○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
三人の参考人の皆様、ありがとうございました。
まず、桃井参考人に何点かお伺いしたいと思います。
いただきました資料の四ページに興味深い図が載っておりました。日本の二〇五〇年ネットゼロ、これは必要条件であって十分ではないという御説明で、一・五度目標とは不整合だと。この特に右側の二〇三〇年中間目標の重要性のグラフというのは、なるほど、こういうことかと、同じ二〇五〇年ゼロでも行き方によって結果は変わってくるんだということだと思うんですが、この四ページの資料について少し詳しく御説明いただければ有り難いです。
○参考人(桃井貴子君) ありがとうございます。
カーボンバジェットの考え方が基本にありますけれども、このまま今のような使われ方でCO2の排出が続いてしまうと、二〇三〇年にはそれを全て使い切ってしまうということがあります。今、この一・五度目標にしっかりと整合するような削減に結び付けていくためには、二〇五〇年までにもちろんその排出を実質ゼロ、世界全体でゼロにするということは必要なんですけれども、その手前で大きな深掘りをして全体の排出の蓄積を抑えていかなければ一・五度を超えてしまうということを意味しています。
この気温上昇の一・五度のカーボンバジェットに収まる範囲ということで示されている道筋というのを考えると、二〇一〇年比で世界全体では四五%削減が必要だというふうに言われていて、とりわけ先進国である日本はもっと大きくその深掘りをするということが公平性の観点からも求められているということです。
ですので、今二〇五〇年に実質ゼロを目指すという声は高まっているんですけれども、そのために将来にそれを全て委ねてしまうという方向性ではなくて、やっぱり今の段階でしっかり削減を深掘りしていくということが求められており、そこを共通認識にしていく必要があるというふうに考えています。
○山下芳生君 ありがとうございました。
その上で、なぜ日本はそういう考えに立てないんだろうかと。一・五度と不整合だというふうにかなりもう科学の指摘もされながら、一・五度に整合するような二〇三〇年の目標にしないまま、二〇五〇年ネットゼロと、これと整合するんですというふうに国会でも答弁が繰り返されているんですけれども、なぜそう、残念ながらそうなっているんだろうかと、日本政府の姿勢はですね。少しお感じのことがあれば聞かせていただきたいと思います。
○参考人(桃井貴子君) ありがとうございます。
今のそのエネルギー政策を考えていく上での政府の検討の在り方というのが、やはり既存の大規模な排出をしているような産業によってかなり意見が、それが反映されるような形になってしまっているということがあると思います。
例えば、先ほどのアンモニアの話もそうなんですけれども、元々は、菅首相が二〇二〇年の十月の下旬にカーボンゼロを発表した二週間前に、JERAが、東京電力と中部電力の出資会社であるJERAがカーボンニュートラルに向けて二〇五〇年までにゼロエミッションを目指すということを発表をして、そこから出てきているんですよね。で、その後すぐに官民共同でのアンモニア燃料の協議会などが立ち上がって、そこに向けて様々な予算が付けられていくというようなことが行われていました。
ですので、やはり今、日本の政策の方向性としては、そういう既存の既得権益がそのまま維持されるような形の方向性というのが政策の中にも反映されてしまっていて、今すぐの対応というのがなかなか取られないような形になってしまっているのかなと思います。
○山下芳生君 カーボンバジェット、桃井参考人にもう一問聞きたいんですけど、カーボンバジェットという言葉が出てきましたけど、欧米では、そのカーボンバジェット、残余のカーボンバジェットに基づいてどういう政策を取っていく必要があるんだろうかということを政府がしっかり政策の基礎に置いて立案されているということも聞いたことあるんですけど、私は、今、桃井参考人がおっしゃった大量排出事業者の意見に引きずられているという面と、科学的な危機意識というものが非常に欠如しているんじゃないかと。科学でいうと、もう一・五度を絶対要請されているところに来ているにもかかわらず、その科学的危機意識の欠如、カーボンバジェットに基づいた政策立案というものが弱いんじゃないかということも感じているんですけど、その辺りいかがでしょうか。
○参考人(桃井貴子君) 済みません、本当におっしゃるとおりだと思います。やはり、その政策のつくられ方というのが、科学的根拠ではなく、むしろ産業界の意向などに重点が置かれてしまっていて、科学がなおざりにされているところがあると思います。
例えば、欧米の方が先行しているのではないかという話がありましたけれども、イギリスなどでは、しっかり気候変動法という法律の中でカーボンバジェットの考え方を取り入れて、そこに必要な計画を盛り込んで、どうやって減らしていけばそのカーボンバジェットに沿った形で削減が進んでいくのかということが、きちんと委員会を開いてそれがつくられていっているというような形が取られています。
ですので、日本としても、しっかりこの一・五度目標に対して何が必要なのか。まず、それを言うと政府は、世界全体での排出削減が必要であるというようなことを言って、日本の削減は後からでもいいような言い方で逃れるんですけれども、日本でしっかりと削減を深掘りしていくという考え方に基づいてやっぱりやっていく必要があるのではないかと思います。
○山下芳生君 桃井参考人に最後の質問ですけど、松島石炭火力の問題が少し触れておられました。
私も、この老朽石炭火力である松島火力発電所、本来廃止ということになっていたにもかかわらず、ガスを併設するということで延長されるということで、私は今の流れに逆行するものだと、残念だと思っているんですが、これを考える上で、日本が石炭火力の廃止年限を決めないまま来ている問題がやはり影響していると。
その際に、公正な移行ということが非常に重要になっているんじゃないかと。つまり、石炭産業で働いているたくさんの労働者がいる、地域経済がある。本当に脱石炭、再生可能エネルギー産業に移行しようと思うと、その人たちの雇用を、地域経済をどう守っていくのか、維持していくのかということ抜きに、いきなり科学的なデータはこうだからということでここは潰すというわけにはいかない。
したがって、その公正な移行の方針、政策というものが非常に必要になってくると思うんですが、それがないがゆえに、私は、松島火力のような混乱といいますか、もうどうなるんだろうという、先が見えないから今ある石炭にしがみつくしかないという逆の現象が起こっているんじゃないか。
そういう意味では、公正な移行の政策を政府がちゃんと主導するということの重要性というのはあると思うんですが、桃井参考人、それから山下参考人、うなずいておられるので、御両人の御意見伺いたいと思います。
○参考人(桃井貴子君) ありがとうございます。
おっしゃるとおり、石炭を畳んでいくという方針と公正な移行の仕組みというのはセットで行われるべきだと思っています。公正な移行というのが先にありきというよりは、やはりセットでやっていくということが必要でして、石炭火力をなくす、あるいは大幅に削減目標を立てて六〇%削減するんだというときに、この地域の中の大規模な排出源になっているものをいかに畳みながら、そこで雇用されている方たちを今後どういうふうに次のステップで活躍していただくのかということをやっていくような方途が必要だと思いまして、それは気候ネットワークの公正な移行のパンフレットでもまとめているんですが、各国の公正な移行の取組を見ますと、やはり地域の中でしっかりとその移行が進むようなプログラムを作って、地域の中でコミュニケーションを取るような場づくりですとか、あるいはその人材がしっかりと次のステップに進めるようなセミナーの開催とか、育成作業みたいなものが組み込まれたプログラムをやっぱり公的機関がしっかりと土台づくりをしているわけです。そういったことを地域の支援策として環境省も含めてサポートしていくような体制づくりというのは急がれると思います。
○参考人(山下紀明君) ありがとうございます。
私、ドイツに留学していた経験がありまして、今もドイツとはよく連絡取ったり、まあ調査をしたりしているんですね。そこの知見を見ると、やはり脱原発が決まった時点から公正な移行という言葉、当時余りはやっていなかったですけれども、考えていたり、脱石炭も、もう十年以上先ですけれども、脱石炭委員会というのがありまして、もうそこで地域と対話したり、いかに公正に移行していくかという話を前もってしているわけなんですよね。日本ではもうカーボンニュートラルと言ったのはつい最近のことですから、その石炭の移行とかまだ余り考えられていないように思いますけれども、早くから準備して、雇用のトレーニングを含めて、長い時間掛けてやっていくべきものだと思います。そうでないと、石炭を掘っていたとき、それを閉めていくときに大変な抗争もあったと聞いておりますので、そういったことが起こりかねない、そういう意味では、早く準備して、地域とちゃんと話をして進めていく必要があると思っています。
以上です。
○山下芳生君 分かりました。はい。
太田参考人に伺いたいと思います。
私、蒜山高原、大変思い出がありまして、小学校一年生のときに家族旅行に行って、初めてゴマダラカミキリを発見したのは蒜山高原でした。忘れられない思い出、それがありますので、学生時代にも、それから自分が子供を持ってからも結構行っています。そこにこういう地域資源を生かした再生可能エネルギーの町をつくられているということは非常にうれしく思いながら聞いたんですが。
私が市長に是非伺いたいのは、いろいろ関係の資料を読ませていただきますと、やはり木材産業がなかなか大変な経済状況の下で、状況に置かれた中でいろいろ議論されたということは伺ったんですが、恐らくそれだけではなくて、木材産業関係者はもちろんのこと、他の一般の市民の皆さんも巻き込んでやらないと、例えばごみ発電、ごみの再利用なんかはなかなかできてこないと思うんですが、この、こういう方向に来たきっかけと、それから、木材関係者や市民の参加、その合意形成、恐らく勉強もされたんじゃないか、こういうことでコンセンサスを市民全体でつくってきたきっかけや経過、大事だと思っている点がおありでしたら聞かせていただきたいと思います。
○参考人(太田昇君) ちょっと広がり過ぎるかもしれませんが、ずっと地方自治に携わってきまして、日本全体のバランスを取らないと、これは今安全保障いろいろ言われていますけれども、本当に大変なことになると。で、農山村でもそうで、そういう意味で、農山村として自信を持つといいますか、自分たちの地域はこうあるべきだというようなもの、そういうシビックプライド、誇りがやっぱり必要だろうと。
で、そういう意味で、うちの総合計画というのは高校生まで参加をしてもらって、真庭ライフスタイルの実現と、つまり東京になくて真庭にあるもの、東京にあるものを欲しがっていても仕方ないということで、その一つの価値観転換を図っていこうと、まだまだ不十分ですけれども、そういうものを行政としても市民としても持っていこうということで、特に若い人たち、進めてまいりました。なかなか難しい課題ですけれども。
そうするといろんなことが見えてくる。その地域資源というのが、これもあるじゃないか、あれもあるじゃないかと。今、蒜山高原のことを議員言われましたが、元々はカヤの原だったと。このカヤを、若草山焼きじゃないですけれども、奈良のような、観光に使えないか、そして、焼くことによってその自然資源が、動植物がまた生きてくるということで、やはり焼いてこそ蒜山の自然が守られるということ、そういう意味で環境にもつながる。
そして、隈先生にお願いして、このカヤを建築に使ってほしいと。このグリーナブルヒルゼン、実は三つ建物がありまして、一つ造ったのは、カヤを使って、カヤを天井にふいているんですね。で、隈研吾先生が、これからカヤを使いたいということで結構カヤにはまってはりまして、建築資材としても、山を焼くことによって均質の建築資材のカヤができるというような、そういうふうに、今あるものを大事にしながら、しかし、自然も守りながら経済的にもそれを使っていくような、そういう政策をいろんなところで打ってきて、ですから私は、自治体の方も、もう一度各自治体、エネルギーにしても食料にしても、まあ水も含めて、その自治体で本当に自給できるのかという、東京のある区でできるはずがないですけれども、でもその中でも何かできることないのかとかですね。
で、それぞれの自治体の自立、連携しながら自立を探っていくという、そうすることによって過疎過密を少なくとも過と密にしていって、それが日本全体を私はいろんな意味で強くしていく、安全保障という点でもですね。そういう国づくり、地域づくりをしていかなきゃならないんじゃないかと、それが長期的に見ると、エネルギーの問題にも、自給率を上げることになっていくというふうに思っています。
○山下芳生君 ありがとうございました。