日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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石炭火力から抜け出せ 温暖化対策推進法改正案で主張 参院本会議

参議院本会議 2022.5.13
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(写真)質問する山下芳生議員=13日、参院本会議

地球温暖化対策推進法改正案が13日、参院本会議で審議入りし、日本共産党の山下芳生議員が質問に立ちました。

山下氏は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が平均気温上昇を1・5度に抑える努力の追求で合意したと指摘。日本が掲げる2030年に46%の二酸化炭素(CO2)削減目標ではCOP26の合意と整合せず、大型石炭火力の新規建設を依然続けていると批判し、「G7(主要7カ国)で唯一石炭火力を廃止する期限を示していないという恥ずべき地位から即刻抜け出すべきだ」と述べました。

また、岸田政権が国際的には排出削減対策と認められていない石炭とアンモニアの「混焼」を推進していると批判。日本では再生可能エネルギー潜在量が電力需要の5倍もあると環境省が試算しながら、再エネより原発を優先して動かし、電力会社間の電力融通網整備の遅れで再エネのポテンシャルが生かされていないとして「化石燃料頼みから再エネの大量導入へと転換し、わずか10%程度しかない日本のエネルギー自給率を引き上げる。これこそ真の安全保障だ」と迫りました。

松野博一官房長官は「多様なエネルギー源をバランスよく活用することが必要」だとしか答えませんでした。

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○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
会派を代表して、温暖化対策推進法改正案について関係大臣に質問します。
南太平洋に浮かぶソロモン諸島では、既に五つの島が海に沈みました。インド洋で水没の危機にあるモルディブの元大統領は、一・五度に抑える目標を放棄することは我々への死刑宣告だと昨年のCOP26で訴えました。南極では、氷河の先端が海にせり出した棚氷の崩壊が急速に進んでいます。最新の研究ではこれを引き金とする大規模な氷床の崩壊が危惧されており、そうなれば大規模な海面上昇となります。
温暖化による海面上昇は百年、二百年と長く続きます。将来世代の被害を少しでも和らげるためにCO2の排出削減は急務です。
山口環境大臣、こうした温暖化の深刻さを政府と国民がリアルに認識することが温暖化対策の土台になると考えますが、その認識はありますか。
COP26では、平均気温の上昇を一・五度に抑える努力を追求することで合意しました。そのために残された炭素排出量、カーボンバジェットは、今のペースだと十年ほどで使い切ってしまいます。最新のIPCCの報告書では、今世紀末に一・五度に抑えるためには、温室効果ガスの排出量が遅くとも二〇二五年までにピークに達し、減少に転じる必要があると指摘しました。
人類に残された時間は僅かしかありません。松野官房長官、日本の二〇三〇年四六%削減の目標では一・五度と整合しないのではありませんか。直ちに削減目標を引き上げ、先進国としての責任を果たすべきではありませんか。
昨年、G7共同声明は石炭火力発電が世界の気温上昇の最大の原因であると指摘し、COP26は石炭火力を削減していくことに初めて合意、IEA、国際エネルギー機関のロードマップは二〇三〇年までに先進国における石炭火力の全廃を求めました。
グテーレス国連事務総長は、大量排出を続ける政府と企業に対し、彼らは、より安価で再生可能な解決策が雇用やエネルギー安全保障、価格の安定性を提供しているときに、化石燃料への既得権益と歴史的投資に基づいて地球を窒息させていると厳しく指摘し、再生可能エネルギーの迅速で大規模な導入、石炭火力の全面停止、化石燃料への補助金の廃止を要求しています。
しかし、日本は、昨年に続いて今年もG7の共同声明に石炭火力の二〇三〇年までの廃止を盛り込むことに反対し、大型石炭火力の新規建設を依然として続けています。
官房長官、いつまで世界の流れに背を向け続けるつもりですか。G7の中で唯一石炭火力を廃止する期限を示していないという恥ずべき地位から即刻抜け出すべきではありませんか。お答えください。
岸田政権は、石炭火力の維持策として、アンモニアや水素などの混焼によるゼロエミッション火力の推進を掲げています。しかし、この方式は、国際的には排出削減対策とは認められていません。
株主や政策決定者向けの提言を行っている英国のシンクタンク、トランジション・ゼロは、今年二月、アンモニア混焼に関するレポートを発表しました。レポートは、日本政府が二〇三〇年の実用化を目指す二〇%の混焼率でもCO2の排出量は最新の石炭火力並み、五〇%の混焼率に引き上げたとしてもLNG火力より排出量は多いと指摘しています。コストの面では最も安いダークアンモニアでも石炭の二倍となり、NOxやPM二・五が発生するリスクもあるとされています。さらに、アンモニアの生産は海外に依存せざるを得ず、エネルギー安全保障上の疑問も呈されています。
その上で、同レポートはアンモニア混焼について次のように結論付けています。
アンモニアが法外な高コストの発電技術であり続けることが見込まれ、カーボンニュートラルという日本の目標達成に対してはほとんど効果がない、経済と環境に対する説得力のある論拠が存在しない状況から考えると、根底にある動機は石炭火力発電所の存続と受け取れる、日本企業が発電においてアンモニアを追求し続けることは不必要な株主価値下落につながることになる。
萩生田経産大臣、アンモニア混焼に対するこうした問題点の具体的な指摘にどう答えますか。
環境大臣、本法案で設立される官民ファンドの支援対象は、効果も見通しもない事業ではなく、国際的基準に合致した排出削減対策に限るべきではありませんか。
欧米では、化石燃料産業から再生可能エネルギー産業への公正な移行が図られています。しかし、日本では、こうした方針が明確に示されない中、老朽石炭火力の延命が行われています。長崎県の松島石炭火力は、老朽化による廃止が予定されていましたが、ガス化設備を追加し延命させる計画が進んでいます。この計画の環境アセスに対する環境大臣意見では、可能な限り早期にバイオマスやアンモニアの導入を進めることなどとして、アンモニア混焼を前提に計画を容認しています。
環境大臣、このように不確かな対策で石炭火力を延命することになれば、日本各地で逆脱炭素ドミノを引き起こすことになるのではありませんか。政府として、再生可能エネルギー産業への公正な移行について明確な方針を示すべきではありませんか。
岸田首相は、脱炭素を名目に、原子力を最大限活用するとしています。しかし、深刻な原発事故を起こした日本で原発の再稼働、新増設はやれないし、やるべきではありません。
再生可能エネルギーこそ未来への道です。
環境省の試算では、再生可能エネルギーの潜在量は電力需要の五倍もあります。研究者は、自然エネルギーの設備に必要な面積は国土のおよそ一ないし二%で、既にある省エネ・再エネ技術だけで、二〇三〇年にCO2排出を五五%減らし、二〇五〇年に九三%減らすことが可能だと指摘しています。しかし、こうしたポテンシャルや技術が生かされていません。
典型は、電力不足と騒ぎながら、他方で実施している再エネの出力抑制です。出力抑制は、九州電力だけでなく、四国、東北、中国、北海道の五電力にまで広がっています。その根本には、再エネよりも原発が優先して動かされていること、電力会社間で電力を融通する連系線の整備が遅れていることがあります。
経産大臣、これらの問題にメスを入れ、再エネ電力の抜本的な拡大を図るべきではありませんか。また、小規模な再エネ発電事業者の負担になっている発電所から送電網への接続は、大手送電事業者の責任で行うべきではありませんか。
再エネ導入で電力が不安定になるとの主張があります。しかし、送電網による電力融通や揚水ダムなどの調整システムを整備すれば、安定供給は可能です。電力の安定供給というなら、原発や巨大石炭火力のような一極集中の方がむしろリスクが大きいことが北海道電力のブラックアウトで明らかとなりました。
地域分散、地産地消となる再エネの大規模な普及によって安定した電力を確保する。化石燃料頼みから再エネの大量導入へと転換し、僅か一〇%程度しかない日本のエネルギー自給率を引き上げる。これこそ真の安全保障ではありませんか。環境大臣の見解を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣山口壯君登壇、拍手〕

○国務大臣(山口壯君) 山下芳生議員から、温暖化の深刻さに関する政府と国民の認識についてお尋ねがありました。
我が国においては、既に記録的な猛暑や度重なる豪雨や台風などが多くの犠牲者をもたらし、国民の生活、社会、経済に多大な被害を与えています。
先日公表された気候変動に関する政府間パネルの報告書においては、人間活動が原因となり引き起こされた気候変動が、幅広い分野で悪影響を及ぼし、それに関連した損害を引き起こしていることが示されました。地球温暖化の進行に伴い、このような猛暑や豪雨等のリスクが更に高まると予測されています。
世界はまさに気候危機と呼ぶべき状況に直面しており、こうした危機感を国民一人一人と共有し、気候変動問題に取り組んでまいります。
次に、脱炭素化支援機構の支援対象についてお尋ねがありました。
脱炭素化支援機構の支援対象としては、排出削減等に資する事業であることを支援基準に定めることとしております。支援対象事業の決定は、投資実務等に専門的知見を有する者で構成される脱炭素化委員会が事業の収益性を十分に精査して決定することとしています。その際には、当然のことながら、事業による排出削減等の効果も適切に確認します。
次に、石炭火力のアンモニア混焼についてお尋ねがありました。
石炭火力については、電力の安定供給が大前提との観点を踏まえ、二〇三〇年までに非効率石炭火力のフェードアウトやアンモニア二〇%混焼の導入等を進め、二〇五〇年に向けては、アンモニアやCCUS等を活用することで脱炭素型の火力発電に置き換えていくよう取組を促進してまいります。実際に、株式会社JERAが、二〇二四年度までの予定で、実機を活用したアンモニア二〇%混焼の実証を着実に進めているところです。
環境省としては、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底する中で、石炭火力の比率を引き下げるとともに、早期に脱炭素化することが重要と認識しております。
次に、再生可能エネルギー産業への公正な移行についてお尋ねがありました。
パリ協定においては、労働力の公正な移行が必要不可欠と規定されており、脱炭素社会へ向かう際の労働移行を進めるため、国、地方公共団体及び企業や金融機関が一体となって、労働者の職業訓練、企業の業態転換や多角化の支援、新規企業の誘致、労働者の再就職支援等を推進していくこととしています。
環境省としては、関係省庁と連携し、公正な移行に全力を尽くしてまいります。
最後に、再生可能エネルギーの大量導入によるエネルギー自給率の引上げについてお尋ねがありました。
再生可能エネルギーは、国内で生産可能なエネルギーであることから、気候変動対策だけでなく、エネルギー安全保障にも寄与する重要な国産エネルギー源であります。他方、エネルギーの安定供給のためには、再生可能エネルギーを含めたあらゆる選択肢が必要であると認識しております。(拍手)
〔国務大臣松野博一君登壇、拍手〕

○国務大臣(松野博一君) 温室効果ガスの削減目標についてお尋ねがありました。
これまで公表されたIPCCの報告書では、一・五度の気温上昇抑制に向けては二〇五〇年カーボンニュートラルを実現することが重要であることが示されており、こうした点も踏まえ、我が国としても二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言しております。そして、これと整合的な形で、二〇三〇年度までに温室効果ガスを二〇一三年度比で四六%削減することを目指し、更に五〇%の高みに向け挑戦を続けることとしております。
昨年十月に閣議決定した地球温暖化対策計画は、これらの目標実現に向けて必要な対策や施策を取りまとめ、改訂したものであります。本計画に基づき、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入、地域の脱炭素化や国民のライフスタイル変革など、政府一丸となって取組を進めてまいります。
石炭火力の廃止期限についてお尋ねがありました。
エネルギーをめぐる状況は各国千差万別です。資源が乏しく、周囲を海で囲まれた我が国では、多様なエネルギー源をバランスよく活用することが重要です。従来より電力需給は厳しい見通しでしたが、ウクライナ情勢により、燃料確保など一層予断を許さない状況です。こうした中で、廃止期限を区切って直ちに急激な石炭火力の抑制策を講じることになれば、電力の安定供給に支障を及ぼしかねません。
しかしながら、石炭火力は二酸化炭素の排出量が多いため、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、安定供給を大前提に、できる限り発電比率を引き下げてまいります。(拍手)
〔国務大臣萩生田光一君登壇、拍手〕

○国務大臣(萩生田光一君) 山下議員から御質問をいただきました。
アンモニア混焼についてお尋ねがありました。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて脱炭素型の火力への転換が重要ですが、その鍵となるのがアンモニアの活用です。
価格については、現時点でアンモニアは既存の化石燃料に比べ割高ですが、より高効率な製造方法の開発に加え、既存燃料とのコスト差やインフラ整備の在り方などに着目した支援スキームの検討を進め、その低減を目指します。
また、利用面では、二〇%混焼の導入にとどまらず、二〇三〇年までにより高い混焼率や専焼化を可能とするための技術開発を進めるとともに、できるだけ早期にアンモニア製造方法のクリーン化を進めることでCO2排出を更に抑制してまいります。
再生可能エネルギー電力の拡大方策と送電網への接続についてお尋ねがありました。
出力抑制の順番につきましては、我が国では、Sプラス3Eの観点から、コストのみならず、各電源の特性を踏まえて決定しています。
連系線の整備については、全国大の送電ネットワークの将来的な絵姿を示すマスタープランを二〇二二年度中に策定し、計画的に送電網の整備を進めていくこととしています。
また、発電所から送電網への接続は、受益と負担の関係や国民負担を抑制する観点からも発電事業者による負担が原則ですが、既存の送電網を有効活用する仕組みであるいわゆるノンファーム型接続を基幹送電網へ全国展開するなど、接続の負担を減らすための環境整備を進めています。
引き続き、これらの取組を通じて、再生可能エネルギーの導入拡大を進めてまいります。(拍手)