学生への再給付早く 山下氏 対象の拡大も切実 参院文科委
日本共産党の山下芳生議員は24日の参院文教科学委員会で、コロナ禍で苦しむ学生向けに、学生支援緊急給付金を要件緩和と対象拡大をして再実施するよう迫りました。
山下氏は「食べることにこと欠く学生が広がっている」として、日本民主青年同盟の食料支援活動が33都道府県で300回以上実施され、利用者は1万人超だと指摘。「1日1食。パン1個で済ますこともある」との学生の声を紹介し、「学生が困っているのは、手元に現金がないことだ。緊急給付金を再実施すべきだ」と迫ると、文部科学省の伯井美徳高等教育局長は、就学状況・中途退学者の調査を注視して検討すると答弁しました。
山下氏は、私学高等教育研究所の調査では給付金を希望者全員が受けられたと回答した大学は19%にすぎず、「支援が必要な学生の多くが受けられなかった」と批判。学生支援の意義は、学業継続とあわせて、将来、各分野での働き手を失い、社会全体の損失になりかねない事態を回避するものだと強調しました。萩生田光一文科相は「安倍内閣の段階で、予備費を使うことも了解をもらっている。必要な対策は対応したい」と語りました。
山下氏は、大学での対面授業・施設利用の再開は学生の強い願いだとして、実現にむけて大学とともに知恵を出し合い、必要な支援を考えるべきだと求めました。
【議事録】
山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
きょうは、コロナ禍で苦しんでいる学生に対する支援について質問します。
新型コロナウイルスの感染拡大が長期化、深刻化する中で、親の収入や自らのアルバイト収入が減って経済的に困窮する学生が広がっています。そういう学生が真っ先に削るのが食費なんですね。多くの学生は、学費と下宿代を優先して支払い、食費を削っているという状況にあります。コロナ禍のもとで食べることに事欠く学生が広がっております。
国立大学協会の広報誌を見ますと、弘前大学や福島大学、岡山大学ではそうした学生に食料や食材を提供する取り組みを行っていることが紹介されております。また、大学生協が大学当局や同窓会などと一緒に学生の食料支援を行っているところもあると聞きました。
日本民主青年同盟という全国組織の青年学生団体があります。私もOBの1人ですが、その民青同盟が中心になって、今年春頃から学生への食料支援活動を行っています。高知から始まった取り組みがまたたく間に各地に広がって、すでに33都道府県、120の大学等で300回以上実施され、利用者はのべ1万人を超えています。
地域の農家から提供された米や野菜、果物、市民から提供されたレトルト食品や日用品などを経済的に困窮する学生に配るんです。学生アパートにチラシを配布したり、ツイッターなどSNSも活用して学生に知らせて取りに来ていただくという取り組みなんですが、本当に学生が来るんだろうかとどきどきしながら待っていると、多くの学生が参加されるということになっています。
福島からは、開始30分ほどで用意していた160人分ほどの物資がすべてなくなりました、愛媛からは、これまで最多の約100人、開始20分ほどであれほど大量の食材がなくなってしまいました、こんな様子が発信されております。全国どこでやってもこういう状況になるというんですね。それほど学生は困窮しているということだと思います。
その場で書いてもらう学生生活の実態アンケートには生々しい声が並んでいます。いくつか紹介します。
一日一食、軽いシリアルなど最低限のものを食べている、パン一個で済ますこともある、空腹には慣れたが、どうしても耐えられないときは寝て空腹をごまかしている。胸が痛みました。食事だけではありません。図書館が利用できないので卒論が書けないとか、まだ前期が終わっただけだが、大学で何を学んだかと聞かれると何も学んでいないと思うとか、友人をつくれないなど切ない声がたくさん寄せられております。
まず大臣、コロナ禍での学生のこうした状況、どうご認識されているでしょうか。
萩生田光一 文部科学大臣 コロナ禍にあって、例えば実家の経済状況も悪化をしてしまってなかなか負担をかけられない、あるいは自らアルバイトで一定の額を稼いでいた学生さんが、アルバイトのシフトの回数が減ったり、あるいはアルバイト先が閉鎖をしたり倒産をしたりなんということも起きていますので、いま先生がご指摘になったようなお話は決して大げさな話じゃなくて、全国各地で学生の皆さんに経済的な様ざまな苦労が出ているんだと思います。
我われ文科省としては、前期、支援パッケージつくりました。とりあえず大学が認めた皆さんへの支援は1回は行き届きましたけれども、今後こういう状況が続くことになれば、さらなる支援も考えていかなきゃいけない、柔軟な対応を取っていかなきゃいけないという、そんな思いで注視をしているところです。
他方、やっぱり学校に寄りそってほしいということを繰り返しお願いしてきまして、いま先生も大学の例出してくれましたけど、私立の大学などでは対面授業は思うようにやっていただけないところもあるんですけれど、他方、学食などを朝から開けていただいて、学校に来さえすれば朝昼晩食事の提供をしますよという、そういう非常に魅力的な対応をしていただいているところもあって、まずはその学生の皆さんの食にしっかりサポートができるような体制を取っていただきたいなと、そんなふうに思っております。
山下よしき 食をサポートするって本当に大事だと思うんですよね。生きる上で基本ですからね。
菅首相は、口を開けば「自助、共助、公助」とおっしゃいますけれども、学生は自助も共助も頑張っていると思います。食料を受け取りに来た学生の多くは、今度は自分が支える側にとボランティアを買って出ております。いま学生に必要なのは、学ぶことをあきらめる学生を出さないための公助だと思います。
もう公助の中身は先ほどから聞いていますから、これは聞きません。いま大臣も、取りあえず1回行き渡ったということをおっしゃいましたけれども、学生の実態、それからこういう声を聞きますと、学生の学びの支援緊急パッケージ、とりあえずやられたわけですけれども、これだけでは十分と言えないということが示されていると思います。
そこで、具体的に提起したいと思います。
コロナ禍が長期化、深刻化する中で、いま学生が最も困っているのは手もとに現金がないということなんです。だんだん食料支援も回数が重なって時期が進んでまいりますと、お金がないという声が広がってきているんです。
文科省はこの間、学生支援緊急給付金を実施して約43万人に給付を終えたと聞きますが、先ほどの食料支援を利用した学生からは、給付金の対象を見て自分は当てはまらないと思って申請しなかったとか、自分なんかが給付金をもらっていいとは思わなかったなど、困っているんだけれども申請にいたらなかったという声も寄せられております。
大臣、必要な学生に行き届いていないという実態がありますから、あらためて、私は、要件も緩和し、対象学生の人数も増やしてこの緊急給付金を再実施すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
伯井美徳 文部科学省高等教育局長 いまご指摘いただいた学びの継続のための学生支援給付金につきましては、これまで学校が推薦すべきと判断したすべての学生、これ約42万人、予算上は43万人なんですけれども、その42万人に支給を行ってきています。
我われといたしましては、まずは新型コロナウイルス感染症の今後の状況というのをしっかり見極め、学生の修学の状況、さらに、中途退学者の調査というのもやっておりますが、これも追加でさらに実施、フォローアップをしているところでございます。そうしたことを注視しながら、様ざまなことを検討してまいりたいと考えております。
山下よしき 様ざまな状況を見て検討するということなんですけど、急ぐ必要があると思うんですね。
元もと、学生のアルバイトは飲食業が多いです。約4割が飲食業です。したがって、このコロナ禍が長引く中で、以前と同じようにアルバイトをすることがなかなか困難になっています。
日本私立大学協会附置私学高等教育研究所の調査では、緊急給付金を希望者全員が受けられたと回答した大学は約19%にとどまっております。希望しても受けられなかった学生がたくさんいるということです。先ほど局長は、大学が必要とした学生42万人にはとおっしゃいましたけど、大学が必要とみなさなかったけれども本人は必要だと思った学生がたくさん残念ながら受けられなかったという実態があるんですね。
大学生協連の調査でも、緊急給付金を申し込みたかったが、今後親の収入の減少が見られると容易に予測できるのに、まだ給与明細上では顕著に見られないため申し込めなかった、後期や来年以降の学費が払えるか不安である、私立大3年生、女性、ひとり暮らしとか、学生支援給付金などは奨学金をもらっている人しか応募資格がなく、奨学金をもらわずぎりぎり頑張っている層への保障が何もない、本当にしんどい、感染リスクがある中必死でアルバイトをして、それでも給料が減って困っている学生は、収入が激減しているわけではないと支援対象からはじき飛ばされる、最近特に不公平過ぎてイライラする、国立大3年生、女性、ひとり暮らしという声もあります。推薦枠が限られていたために、要件は柔軟にと大臣も予算委員会なんかで答弁してくださいましたけれども、しかし、そうできない、結局、大学では要件を厳しくせざるを得ない状況があって、多くの学生に支援が届いていない、これが実態なんですね。
私は、大臣、あらためて、学生に支援することの意義をちゃんと明確に据え直す必要があると思います。直接的には学生の学業の継続中断を防ぐということにあるんでしょうけれども、やはりこのいまの事態というのは、将来の日本社会において様ざまな分野での働き手を失う、社会全体にとって大きな損失となりかねない事態を回避するという大変大きな社会的意義があると思います。枠を広げて学生支援緊急給付金再実施する、大臣、至急やるべきではありませんか。
萩生田文科相 確かに、目安となる人数といいますか割合を大学に示したということもありました。1回目の申請ではどちらかというと厳しい審査をしてしまって、救済になっていないんじゃないかというご批判、ご指摘もありましたので、その後、各大学に柔軟な対応をお願いして、大学で判断した皆さんには一時的には救済ができたんではないかと思っています。しかし、その間に大学の方でセレクトをしてあぶれてしまった学生さんもいらっしゃるとすれば、厳しい状況は変わっていないんだと思います。
先ほど申し上げたように、いまの段階でこの事業を継続するというスキームを持っておりませんが、しかし、今後の状況を注視しながら、必要とあれば柔軟に対応するということとは、私、閣議の中でも明確に言って、それは予算措置ではなくて予備費も使わせてもらうと、学生についてはということは安倍内閣の段階では了解をいただいておりますので、そのつもりで状況をしっかりウオッチして、必要な対策はしっかり対応していきたいと思います。
山下よしき もう事は急を要するということだけ申し上げたいと思います。
次に、対面授業の再開、大学施設の利用の再開、これも学生にとって強い願いとなっております。もちろん、実習や実験など対面を抜きに実施することが困難な学びもありますし、それから、学生どうしあるいは教職員との若い時期における豊かな人間関係を築くという面でもいまブレーキがかかっているという状況になっております。そして、図書館などが閉鎖されることで、地域社会への知的貢献という面でのマイナスになっております。私も、オンライン授業を全否定するつもりはまったくありません。これが役に立っているという声もあります。しかし、やはり対面で学ぶこと、キャンパスで過ごすことは他にかえられない価値があると思います。
地域ごと、大学ごとに感染の状況も対策も異なるとは思いますが、大学として感染拡大抑止の対策を十分行って、対面授業の再開、大学施設の利用の再開を促進する、そのために国がしっかり支援することが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
伯井局長 コロナ禍の下でも質の高い学習機会を確保するということがやはり大学の使命であるというふうに認識しております。
その上で、我われ、感染対策を大学が十分講じた上で、可能なものについては対面授業ということを積極的に検討いただくよう要請を累次にわたって行っているところでございますし、様ざまな大学関係者との大臣との直接対話といったことも実施しているところでございます。
我われ、好事例の横展開、感染予防を行いつつ、学生どうしの交流機会あるいは対面授業をしっかり行っており、オンラインとも両立していると、そういう好事例の横展開を積極的に行っておりますし、1年生への配慮も含めて、学生が理解、納得できる学習機会の確保ということを今後とも引き続き対応していきたいと考えております。
大学は地域における知の拠点でもありますので、ご指摘いただいたように、図書館の利用なども、地域の感染状況ございますが、大学の施設の状況も踏まえながら、各大学で積極的に検討いただきたいとも考えております。
山下よしき 私立大学の関係者の方に聞きますと、対面授業の再開には大学として様ざまな準備が必要だと、経費もかかると言うんですね。
例えば、具体的には、十分な換気ができる空調設備の導入が必要だと。不特定多数の者が触れる場所、ドアノブ、エレベーターのボタンなどの小まめな消毒、これは外注することになるでしょう。それから、学生寮の相部屋解消に要する経費、増築経費、学生への家賃補助などがいります。さらには、教室の少人数化を図ることが必須となります。例えば、大規模授業のクラスを複数教室に分けて分散させる。一つの教室では対面授業をやるけれども、あとの教室にはこれは同時中継で授業してもらう。そのためには、撮影用のカメラや通信設備、人の配置が必要だとか、1人の学生が1日のうちに対面授業とそれから遠隔授業の両方を受講しなければならないという場合は、大学の構内でこの遠隔授業を受講できるように感染防止と遮音に配慮したスペースを整備する必要もある、通信インフラも増強する必要があるなど、多額の経費がかかるということを具体的にあげられております。
ですから、多くの大学が自ら寄附金を集めたり、やりくりしながらこういう取り組みを進めているんですが、大臣、私は、文科省の姿勢としては、いま大学がどういう現状にあるのか、そしてどういう要望を持っているのかつぶさに聞いて、どうすればこれらが実現できるのか、ともに知恵を出す姿勢が大事だと思うんですね。まだまだ長引く可能性大です、世界的な感染が拡大しておりますので。やはり、ともに知恵を出す、そして必要な支援を考えると、この姿勢大事だと思いますが、いかがでしょうか。
萩生田文科相 もちろん、先生、そのとおりだと思います。
したがって、新学期当初は、コロナ禍であっても遠隔の授業ができるようにということで、緊急支援100億円を支出をして、各大学のインフラ整備などを応援をさせていただきました。
その後、やっぱり状況が変わってきたので、一部対面を入れたハイブリッドの授業をやってもらいたいということで、例えば机の上にアクリル板を買うとか、あるいはいまおっしゃったように、空調設備を変えるという学校も、努力している学校もあるやに承知をしています。それは十分理解できます。
私は、この間、学校関係者の皆さんにも再三申し上げているんですけれども、まずはやっぱり学校がそういう努力をしていただいて学生たちを受け入れる環境をつくってもらわなきゃならないんだけれども、しかし、その想定を超える負担が生じて、その負担が高等教育を進めていく上でこれからも必要だということであれば社会全体でそのコストを分担するべきだ、すなわち国民の税金を投入させていただくこともできるんじゃないかということは繰り返し申し上げているところでございますので、各大学との話合いというのをこれからも続けていきたいと思います、大学団体との話合いも続けていきたいと思いますけれども、これからウイズコロナ、アフターコロナの大学教育ってどうあるべきかということは是非並行して考えていただいて、例えば大教室なんかはこれからは似合わないんだと思いますよ。
ですから、そういうことも含めて、まずは大学現場がいろんな努力をし、提案をしていただいて、それを我われしっかりお聞きをして、そしてそれは、例えば国立なら我われの責任で運営費交付金の中でまかなっていったり、あるいは私学助成だったら増額をすることも考えていかなきゃならないんですけど、何も努力をしてくれなくて、対面もやらなくて、お金をくれるんだったら何か考えるといういまの状況にちょっと私はいらいらしているところです。
山下よしき そんな大学ありますか。ああ、そうですか。ちょっと認識が違いますけどね。
かなり苦労しながら、もちろん心配な面もあるんですよ、感染を拡大させてしまってはならないと。アメリカなんかでは大学がクラスターになっちゃって大変なことになっているということもありますから、慎重な姿勢あるでしょう。しかし、だからといっていまの状況をよしとはできないわけですね。いつまでも対面の授業ができなかったら、大学の存在の価値というものに懸かってきますので。
しかし、私、一つだけ大臣、そうおっしゃるなら注文したいんですけど、この間、大学関係者と懇談されたときに、「大学名を公表するぞ」という形での誘導は避けていただきたいという発言もありましたよね。やはり、こういうやり方はいかがかと思うんですよ。お金があればできるけど、お金がなくてできないというところまで名前公表して、努力が足らないんだというふうなやり方で、公表するようなやり方は私はなじまないと思う。やはり大学に寄りそって、どういう問題があるのか、どうすれば実現できるのかということをちゃんと一緒に相談するという姿勢じゃないと。
言葉は悪いですけど、脅しをかけて、「早よやれ早よやれ」みたいなことはやるべきじゃないと思いますが、いかがですか。
萩生田文科相 決してプレッシャーをかけているわけではございません。大学における授業のあり方は社会的に大きな関心事項となっている状況を踏まえれば、各大学の取り組み状況を社会にしっかりとご理解いただくことが重要と考えています。今般の授業状況に関する再調査は、そうした観点から、個々の大学がどのような取り組みや工夫をしているのかについて明らかにすることが必要と考え、実施するものです。
その際、文部科学省としては、単に対面授業の割合のみで大学が評価されるようなことを意図しているものではありません。このため、今回の調査結果の公表に当たっては、それぞれの大学の取り組みの全体像、特に各大学が学生にどのような説明を行い、理解を得ているかについて、社会の皆様に正確に公表することが重要と考えており、そのように作業を進めております。
また、私としても、大学の声を実際に聞くことは重要と考えており、先週、コロナ禍における授業のあり方を含め、今般の高等教育をめぐる諸課題について、いくつかの大学の学長間で直接の意見交換を行いました。これまでにも優れた取り組み例の周知、発信などを通じて大学における取り組みを支えてきたところですが、当該意見交換の中でかわされた議論も踏まえながら、学生本位の高等教育が実現できるように、引き続き必要な対応を講じてまいりたいと考えています。
山下よしき 終わります。