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参議院本会議質問

2000年8月1日

●山下よしき 私は、日本共産党を代表して、森総理に質問をいたします。

 久世前金融再生委員長が辞任をいたしました。しかし、これで一件落着ではありません。総理は、久世参議院議員が三菱信託銀行から巨額の利益供与を受けるなど特別の癒着関係にあったことを事前に知っていながら、それを問題なしとして、事もあろうに金融行政の責任者に据えました。総理、この判断自体は今でも間違っていないと言うのですか。

 また、久世参議院議員は、記者会見において、参議院比例区選挙で名簿の順位が当選ラインに入るために、霊友会などに協力を求めて自民党の党員を大量に確保し、その党費として一億円をマンション業者大京から自民党に支払ってもらったと述べています。総理、これは事実ですか。また、事実とすれば、大京からの一億円は自民党本部に入ったのですか。そして自民党本部としてこれをどう処理したのですか。説明を求めます。

 また、報道されている霊友会からの二億五千万円についても自民党本部に入ったのかどうか、あわせて説明を求めます。

 これらが事実なら、自民党は特定の企業や団体から党費を名目にやみの政治献金を受けていたことになります。また、特定の企業や団体との癒着が深く、巨額の党費を企業頼みで集めれば議員になれる党ということになります。

 政治のあり方が問われている今、自民党総裁として真相を究明し、国民の前に明らかにするのは当然ではありませんか。

 次に、景気問題について伺います。

 総理は、所信表明の中で我が国経済に明るい兆しが見えてきたと述べました。しかし、この評価は国民の実感とはほど遠いものであります。失業率は依然として過去最悪、全国で三百万人を超える方々が職を失い苦しんでいます。大阪城公園には、仕事も住まいも失い、テントで暮らす人が五百人を超えています。また、親の失業など経済的理由で中途退学せざるを得ない高校生がふえています。国民をこんな状態に置きながら、我が国経済に明るい兆しとはよくも言えたものであります。

 景気回復のかぎがGDPの六割を占める個人消費が元気づくかどうか、これにあることは今では政府からも異論は出ません。ところが、政府は個人消費を回復させる具体策は何一つ示さず、例えば日銀などは、企業収益というダムの水位が上がっているから、そのうち働く者の所得に流れ出してくるだろうという無責任な見通しを振りまいています。総理もこれと同じ見通しですか。

 問題は、企業収益というダムの水位がどうやって上がったかであります。

 民間機関の調査では、一年半の間に企業のリストラによる労働者所得の削減は五兆円に上っています。また、九〇年代から今日までの超低金利政策で三十兆円もの利子所得が国民から銀行に吸い上げられました。つまり、労働者、国民の所得を奪い、流れを逆流させてため込んだ収益であります。こんなやり方で大企業、大銀行の水位が幾ら上がっても、働く者の所得にそれが流れ出してくるはずはないではありませんか。こんなごまかしの議論で国民の暮らしの厳しい現実から目をそらすことは絶対に許されません。

 個人消費の回復を図るために、次の二点は避けられないと思います。

 第一は、深刻な雇用不安を解消するために政府が打つべき手を打ちきることであります。その点で政府が昨年掲げた七十万人の雇用増、この政策の効果がどうだったのか、検証が求められています。

 例えば、緊急雇用創出特別奨励金、これで二十万人雇用をふやす目標でしたが、実績は二千百四十人です。また、新規・成長分野雇用創出特別奨励金、十五万人目標で実績は二千三百三十七人です。マスコミからも、七十万人雇用増、かけ声倒れと指摘がされました。総理は、政府の雇用対策が効果を発揮していない原因をどう分析し、どう改善するおつもりですか。

 政府の雇用対策が効果を発揮しない原因ははっきりしております。大もとにある企業のリストラ、人減らしを野放しにしたままだからであります。ヨーロッパでは、企業の一方的な解雇、リストラを規制する法律がありますが、日本でも雇用を守る法制度をつくるべきであります。日本共産党は、この国会に引き続き解雇規制法案を提出いたしました。労使間の話し合いに任せるなどという無責任な態度を改めて、真剣な検討を求めるものであります。

 また、労働時間を短縮し、新たに雇用を拡大すること、とりわけサービス残業を根絶することも急務であります。

 最近、労働省が行った電機産業における実態調査では、実に七割の事業所に是正勧告、指導がされるなど、日本の職場にサービス残業が蔓延し、健康破壊も進行していることが明らかになりました。フランスでは、政府が進めた労働時間短縮政策が功を奏し、この間着実に失業が減り、雇用がふえております。日本でも、サービス残業をなくせば九十万人雇用がふえるという報告もあります。雇用をふやす効果が証明済みのこの対策に今こそ踏み出すことを求めたいと思います。

 第二は、老後の不安を取り除くことであります。

 国民の八割が老後に不安を感じ、そのことが消費を冷え込ませる要因ともなっています。それが単に心理面だけでないことも見る必要があります。

 可処分所得、実際に使うことができる所得が何に使われたのか。二十年前と比べると、教育費が一・五六倍、医療・社会保障費が一・七七倍にもなっているのに、消費支出は一・一〇倍とほとんど伸びず横ばい状態であります。高い教育費、医療費、社会保障費が家計を圧迫し、個人消費が犠牲になっているわけであります。

 総理、この現実をどう認識するのですか。社会保障と教育予算の拡充はこの点からも急務であります。

 次に、消費税の問題について質問をいたします。

 七月十四日、政府税制調査会は中期答申を出しましたが、そこには、一つ、消費税率引き上げ、二つ、所得税の課税最低限の引き下げ、三つ、中小企業に重くのしかかる法人事業税の一律外形標準課税化、四つ、上は減税、下は増税という相続税の改定という四つの増税の方向が示されました。総理は、この答申について、結論的には大賛成と述べましたが、これらの方向を全部進めるつもりですか。明確にしていただきたい。

 中でも、消費税率引き上げは重大であります。消費税を導入した竹下元総理は、当時、消費税に対する幾つかの懸念を挙げました。その中には、例えば逆進的な税体系となり、所得再分配機能を弱めるのではないかとか、所得税のかからない人たちに過重な負担を強いることになるのではないかなど、消費税の本質が述べられていました。この消費税の本質、所得の少ない人ほど負担が重くなるという弱い者いじめの本質は、今も何ら変わっておりません。

 近年、我が国においても所得格差が広がり、一部の富裕層への富の集中が懸念されています。このようなときにこそ、税制は所得格差の拡大を正し、富を再分配する機能を発揮しなければなりません。逆進性の強い消費税導入とその税率引き上げや所得税の累進性の緩和などによって、今、税制が所得を再分配する機能は著しく弱まっております。

 総理、税制の大改革を図るのであれば、税制のこの機能の回復こそ優先課題とすべきではありませんか。それに逆行する消費税率のさらなる引き上げは絶対に避けるべきではありませんか。答弁を求めます。

 そごうの処理に巨額の税金を投入することに国民の怒りが広がっています。政府・与党は、世論の前に、当初の債権放棄、借金の棒引きによる救済という計画を変更しました。しかし、形は民事再生法による法的処理に変わりましたが、そごうの不始末の穴埋めに巨額の税金が投入されることに何の変わりもありません。多くの国民の疑問は、一百貨店のためになぜ税金投入かということであります。

 総理、今回の処理によって投入される税金の額は当初の計画の九百七十億円よりふえるとされていますが、一体幾ら国民の税金が投入されるのですか。また、そごうの乱脈経営に国民は一体何の責任があるというのですか。明確な答弁を求めます。

 今回の問題の根本には、破綻銀行の処理は銀行業界の共同責任でという従来のルールを崩し、穴があいたら税金でという七十兆円の銀行支援の枠組みをつくったことがあります。私は、この枠組みが今や日本の社会全体にモラルの崩壊を蔓延させていることを厳しく指摘したい。

 第一に、政府のモラルの崩壊であります。

 そごうの処理をめぐって焦点になっているのが、旧長銀の譲渡先との関係で、追加損失が出たら国が引き取って税金で見てやるという瑕疵担保特約であります。まともな政府だったら絶対にこんな契約はいたしません。現にアメリカでは、追加損失が出ても一定の割合で受け皿銀行にかぶらせるというルールがあります。そうしなければ、受け皿銀行の側に債権を回収しようというまじめな意欲がわかず、かえって損失が大きくなるからであります。金融再生法など七十兆円の枠組みが、政府にどうせ最後は税金だという安易な姿勢を生み、こんな無責任な特約が結ばれました。まさに行政のモラルの崩壊ではありませんか。

 第二に、銀行業界のモラルの崩壊であります。

 銀行に対する税金投入の最大の口実は金融システムの安定ということでありました。そして、金融システムが安定すれば中小企業に対する貸し渋りも解消するとされ、そのために七兆円の公的資金が投入されました。しかし、貸し渋りは解消されるどころか、中小企業向け融資は逆に十兆円も減っています。その一方で、銀行から多額の資金が日栄などの悪徳商工ローンに回り、銀行に貸し渋られた十数万もの中小企業が犠牲となりました。まさに道義なき金融システムではありませんか。

 第三に、産業界のモラルの崩壊であります。

 今、バブル期の乱脈経営のツケにあえぐゼネコン初め産業界から、銀行に対する債権放棄、借金棒引き要請が相次いでいます。公的資金を投入された大手十七の銀行は、こうした要請にこたえて、この二年間で既に三兆円もの債権放棄を行いました。民間機関の調査では九二年三件、九四年五件と一けただった銀行の債権放棄が、九九年には六十件に達しています。銀行への税金投入の仕組みが、それならおこぼれをこちらにもよこせとばかりに、産業界の借金棒引き要請を一気に加速させました。借りたお金は何年かかっても必ず返す、この当たり前のモラルが産業界から消えつつあります。

 まさに、政府、銀行業界、産業界、三位一体のモラルハザードが進んでいます。アメリカでは、銀行の破綻処理に税金は一切使わず、銀行業界の自己責任、自己負担の原則で問題を解決するルールを確立しています。今こそ政治の責任で日本社会にモラルを復権させるべきであります。そのためにも、穴があいたら税金でという銀行への七十兆円の税金投入の枠組みそのものを見直し、廃止すべきではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。

 中尾栄一元建設大臣が大臣在任中に若築建設から、公共事業で便宜を図ってほしい、建設官僚を天下りさせてほしいという請託を受け、その見返りに六千万円のわいろを受け取った疑いで逮捕されました。公共事業のあり方が厳しく問われる中、公共事業を食い物にする政権与党の腐敗の実態が明らかとなりました。

 国民の多くは、中尾事件は氷山の一角にすぎないと見ています。ゼネコンが政権党に献金し、公共事業の大盤振る舞いを要求する。政権党は予算編成でそれにこたえ、選挙になれば下請まで動員して企業ぐるみの応援をさせる。まさに公共事業を票も金もに利用する癒着の構造を断ち切ることは政治の緊急課題であります。

 中尾事件を検察任せにせず、国会みずからが政治的、道義的責任を明らかにするため真相を徹底的に究明することは当然であります。そのことを前提に、二点提案をいたします。

 第一は、野党が共同で提案しているあっせん利得処罰法案を速やかに成立させることであります。国会議員が陳情を受けて公務員に仕事をさせ、かわりに報酬を受け取る、これを禁止するのは中尾事件を受けた国会の最小限の責任であります。

 自民党内に政治活動の手足を縛るとこれを先送りする議論があると聞きますが、一体何を心配するのですか。私たちも国会議員が国民の要望にこたえるために力を尽くすことは当然だと考えています。ただ、報酬を受け取ることを禁止しようと言っているんです。政治活動が報酬目当てでないのなら心配することは何もないはずであります。

 国民の期待にこたえ、今国会で直ちに法案を成立させようではありませんか。総理の答弁を求めます。

 第二に、腐敗の大もとにある企業・団体献金の禁止も急務であります。企業献金は、本来、見返りがなければ株主への背任、見返りがあればわいろという性格を持ちます。実際、ゼネコン各社は、昨年夏に三億七千万円、ことしの総選挙前に業界団体として三億円など、恒常的に自民党に献金をしております。これは確かな見返りがあるからにほかなりません。

 腐敗の温床となっている企業・団体献金はきっぱり禁止すべきではありませんか。答弁を求めます。

 こうした改革を進めた上で、公共事業のあり方についても一言触れたいと思います。

 日本共産党は、国民の要望の強い社会保障、暮らし優先の公共事業はもっと積極的に行うべきという立場であります。そのためにも、目的もなければ採算の見通しもない、自然環境も守れない、ただゼネコンを喜ばせるだけのむだな大型公共事業はやめよという立場であります。

 選挙中、与党の幹部は、むだな事業の見直しは進めている、この二年間で百三十九もの事業をやめさせたなどと盛んに宣伝しました。しかし、建設省、運輸省、農水省など六つの省庁が全国で計画、実施している事業数は八千を超えております。中止になったのはそのわずか一%程度にすぎません。

 本気でむだな事業をなくすには、九五年度から二〇〇七年度までの十三年間に総額六百三十兆円の公共投資を行うという公共投資基本計画に基づく総額先にありきの方式をやめることであります。そうでなければ今後も毎年五十兆円という公共事業を続けることになります。ここに指一本触れないというならどうしようもありません。この際、公共投資基本計画そのものを再検討すべきではありませんか。それができないなら、やはりあなた方は公共事業を食い物にしているとの批判は免れないでしょう。欧米並みの民主的な事業評価制度の確立とあわせて真剣な検討の開始を求めるものであります。

 雪印大阪工場の食中毒事件は、一万四千人を超える発症者を出し、戦後最大の食中毒事故となりました。丸二日間、製品回収も公表もせず被害を拡大したこと、余りにずさんな衛生管理だったことなど、雪印の企業責任が第一に問われることは言うまでもありません。同時に、この工場を高度な自主衛生管理がされている施設、HACCP施設と承認し太鼓判を押していた政府・厚生省の責任も免れません。

 なぜこうなったのか。根底にあるのが政府の規制緩和政策であります。九五年に食品衛生法が改悪され、HACCP承認施設では企業の食品衛生管理者の設置義務もなくなり、保健所の監視も企業の検査記録をただ書面で見るだけになりました。HACCP承認施設は衛生管理がすぐれているという神話が生まれているとの指摘もあります。消費者の安全よりも効率を優先する規制緩和万能論から一日も早く脱却をすべきではありませんか。総理の見解を求めます。

 もう一つは労働条件の問題であります。

 雪印の労働者の家族の方から、深夜に及ぶ残業の連続、過酷な労働で起こるべくして起こった事故と感じるとの投書がありました。実際、雪印は九四年以降千人近い人減らしを行っております。むやみなリストラが消費者の命と健康を守ることを後回しにしています。原因究明と再発防止に当たっては、この労働条件にまで踏み込んだものにする必要があると思いますが、いかがですか。

 最後に、外交問題について伺います。

 総理は、九州・沖縄サミットの大きな成果を強調しました。しかし、今度のサミットほど内外に失望を広げたサミットはありません。

 まず、沖縄の基地の問題であります。

 総理は、クリントン大統領の演説を聞いて、日米関係の大切さを改めて認識した、沖縄の人々への思いが伝わってきたと絶賛しました。これにはだれもが驚きました。クリントン大統領の演説というのは、沖縄は日米同盟の維持のために死活的役割を果たしてきたというものであり、沖縄県民に向かって基地の恒久化を受け入れるよう迫ったものであります。総理はこの演説のどこに沖縄県民への思いがあるというのですか。そこにあるのは基地のない平和で豊かな島をという沖縄の人々の悲願を無残に踏みにじる態度ではありませんか。

 総理がそういう感覚だから、名護の新基地の十五年の使用権原の問題も全く進展がありませんでした。ただ、基地のたらい回しを取り決めたSACO合意の推進を確認しただけであります。地元の琉球新報の社説は、肩透かしを食ったというのが大方の県民の見方、浮き彫りになったのは日本政府、森首相の弱腰、サミットが終わっても何も変わらない、依然として巨大な基地が存在し続けると痛烈に批判をしました。

 総理、一体あなたは何のために沖縄でサミットを開いたのですか。改めて総理の真意を問うものであります。

 もう一つ、日本外交の立場を失っているのが核兵器問題での対応であります。

 二十一世紀を目前にして、核兵器の脅威から解放された新しい時代を切り開くことは急務であります。ところが、サミット宣言には核兵器廃絶に向けたメッセージは一言もありません。世界で最初の被爆体験を持つ国の総理として、またサミットの議長として、なぜこの問題を提起しなかったのですか。

 これまで政府は、国際政治の舞台において繰り返し核兵器の究極的廃絶を主張してきました。そして、非同盟諸国などによる期限を切った核兵器廃絶や核兵器の使用禁止の主張に対し、それが核兵器国と非核兵器国の対立を助長し核軍縮の進展を妨げるおそれがあるなどとして、これに反対する態度をとってきました。

 しかし、ことし五月の核不拡散条約再検討会議では、全会一致で採択された最終文書に、核兵器廃絶への核兵器国の明確な約束が合意されております。これは、核兵器の究極的廃絶の主張が、実際は、その課題を永久に先送りし棚上げする主張として、国際政治で明確に否定されたことを意味します。

 政府は、今もなお、核兵器の廃絶は究極的な課題であり、期限を切った廃絶や使用禁止の主張は対立を助長し核軍縮を妨げると考えているのですか。そうでないなら、これまでの態度を改めて、来月開かれる国連ミレニアム・サミットにおいて、被爆国政府の責務として、期限を切った核兵器の廃絶、使用禁止を堂々と提案すべきではありませんか。明確な答弁を求めるものであります。

 終わりに、二十一世紀を前に、この国の政治のありようが問われており、根本的転換が求められております。国民が主人公という立党の精神を受け継ぎ、政治の改革に果敢に挑む決意を述べて、質問を終わります。(拍手)

日本共産党 市田忠義 宮本岳志 しんぶん赤旗
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