんどんどん尻をたたかなきゃいかぬと思いますけれども、ただ、それが今実験として着実に進んでいることもこれまた事実ですから、そこは、私は、ペースを進めていくことによってこの石炭火力の脱炭素化というものを進めていくということだと思っています。

○山下芳生君 アンモニア混焼は尻たたく必要ないですよ。展望ないですから。それはこの間言ったとおりです。
その上で、本会議で私、先ほど非効率石炭火力はもうやめていくんだとおっしゃったけど、本会議でも言いました、老朽石炭火力が延命された松島石炭火力の問題を取り上げました。
この環境アセスに対する環境大臣意見について、資料四に添付しておりますけれども、気候ネットワークから厳しい意見が出されております。アンダーライン引いているところですけど。
本件計画は具体的な排出量の検討もされていない。こうした下で、本意見は、CCUSの導入時期を明示させることや、アンモニア混焼による排出削減の具体的内容を明確にすることを求めることなく、単に検討を求めるにとどまったもので、同様の不確かな対策を通じて事業者が日本全国に立地する数多くの非効率石炭火力を延命させ、日本の脱炭素化を遅らせ気候危機を一層深刻化させることに環境省としてゴーサインを出したも同然であり、歴史的に禍根を残すものと言わざるを得ない。
極めて厳しい指摘ですが、私この意見にかなり共感を覚えるんですけれども、大臣、どう受け止めますか。

○国務大臣(山口壯君) 昨年十二月に、電源開発株式会社のGENESIS松島計画配慮書に関し、環境影響評価法に基づく環境大臣意見を経済産業大臣に提出したところです。
本計画は、既設の石炭火力発電を高効率化し、段階的にゼロエミッション火力の実現を目指すものです。大臣意見では、国内外における石炭火力への厳しい状況を十分認識し、二〇三〇年度の中期目標及び二〇五〇年カーボンニュートラルに向けた排出削減の道筋が描けない場合には事業実施の再検討を求めることなど、これまで同様厳しい指摘をさせていただいています。
今後、環境大臣意見を踏まえ、事業者において計画を具体化した段階、すなわち準備書手続において事業者の計画を改めて厳正に審査し、二酸化炭素排出削減への取組が不十分と判断される場合には更に厳しい意見を述べることもあり得ます。
なお、当該事業者はCO2フリーアンモニアの混焼に向けた技術開発やCCSの事業化調査にも取り組んでいます。今後の電力業界全体の脱炭素化に向けた対応や本事業について、環境省としてもしっかり注視していきます。

○山下芳生君 自治体や地域の方あるいは労働者の方の声というのがやはりあるということを、私、今回の計画の背景にですね、聞きました。だから、そう単純に老朽火力発電はもう全部やめるべきだというふうにもう機械的にやっちゃっていいのかということはよく考える必要があるなと私も思う面はあります。そういうことを考えるにつれ、公正な移行の計画をきちっと政府が確立して示すことが、やはりこういう問題を円滑に、脱石炭、脱化石燃料を進める上では必要なんではないかなと思います。
公正な移行というのは、脱炭素社会への移行において誰も取り残されないようにするための考えでして、地域の人々が発言権を持って、労働者は働きがいのある仕事と安定した収入を確保できるようにすること、こういうことがあって脱炭素社会にスムーズに移行できると、パリ協定でもそのことの重要性が指摘されております。そして、世界では既にそういう公正な移行計画を政府が持って、具体的に自治体や労働者を支援しています、一緒に協議してですね。
私は、もう時間参りましたので、日本は公正な移行というものが弱いと言われています。なぜ弱いのかというと、石炭火力発電所をいつまでに廃止するのかという期限も決まっていないからです。期限も決まってなければ公正な移行の動機がやはり起こらないと思いますね。だから、やはりきちっと石炭火力発電廃止計画を他の先進国はみんな決めているんですから、だから公正な移行が必要になるわけですから、それとセットで公正な移行計画をやってこそ、こういう松島のような問題がずるずるっと先延ばしにされるんじゃなくて、地域の皆さんも一緒に考えながら、どう移行するのかということが前向きに進んでいくんではないかと思いますが、最後に大臣の公正な移行についての御所見を伺って終わります。

○委員長(徳永エリ君) もう時間が来ておりますので、申し訳ありませんが、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(山口壯君) 公正な移行にも意を用いつつ、この石炭については三二から一九に二三年に向けて減らしていくというところを実現すべく、経済産業省と連携しながら全力で取り組んでまいります。

○山下芳生君 終わります。