日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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組織ぐるみ 反省必要  山下氏 かんぽ不正販売追及

参議院決算委員会  2021.5.17
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(写真)質問する山下芳生議員=17日、参院決算委

日本共産党の山下芳生議員は17日の参院決算委員会で、日本郵政グループのかんぽ生命保険不正販売問題について、「過酷なノルマ」「どう喝的研修」「手当重視の給与体系」などの行き過ぎた成績主義が支配する中で広がったとして、「組織ぐるみの不正が行われたことの反省を含めた出直しが必要だ」とただしました。

山下氏は、日本郵政の増田寛也社長が「組織ぐるみの不正を本支社も分かっていて目をつぶったことはあった」と認めたと指摘。外部専門家による特別委員会の調査では不適正募集を組織的に共有していたと指摘しており、統括管理者がそれをやらせていたのではと追及しました。日本郵便の米澤友宏副社長は、適切な対応がされていなかったとの調査委員会の指摘は認識していると述べました。

山下氏は、米国では不正を監視・防止する「内部統制システム」をつくる責任があり、社員を不正に誘引した経営陣が責任を負うとの考え方があるとして、「現場が不正を行った」との弁解は通用しないと批判。武田良太総務相は「引き続き監督していきたい」と答えるだけでした。

山下氏は、これまでは新規契約手当中心の偏重した賃金体系だったとし、過大なノルマは絶対に復活させてはならないと要求。かんぽ生命の市倉昇副社長は「新規契約に偏った営業目標体系を改める」と答弁しました。

[議事録]

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
2019年、日本郵政グループによるかんぽ生命保険の不正販売が発覚し、大きな社会問題となりました。認知症の高齢者に一年間で十件以上の新規契約をさせる、新旧の契約を重複して結ばせ保険料を二重に払わせるなど、悪質な事例が全国で組織的に展開されておりました。同年十一月、私は総務委員会で、当時の日本郵政長門社長、日本郵便横山社長、かんぽ生命植平社長に対し、この問題を二回にわたって質問いたしました。質問を準備する過程で私が最も深刻に感じたのは、日本郵政グループの組織全体が行き過ぎた成績主義にむしばまれているということでした。過酷なノルマ、恫喝的研修、手当重視の給与体系などの形として現れる行き過ぎた成績主義が郵政の職場を支配する中で、長年郵便局を信頼して貯金や保険の契約をしてきた顧客に対し、その信頼を真っ向から裏切るかんぽ不正販売が広がっていきました。
今日は、日本郵政グループの執行役員の方々に御出席いただいております。先月から保険の営業が再開されたと聞いておりますが、今私が指摘した点、すなわち、組織全体に行き過ぎた成績主義がはびこる中でかんぽの不正販売が広がったという点について、日本郵政グループとしてどのように反省をしたのか、また再発防止のためにどのような対策が取られたのか、簡潔に御説明いただけますか。

○米澤友宏日本郵便副社長 お答え申し上げます。まず、今般の保険商品の不適正募集につきまして、大変おわびを申し上げるところでございます。今委員、先生御指摘のございましたけれども、新規契約獲得を過度に重視した営業推進の仕組み、営業推進管理の仕組み、これが不適正募集の構造的要因の一つとなっていたということを認識しておりまして、二〇二一年度以降の、本年度以降の営業目標については、活動目標の新設、あるいは新規販売と消滅の両面を評価する純増額体系への変更等の見直しを行っているところでございます。また、この見直しに併せまして、新規契約獲得といった結果のみならず、のみではなく、社員の活動プロセスを評価するマネジメントへの変革に取り組んでいるところでございます。特に、この二〇二一年度は、お客様との接点の創出に注力して取り組むというところから、この観点に基づく活動目標、これを設定いたしまして、販売目標ではなく活動目標を設定しまして、社員の活動プロセスを評価していくということにしているところでございます。

○山下芳生君 三月に私の事務所に一通の手紙が届きました。長年、地方の郵便局の渉外社員としてかんぽ生命保険などを販売していた方からであります。手紙には、不正営業が問題となった時期は、数字第一、四半期ごとの達成額が重要で、無理な営業によって信用を失った、自分は地域のお客様に迷惑を掛けられない、そんな営業はできない、アルバイトで食いつなげばいいと三十年以上勤めた職場を辞めた、妻は泣いていた、こういう手紙です。さぞ悔しかったでしょう、残念だったでしょう。手紙はこう続いていました。今回のかんぽの不正営業問題の処分が幹部など上に甘く現場の職員には厳しい、おかしいのではないか、後輩に当たる現社員がかわいそうだという訴えでありました。そこで、伺いますが、日本郵政グループでは、かんぽ不正販売に関わってどのような処分を行ったんですか。

○志摩俊臣日本郵政常務執行役 お答え申し上げます。まず、一般論として申し上げますと、管理者が直接非違行為を指導した等の特段の事由がある場合でなければ、直接の非違行為の処分内容と比べましてその管理者の処分内容を同等ないしは厳しくするというのは難しいというふうに考えてございます。ただ、今回の不祥事案の重大性に鑑みまして、今回の管理者の処分におきましては、従来であれば、管理者がその保険の募集人に対して必要な研修をやっていたとか書面でのチェックをきちっとやっていたということがあれば、仮にその管理者の部下である募集人に非違行為があったとしても管理者の処分はしなかったという実態がございましたが、今回につきましては、そういう職場の実態把握不足ということを処分理由として認定をして処分をいたしてございます。それから、今回の問題で、管理者のパワハラということが社員からもいろいろ言われました。我々の方も、その社員から得た情報であるとか様々な情報に基づきまして、管理者について、そういうパワハラがあったというような人については約四百人弱ぐらいいますけれども、こういった人については人事部の方できちっと調査をして、必要なものについては厳しい処分を打ってきているところでございます。以上でございます。

○山下芳生君 資料①に、今言われたことを数字で示された資料、これは日本郵政の資料です。

募集人の処分状況、これは現場で渉外職員としてかんぽ生命の契約をされる方ですが、懲戒解雇、累計二十八人です。それから、募集人の当時の管理者等の処分状況、上司の方ですけれども、停職、累計十三人ということになっております。要するに、管理者は重くて停職止まり、そして現場の渉外社員は懲戒解雇まであるわけですが、これ、先ほどの手紙の、おかしいではないかということなんですね。特別調査委員会の調査報告書にも、厳しい営業推進管理、パワハラがあった、新規契約に偏った手当があった、実力に見合わない営業目標があった、これがかんぽ不正販売の原因として指摘をされております。これは現場の渉外社員がやることじゃないですよね、こういう目標を決めたり、手当を偏ってつくったりですよ。一部の渉外社員の営業手法がたまたま不適切だったら、この一万人を超えるような、こういう被害を拡大するようなことにはなりません。なのに、この渉外社員に対して懲戒解雇まである、ところが、原因をつくった管理者の処分が軽過ぎるというのは、ちょっと今、直接そういう不正行為を行った者よりも指導した管理者を処分を重くすることは難しいということなんですけど、それ通用するんでしょうか。現場の労働者にそれで納得がいくでしょうか。天文学的な目標が上から割り当てられたとか、数字を上げられない労働者は、私も直接聞きましたけど、研修と称して、まさにもうみんなの目の前で、こんな先輩にはなりたくありませんと言わされたり、そして実際にやっている営業方法をやってみろと、で、駄目出しをみんなからさせるとか、もう人権侵害がまかり通っていて、そういう研修を受けたくないからノルマ達成に走るという人がたくさんあったんですね。だから、そうやってノルマに追い込まれた労働者の方が追い込んだ上司よりも処分が重いというのは、これは職場で公平な処分出されたなと認識されないんじゃないですか。いかがですか。

○志摩俊臣日本郵政常務執行役 お答え申し上げます。今委員の方から、構造的な問題として、そういう営業手当に偏重したとか、目標管理の、数値ありきの目標管理に偏っていたと、そういった御指摘、特別調査委員会の方からも出ておりまして、今、社を挙げてその辺の見直しをしていきたいと思っております。一方で、今回、資料の方で、懲戒解雇になってございます累計二十八人というのがありますけれども、ちょっと見ていただくと、多数契約関係で二十七人となっています。これは、主に御高齢の方に対して保険を何度も解約、新規加入を繰り返して行ったということでございまして、一般的に、そういう解約、新規契約を取ると、何というんですか、保険契約者の方の方に不利益があると。それが、多数契約の場合には、一人の御高齢者の方に何十件という形で売っていたということで、与えた不利益が非常に大きいということで、特に懲戒解雇というふうにいたしているものでございます。仮に、そういった営業を管理者が自らそれを指導してそれをやっていたというような事実があれば、これは当然、管理者の方にも懲戒解雇等の検討の対象になると思っておりますが、我々が行っている調査におきましては、そこまでの事実確認というのはできていないというのが実態でございます。以上でございます。

○山下芳生君 ちょっと甘過ぎると思いますね。組織ぐるみの不正ですからね、組織ぐるみというのは下から起こるんじゃないんですよ、上から起こるんですよ。日本郵政の増田寛也新社長も、昨年末の記者会見で、本支社も分かっていて目をつぶったところは間違いなくあったと思うと。分かっていて目をつぶった幹部が軽い処分で済むというのは、これはいかがなものかと言わざるを得ません。それから、もうちょっとそんなふうに曖昧な処分で許されるはずがないということを、さっき紹介した外部専門家による特別委員会の調査は、不適正募集の発生原因をかなり詳しく分析しています。例えば、直接的な原因としては、モラルに欠け自己の利益を優先する募集人、不適正募集を黙認、正当化する風潮、それから、助長した要因としては、営業目標必達主義、達成困難な営業目標設定、新契約獲得に偏った手当配分、これ、今私が言ったようなものに加えて、不適正募集の手法の共有というのもちゃんと指摘しているんですね。不適正な募集を共有していたと、組織的に、ということが指摘されております。
私、これ前回、質問で紹介したんですけど、例えば、この保険に入ると相続税の節約になるという相続話法というものが横行していました。貯金のようなものですという話法。もうすぐ七十五歳になりますね、その前に入っておかないと入れなくなりますよと。福祉施設に入るためには資産が多過ぎると入れませんよ、この保険に入れば資産減らしになり、施設に入りやすくなりますよなどの話法と称したこの不正な販売の手法が共有化されていたんですよ。それをやったのは現場の職員じゃないんですよ、インストラクターとか、それで、この統括管理者とか、そういう方々がやっているんです、やらせているんですよ。それを調査しても分からなかったで済ませたら、私は、本当に今回の、大変な郵政に対する信頼を裏切った、大変なダメージを与えた、そのことについて本当に底を突いた、反省を踏まえた上での出直しになるのかなというふうに思いますが、もう一回いかがです、そういうことあったでしょう。

○米澤友宏日本郵便副社長 先生御指摘になられましたところ、特別調査委員会におきましても、原因分析、不適正募集の発生につながる直接的な原因という中に、販売実績を上げるための自主的な勉強会を含め、不適正募集の手法が共有された機会が存在していたにもかかわらず、これに対する適切な対応が講じられていなかったという御指摘があったということは重々認識をしておるところでございます。そういった反省も踏まえまして、先ほど申し上げましたマネジメントの在り方等々についても見直しを行っているというところでございます。以上でございます。

○山下芳生君 これで辞めたり辞めさせられた現場の職員がたくさんいるのに、今の答弁では納得しないと思います。
総務大臣に伺います。アメリカでは、経営実務論において不正誘引という考え方があります。経営陣は、社内に不正を監視、防止するための仕組みである内部統制システムをつくる責任があり、もし社内で不正が起きても、不正を起こした社員が一番悪いのではなく、不正を起こさない内部統制システムづくりを怠り、社員を不正に誘引した経営陣が一番責任を負うべきだという考え方なんですね。よく、不祥事が起きたときに、いろんな会社の経営陣が、私の知らないところで現場が不正を行ったと弁明するけれども、それは、その弁明は通用しないということであります。一九九五年に発生、発覚した、従業員によって十一億ドルの損失を出した大和銀行ニューヨーク支店事件の判決でも、経営陣に内部統制システムの構築義務があることが認められました。大臣、不正を起こした社員が一番悪いんじゃない、不正を起こさないシステムづくりを怠った、だって、そういう不正をやりなさいよ、共有化を分かっていながら止めなかったんですから、そういう、そして社員を不正に誘引した経営陣が一番悪いという考え方、これ大事ではないかというのが一点。そういう点からいうと、今回の日本郵政の役員あるいは管理者への処分はやっぱり甘過ぎるんじゃないかと。いかがですか。

○武田良太総務大臣 御指摘のかんぽ生命の不適正募集問題、これは郵便局に信頼を寄せていた多数の顧客に不利益を生じさせるなど重大な問題とまずは捉えております。日本郵政グループには、こうした問題を繰り返さないよう、コンプライアンス体制等の抜本的な改善に取り組んでもらう必要があると考えております。こうした観点から、総務省では、日本郵政グループから三か月ごとに業務改善計画の進捗状況の報告を受けており、コンプライアンス体制やガバナンスの構築、また利用者本位の募集管理体制の確立などを目的とした様々な施策が実施されているとの報告を受けておりますが、これらの施策の効果が出ているか、しっかりと検証していく必要があると考えております。こうした問題が繰り返されないよう、引き続きしっかりと監督をしてまいりたい、このように考えております。

○山下芳生君 ちょっと、私が聞いたことにお答えはなかったんですけどね。監督していただくんだったら、さっきのアメリカの不正誘引という観点もしっかり入れていただいて、今後見てもらいたいと思いますね。
もう時間余りありませんので、最後に、これから日本郵便の渉外社員だった方がかんぽ生命に出向することになると聞いております。金融コンサルタントと変わるそうですけれども、そこで心配の声が出ているんですね。かんぽ生命に出向すると、これまで扱っていたゆうちょの金融商品を扱うことができなくなると聞きました。そうすると、これまでは新規契約手当中心の賃金体系ということに、偏重した賃金体系になっていましたから、ゆうちょの商品が売れない、扱えない、かんぽだけになっちゃうと生活できないんじゃないですかと、そういう心配が出ていますけど、いかがですか。

○米澤友宏日本郵便副社長 お答え申し上げます。現在、貯金業務を専門とするという制度はございませんけれども、コンサルタントの方の中には実態として貯金業務中心に行ってきた社員の方がいらっしゃるということは事実でございます。そういった社員も含めて、原則、コンサルタントの方は全員兼務出向ということの対象として予定をしているところでございます。新しいかんぽ営業体制への移行、その後はコンサルタントについては先生御指摘のとおり保険専担ということになります。貯金業務に係る手当を支給することは想定しておりませんが、こうした社員の今後に対する不安、こういったものを可能な限り払拭するためにも、グループとしても社員に対して保険業務に必要な知識等が得られるよう十分な研修を実施するとともに、丁寧な説明を実施してまいりたいと考えております。以上でございます。

○山下芳生君 今回の新しい形態では営業目標という言葉が見当たらないんですね。先ほどちょっとありましたけれども、やはり、これは営業目標、過大なノルマは絶対に復活させてはならないと思うんですけれども、この営業目標というのは今後もう持たないんでしょうか。

○市倉昇かんぽ生命副社長 お答えいたします。先般の不適正募集の問題を再発させない体制につきまして、業務改善計画を着実に実行するという中で重層的なチェック体制などにより構築してまいりました。今先生御指摘の、営業再編の後も、従来の新規契約に偏った営業目標体系を改めるということとしております。解約などの消滅契約を考慮するストックの目標で評価する、あるいは契約の質やお客様満足で評価するといったことを検討をいたしております。また、営業再編時の渉外社員の処遇につきましては、現行制度の水準を維持する方向で検討をいたしております。

○山下芳生君 もう時間参りました。手紙をいただいた方は、直接お話を伺いますと、こうおっしゃっていました。若い頃に自分が受けた研修では、お客様に迷惑を掛けてはいけない、お客様からの苦情がないようにしなければならない、数字第一でなく信用第一、信用されていない職員に大切なお金を預けたりしないという教育がされたと。本当に、今回の事件を克服してそういう郵政になるためには、労働者に対してそういう気持ちが伝わるような経営をしていただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わります。