奈良二上山産廃・平群町メガソーラー・滋賀産廃問題質疑
○山下芳生 日本共産党の山下芳生です。
産業廃棄物処理施設も、太陽光発電施設も、私たちの暮らしにとって必要なものです。同時に、施設周辺の生活環境の保全も図られなければなりません。今日は、周辺住民の強い不安を引き起こしている事例について質問します。
資料一は、奈良県香芝市にある二上山を大阪府太子町の側から、山の斜面から撮影した写真であります。私が五月六日、現地調査した際に撮ったものです。
二上山は、豊かな自然とともに、万葉集にもうたわれるなど歴史的価値の高いところですが、この写真のように山頂直下に巨大なピラミッド状の盛土が出現し、地元住民だけではなく、この状況を知った全国の歴史愛好家からも驚き嘆く声が上がっています。私もこの目で見て、この新緑の美しい山腹に巨大なピラミッド状の盛土がある、もうまさに異様な光景に言葉を失う状況でした。二上山という名称は二つの頂があるからですが、巨大な盛土のために三上山になってしまったという声も聞きました。
この盛土の正体は何か。実は、この写真の盛土の左手の稜線上には産業廃棄物の中間処理施設があります。事業者の公表資料を見ると、搬入される産廃の大半は汚泥であり、その汚泥を造粒固化、つまり汚泥を粒状に固めて処理をするとあります。つまり、この二上山の盛土は、産業廃棄物の汚泥が造粒固化されてできた粒の山ということのようであります。
奈良県もそのように確認して国定公園内での盛土を許可したと聞きましたが、環境省、間違いありませんでしょうか。
○環境省 角倉一郎 環境再生・資源循環局次長 はい、そのとおりでございます。
○山下芳生 そうなんです。これはもう奈良県も許可してできちゃっている盛土なんですね。
一般的には、造粒固化された生成物はコンクリートの骨材などに活用される、つまり有価物となるそうですが、地元の二上山の自然を愛する会の皆さんに聞くと、この盛土が削られて搬出された形跡は一度もない、盛土はどんどん大きくなる一方だとのことでありました。また、この事業所の元従業員の方も、中間処理場なのに処理したものを搬出したことがない、一生仮置きだと証言しています。
景観や歴史的価値を損なうだけではなく、盛土の崩壊、崩落の心配、有害物質の浸出、地下水、河川水の汚染の心配など、既に周辺住民の生活環境の保全上の支障が発生している事態だと思います。
環境省、放置できないのではありませんか。
○環境省 角倉一郎 環境再生・資源循環局次長 お答え申し上げます。
本件につきましては、地元住民の皆様から排水の水質検査の実施などを求める要望書が奈良県にも提出されていると、このように伺っております。
現在、奈良県において必要な対応を検討していると私どもも伺っておりますので、ただいま委員から御指摘いただいたことも踏まえまして、環境省といたしましても、奈良県に事実関係を改めて確認するとともに、県において適切な対応が行われるよう状況を注視してまいりたいと考えております。
○山下芳生 昨日、環境省から廃棄物該当性の判断について説明を受けました。
「行政処分の指針について」という通知があるんですが、それを見ますと、こうあります。「本来廃棄物たる物を有価物と称し、法の規制を免れようとする事案が後を絶たないが、このような事案に適切に対処するため、廃棄物の疑いのあるものについては以下のような各種判断要素の基準に基づいて慎重に検討し、それらを総合的に勘案してその物が有価物と認められるか否かを判断し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うこと。」とあります。そして、五つの判断要素と一般的な基準が示されております。
それに照らすと、盛土の崩壊、崩落、あるいは水質汚染の不安などは、生活環境上の支障が発生するおそれがないものという基準に抵触すると思われます。
また、この中間処理事業者は、生成した粒状の再生土を子会社、グループ企業に販売した形にして盛土として積み上げています。販売額はトン当たり十四円と、私が調べた再生土のトン当たりの相場五百円、五百円よりかなり安い。これは、客観的に見て、当該取引に経済的合理性があることという基準に当てはまらないのではないかと思います。
すなわち、これらの状況から見ると、この盛土を形作っている生成物は、有用物ではなく廃棄物とみなされる可能性が高いのではないかと思いますが、環境省、いかがでしょうか。
○環境省 角倉一郎 環境再生・資源循環局次長 お答え申し上げます。
ただいま御指摘いただきましたとおり、環境省におきましては、廃棄物該当性についての考え方を行政処分の指針についてお示ししているところでございます。
御指摘の造粒固化物が廃棄物に当たるかどうかにつきましては、この指針等を踏まえまして、許可権者である奈良県において適切に判断していただくことが重要であると考えております。
繰り返しになりますが、ただいま委員から御指摘いただいたことも踏まえまして、環境省といたしましても、奈良県に事実関係を改めて確認するとともに、奈良県の対応を注視してまいりたいと考えております。
○山下芳生 地元住民の方が中間処理施設の下流の河川の水質を専門家に依頼して検査したところ、COD、化学的酸素要求量、これは水中における窒素、リンなど有機物の汚染の影響を判断し、その量を制限するためにCODを知ることは不可欠となる、そういう数値ですが、この数値が二〇二四年十一月二十日は百十ミリグラム・パー・リットル、二〇二五年二月二十五日は百五十ミリグラム・パー・リットルと非常に高い数値が継続して検出されています。
私もCODの数値を検査キットで、中間処理した盛土の下流の水路の水を現地に行ったときに検査してみたんですが、最低でも二十ミリグラム・パー・リットル以上ありまして、これは通常の河川では考えられない高い数値でありました。住民の方は、かつては子供たちが魚捕りをしていたが、今は魚がいなくなったと語っていました。
さらに、この処理施設の下流域には田畑があります。土壌が汚染され、田んぼの農作物が枯れました。そのため、中間処理事業者が田んぼの所有者に補償金を払ったという話も聞きました。これ、事実とすれば、汚染原因者であることを自覚しているということになると思います。
環境省に伺いますが、汚染原因者を明確にするためにも、公的な水質検査がどうしても必要だと思います。奈良県を指導して水質検査が行われるようにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○環境省 角倉一郎 環境再生・資源循環局次長 お答え申し上げます。
水質検査の実施につきましては、地元の住民の皆様から奈良県に要望書が提出されていると伺っております。奈良県においては、この要望書を踏まえて必要な対応を検討しているものと、このように伺っております。
環境省といたしましては、まずはこの県において適切な対応が行われるよう、県の対応を注視してまいりたいと考えております。
○山下芳生 これ、非常に環境行政として見過ごしてはならないもう事態になっていると思うんですね。公的検査をしてこそ、原因の特定につながるし、事業者への立入検査、改善命令などにもつながっていくし、住民の不安も解消されると。これ是非、単に注視だけではなくて、もっと強い立場で臨んでいただきたいと思います。
有価物をカムフラージュにして産廃の最終処分場にしてしまうなどということが行われているとするなら、悪質な法違反であります。その疑いがある以上、必要な調査をして正すのが環境行政の責任であり、使命だと思います。
資料二、御覧いただきたいと思います。
私が五月六日に奈良県平群町のメガソーラーの建設現場を視察したときの写真であります。貴重な広葉樹林が伐採されて、まるで壁のような盛土が造成されていました。写真を見ていただいたら分かるとおり、のり面が土木の専門用語で言うところのガリー浸食が起こり、盛土の下部は崩壊しつつあります。盛土の下流には住宅団地があって、これまで降雨時に団地の道路、団地内の道路に七回程度、土砂や濁水の流入がありました。
資料三。
さらに、ついこの間、五月二十四日の夜二十三時頃に降った一時間二十ミリ程度の雨で、のり面の崩落、崩壊、まあ崩落ですね、これは。土砂流出が発生いたしました。先ほどの地点からもう少し左側に百メートルほど行った地点でこういうことが起こったんですが、二十五日朝から警察署が出動し、土砂に覆われた道路の交通規制に当たったということです。九時頃にはバイクの転倒事故も起きました。
このように、メガソーラー建設現場の下流の住民は、こういうことが重なっていますので、二〇二一年の熱海土石流災害のような大災害が起きるのではないかと大変不安を感じて日々生活されています。
五月六日、現地を案内してくれた土木の専門家は、こんなずさんな工事は技術者として恥ずかしいと、周りから見えないように覆いをしてほしいぐらいだと語っていました。そんな話を聞いた直後に僅かな雨で崩落が起きたと。
国交省、こんなずさんな盛土の造成は法令違反ではありませんか。
○国土交通省 服部卓也 大臣官房審議官 今、この盛土の関係に関しましては、今、盛土規制法、これ令和五年五月に制定しましたけれども、こちらの規制区域内の既存の盛土につきましては、区域指定前に行われているものも含め、宅地造成等に伴う災害が生じないよう、土地の所有者、管理者又は占有者がその土地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならないという努力義務の規定がございます。このため、災害防止のために必要だというときには、都道府県知事が土地所有者や行為者等に対し、擁壁や排水施設の設置等の災害防止措置の勧告、命令をすることができるということになってございます。
今回の土砂流出現場における事案がこの土地を常時安全な状態に維持する義務に、これに反するかどうかにつきましては、必要に応じて奈良県において判断をされるということになってございます。
なお、現在、奈良県におきましては、今回のこの土砂流出の事案につきましては、森林担当部局とも連携をして事業者に対して再発防止を指導していると、このように聞いてございます。
○山下芳生 再発防止の指導は当然だと思うんですがね。
今回の事例は、メガソーラー事業に共通する構造的な問題があるように私は思います。
二〇一二年にこの事業者はFIT認定され、元々の事業者ですね、一キロワット当たり四十円で買い取ってもらえる権利を手にしました。その後、その権利が五回転売され、事業者もくるくる変わっています。いまだに発電事業はされておりません。私はもうできないんじゃないかとさえ思います。
というのは、売電による事業収入は上限が決まっております、一キロワット当たり四十円と。これ、転売されるごとに利ざやが抜かれるので、売電事業による利益は少なくならざるを得ない。当然、盛土造成の経費も節約せざるを得ず、手抜き工事となる。そんな盛土の上にパネルを張ったら余計に危険が増すと。だったら、もうそのまま事業者が放置する、逃げる。もうそんなことになったら、貴重な自然が大規模に破壊されただけに終わるということにもなりかねない。
資源エネルギー庁に聞きますが、そうなったら誰が責任取るんでしょうか。誰が原状復旧するのか、誰が自然を元に戻すんでしょうか。
○資源エネルギー庁 伊藤禎則 省エネルギー・新エネルギー部長 お答え申し上げます。
御指摘のように事業開始後に再エネ発電事業者が変更となる場合等につきましても、地域との共生が大前提であると承知をしてございます。このため、FIT・FIP制度の下では、再エネ発電事業者が変更となった場合におきましても、FIT・FIP認定基準としまして、変更後の事業において森林法、また盛土規制法を始めとする関係法令の遵守を求めております。また、関係法令違反等が認められる場合にはFIT・FIP交付金の一時停止や認定取消しの対象とするなど、厳格に対応することとしてございます。加えまして、二〇二三年五月に成立をいたしました改正再エネ特別措置法におきまして、再エネ発電事業者を変更する場合に、FIT・FIP認定基準として、例えば安全面、防災面につきまして、盛土、切土による影響及び予防措置や、雨水や地下水の状況を踏まえた排水対策などに関する周辺地域の住民に対する説明会の開催等を求めているところでございます。説明会が開催されない又は適切な説明がなされていない等の場合におきましては事業者の変更は認められないといったことでございまして、厳格に対応しているところでございます。
いずれにしましても、FIT・FIP制度を厳格に適用していくことにより、引き続き再エネの地域共生をしっかり図ってまいりたいと存じます。
○山下芳生 結局、こんな状態になって逃げちゃったら、誰も責任負えないという事態になって、今御報告あったような規制の強化がだんだん、こういう事案が広がっているから設定されてきているんですが、私は、事業者に真面目に発電事業に取り組む意思と能力があるかどうか、一定の時期に判断する仕組みが要るんじゃないかと、認定取消しも含む転売規制などのルールが必要ではないかと思いますが、これ簡潔にお答えください。
○資源エネルギー庁 伊藤禎則 省エネルギー・新エネルギー部長 お答え申し上げます。
FIT・FIP制度は、事業実施を規制する規正法ではなく、再エネ電気の買取りなどにより再エネ導入拡大を促進する促進法と位置付けられておりますが、まさに委員御指摘いただきましたとおり、地域との共生を図るため、FIT・FIP認定の要件として、森林法、盛土規制法等の関係法令の遵守を求めているところでございます。
先ほど御説明申し上げた改正再エネ特別措置法に基づきまして、森林法、また盛土規制法を含む関係法令の違反については、違反が客観的に明らかになった場合にFIT・FIP交付金の支援を一時停止する措置を講じることとし、また違反が解消されない場合には認定の取消しの対象とすることとしているところでございます。
引き続き、関係省庁や自治体と連携しながら、厳格に制度を運用してまいりたいと存じます。
○山下芳生 一定の時期に判断しないと手遅れになるんじゃないかという問題提起でした。そうしないと、せっかくの再エネの普及が、こういう事案がいっぱいあるとできなくなっているということも留意していく必要があると思います。
最後の時間で、滋賀県甲賀市土山で埋立面積十二ヘクタール、埋立容量約二百三十万立方メートルの県内最大級の産業廃棄物最終処分場建設が予定されています。四月六日、私、現地を訪問しましたら、住民の方は、土山は旧東海道の宿場町なのにごみの町という風評被害が出る、地元名産の土山茶のブランドイメージに傷が付く、近隣の栗東市の最終処分場では違法な産廃処理がされ、硫化水素ガスの噴出事故など大問題になったなど、もう反対の声がいっぱい出されました。
現地訪ねて感じたのは、歴史もあるし、自然も豊かで静かないい町なんですが、住民の皆さんは、自然が豊かなふるさとを子や孫に残したいという強い思いがあることがひしひしと伝わってきました。もう私行ったら、もう止まらないんだったら帰ってくれと、こういうもう激しい厳しい真剣な意見なんですよ。
現地の自然がすばらしいと定年退職後に移住してきた方もいました。その住民が知らない間に産廃予定地の土地が事業者に売却されていた。現在、県によるアセス手続が進行中です。住民の多くは、土地を買収されてしまったらもう中止できないのではないかと思っておられる方が多いです。
環境省に伺いますが、事業者が土地を取得しても、周辺地域の生活環境の保全ができないなど計画が不適切であれば、産廃最終処分場として許可されないこともありますよね。
○環境省 角倉一郎 環境再生・資源循環局次長 お答え申し上げます。
産業廃棄物処理施設の設置許可に当たっては、都道府県知事等が、設置計画が技術上の基準に適合していることや周辺地域の生活環境の保全等について適正な配慮がなされたものであることなどについて審査を行うこととされておりまして、土地が買収されていても、こうした許可要件を満たさない場合は不許可になると、こういった仕組みになってございます。
○山下芳生 時間が参ります。
利害関係者からの意見の提出ということで、住民の皆さんは県に、地域の生活環境はこんなふうになっている、これが悪化する心配があるということをどんどん出すことができるということもあるんですね。同時に、もう今日は時間がありませんので質問しませんが、この産廃処分場に入ってくるごみの八割は県外なんです。県内のごみならまだ分かるけれども、何で県外、関東から運ばれてこなあかんのやと、まあ関東に恨みはありませんけれども、そういう声も出ているんですね。
今、各自治体が、県内だけにしてちょうだい、県外から来る場合は事前協議してちょうだいという条例設けているところもまだありますが、経団連が二〇〇八年、そういうのはなくしてくれという圧力を掛けて以降、環境省もずっとなくしてくれという立場で来ていますが、資料に示しているように、産廃処分場の残年数、これは増えております。それから、不法投棄の数も減っています。もういまだに広域で処理しなければならないような理由はない。
ふるさとを大事にしたいという住民の皆さんの思いよりも、広域で運び込んだ方がもうかるという企業の利益を優先する私は必要はない、どっちが価値が重いかということをよく考える時期に来ているということを申し上げて、終わります。