日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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マイナ法案強行可決 参院委 共産党反対「弱者を排除」

地方デジタル特別委員会 2023.5.31
速記録 動 画
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(写真)質問する山下芳生議員=31日、参院地デジ特委

保険証を廃止しマイナンバーカードを強要するマイナンバー法等改定案が31日、参院地方デジタル特別委員会で、自民、公明、維新、国民の賛成で可決しました。共産、立民は反対。立民は同委員会理事が採決に反対したものの、参院国対委員長が前日、自民党と採決で合意していました。全国各地で、マイナンバーカードをめぐる誤交付、誤登録が続くなかでの採決強行です。日本共産党の伊藤岳議員は反対討論で「採決強行で国民の不信は払拭(ふっしょく)できない」と主張しました。

採決に先立つ質疑で山下芳生議員は、マイナンバーカードになれば、介護が必要な高齢者、障害者らにとって利用が困難になる実態をあげ、法案の撤回を主張しました。

山下氏は、利用者・入居者全員の保険証を預かり管理し、2日に1回の割合で職員が入居者の医療機関受診に付き添っている120人規模の特別養護老人ホームの事例を紹介。マイナンバーカードになったら暗証番号まで管理し、紛失した場合は個人情報漏洩(ろうえい)や不正利用などの問題が生じ「重大な責任を負わせることになる」と指摘しました。

障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の家平悟事務局長は同委員会の参考人質疑で、▽顔写真撮影で車いすのヘッドレストが写り申請が却下された▽全盲で黒目がない人が写真を撮り直せといわれた▽医療機関で受診するときも、顔認証のエラーや暗証番号の入力が困難となる―など、障害者は、マイナカード移行で大きな問題を抱えている実態を告発しました。山下氏は「障害者にとって不便になる」として政府の認識をただしました。

河野太郎デジタル相は、「必要な対応を検討し、2月に中間とりまとめをした。関係者の意見を丁寧に伺い一体化にむけ取り組み続ける」とまともに答弁しませんでした。

山下氏は、指摘した問題は2月の中間取りまとめの後に出されたものだと述べ、▽介護高齢者や障害者の実態と困難を十分認識していない▽認識した後も対策をせず法案を提出した―「二重の責任がある」として、「社会的弱者が医療から排除されかねない。法案撤回を」と強く求めました。

速記録を読む

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

マイナンバーカードのトラブルに関わって公表が遅れたことが国民の不信を招いています。

鶴保委員長、各種トラブルごとに、いつ発生し、いつデジタル庁が把握し、いつ大臣に報告されたのか、時系列で分かる報告書をデジタル庁から当委員会に提出することを求めたい。

○鶴保庸介 地方デジタル特別委員会委員長 後刻理事会にて協議をさせていただきます。

○山下よしき この報告書は、他の要求資料とともに、法案審議の前提となるものだと思います。提出なしに審議終局はできません。

河野デジタル大臣に伺います。

デジタル化の進展によって社会全体が便利になる、新しいサービスが生まれる、その一方で、立場の弱い人々がより困難になる、社会から排除されるようなことは絶対にあってはならないと考えますが、大臣の御認識いかがでしょうか。

○河野太郎 デジタル大臣 デジタル社会の実現に向けた重点計画におきまして、地理的な制約、年齢、性別、障害や疾病の有無、国籍、経済的な状況などにかかわらず、誰もがデジタル化の恩恵を享受することにより豊かさを真に実感できる、誰一人取り残されないデジタル社会を目指して取り組むこととしております。

また、デジタル庁のミッションとして、誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化をと掲げており、それを達成するための行動規範を定め、職員一人一人がこれを意識して施策の遂行に当たることとしているわけでございます。

デジタル技術を使うことで、日頃、生活が困難である障害を持っているような方も、その困難を乗り越え、より豊かな暮らしを実感することができる、そういう様々な技術も生まれているところでございますので、この社会全体を便利にし、新しいサービスが生まれる中で、立場の弱い方々、障害を持っていらっしゃるような方々もそのメリットというものをしっかりと享受していただきたいというふうに思っております。

○山下よしき 果たして、このマイナンバー保険証システムで今大臣がおっしゃったことが実現できるのかと。

五月十七日の当委員会の参考人質疑で、全国保険医団体連合会副会長の竹田智雄さんが意見表明されました。

保団連のアンケートでは、介護施設の八三・六%が利用者、入居者の保険証を管理されています。百二十人が入居するある特別養護老人ホームでは、ほぼ全員の保険証を原本で預かっていて、預かり書を発行し、施設内で鍵付きの棚で管理しているということでした。なぜ保険証を預からなければならないんでしょうかと聞きますと、特養の入居者の方は医療を受けていない人はまずいない、いつ急変するか分からない、保険証を預かっていない場合、家族に来てもらって医療機関に連れていってもらわなければならないが、すぐ来てもらえなければ治るものも治らないので保険証を預かっているというお答えでした。百二十人の施設で年間百四十件、二日に一回程度、外部の医療機関に職員の誰かが付き添っていると。

こうした施設の現状で、保険証を廃止した後に施設でマイナ保険証を管理できるのか、お聞きいたしました。竹田参考人のお答えは、マイナ保険証は紙の保険証以上に厳重な管理、保管が求められる、マイナ保険証と暗証番号を施設で管理する責任は余りにも重大だ、万一紛失して個人情報漏えいや不正利用などの重大事故が起これば大問題になる、担い手不足と新型コロナ対応で苦労を重ねている高齢者施設の職員に更に重大な責任を負わせるような進め方は好ましくない、切にやめていただきたいとお願い申し上げますと訴えられました。

河野大臣、高齢者施設の現場からの切なるお願い、どう受け止められますか。

○河野太郎デジタル大臣 五月十七日の参考人質疑におきまして、介護施設入所者などの状況を竹田参考人よりお話があったと思いますが、介護施設で保険証と暗証番号を管理する責任は重大だ、ケアマネに代理申請を求められても本来業務でないから困難、高齢者で独居の方が非常に多くなっていてその対応が難しいというような御発言があったと認識をしております。

マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関しまして、様々な状況の方においてカードの申請、取得、あるいは健康保険証としての利用が円滑に行われるよう環境整備をしなければならないと認識をしておりまして、昨年十二月より、デジタル庁、総務省、厚労省で検討会を開催し、入所施設を含む関係者から広くヒアリングを実施し、必要な対応について検討し、本年二月、中間取りまとめを公表いたしました。

この中間取りまとめに基づきまして、施設入所者のカードの在り方などについて、取扱いの留意点を整理した上で周知し、安心して管理することができる環境づくりを推進するとともに、本来業務に配慮した申請、代理交付の支援のマニュアルを作成、普及するほか、高齢者で独居の方についても、希望する方の個人宅を市町村職員が訪問する形で申請が行えるよう検討を行うなど、きめ細かく対処することとしております。

施設に入所されているような方こそ、御本人の過去の医療保健情報に基づいた医療を受けていただく機会を保障する必要があると考えておりますので、きめ細かい対応を行い、施設管理者、入所者の双方が安心して適切にマイナンバーカードを管理できる環境づくりを推進してまいりたいと思っておりますし、このマイナンバー保険証は、顔認証あるいは医療機関の方での目視での認証が可能でございますので、マイナ保険証と暗証番号を両方施設で管理するということはございません。暗証番号を預ける必要はございません。

○山下よしき 竹田参考人の切なる願いが伝わっていないなと思いました。そういうことを検討会で検討されていることは承知の上で、竹田参考人からの訴えがあったわけですよね。

私は、そういう中で、目視で本人の確認をするというんだったら、別に現行の紙の保険証で十分できるじゃないですかということをもうお認めになったということと等しいと思いますよ。

それから、竹田参考人は、今の河野大臣の御答弁では不安は消えないということで訴えられた。だから、もし、本当、不安が現場の方から解決できないということなら、私は見切り発車はやめるべきだと思う。少なくとも紙の保険証で代行できるとお認めになったんだから、そうすべきだと思う。

竹田参考人はこうも言いました。御自身が訪問医療をされている独居老人の方が数人いる。全員がマイナンバーカードを取っていない。家族の代理申請も想定できない方ですね。物すごく不安がある、こういう方々は。何とか保険証が残ればなとおっしゃる。そういう方に、竹田参考人が、今の世の中変わっているんだと、これからはマイナンバーカードを持っていないと、それが保険証の代わりになるんだと言っても、ううん、私には無理だ、知らない、縁がないというふうになっちゃうということなんですよ、高齢者の方にはね。マイナ保険証を持ってもらう意義、メリットが伝わらないということなんですよ。そうなったら、仮に代理申請が得られたとしても、その申請をする意思が確認できない、意義が分からないわけですから、今大臣がおっしゃったようなことはすっすっとは進まない現場があるということですよ。

認知症の方は一千万人超えるとも言われておりますけれども、このままこのやり方を強行したら、当事者にも、それを支える側にも新たな負担を押し付けることになる。竹田参考人は、医療を受ける権利が剥奪されてしまうことを心配されているというふうにおっしゃいました。そういう深刻な訴えだということを、私は今聞いていて、受け止められていないなと思いました。

もう一つ、もう時間がないので、障害者団体の方からの訴えもありました。障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局長の家平悟さんが、障害者の場合はいろんな大きな問題を抱えていると。この当委員会でちょっと驚きが起こったんですが、申請時に顔写真の背後に車椅子のヘッドレストが写っているからと却下された、全盲で病気のため黒目がない人については黒目がないから写真を撮り直せという指導もあった、利用時に医療機関で受診するとき顔認証がエラーになる、不随意運動がある人、一定のところに顔を置けない人はカメラの認証が作動しない、暗証番号の入力が難しいという方は、言葉で伝えてやってもらうのは、伝えることの怖さがあると。

河野大臣、障害者の方にとって今度のマイナンバー保険証システム、かえって不便になるということになっているんじゃありませんか。

○河野太郎デジタル大臣 これも五月十七日の参考人質疑において、家平参考人でしょうか、障害者の場合、マイナンバーカードの申請、取得、管理、利用、それぞれに問題を抱えていると御発言があったと認識をしております。具体的には、申請時に顔写真の関係で困難があったこと、福祉現場においてカードの管理や申請支援を行う場合、別途費用を徴収する必要が発生するのではないかとの不安が挙がっていることといった御発言があったと認識をしております。

マイナンバーカードと健康保険証の一体化の検討会には、障害者団体にもヒアリングに参加をしていただき、必要な対応について検討を行ってこの中間取りまとめを公表いたしました。この中間取りまとめに基づきまして、障害のある方あるいは寝たきりの方など、やむを得ない理由により規格に合った写真を撮影できない場合には、申請書の氏名欄に理由を記載して送付をしていただくか、コールセンターに御連絡いただくことで使用可能としていることについて、今年三月に自治体に対し、具体的な例も示しながら改めて周知を行いました。

また、施設職員や支援団体などに申請、代理交付などの支援の協力を要請する際、申請の取りまとめや代理での受取に対する助成を行うこととしております。施設入所者と同様、障害をお持ちの方も医療を受ける機会が多い方でありますから、御本人の過去の医療保険情報に基づいた医療を受けていただく機会を保障する必要が大きいと考えております。

引き続き、関係の皆様の御意見や御要望を丁寧に伺いながら、健康保険証との円滑な一体化に向けた取組を進めてまいります。

○山下よしき その認識改めた方がいいですよ。中間取りまとめは今年の二月ですよ。この委員会で参考人質疑やったのは五月十七日ですよ。当然、中間取りまとめの中身を踏まえた上で、なお不安が拭えないということだったんですよ。それが、こんなことでいいんだろうかと思わざるを得ません。

家平参考人も、施設がマイナ保険証を預かるのが大きな問題だと、そこまで個人情報を扱えないとか施設の方が言っている。障害者本人、家族も抵抗があると。施設からは、今後、通院支援ができなくなるかもしれないということも挙げられていると。

竹田参考人と同じく、障害者団体、医療団体の皆さんからは、医療を受ける権利が剥奪されてしまうんじゃないかという深刻な問題提起がされているのに、それに全く受け止めて対応しようという姿勢が感じられません。

時間が近づいてまいりましたから、是非大臣に伺いたいのは、河野大臣が現行の保険証廃止を、あっ、ごめんなさい、河野大臣が、こうした高齢者介護の現場、それから障害者の皆さんからの現場の声が今参考人質疑で紹介されたんですけれども、こういう声があるということをいつ認識されたんでしょうか、河野大臣。

○河野太郎デジタル大臣 検討会の中でそうしたヒアリングを行ってもらい、中間取りまとめというものが、二月の十六日だったかと思いますが、出されたわけでございまして、その中間取りまとめの中にこうした関係の皆様からのヒアリングを経て対応策がまとまっております。

○山下よしき ということは、河野大臣が現行の保険証廃止を表明された昨年十月十三日の時点で、今大臣も内容を紹介されたような障害者、医療団体からの懸念、これは御認識されていなかったということですか。

○河野太郎デジタル大臣 そういう問題につきましては、厚労省が既にいろいろと考え、検討してくださっている、そういう認識でございます。

○山下よしき いや、河野大臣は、昨年の十月十三日の時点で、今おっしゃったような、私が紹介したような内容、認識されていたんですか。

○河野太郎デジタル大臣 個別のことについては認識しておりません。

○山下よしき 認識されていなかったんですね。個別ですよ、全部、一つ一つ具体的に起こっていることは。それ認識もしないで、私は現行の保険証廃止を表明したというのは余りにも責任重大だと言わなければならないんですね。

それから、その後、検討会で検討してもらっているということなんですけど、第一回マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会の昨年十二月六日の議事概要を見ますと、河野大臣の挨拶、法律改正に関係する事項は、次期通常国会での法案審議を見据え、スケジュール感を持って検討していただくとなっております。スケジュール優先だったんですよ。

だから、去年の十月十三日の時点ではこういう個々の事例知らなかった。しかし、五千人、いろいろ意見が出た。その中には、恐らく多くのこういう関係者の声、危惧する声、心配の声、やめてほしいという声あったでしょう。だから検討会をつくった。検討するときに、もうスケジュール感優先で、通常国会に法案出すからスケジュール間に合わせてちょうだいねという言い方で大臣が冒頭に挨拶しているから、こんな生煮えの、当事者が納得できない、不安が拭えない、そういうもので中間取りまとめが出されたまんま、今法案を通そうとしている。これ、やはり余りにも拙速に過ぎるんじゃありませんか。無責任じゃありませんか。

○河野太郎デジタル大臣 政策を実行していく上でそれぞれ節目節目というのがございます。法案に関しては、国会で審議をいただいてやっていかなければなりませんから、国会に間に合うようなタイミングできちんと結論を出すというのは、これは当然のことだと思います。

○山下よしき 障害者や介護施設高齢者の医療を受ける権利が剥奪されるかもしれないという重大な問題が提起されているときに、国会の審議を優先する、そういうことで、私は、大臣、閣僚としての、岸田内閣の姿勢がそれでいいのかと指摘せざるを得ないですよ。

国会の日程よりも、高齢者や介護施設入居者、人間の尊厳が問われているときにですよ、何で国会の審議優先なんですか。デジタル社会は全ての人を取り残さない、障害のある人にもこのデジタルを使ってより豊かな暮らしを保障すると言いながら、それに逆行することが目の前で起こっているのに、何で国会審議優先するんですか。うそですか、このスローガンは、そうなりますよ。

○河野太郎デジタル大臣 このマイナンバーカードと保険証を一体化するというのは、様々医療におけるメリットがございます。これはもう国民全体にとってもそうですし、あるいは施設に入所されている方、あるいは障害を持っている方、難病を抱えている方、むしろそういう方にこそ、このマイナンバーカードと保険証を一体化することによって提供される様々な医療情報、保健情報といったものが役に立つわけでございますから、そういうものをしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

また、こうしたデジタルでデータを連携をし様々なエビデンスを取るということが、何が最良の医療なのかということを、エビデンスに基づいてきちんと医療を提供するということになるわけでございますから、これは、誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化ということを進めるのに全く沿った政策であるというふうに思っております。

○山下よしき 参考人質疑で出されたことは、その逆の事態が起こっているという深刻な、痛切な現場からの声なんですよ。それを全く無視して、人に優しいとか、もう言うのはやめていただきたい。

私は、高齢者施設、あるいは障害者の実態について十分認識しないまま、高齢者や障害者に新たな大きな困難をもたらす現行保険証の廃止を表明した河野大臣の責任は重大だと思うし、様々な困難が生じることを認識しながら、十分な対策を取らないままこの法案を提出した責任も重大だと思う。河野大臣の責任は二重に重大だと言わなければなりません。

このまま強行すれば、社会的弱者が医療から排除されかねない重大な事態になります。法案を撤回し、やり直すことを求めて、質疑を終わります。