日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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温暖化対策法 原発と石炭火発批判 山下氏に参考人

参議院環境委員会 2021.5.18
動 画

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(写真)質問する山下芳生議員=5月18日、参院環境委

参院環境委員会で5月18日、温暖化対策推進法の参考人質疑が行われ、参考人がそろって原発と石炭火力はやめるべきだと表明しました。

日本共産党の山下芳生議員が石炭火力についての見解を質問し、小島延夫弁護士は「石炭火力は世界で全廃に向かっており、日本に融資すると他の国で活動できなくなる」と指摘。WWF(世界自然保護基金)ジャパンの小西雅子氏は「2030年の46%削減目標は石炭火力が残っていると計算できない。石炭火力をアンモニア混焼して40年も残すのが費用効果的なやり方なのか」と批判しました。

社会地球化学研究所の水谷広氏は「エネルギーを石炭などの化石燃料には依存できない」と指摘しました。

原発について、水谷氏は「原子力は廃棄物を10万年管理しなければならない」と利用に反対。小西氏は「再生可能エネルギーが安くなり、原発に経済的優位性はなく、核廃棄物も解決されておらず合理的妥当性がない」と指摘。小島氏は「原発のための送電線容量確保で再エネが接続できなくなっている。再エネを進めるなら原発は早急にやめるべきだ」と指摘しました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
まず、小島参考人にお尋ねします。
私もこの間、環境影響評価、アセスの在り方について当委員会で取り上げてまいりました。先生の先ほどの意見陳述では、もう時間がなくて、資料最後のアセスの部分については全くお述べにならなかったと思うんですが、アセスの在り方について改めてお考えを聞かせていただけますでしょうか。

○参考人(弁護士・駒澤大学大学院法曹養成研究科法曹養成専攻講師 小島延夫) 環境アセスメント制度というのは、一九六九年にアメリカで国の法律として最初にできたものでありますけれども、これは、実質的には、自然保護のようになかなか定量化できない保護対策を現実的に実行するためにどうしたらいいかということで、その調査の手続を尽くすということによって、調査、予測、評価の手続を尽くすということによって環境保護を実際上実現するという目的でつくられたものです。

それで、それをどうやって実現するのかということでいうと、アメリカの国家環境政策法は代替案作成というのを一つの大きな内容としていまして、これは要するに、環境影響をできるだけ減らすというためには、いろんな案を作って、その案を比較検討することによってどういう案がいいのかということを目に見えるような形にしていく、それによって今やろうとしている施策が適切なものなのかどうかを判断していく。そういう意味では、代替案検討というのは非常に重要な意味を持っています。
それから、当然のことながら、この環境アセスメントは、ある施策を実行するかどうかということの段階で決めるわけですから、もう施策を実行することがある程度固まった段階ではなくて、できるだけ早い段階でその判断をするというのがすごく重要になります。
実際問題言って、やっぱりある程度実施することが決まった段階で環境影響評価で止めるということになると、いろんなロス、手戻りの問題が発生しますので、やっぱり早期の段階においてきちんと検討するというのはすごく重要。しかも、それを実質化するという点では、代替案検討をきちっとやるということがすごく重要になっています。
残念ながら、日本の場合は、配慮書の問題ということで、早期の段階の検討はある程度入ったんですが、この代替案検討のところがいま一歩曖昧な形になっている結果、なかなかその辺の本来なされるべき環境アセスメントが現実的には機能していないという部分があります。
そうはいいながらも、最近の事例でも、メガソーラーの乱開発などで環境影響評価の過程で意見が出て止まるというようなことも出ていますので、やっぱり環境影響評価制度というのは極めて重要なものだというふうに思っております。

○山下芳生君 ありがとうございます。
もう一度、もう一問、小島参考人に伺いたいんですけれども、先生、自己紹介でも述べられたように、横須賀石炭火力行政訴訟の弁護団長もされているということですが、私も横須賀火力発電所の問題を含んで石炭火力について度々当委員会で取り上げてまいりましたが、この温暖化対策、気候変動対策、気候危機を回避するという点で石炭火力の問題をどう考えればいいのか、どう考えておられるのか、小島参考人の意見を伺いたいと思います。

○参考人(弁護士・駒澤大学大学院法曹養成研究科法曹養成専攻講師 小島延夫) この点は、もう政府の資料でも当然出ているんですけれども、どんなに高効率化しても、現在の石炭火力であれば天然ガスの倍以上の、石炭、二酸化炭素を排出するという形になります。これは、最新の技術を使ってもそういう形になってしまいます。ですから、やっぱり石炭火力を進めるということは、明らかに二〇三〇年四六%削減、あるいは二〇五〇年カーボンニュートラルということに矛盾する政策にならざるを得ないと。これは、いかなる形でも進めることはできないのではないかというふうに思っています。
これ、現実に諸外国で見ると、もう大体重立ったヨーロッパ諸国は二〇二〇年代の前半に全廃するということを言っていますので、もう本当に世界のトレンドの中で完全に遅れてしまう状況になる。
それで、実際問題を言うと、メガバンクにしても、そういう投資機関を含めてほとんどのところがこの世界のトレンドの中で作業していますから、そういう中でいうと、日本だけこういうことをやって、そこに何かお金を出してくれということをやると、逆にその銀行が、日本でそういう制度に融資したことによってほかの国での営業がしにくくなるということになりかねないと。日本でおたくの銀行はこういうところに融資しているじゃないかという話になったら、世界、ほかの国での活動ができにくくなるんじゃないかということになりますので、もうそういうようなことは早急にやめた方がいろんな意味でプラスになるんじゃないかと思っています。環境影響に及ぼすだけではなくて、やっぱりもう本当にビジネスの世界でも大変困難を来すことになるんじゃないかと思っています。

○山下芳生君 ありがとうございます。
関連して小西参考人にも伺いたいと思うんですけれども、先ほど意見陳述の中で、二〇三〇年四六%削減を実現し、更に五〇%を目指すには、二〇三〇年石炭全廃止が必要だと。これが残っていると、つまり石炭火力が残っているとということだと思いますが、四六%は出てこないと、そうおっしゃいました。もう石炭火力全廃なしに、菅総理が四六%と世界に約束したこの三〇年目標はできないんだと。これ、もう少し詳しく御説明いただけますか。

○参考人(小西雅子君) 私たちも、このエネルギーシナリオ、研究者と一緒にずっと作ってきているんですけれども、最初やっぱり、どれぐらいできるかという数字を出したときに、石炭火力全廃かつ産業界における石炭使用をガスに転換しなければこのCO2で四九%という数字が出てこなかったですね。ですので、かくも石炭というものは日本においてCO2の削減策としては効果のあるものかということを自分たちで再確認することになりました。今まさにおっしゃったように、幾ら高効率でもガスの二倍を出しますので、二〇三〇年、それでも石炭火力使うならば、全部CCSを義務化するべきではないかと思っております。
これ、CO2四九%で、ほかの、六ガスの関係でいくとどうしてもそれが数字が四五とかに落ちてきてしまいますので、ほかをすごく頑張ったとしても、この石炭火力というもの、もちろん電源に占めるものだけではないんですけれども、残っていると、どうやって日本は四六%できるのだろうかとちょっと思っております。

○山下芳生君 関連して、小西参考人にもう率直な御意見伺いたいんですけれども。
一部報道では、日本政府は二〇三〇年に石炭火力を全体の二割程度残そうと、そういうふうにしようとしているんだという報道もあるんですけど、事ここに来てまだ石炭にしがみつくという政府の在り方がもしあるとすれば、言いたいこと、是非どうぞ。

○参考人(WWFジャパン専門ディレクター 小西雅子) やっぱり日本の産業界にとって、例えば電気料金とかあと日本の系統が果たして石炭火力全部なくなってできるのかといったら、現実性もすごく重要だと思っておりまして、私たち実際に、一時間ごとのアメダスの観測所を使っての三百六十五日コンピューター走らせまして、実際、石炭火力ゼロでも、今、日本の地域間連系線の容量がそれぞれ制限がありますので、それの中で可能かどうかということをやってみました。その結果、今の地域間連系線、もう既に増量が予定されているところは入れていますけど、それ以外なしで十分、今の既存のガス火力、今大体三〇%から五〇%の稼働率なんですが、それを六〇から七〇に上げることによって、石炭火力ゼロでも現状のインフラのままでいけるということが分かったんですね。
今、実はコストを計算しておりまして、五月二十八日に発表するんですけれども、総合の電源価格自体も、再エネ、燃料価格要らなくなりますので、運転資金が減っていくので、そんなに電気料金も我々の計算では上がらないんですね。とすると、もうこれは決意の問題かなという気はいたします。
かつ、先ほど小島参考人がおっしゃったように、非常に日本は石炭火力の推進において、国連でも唯一、一番存在感を発揮しているのはそこといった、今はもちろん違うと思いますよ、四六%言って、ゼロ言ったので。でも、本当にCOP25まではそうでしたので、この外圧は今後もとても強いと思うべきなので、日本の産業にとってそれが得策なのかということの視点からも考える必要があるんじゃないかなと思っております。

○山下芳生君 ありがとうございました。
水谷参考人に伺いたいと思います。
先ほどの資料の最後に、CO2を海底下や地中に貯留するBECCS、残念ながら日本には海底下や地中の貯留は向いていないというふうに述べておられますので、この点、御説明いただきたいことが一点と、対応して、炭にして貯留するのは日本に向いているんだということのこの根拠といいますかね、それから、どういうふうにすれば、それがいつぐらいにこの社会に普及するようになるんだろうという辺りもお聞かせいただければと思います。

○参考人(社会地球化学研究所主任研究員 水谷広) 先ほどの小西参考人のお話の中で、石炭火力発電は駄目なんですと、ちょっと勘弁するならばCCSが付いていなきゃいけないんですと、こうおっしゃいました。僕は、そのCCSは、付く火力発電所というのはないと思っています。少なくとも日本国内ではない。
なぜかと。その向いていないというのは、日本の火力発電所、どこにあるかと。燃やせる天然ガスでも、石油、石炭、こういうものを海外から持ってこれるところに置いてあるんです。つまり港ですよね。水辺のところにある。水辺のところは、他の生き物も含めて暮らしやすい場所なんです。そこにある。もちろん、人がたくさん張り付いているんで、そこに電力供給するのでいい場所でもあるわけですよ、火力発電所の場所としては。
ただ、それは、今までのやり方で、出てきた二酸化炭素、目に見えないガスなんで、全部大気に放出して、それで済んでいたからなんです。ところが、今度この二酸化炭素をケアしなきゃいけないと。で、CCSですと、カーボン・キャプチャー・シークエストレーションと。二酸化炭素を捕まえる。ガスなんですよ、それを捕まえて、液体、固体にして、それで地中か海底かに埋めると。
先ほど申しましたように、近くに大きな油田があって、ばりばりばりばり油や天然ガスを取っている、そういうところで空いた穴に埋めるという発想は、イギリス、北海油田とか、ノルウェーとか、それはそれなりに頑張っていただいたらいいと思うんです。日本に、日本が大量に輸入している化石燃料の掘り出している場所があるのかと。みんな輸入しているんです。そこへどうやって運ぶのかと。
大体、入ってきた石炭、これが二酸化炭素になるとずっと重くなっちゃうんですよ。入ってきたやつの三倍、四倍のものを運び出さなきゃいけないんです。で、言いましたように、決して無臭、無害なガスではないんです。濃度が高くなれば毒ガスなんです。死んでいる方もいるんです。
天然の、あのニオス湖なんて、カメルーンにある湖の中、天然に二酸化炭素が湖の下にたまっていると。それが、あるときびゅうっと噴き出したと。湖畔の村が全滅した。最初に、全滅して、何で死んでいるんだろうという謎、誰もいなくなった村、何で死んだんだと。そこを地球科学の人が調べて、二酸化炭素が湖底から噴き出したんで死んだんだということが分かったんです。
同じようなことで、安易に日本の近海で、おお、ここ良さそうとかいって無理やり埋めて、それで二酸化炭素が噴き出したらどうするんですか。決してCCSは安易には頼れません。日本には向いていない。
それに比べると、御質問いただいたように、炭は向いているんです。昔から作っています。利用しています。作り方もあります。炭化炉もある。今は大気汚染をするような作り方をせずに、立派な樹木で備長炭作るだけではなくて、食品廃棄物、残渣、フードロス、そういったものから炭を作る。そして、その炭はずっと安全に置いておくことができるわけです。何のケアも要らない、放射性廃棄物とは、先ほど申し上げたように全然違う性質のものです。固体です。
しかも、言ってみれば、炭素の化合物としては一番コンパクトで一番軽いもので、これほどいいものは言わばないんですね、炭素の形態としては。二酸化炭素、石油、石炭に比べるとはるかに扱いやすいものです。
いつかと。これは、それこそ、小西参考人、小島参考人もおっしゃっていますけど、温対法の対策をどうやってやるかというその決意の問題ですよ、決意の問題。特別なイノベーションは必要ないんです。やる気だけです。

○山下芳生君 ありがとうございました。