日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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医療崩壊の大阪に国の医師派遣はゼロ 山下氏追及

参議院本会議 2021.5.7
動 画

 新型コロナウイルスの患者が入院できず、必要な医療を受けられないなど医療崩壊が生じている大阪府の問題で7日、日本共産党の山下芳生参院議員は、参院本会議で病床確保や医師・看護師の派遣など緊急対策を行うことを田村憲久厚労相に求めました。

山下氏は、大阪への医師の派遣が「いまだ実績はゼロ。これでどうして命が守れるのか」と厳しく批判。「国として医療機関のニーズをつかみ医師派遣に道をつけるべきだ」と国の責任を強調しました。

また、新型コロナウイルス感染症の患者が10人に1人しか入院できないなど深刻な状況のなか、自宅療養者への往診の拡大が必須として、「一部の医療機関の自主性に任せるだけでは、1万人に上る自宅療養者をカバーできない」と指摘。「往診に対する診療報酬の増額、手当の創設などを行い、組織的な対応をはかるべきだ」と強く求めました。

これに対し田村氏は、医師派遣については「送り出し元となる医療機関と丁寧に調整しながら対応する必要があると考えている」と答弁。医師派遣に未着手であることが浮き彫りになりました。また、自宅療養患者への往診について「症状に変化があった場合、速やかにこれを把握し、医療機関とつなぐことが重要」などと述べるにとどまり、大阪府の深刻な状況とまともに向き合おうとはしませんでした。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
会派を代表して、温暖化対策推進法改正案について関係大臣に質問します。
法案に入る前に、田村厚労大臣に伺います。
新型コロナの感染者が入院できず必要な医療を受けられない事態が広がっています。国が主導して全国レベルの連携を強め、病床確保や医師、看護師の派遣など、緊急対策を行うことを求めます。
大阪の事態は特に深刻です。二点提案します。
第一は、大阪への医師の派遣です。いまだ実績はゼロです。これでどうして命が守れるのか。大阪からの要請待ちにならず、国として医療機関のニーズをつかみ、医師派遣に道を付けるべきではありませんか。
第二は、自宅療養者への往診の拡大です。一部の医療機関の自主性に任せるだけでは一万人に上る自宅療養者をカバーできません。往診に対する診療報酬の増額、手当の創設などを行い、組織的な対応を図るべきではありませんか。
以上、厚労大臣の答弁を求めます。
現在、地球の平均気温は産業革命前と比べて一・二度上昇しており、世界各地で深刻な事態が起こっています。二〇一九年、グリーンランドで解けた氷は観測史上最大となり、東京二十三区の面積で水位八百メートルにもなりました。オーストラリアなど各地で乾燥と高温による山火事が広がり、二〇二〇年、世界の森林火災の面積は日本の面積の一・七倍となっています。シベリアで観測史上最高の三十八度という異常な高温が記録され、永久凍土の融解が進み、新種のウイルスが見付かったとの報道もありました。プラス一・二度でもこうした深刻な事態が広がっています。
国連気候変動に関する政府間パネル、IPCCの特別報告書は、このままでは早ければ二〇三〇年にもプラス一・五度を超えてしまうと警告しています。さらに、科学者たちは、プラス一・五度が地球の限界であり、それを超えるとシベリアの永久凍土が解け、二酸化炭素の二十五倍の温室効果を持つメタンが大量に放出されるなど、温暖化の進行に歯止めが掛からなくなってしまう、二一〇〇年にはプラス四度になってしまうと警告しています。
小泉環境大臣、こうした警告を日本社会全体の共通認識にすることが温暖化対策を推進する土台になると考えますが、いかがですか。
先月末、気候変動に危機感を持って行動している十代、二十代の若い皆さんと懇談しました。あと四年以内に大きく動き出さないと一・五度を超える、気候危機のことを考えると勉強も手に付かない、高校生の私が二十四歳になるとき地球はタイムリミットと言われると物すごく悲しい気持ちになる、世界がこのまま変わらないんだったら二人目の子供は絶対産まないなど、若い世代が気候危機を自分の未来に直結する問題として切迫感を持って捉え、行動していることがひしひしと伝わってきました。
小泉大臣、こうした声をどう受け止めますか。今政治に携わっている者の若い世代の未来に対する責任は極めて重いと考えますが、いかがですか。
IPCCの報告書は、地球の平均気温をプラス一・五度以下に抑えるためには、二〇三〇年までに世界全体で温室効果ガスの排出量を四五%削減し、二〇五〇年までに実質ゼロにする必要があるとしています。
菅首相は、四月二十二日、気候変動サミットにおいて、二〇三〇年度の日本の温室効果ガス削減目標を二〇一三年度比で四六%減とすると表明し、世界の脱炭素のリーダーシップを取っていくと胸を張りました。しかし、EUは五五%減です。英国は三五年までに七八%減の目標を表明し、米国も三〇年までの五〇ないし五二%減を打ち出しました。先進国では五〇%超の削減が当たり前になっているときに、やっと四六%減を掲げた日本にリーダーシップを取ることなどできません。
小泉大臣、日本もEUなどが掲げる五〇%以上の削減を目標に据え、先進国として、また世界五位の排出国として、最低限の責任を果たすべきではありませんか。
目標と同時に、実効性も問われています。菅政権は昨年十月、ようやく二〇五〇年実質ゼロを掲げましたが、この目標の達成には石炭火力発電所の全廃が不可欠です。
国連のグテレス事務総長は、三月、OECD加盟国に対して、二〇三〇年までに石炭火力発電を段階的に廃止するよう求めると述べました。とりわけG7各国に対しては、六月の首脳会議までに石炭火力の具体的な廃止計画を示し、主導的な役割を発揮するよう要請しました。このままではCO2排出削減目標を達成できないという危機感の表れであり、G7の中で唯一、石炭火力の期限を切った廃止を検討していない日本に対する強い要請だと考えますが、国連事務総長の要請をどう受け止め、どう具体化しているのか、小泉環境大臣並びに梶山経産大臣の答弁を求めます。
小泉大臣の地元でもある横須賀で、現在、石炭火力発電所の新規建設が進められています。将来はCO2を出さないゼロエミッション火力になるとうたわれていますが、事業者であるJERAのロードマップによると、CO2を出さないアンモニアを石炭と混ぜて燃やす混焼技術はまだ実証段階であり、うまくいったとしても、二〇三〇年代前半にアンモニア混焼率が二〇%、つまり八〇%は石炭のままです。
梶山大臣、横須賀の石炭火力がゼロエミッションになるのは一体いつですか。ゼロエミッションとは名ばかりで、結局は石炭火力の延命になるのではありませんか。
現在、建設中や計画中の石炭火力のCO2排出量の合計は年間約五千万トン、日本の排出量の四%となります。反対に、これを止めれば四%の排出増加を抑えることができるということです。
小泉大臣、石炭火力の新増設は直ちに中止すべきではありませんか。
政府は、脱炭素電源を五割にするとして、原発の発電量に占める割合を現状の四・四%から二割に引き上げようとしています。そのために、四十年を超える老朽原発まで再稼働させようとしています。しかし、中性子線による原子炉容器の経年劣化は避けられません。今も続く東京電力福島第一原発事故の教訓を忘れ、脱炭素に乗じて原発再稼働を加速することは、国民の願いと決して相入れません。
小泉環境大臣は、二〇三〇年度に再生可能エネルギーの割合を現行計画から倍化すると述べています。実現すれば、再エネの割合は五〇%近くになり、原発再稼働の拡大は必要なくなります。逆に、原発の割合が二割に高まれば、再エネが三割程度に抑えられることになります。
小泉大臣、脱炭素の流れは、原発頼みではなく、再生可能エネルギーの飛躍的普及と省エネでこそ促進すべきではありませんか。答弁を求めます。
再エネ導入の進め方も重要です。電力需要の二倍に上る再エネのポテンシャルは、主に地方に存在しています。しかし、地域外の資本が利益を優先した開発を行い、自然環境を破壊していることが各地で問題となっています。法案では再エネ導入の促進区域を指定することとなっていますが、住民の納得と合意の上で再エネ導入を進めるためには、促進区域のみでなく保全区域を設定することも必要ではないでしょうか。
また、法案では、促進区域において環境影響評価の配慮書手続を省略するとありますが、環境への影響を回避する保障はありますか。
以上、環境大臣の答弁を求めて質問を終わります。(拍手)
〔小泉進次郎環境大臣登壇、拍手〕

○小泉進次郎環境大臣 山下芳生議員から、IPCCや科学者からの警告を共通認識にすることについてお尋ねがありました。
IPCC、気候変動に関する政府間パネルの一・五度特別報告書においては、地球温暖化は、現在の進行速度で増加し続けると二〇三〇年から二〇五二年の間に一・五度に達する可能性が高いとして、今後十分な対策が講じられなかった場合には、早ければ二〇三〇年に一・五度に達する可能性があることが指摘されています。
また、一・五度と二・〇度では何が違うのか、例えば、二度に比べて一・五度に地球温暖化を抑えることで極端な熱波に頻繁にさらされる人口が約四・二億人減少するなど、分かりやすく伝えていくことも重要です。一・五度特別報告書を始めとするIPCCの各種報告書の内容については、温暖化対策を推進する上での土台として重要であることから、こうした科学的知見について多くの国民に知っていただけるよう、引き続きその普及に努めてまいります。
気候危機に対する若い世代からの声の受け止め及び未来に対する責任についてお尋ねがありました。
気候変動の対策が進まなかったときに最も影響を受けるのは、間違いなく将来世代です。私も、現在の政治に携わる立場として、次世代に対する責任は極めて重いと受け止めています。そのような考えから、私自身、気候変動政策を強化することが次世代への責任を果たすことになるとの思いで、大臣就任以来政策を進めてきました。また、これまで、若い世代との意見交換の機会を積極的に設けてきました。本法案を始めとする環境省の提出法案についても、今年三月にZ世代との意見交換会を集中的に行ったところです。
引き続き、世代や分野を超えたあらゆる主体との対話を継続しつつ、次世代への責任を少しでも果たせるよう、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて全力を尽くしてまいります。
我が国の二〇三〇年度削減目標についてお尋ねがありました。
菅総理は、先日の気候サミットにおいて、二〇三〇年度において温室効果ガスを二〇一三年度から四六%削減することを目指します、さらに、五〇%の高みに向け挑戦を続けてまいりますと世界に対して表明されました。
今回の目標については、二〇五〇年カーボンニュートラルとの整合性、国際社会の機運を高める国際性、実効性の三つの要素を踏まえ、中央環境審議会・産業構造審議会合同会合、総合資源エネルギー調査会等において、関係省庁からの協力も得て、温室効果ガス排出量削減のための具体的な対策、施策及びその削減効果について検討を深め、梶山経産大臣や加藤官房長官とも調整を重ねてきました。
四六%という数値は、こうした積み上げの議論を進めた上で気候サミットという国際発信上効果的な機会で打ち出し、世界の脱炭素化を牽引する観点から総理が判断をされたものであり、経済界からも国際社会からも評価されています。
また、気候サミットの場においても、バイデン大統領から、日本及びカナダによる新たな削減目標について、我々は二人の偉大なパートナーが今週示した意欲的な宣言を歓迎すると発言があるなど、世界の脱炭素化に貢献していく日本の姿勢を世界に示すことができたと考えています。
今後も、G7、G20、COP26に向け、様々な形で日本の責任を果たしてまいります。
石炭火力発電の廃止計画の具体化及び新増設計画の中止についてお尋ねがありました。
私は、大臣就任直後にCOP25に参加し、我が国の石炭火力政策に対する国際社会の批判が強く、それ以外の優れた取組や技術が正当に評価されない状況を何とか打開しなければならないという強い問題意識を持ち、石炭政策の見直しに取り組んできたところです。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現には、電力の脱炭素化が不可欠です。環境省としては、再生可能エネルギーの主力電源化を全力で進め、火力発電への依存度を可能な限り引き下げていきます。また、水素・アンモニア発電などの革新的技術の開発実証にも取り組んでいきます。
先月には、経済産業省において、非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた対応策が取りまとめられました。これは、水素・アンモニア発電等による電力の脱炭素化に向けた第一歩と認識しています。
また、先般の菅総理の訪米の際に合意された日米気候パートナーシップにおいて、世界の脱炭素化を力強く進めるべく公的国際金融に関して、官民の資本の流れを気候変動に整合的な投資に向け、高炭素な投資から離れるよう促進すること等が明記されました。
エネルギー基本計画やエネルギーミックスを含むエネルギー政策については、現在、梶山経済産業大臣の下で議論が行われているところでありますが、環境省としても、気候変動対策を取りまとめる観点から、前向きに議論に貢献してまいります。
脱炭素に向けた原発再稼働と再生可能エネルギー普及や省エネ促進についてお尋ねがありました。
二〇一九年六月に閣議決定したパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略においては、原子力は安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減するとされています。
こうした政府方針に沿って、環境省としても、二〇三〇年そして二〇五〇年に向けて、再生可能エネルギーの最大限の導入や省エネルギーの徹底を進めてまいります。
エネルギーミックスを含むエネルギー政策については、梶山経済産業大臣の下で議論が行われていますが、二〇三〇年目標の四六%削減の実現に当たっては、再エネの導入拡大が重要なポイントの一つと考えています。総理も、再エネが最優先と述べています。
エネルギー基本計画の見直しの議論に対して気候変動対策の観点から必要な主張を行っていくとともに、関係の深い地球温暖化対策計画と長期戦略についても、環境省の考えをしっかりと反映させてまいります。
最後に、保全区域の設定の必要性及び本法案における環境影響の回避についてお尋ねがありました。
二〇五〇年カーボンニュートラルや、それに向けた二〇三〇年度四六%削減目標の実現に向け、地域の脱炭素化を推進するためには、再生可能エネルギーの最大限の活用が重要です。その一方で、再エネ事業の地域との共生や地域における合意形成が課題となっています。
このため、本法案では、地域における円滑な合意形成を図りつつ、再エネ促進区域において、地域に貢献する再エネを促進する仕組みを創設することにしています。
保全区域の設定も必要という御指摘がありましたが、再エネを進めていく上で、地域の環境を保全することは重要です。そのため、市町村が促進区域を定めるに当たっては、環境の保全に支障を及ぼすおそれがないものとして環境省令で定める基準に従うとともに、都道府県が地域の自然的社会的条件に応じた環境配慮の基準を定めた場合にはその基準に基づくこととしています。また、市町村が促進区域を定める際には、地域環境保全のための取組についても併せて定めるべきこととしています。
このように、本法案では、事業計画立案の早い段階において重大な環境影響の回避を図ることが制度上担保され、さらに、より適正な環境配慮が期待されることから、配慮書手続を省略する特例を措置しています。
環境省としては、地域環境の保全にも十分配慮しながら地域と共生する再エネの導入拡大を促していくために、関係省庁とも連携して取り組んでまいります。(拍手)
〔田村憲久厚生労働大臣登壇、拍手〕

○田村憲久厚生労働大臣 山下芳生議員にお答えいたします。
新型コロナへの対応についてお尋ねがありました。
新型コロナへの対応については、これまでも国と全国の都道府県が一体となって医療提供体制の確保に取り組んでおり、特に、医療提供体制が非常に厳しい状況にある大阪府については、関係省庁の協力を得て、全国から看護師の派遣調整を実施するなどの広域的な支援を取り組んでおります。
医師の派遣については、派遣対象となる医師の専門性や現在受け持っている患者の状況等を踏まえたきめ細かな調整が求められるため、送り出し元となる医療機関と丁寧に調整しながら対応していく必要があると考えております。
また、自宅等で療養される患者の方々については、症状に変化があった場合に速やかにこれを把握し、医療機関等につなぐことが重要と考えております。
このため、保健所と定期的に健康観察を行うとともに、症状が変化した場合等に備え、患者からの連絡や相談に応じる体制を構築しており、引き続き自宅療養の健康確保にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)
〔梶山弘志経済産業大臣登壇、拍手〕

○梶山弘志君経済産業大臣 山下議員からの御質問にお答えをいたします。
グテーレス事務総長の発言に対する受け止めについてお尋ねがありました。
エネルギーをめぐる状況は各国で千差万別であり、各国が置かれている状況や目標、政策は様々と承知をしております。
石炭火力発電の位置付けについては、供給力の状況や資源の乏しい我が国におけるエネルギー安全保障の観点も踏まえつつ、エネルギー基本計画の議論の中で検討してまいりますけれども、安定供給を大前提に、その発電比率をできる限り引き下げていくことが基本となると考えております。
このため、足下では非効率な石炭火力発電のフェードアウトを着実に進めるとともに、中長期的には水素・アンモニア発電やCCUS、カーボンリサイクルを活用した脱炭素型の火力発電に置き換えていく取組を促進してまいります。
横須賀の石炭火力についてお尋ねがありました。
横須賀の石炭火力発電所を運営する株式会社JERAは、昨年十月に、二〇五〇年時点のCO2ゼロエミッションを目指す方針を示したロードマップを公表しております。このロードマップにおいては、二〇三〇年までに石炭火力へのアンモニア混焼実証を進め、本格運用を開始するとともに、超臨界以下の石炭火力を全て停止し、二〇五〇年において、国内外においてCO2ゼロエミッションを目指すこととしております。
このように、JERAにおいては委員御指摘の横須賀の火力、石炭火力発電所を含め二〇五〇年までにゼロエミッションを実現することを目指してアンモニア混焼などの取組を進めているものと認識をしております。
政府としても、足下では非効率な石炭火力発電のフェードアウトを着実に進めるとともに、中長期的には水素・アンモニア発電やCCUS、カーボンリサイクルを活用した脱炭素型の火力発電に置き換えていく取組を促進してまいります。(拍手)