日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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「安倍・菅改憲」推進許されぬ 山下・吉良氏「世論と離れている」

参議院憲法審査会 2021.5.19

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(写真)意見表明する山下芳生議員。左は吉良よし子議員=19日、参院憲法審

参院憲法審査会は19日、国民投票法改定案の趣旨説明と、各会派による意見表明・意見交換を行いました。日本共産党の山下芳生議員は、改定案は安倍晋三前首相の下で改憲議論を進める「呼び水」として提出されたもので、同案の成立でコロナ危機に乗じて破綻した「安倍改憲」を推進することは許されないと主張しました。

山下氏は、安倍前首相が掲げた2020年改憲は国民の反対世論で阻止されたにもかかわらず、菅義偉首相が改定案の成立を改憲議論を進める「最初の一歩」と述べるなど「コロナ危機に乗じて『安倍改憲』を推進する姿勢をあらわにしている」と批判。「あまりに国民世論とかけ離れた態度だ」と述べ、「不要不急の憲法議論にかまけることなく、目の前の命を守り、暮らしを支えるために日々議論し対策を打つことこそ、国権の最高機関たる国会の使命だ」と求めました。

自民党は速やかに改定案を成立させ、緊急事態条項の創設などの改憲議論を進めるべきだとの意見を表明。日本共産党の吉良よし子議員は、コロナの緊急事態宣言と「憲法停止の状態をつくる緊急事態条項は全く別物だ」と強調し、「迷走する政府の失政を棚にあげ、コロナ感染拡大を国民、憲法のせいにするのは言語道断だ」と訴えました。

立憲民主党からは、CM規制など国民投票の土台の論点をクリアすることなく、改憲論議を進めるのは不可能だなどの意見が出されました。

同日の幹事会では26日に法案質疑を行うことを決めました。

【議事録】

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
まず、憲法審査会の運営について意見を述べます。
そもそも憲法審査会は、改憲原案を発議し、審査する機関です。しかし、世論調査で政権に期待するテーマは何かと問われて、改憲と答える人は数%にすぎません。日本共産党は、国民世論が改憲を求めていない中、憲法審査会を動かす必要はないし、動かすべきでないと考えます。
次に、憲法改正国民投票法について幾つか意見を述べます。
現行の国民投票法は、第一次安倍政権時代の二〇〇七年、改憲に執念を燃やす安倍首相の思惑に沿って作られたものであり、CM規制や最低投票率など根本的な問題が残されたままの欠陥法となっています。そのため、参議院では、同法の採決に当たり十八項目に上る附帯決議を付しました。二〇一四年、同法改定の際もこの欠陥を残したままだったため、二十項目の附帯決議が付されています。
しかし、こうした国民投票法の根本問題はこれまで十分に議論されてきませんでした。本院附帯決議が指摘した欠陥を放置したまま、公職選挙法との横並びとして七項目だけ議論しようというのは、最高法規である憲法の改正手続を軽んじるものであり、認められません。
今回の国民投票法改定案も、安倍氏の改憲への執念から提出されたものにほかなりません。第二次安倍政権時代の二〇一七年五月三日、安倍首相は、改憲派の集会に送ったビデオメッセージで、九条改憲を含む改憲項目を提示し、二〇二〇年を憲法改正の年にすると宣言しました。安倍氏の号令の下、自民党は、二〇一八年三月、改憲四項目をまとめます。この改憲四項目を憲法審査会で議論するための呼び水として提出されたのが公選法横並びの国民投票法改定案でした。
一方で、自民党は、国民の改憲機運を盛り上げるとして、党を挙げて世論をあおりました。しかし、安倍政権が改憲を叫べば叫ぶほど、安倍改憲に反対する国民世論は拡大します。二〇一九年の参議院選挙では、安倍首相自ら改憲を正面に掲げた選挙戦にしたにもかかわらず、与党など改憲勢力の議席が参議院の三分の二を割る結果となり、安倍氏が掲げた二〇二〇年改憲は阻止されました。安倍氏自身が首相辞任表明の記者会見で国民的世論が盛り上がらなかったのは事実だと述べたように、安倍改憲が破綻したことは明らかであります。
にもかかわらず、菅首相は、五月三日、改憲派の集会に送ったメッセージで、自民党改憲四項目を示しながら、憲法改正に関する議論を進める最初の一歩として、まずは国民投票法改正案の成立を目指すと発言しました。安倍氏と全く同じやり方で、安倍改憲に固執しています。
同じ集会で自民党の下村博文政調会長は、コロナをピンチをチャンスにと発言し、コロナ危機に乗じて安倍改憲を推進する姿勢をあらわにしました。余りにも国民世論と懸け離れた態度であり、不謹慎な姿勢と言わざるを得ません。
今、国民は改憲議論など求めていません。各地方紙の社説には、政治が最優先で取り組まなくてはならないのは国民投票法改正ではなく、感染防止対策ではないか、中国新聞、コロナ対応の失策を隠すために改憲議論を利用している、神奈川新聞、まず全力を挙げてコロナ対策に取り組むべき、憲法改正議論は優先して取り組むべき課題ではない、沖縄タイムス、などの声が広がっています。
不要不急の改憲議論にかまけることなく、目の前の命を守り、暮らしを支えるために日々議論し、必要な対策を打つことこそ国権の最高機関たる国会の使命であることを強調し、意見表明とします。