日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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福島汚染水放出、撤回せよ 約束ほご、信頼破壊だ/アセス事前調整を追及  神鋼石炭火発めぐり

参議院環境委員会 2021.4.15
資 料 動 画

 日本共産党の山下芳生議員は15日の参院環境委員会で、東京電力福島第1原発の汚染水海洋放出について、小泉進次郎環境相の姿勢を追及しました。

山下氏は、国と東電は「関係者の理解なしには海洋放出は行わない」と漁業者に約束してきたことを指摘。海洋放出方針を決定した関係閣僚会議に出席していた小泉環境相に「漁業者の理解は得られたのか」とただしました。小泉環境相は「反対は変わらないとの発言は承知している」として、「理解を得ていく努力を続ける」と答えました。

山下氏は「これから理解を得るというのは違う。『漁業者の理解なしに放出しない』ということが約束だった。約束をほごにしたということだ」と厳しく批判。「政治は信頼が一番大事だ。その信頼を政府の側から壊し、民主主義の前提を破壊した。責任は極めて重大だ。決定は撤回すべきだ」と迫りました。小泉環境相は「決定した以上、理解を求めていくよう全力で取り組む」と述べるだけでした。

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(写真)質問する山下芳生議員=15日、参院環境委

さらに、山下芳生議員は、神戸製鋼が新設する石炭火力発電所についての環境アセスメントで、経済産業省が「環境大臣意見」の一部を削除させていた問題を追及しました。

「環境大臣意見」では当初、二酸化炭素(CO2)排出量が液化天然ガス(LNG)より年380万トン以上多くなると指摘し、新たな石炭火力の稼働時には、それまで稼働してきた石炭火力の休廃止や稼働抑制を求めていました。経産省は、CO2排出量は「試算値だ」などとして削除させました。

山下氏は、経産省の検討文書には、環境大臣意見のうち削除されなかった項目について、「事業者は本意見が勧告に盛り込まれることを納得」したと記されていると告発。「経産省は環境大臣意見を事前に事業者に見せているのか」と迫ると、経産省の後藤雄三審議官は「見ていただいている」と認めました。

山下氏は「重大だ。事業者が納得しない内容は、経産省の事前の横やりで削除されている」と追及。小泉進次郎環境相は「言うべきことを言っていく」と答弁。山下氏は「この仕組みでは言うべきことを言えない」と批判しました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
まず、資料一を御覧いただきたいと思います。
これは、平成二十七年八月二十五日に、東京電力社長が福島県漁連会長に回答した文書の写しであります。赤い下線を引きましたが、関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたしますとあります。
この内容が国として漁業者に回答してきたものであることは、資料二に示した二〇二〇年六月二十三日の全漁連の通常総会における特別決議に、国は、これまで我々漁業者に回答してきた、汚染水について関係者の理解なしに放出は行わないとする方針を遵守していかなければならないとの文言があることからも明らかであります。
このように、国と東電は、関係者の理解なしには海洋放出は行わないと漁業者に約束をしてきました。ところが、政府は四月十三日、関係閣僚会議で海洋放出の方針を決定しました。この関係閣僚会議には小泉環境大臣も出席されていました。
そこで、大臣に一点だけ聞きます。海洋放出について、漁業者の理解は得られたんですか。

○小泉進次郎環境大臣 漁業者が、今先生が言うこの全漁連の皆さんとすれば、岸会長などがおっしゃっているように、反対は変わらないという、そういった発言をされているのを承知しています。
私としては、一方で、復興の足かせになっているような現状は変えなければいけないという思いもある中で、双葉町そして大熊町の両町長が、先送りはやめてもらいたい、そう言ったことを、私はその言葉も重いと思います。
ですので、環境省としては、政府として決定した以上、今後何が一番大事かといえば、科学的な根拠に基づいて、客観性のある、そして透明性のあるモニタリングを実現をして、その結果を内外にしっかりと公表して、風評を最大限抑制をしていくこと、そして、少しでも多くの漁業関係者の方も含めた理解を得ていく努力を最後までこれからも継続的にやっていくこと、これが重要だと考えています。

○山下芳生君 小泉環境大臣は、二〇一九年九月十二日、前の大臣が海洋放出しか方法がないというのが私の印象だと発言し、福島の漁業関係者から反発の声が上がったときに、福島県漁連の幹部と面会し、福島の漁業者に不安を与えてしまい、後任の大臣としておわびしたいと陳謝されました。
その漁業者に対して理解を得られていると言えないと、さっき、反対していることは承知しているということは、理解していないということですよね。理解しなければ処理しないと、放出しないという約束していたのにもかかわらず、大臣が直接、二〇一九年にお会いした、おわびした、その漁業者の理解が得られないまま、言わば約束をほごにしてこの決定をしたということについて、大臣、責任感じませんか。

○小泉進次郎環境大臣 あのとき私がおわびをしたのは、まだ政府として正式に決定していない中で、しかも、小委員会は経産省がやっているわけです。その決まっていない段階で、ほかの閣僚がですね、私はこれがいいとかあれがいいとか言ったら、議論というのは私はプラスになるかといったら、そうではないと思いました。
ですので、環境省としてやるべきことというのはモニタリングの調整会議の議長としてあるわけです。ですから、そういった役割を含めてしっかりやっていくこと。その中で、今は漁業者の方の理解は得られたのかということであれば、県漁連の方、そしてまた全漁連の方、反対の思いは変わらないと、そういったことを言われている。その思いは梶山大臣も直接聞いているはずですし、そして我々政府も受け止めています。
しかし、政府として決定した以上、その皆さんに対しても少しでも理解を求めていけるような具体的なモニタリング、やるべきこと、風評の抑制、国内外への説明、しっかりと全力で政府一丸となって取り組んでまいります。

○山下芳生君 ずらしたら駄目ですよ。約束は、汚染水について関係者の理解なしに放出は行わないというのが漁業者と国、東電との約束だったんですよ。しかし、理解されないまま放出を決めちゃった、約束をほごにしたんですよ。これからのことを聞いているんじゃない。
約束をほごにしたその関係閣僚会議の場にあなたもいた。何か言ったんですか、駄目だと。何も言わずに黙って賛成したんですか。

○小泉進次郎環境大臣 様々な方の声があることは承知しています。そして、今でも反対の思いを持っているのが漁業者の皆さんであるということも私は承知しています。一方で、復興全体考えたときに、今、タンク、そしてまた中間貯蔵施設、これら、廃炉に向けて必要な最前線の現場にいられる方々の中には、先送りをしないでもらいたいと、そういう声があるのも事実です。
そういった様々な声も含めて政府として考えてきたこと、その中で、この処理水という問題をしっかりと捉えた上での政府の決断があったわけです。この決断があって、環境省としては、モニタリングの体制を今までどおりにやるのではなくて、新たに体制を強化してやってまいりますので、これから非常に重要だと、その責任を果たしてまいりたいと思います。

○山下芳生君 これからの前に、政治というのは信頼が何よりも大事だと思いますよ。その信頼を政府の側から今回壊したと。もっと言うと、民主主義の前提を破壊したというのが今回の行為だと言わなければなりません。責任極めて重大です。私は、今回の決定は撤回してしかるべきだと思います。
じゃ、どうするのかと。タンクをちゃんと増設して管理、保管して、場所もあるんですから、そういうちゃんとした調査、提案もありますけど、それ、まともに検討していないです、経産省は。世界の英知を結集して、保管しつつ解決の道を探るべきだということを申し上げておきたいと思います。
残りの時間で、もうほとんどないんですけど、先週に続き、神戸製鋼の新たな石炭火力発電所建設に係るアセスにおいて、環境大臣意見に事前に経産省が変更を求めていた問題について質問します。
前回は大気汚染に関する部分について紹介しましたけれども、今回、温暖化に関する部分を見てみたいと思います。
資料三を見ていただきたいんですが、当初の環境大臣意見には、赤枠で囲んだ中の横線で消された部分、本発電所の稼働に伴い年間六百万トン以上の二酸化炭素を排出する可能性があり、最新鋭の天然ガス火力発電所を建設した場合と比較すると年間三百八十万トン以上多く排出することになる可能性があるという記述がありました。燃料を天然ガスにした場合との比較でCO2排出量の多さを具体的に懸念する指摘でありました。
これに対し、経産省一次意見は、赤い下線部分、具体的な排出量については、詳細計画が確定していない試算値であり、何ら決まったものでなく、可能性のみで記載することは不適切であり、認めることはできないと削除を求めております。
これに対し、資料の次のページ、環境省四次意見は、下線部分、QAにおける事業者の試算値であり、本事業による温室効果ガスに係る影響の度合いを示したものであると表明しています。事業者の試算値を用いなければ温暖化の影響を評価できないではないかという、これ私、正当な反論だと思いました。
ところが、その下の環境省四次意見追記を見ると、対面折衝を踏まえ削除となっているんですね。対面折衝で何があったのか分かりませんけど、理由もなく結論が変わってしまっております。
さらに、資料四を見ていただきたいと思います。
赤枠で囲んだ中の横線でこれも消された部分ですけれども、現在所有している火力発電所とともに、二〇三〇年以降に向けて、更なる二酸化炭素排出削減を実現する見通しをもって、同火力発電所の休廃止、稼働抑制などの措置を計画的に実行することとの記述がありました。神戸製鋼は、既に石炭火力発電所を所有し、稼働させている神戸発電所です。その上、新たな石炭火力発電所を建設するのなら、CO2排出削減を実現するために古い発電所の休廃止、稼働抑制を計画的に実行する必要があるという、私は最低限だが真っ当な意見だと思います。
これに対する経産省二次意見、下線を引きました、ちょっと長いですけど。多くの電源を有している旧一般電力事業者とは異なり、本事業者は、現在、発電事業の用に供する設備を一つしか持っていないため、今の時点から低効率火力の休廃止、稼働抑制を明示的にプッシュするのは、電力事業をやめろと求めてしまっていることと同義ですので(御省がそのようなことを言わないことは理解していますが、環境大臣意見を見る一般の人はそこまで考えて発言しないので…。)、個々の電力事業の実態を踏まえた大臣意見としていただければと存じますと、こうあります。
何なんだ、これはと思いましたね。よう考えて発言してねと、茶の間の会話みたいな意見でありますけれども、こんな筋の通らない意見に対して環境省は一言も反論せずに、同火力発電所の休廃止、稼働抑制などの措置をとしていた部分を削除しました。これ黙って落としているんです。
環境省、今紹介した二例、どういう理由で削除したんですか。

○和田篤也 環境省総合環境政策統括官 お答え申し上げます。二点御指摘あったかと思います。
一点目の、天然ガス、資料の三にございましたLNGとの比較を削除の関係でございますけど、まずそちらの方から、そちらの方から参りますと、まずは、温室効果ガスを最大限削減するということ、これがまず究極のテーマだということの前提におきまして、確かに、一部事実関係の確認でありますとか技術的な限界などを踏まえて削除するというふうなことはありましたけれども、少なくとも、最大限の対策技術を導入するということでありますとか、さらには、このLNGの関連で申し上げますと、これ配慮書の段階で、平成二十七年二月の段階での意見調整、形成となっておりますが、最終的には三十年に準備書出していますが、その間に、経産省、環境省の間で石炭火力を二〇三〇年までに向けてどういうフレームワークで規制をしていくのかというフレームワークができましたので、それを受けまして、ここの後、さらに、準備書に向け、準備書の段階では、実行可能なより良い技術というだけではなく、平成二十八年に調整しました具体的な数値目標、二〇三〇年に向けた数値目標なども織り込んだところでございます。
石炭火力についても、あっ、時間が限られておりますが、石炭火力の関係の稼働抑制についても、同様に、ベスト、どこまでできるのかということの追求の一環でこのような結果になったところでございます。

○山下芳生君 先週も言いましたけどね、ベストを追求するのに削除する必要ない部分なんですよ、これは。むしろあった方がベストが追求されるのではないかと思うんですね。国民が納得できる説明はできないと思います。 お答え申し上げます。
二点御指摘あったかと思います。
一点目の、天然ガス、資料の三にございましたLNGとの比較を削除の関係でございますけど、まずそちらの方から、そちらの方から参りますと、まずは、温室効果ガスを最大限削減するということ、これがまず究極のテーマだということの前提におきまして、確かに、一部事実関係の確認でありますとか技術的な限界などを踏まえて削除するというふうなことはありましたけれども、少なくとも、最大限の対策技術を導入するということでありますとか、さらには、このLNGの関連で申し上げますと、これ配慮書の段階で、平成二十七年二月の段階での意見調整、形成となっておりますが、最終的には三十年に準備書出していますが、その間に、経産省、環境省の間で石炭火力を二〇三〇年までに向けてどういうフレームワークで規制をしていくのかというフレームワークができましたので、それを受けまして、ここの後、さらに、準備書に向け、準備書の段階では、実行可能なより良い技術というだけではなく、平成二十八年に調整しました具体的な数値目標、二〇三〇年に向けた数値目標なども織り込んだところでございます。
石炭火力についても、あっ、時間が限られておりますが、石炭火力の関係の稼働抑制についても、同様に、ベスト、どこまでできるのかということの追求の一環でこのような結果になったところでございます。

何でこんな説明不能な環境大臣意見の削除がまかり通るのか、資料五を見ていただきたいと思います。
これは、経産省の産業保安グループ電力安全課が作成した、神戸製鋼所に係る環境大臣意見をどうするか、経産大臣勧告に係る検討結果の文書から抜粋したものですが、この環境大臣意見の番号二、左上なんですけれども、石炭火力発電をめぐる環境保全に係る国内外の状況を十分認識し、本事業を検討することという意見について検討した結果、経済産業大臣勧告に盛り込むとされております。その下に、経産省の内容、検討内容、理由が述べられているんですが、最後の赤い下線を引いた部分に注目していただきたい。なお、事業者は本意見が勧告に盛り込まれることに納得しており、評価書に反映する意向であるとあります。以下、これずっと七ページにわたって十九項目の環境大臣意見について経済産業大臣勧告に盛り込むとされたものを全て見ますと、事業者は本意見が勧告に盛り込まれることに納得と記載されているんですね。納得、納得、納得と。驚きました、これ。
経産省に聞きますけれども、経産省は環境大臣意見を事前に事業者に示している、見せているということですか。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 お答え申し上げます。
環境アセス法の三条の八に基づいて制定されました基本的事項において、評価というのは、事業者により実行可能な範囲内で回避され、又は低減されているか否かについて行われることが求められておりまして、事業者の計画が十全であるか精査するために、技術的、制度的な観点から事業者へ確認を行っております。
事業者の納得という文言でございますけれども、関係者からの意見に対して事業者が実行可能な具体的な対策を考え得るかどうかということを意図しているものでございまして、アセスの手続において事業者が納得しているということでプロセスを進めているものではございません。

○山下芳生君 何ですか、見せているんでしょう、事前に。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 この図書自体を見せているということではなく、環境省がこういう意向があるというようなことを伝えていることはあるのではないかと思います。

○山下芳生君 ちょっとちゃんと答えてください。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 失礼しました。
環境大臣意見につきましては、事前に事業者の方に確認をするというプロセスを踏んでおります。

○山下芳生君 見せているんでしょうと。

○後藤雄三 経済産業省大臣官房審議官 事業者に、図書に含む、事前の意見については見ていただいております。

○山下芳生君 見ていただいておりますということですよ。これ、重大だと思いますよ。何のためにアセスやっているんですか。
小泉大臣、先週ね、先週、環境大臣として言うべきことはしっかり盛り込んでいると答弁されましたけれども、しかし、この意見の形成過程の実態見ると、事業者が納得した内容だけが残り、事業者が納得しない内容は経産省の事前の横やりで削除されている。これでは、言うべきことをしっかり盛り込むことなんてできないんじゃないですか。

○長浜博行環境委員長 申合せの時間が来ております。小泉大臣、簡潔にお願いいたします。

○小泉進次郎環境大臣 はい。
山下先生から前回お尋ねもありましたときにも、言うべきことは言うと、これは、大臣レベルとかだけではなくて、事務方同士の調整の中でも言うべきことを言っていかなければならないと思っています。
今まで、この資料も拝見をしますと、これ一回ですんなり引いているのかというような、こういったところも感じないことはありませんので、事務方に対しても、環境省としての責務をしっかり果たすよう、必要なことを、言うべきことは言うこと、しっかりやってまいりたいと思っています。

○山下芳生君 この仕組みでは、言うべきことを言えないということを申し上げて、終わります。