午前、大阪・交野市で9月2日からはじまる市議選の応援。午後、川崎造船神戸工場で25日起きたクレーン倒壊事故について兵庫労働局に聞き取り。夜、川崎造船の労働者のみなさんから職場の状況を聞き取り。
川崎造船神戸工場のジブクレーン倒壊事故は、作業員3人(うち1人は派遣労働者)が亡くなり、4人が重軽傷を負う重大な労働災害となりました。高さ50m、総重量800tもの巨大なクレーンがなぜ倒壊したのか?労働局の説明では、事故はクレーン上部の回転軸を支えるベアリングを交換するための作業中に起きたといいます。
しかし、その作業手順はあまりにも無謀でした。クレーン上部の自重500tが一点に集中する回転軸を油圧式ジャッキでもちあげようとしたところ、バランスが崩れてクレーン上部がずり落ち、倒壊したとみられますが、そうなる危険性が高いことは容易に推察されたはずです。なのにどうしてこんな危ない作業手順をとったのか?これが最大の疑問です。兵庫労働局の坪田労働基準部長も、「その点が重要と認識して調査に当たっている」とのことでした。
現場の労働者の話を聞いて、その疑問が少しずつ解けてきました。造船業界は「景気回復」を受けてフル操業状態にあります。川崎造船神戸工場も3、4年先まで受注が入っているとのこと。船台のうえで船体ブロックを結合させ、船体を完成させる工程も、かつての3ヶ月→2.5ヶ月→2.3ヶ月→2.15ヶ月→2ヶ月とどんどん短くなっています。
倒壊したクレーンは、8月23日(木)にベアリングの破損が見つかりましたが、27日(月)には、船台にブロックを6つも搭載する、クレーンがいちばん忙しい日が迫っていました。それに間に合わせて修理することが最優先され、30年以上ぶりのベアリング交換という「大仕事」にもかかわらず、安全な作業手順の検討がおろそかにされたのではないか。
設備の老朽化も問題です。造船業界では、1978年と86年の2回の造船不況時、首切り・「合理化」の嵐が吹き荒れ、設備投資が抑制されました。倒壊したクレーンも1964年に建造されたもの。しかも、阪神・淡路大震災で同工場も大きな被害を受けましたが、クレーンのレールは歪んだままで今日に至っています。古い設備のまま過去最高の船を造っているのです。
こうした背景のもと、川崎重工グループ(川崎造船は5年前に川重から分社化)では災害が多発し、最近3件の死亡災害が発生しています(07年7月10日坂出工場、06年11月16日坂出工場。06年10月30日播磨工場)。
じつは、労働災害の増加は、川重だけでなく造船や鉄鋼など製造業全体に共通しています。リストラの強行で人員が大きく減らされ、設備のことを知りぬいた熟練労働者が現場に少なくなったこと、派遣や請負など雇用が多様化し、現場の意思疎通が不十分になりがちなこと、そこに「景気回復」で急速な増産が押し付けられ、現場は多忙を極めていること、などが共通した背景要因として指摘されています。
「景気回復」の裏側で、生産第一で安全が後回しにされ、労働者が犠牲にされることはあってはならないことです。日本の製造業の最大の強みは、現場の技術力の高さにあります。労働者の安全確保はそのいちばんの土台です。製造業の経営陣はいま一度そのことを肝に銘じるべきです。
兵庫労働局の杉田安全課長も、「背景要因として、生産量・額の推移、人員の推移、リストラによる熟練労働者の減少などを調査したい。厚生労働省としても、製造業で重大事故が増えていることに関心を持っている」と明言しましたが、行政の強力な指導が求められています。
調査には、吉井英勝衆院議員、堀内照文党兵庫県国政委員長、新町みちよ兵庫県議、おおかわら鈴子神戸市議が同行してくれました。