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弱いものいじめの消費税増税はやめよ

参議院予算委員会 1997年03月14日

●山下よしき 日本共産党の山下です。

 今国民の多くが感じているのは、九兆円もの国民負担増となる予算案をこのまま無傷で通してしまっていいのかということだと思います。そこで、負担増の中心である消費税の増税問題について、総理に質問をいたします。

 一九八四年十一月にアメリカの財務省は当時のレーガン大統領に対して一つの報告書を出しました。連邦付加価値税を導入すべきかどうかを詳細に検討したものであります。この中に付加価値税の持つ逆進性に関するこんな記述があります。

 逆進性に二つの面がある。すなわち、貧困レベル以下の人々に対する租税の絶対的負担と、それより上の層に対する逆進的な効果である。貧困レベルより上の層で所得税の対象となる人々にとっては、付加価値税の逆進性は所得税率を調整することで相殺することができる。しかし貧困レベル以下にあって所得税の対象とならない人々については、この方法は役には立たない。付加価値税の本質をついた指摘だと思います。

 日本でもかつて同じ懸念を表明した人があります。竹下登元総理大臣です。竹下さんは消費税に対する九つの懸念を述べておられます。それを見ると、「第一の懸念 逆進的な税体系となり、所得再分配機能を弱めるのではないか。」「第三の懸念 所得税のかからない人たちに過重な負担を強いることになるのではないか。」とあります。つまり、アメリカの財務省の指摘もその中に含まれておりました。

 ただ、両者が違うのは、アメリカの場合は真剣な検討の結果、付加価値税の導入を中止した。これに対して日本は消費税が導入され、今その税率が引き上げられようとしている点であります。

 私は、この際、税率が五%になったら、かつてアメリカ財務省が指摘をし、竹下総理が懸念をしたこれらの諸問題が一体どうなるのか、改めて検討してみる必要があると思います。

 まず、初めに考えてみたいのは逆進性の問題です。所得の低い人ほど負担率が高くなるというこの逆進性は私は消費税の持つ本質的な欠陥だと思います。逆進性が税率引き上げでどうなるのか、大蔵省、試算をされていますか。

●薄井信明 大蔵省主税局長 付加価値税タイプの日本の消費税が所得に対して逆進的な傾向を持つことは、その性格上当然のことでございます。この点につきましては家計調査等を用いてその状況を調査いたしております。

●山下よしき その逆進性が、三%の税率が五%になったらどうなるのかという試算をしていますか。

●薄井 主税局長 三%が五になるわけですから、簡単にはその分だけ大きくなるといいますか比例的になるということだと思います。

●山下よしき 私は具体的に試算をしてみました。資料にグラフと計算表をお配りしております。

 税率三%の現在、年収三百万円世帯の消費税負担率は一・八六%であります。これに対して年収一千万円世帯の負担率は一・四二%。その差〇・四四が逆進性を示す数字ですが、現在でもはっきりそれがあらわれているわけです。

 これが税率五%になったらどうなるか。年収三百万世帯の負担率は三・一一%になる。対して一千万円世帯の負担率は二・三六%。その差は〇・七五です。三%のときの差の一・七倍に広がります。つまり、三%から五%に税率が引き上げられることにより逆進性が一層拡大されるということであります。これ自身、総理、お認めになりますね。

●橋本龍太郎 総理大臣 消費税だけで税の議論をするというのは、私は大変聞いておられる方を、スリードする危険性があると思います。

 先ほど主税局長から御答弁を申し上げましたように、それぞれの税はそれぞれの税のよさと欠点を持っております。消費税またしかりであり、議員はその消費税の欠点のみに着目して論陣を張っておられるように思います。

●山下よしき 私が聞いているのは、消費税そのものが持つ本質的欠陥について、今それをそれとして総理に聞いているんです。三%が五%になったら逆進性が拡大されるというこの問題について、総理、お認めになりますね。

●薄井 主税局長 そちらの計算が何に基づいているのかを推測いたしますと家計調査かと思いますが、そのサンプル数のでこぼこみたいなものがありますので何とも言えないのと、ただ絶対額にしてみれば当然その分ふえます。対数的には比例的な関係にあろうかと思います。

●山下よしき これは大事な問題ですのでぜひ総理に御答弁いただきたいんですが、今消費税だけを区別してみるのは正確ではないという御答弁がありました。

 私は、例えば平成六年度の税制改革全体を見ても、大蔵省の試算はそれで相殺されるという結果を示しておりますが、その試算をよく見ますと、当時同時に行われた年金保険の掛金のアップが除外されておりますとか、あるいは給与所得の伸びを高く設定しているという問題がある。私たちのそういうことを加味した試算では、制度減税を合わせて試算いたしましても全世帯の約八割が差し引き増税になるという結果になっているわけです。これは当時の国会の論戦で決着済みの問題であります。しかし、私はそういう環境を今論議しようとしているんじゃないんです。消費税そのものが持っている本質的な特徴について、それが税率が上げられることによってどうなるのかということについてきょうは議論をしたいと思っております。

 総理、逆進性が拡大するということ自身は否定はされませんね。それは否定されなかったわけですけれども、どうでしょうか。

●橋本首相 その点は先ほど御答弁申し上げております。

●山下よしき 否定をしなかったということであります。

 次に、貧困レベル以下の人々に対する絶対的負担の問題、所得税のかからない人たちに対する過重な負担の問題について伺います。

 アメリカ財務省の報告は、これは深刻な問題だと述べています。なぜなら、こうした人々から最低生活の維持に必要な所得を奪うからである、こう述べているわけです。絶対的負担とはそういう意味を込めた言葉なんです。そういう人たちが一体どれぐらいいるのか、これも大蔵省、試算しているでしょうか。

●薄井 主税局長 先ほど来おっしゃっているアメリカの報告ですが、アメリカでは州とその下の段階で小売売上税をやっておりまして、むしろ日本の税率よりも高いわけでございます。それに加えて消費税を入れることについての御議論かと思います。

 なお、課税最低限以下につきましては、地方税の問題もございますので、今ここに数字は持っておりませんが、それ相応の数字が出てくるかと思います。

●山下よしき アメリカが州税を導入していることは私も承知しております。ですから、そういう問題と区別してきょう消費税の問題についてぜひ議論をしたいということなんです。

 どれぐらいの人たちが絶対的負担になるのかという規模について今具体的な数字はお挙げになりませんでしたけれども、そういうことがあるであろうということは、アメリカが心配しているだけじゃないんです、竹下総理が心配しているんです、所得税のかからない人に対しても過重な負担が強いられるんじゃないかと。ですから私は、アメリカの問題を聞いているんじゃない、日本で総理が当時そう言われたことに対して現在の総理がどういう御認識なのかということを聞いているわけです。

 いずれにせよ、そういう人たちに絶対的な負担がかかることになる、税率の引き上げで最低生活の維持に必要な所得がより多く奪われることになる。このことは、これも否定できないんじゃないでしょうか。

●橋本首相 竹下総理が、導入当時、九つの懸念を示して説明をされたことも承知いたしております。その後、それぞれに対しての答えを主税局は用意しておるはずでありますので、お尋ねがありましたなら主税局長から答弁をさせます。

●薄井 主税局長 九つの懸念につきましては、当時いわゆる大型間接税ということにつきまして、それは定義の問題ではなくて、その種の税金に対する国民の懸念の問題であると。その九つの懸念につきましては、それぞれに解決策なりあるいは努力を続けていくべきものであるということで出てきたわけでございまして、第三番目に、所得税のかからない人たちに過重な負担を強いることになるのではないかという懸念があると。

 この点につきましては、年金生活者とか心身障害者だとかあるいはその他の方々に必要な措置をとる、そういうことによって対応すべきであるといった趣旨のことを言っておりますし、そのようにやってきております。

●山下よしき そういう配慮をされているのは私も知っております。しかし、どんな配慮をしようともそういう人たちの消費税負担そのものをなくすことはできないじゃないか、私はそのことを改めて確認し、税率が引き上げられることによってそのことが拡大されるということを今問題にすべきではないかということを提起しているわけですよ。それに対して、私は総理にこれは真正面から受けとめていただきたい、そのことを申し上げたいと思います。

 次に進みます。

 消費税が中小企業にどんな影響を与えるのか考えてみたいと思います。

 大企業と比べて中小企業の景気回復がおくれていることは、これは政府もお認めになっております。今回の増税は、回復の足取りの重いこうした中小企業に私はさらに二つの足かせを課すことになるというふうに思います。

 第一の足かせは転嫁の問題です。中小企業にとって消費税は転嫁が命です。転嫁できなければ自分でかぶらなければならない。損税となるわけです。だから、竹下元総理も第六の懸念で「商品価格に転嫁できるか。」とお述べになっていました。

 今中小企業の消費税の転嫁状況はどうなっていますか。

●渡辺修 環境事業団理事長 お答え申し上げます。

 平成元年に導入されました時点の中小企業の転嫁の状況でございますが、当時の調査によりますと、メーカーについてはおおむね転嫁しているというのが九八%。さらに、二年に行いました数字によりますと、九九・七%が転嫁されている。メーカーの一例でございますけれども、そういう数字を把握いたしております。

●山下よしき ほかの業種はどうですか。

●渡辺 理事長 少し細かくなりますが、卸売業につきましても、元年、導入当初でございますが九六・六%、二年で九九・二%と、こういうことになっております。

 その他、小売業につきましてはこの数字は少し減ってきておりますけれども、全体で当初が七三%、それから二年で七八%と、こういう数字になっております。

●山下よしき 平成二年以降の調査の結果はどうなっていますか。

●渡辺 理事長 消費税が導入されて当初と一年後で今申し上げたような数字でございまして、その後、消費税は国民の間に定着しておりますので、特にその転嫁状況等について格別の調査はいたしておりません。

●山下よしき 結局、長期不況に入って中小企業の営業、経営がこれからどん底に向かおうというときに、もう消費税の転嫁の調査の必要がないと判断していること自体が私は大問題だというふうに思うんです。中小企業が消費税を転嫁するのがいかに大変か、困難か、これはリアルに見る必要があると思うんです。

 大阪府中小企業家同友会がその点で興味深い調査をしております。これも資料をお配りしておりますが、仕入れ価格と売上価格の推移の調査であります。

 バブル期最後の九一年と比較をすると、いわゆる価格破壊の流れの中で仕入れ品の単価は毎年下がって、九四年にはマイナス七%になりました。仕入れ単価が下がるのは結構なことです。ところが、製品の販売価格の方もそれ以上の率で下がり、マイナス一二%となっている。つまり、仕入れ単価よりも販売単価の下げ幅が大きくて、その分利益が小さくなっているということであります。これは何も特殊な例ではございませんで、政府の発行している中小企業白書でも、仕入れ単価の製品価格への価格反映力の差が大企業と中小企業の企業収益の格差の要因だと、こう分析しているわけであります。

 こういう力関係のもとで果たして中小企業は消費税を転嫁できるだろうか。中小企業の経営者の皆さんの声を聞いてみますと、転嫁できずに自分でかぶっているだとか、あるいは転嫁はできてもそれ以上に単価の引き下げを要求されているというのが実態であります。税率が五%になったからといって、二%上乗せして転嫁をするのが簡単ではない、困難だということは容易に想像ができると思うんです。そうじゃない、転嫁はできる、中小企業の経営を圧迫しないと保証できるでしょうか。

●渡辺 理事長 今御紹介いただきました資料を拝見いたしました。経済が激動しておるときでございますし、輸入品もどんどんふえておるときでございます。まさにいろんな市場の状況が変わっておる段階でございますから、そのときそのときでいろいろ変わってくることは、経済は動きますから当然だと思います。

 そうした中で、新たな対応をしていくために個々の企業は努力しておるわけでございまして、消費税がスムーズに転嫁されますように、先般も内閣で税制改革実施円滑化推進本部が開催されまして、それぞれにつき、非常に細かな指導を行って、各種団体及びユーザー、その他団体等に対して指導を徹底すると、こういうことを行っておるところでございます。

●山下よしき 私もその指導文書は見ました。しかし、結局、何かあったら中小企業庁などに言ってきてねという文書ですよ。しかし、言おうと思っても、言ったら、親企業にそのことが判明したら商取引を打ち切られるというような危険もあるわけですね。それを冒してまでも一体どれだけの中小企業者が訴えることができるだろうか。これは本当に事実として、現実の問題があると思うんですね。

 私は、税率引き上げでどの程度の転嫁ができるのかという調査を国民金融公庫が一月十七日に発表されておりますので、紹介したい。全国小企業動向調査ですが、それによりますと、「消費税率引き上げ分をすべて顧客(取引先)に転嫁できる」と答えた企業は一二二%です。「一部のみ転嫁できる」二三%、「全く転嫁できない」一七%、合わせて四割の企業が自分でかぶる、損税を新たに覚悟しているわけです。まさにこれは足かせになる。竹下元総理の懸念が現実になる、拡大される、そういうことじゃないでしょうか。これはぜひ総理に御見解を伺いたい。

●橋本首相 私は、最初に申し上げましたように、税制全体で議論すべき中の消費税一点での議論というのは全体を過つ危険性があるのではないかということを申し上げました。

 先ほど主税局長も申しましたように、レーガン時代の税制改正に向けてのアメリカのリポートを引用されましたが、国、地方を通じましたときに、付加価値税を採用している国は日本以外に多数ございますけれども、委員はアメリカの例だけを、しかも地方税を抜きにしてお話しでありますが、ヨーロッパにおける付加価値税の税率の高さはよく御承知のとおりであります。今回、二%税率を引き上げさせていただきたいと考えつつも、簡易課税等転嫁のしやすい状況を工夫しておることも御承知のとおりであります。

●山下よしき 転嫁の問題について、そうはならないということも、これまた否定はされませんでした。転嫁できなかったら自分でかぶらぬとあかんということになるわけです。しかし、長期不況の中で、中小企業の経営が大変な中でかぶり切れずに滞納になってしまうということもあり得る。事実、消費税の滞納額は今激増をしております。

 九一年以降の消費税の滞納額がどうなっているか、税目別の滞納額もあわせてお示しいただけますか。

●堀田隆夫 国税庁次長 お答え申し上げます。

 消費税の年度末滞納額でございますけれども、平成三年度、一九九一年度でございますが九百八十九億円、四年度が千八百四億円、五年度が二千七百五十二億円、六年度は三千三百五十九億円、七年度が三千八百六十一億円ということでございます。

 あと、税目別にというお話がございましたが、いろんな税がございますけれども、どうしましょうか。

●山下よしき 主なもので。

●堀田 次長 じゃ、例えば申告所得税で申し上げますと、やはり平成三年度から七年度で申し上げますと、三年度が六千六十七億円、四年度が六千七百十七億円、五年度が七千三百七十二億円、六年度が七千七百二十七億円、七年度が七千九百五十六億円というような状況でございます。

●山下よしき はっきりもう少しわかるようにしたいので、その年度ごとの中で滞納額の増加額構成比というのがありますけれども、その一番大きな税目は何ですか。

●堀田 次長 お答え申し上げます。

 ちょっと数字が計算できておりませんが、この間の、平成三年度以降の滞納残高の増加の中で消費税がどのぐらいのウエートを占めているかということでございますが、税目別に見ますとやはり消費税のウエートが一番大きくなっているということでございます。

●山下よしき その消費税の滞納額が五%に税率が上がることでさらにふえるんじゃありませんか。

●堀田 次長 五%に税率が上がりますと納税額はふえるわけでございますけれども、滞納がふえるかどうかというのは、いろんな要素がございまして、その時々の景気の局面もございますし、一概に滞納がふえる、ふえないとは判断し切れないだろうと思っております。

●山下よしき 私は、国税庁は消費税の滞納の増加をちゃんと予想している、そして手を打っているというふうに思います。

 文書を入手いたしました。昨年の十二月二十四日付で信用保証協会会長や知事、市町村長あてに大阪国税局から送付された「消費税の納税証明書に関する協力依頼について」という文書です。この中には、消費税滞納の状況等も十分に御賢察賜り、入札資格審査、融資申し込みの際などには、従来の申告所得税、法人税のほかに、消費税の納税証明につきましてもあわせて調査資料として御活用くださるようお願い申し上げますとともに、現在の納付税額を証明する書式を、今後は未納税額がないことを証明する書式に変更していただくようお願いを申し上げますと。

 これは要するに、自治体が入札や融資を行う際に消費税滞納のチェックを厳しくしなさい、そういうことです。中小業者にとってはこれは非常に強烈な消費税の圧力になるわけですよ。こんな文書を送付するということ自体が、これは増税によって四月から消費税の滞納の増加を予想しているということも私は言えるんじゃないかというふうに思うわけです。私は、こういう入札資格やあるいは融資の申し込みの際に、今消費税の滞納がないことをあえてチェックしなさいよという文書を新たに出すこと自体、これは中小企業者の営業がこの消費税の増税によって大変になるという面をお認めになっているんじゃないか。どうでしょうか。

●堀田 次長 消費税につきましては、先ほど申し上げましたような滞納の状況がございまして、片方で、この税は預かり金的な性格を持っているものでございますから、私どもは、この消費税の滞納を未然に防止する、あるいは一たん滞納になりましたものの整理を進めるということで、そこを今重点施策として推進しているところでございます。その結果、新規発生ベースでは、ここ二年ばかり消費税の滞納額は前年より減少しているということも申し上げさせていただきたいと思います。

 その納税証明書の添付について関係団体にお願いしていることも事実でございまして、私どもはそれは必要な施策であると思っております。

●山下よしき 私は、預かり金というお話がありましたけれども、預かっていないということが問題なんですね。預かれないんです、転嫁できなかったら。預かっていないんだけれども預かったとみなされて、これは納税を強いられる。しかし、今の大変な経営状況の中で納税できない人もこれまたふえてくるんじゃないかということですから。預かっていないんですよ、転嫁できないということは。そういう場合もあるということはぜひお認めいただきたいというふうに思います。

 次に進みます。

 中小企業にとって、消費税の増税が第二の足かせとして事務負担あるいはリスクの増大となってあらわれできます。これも、竹下元首相が第七の懸念で、「新しい税の導入により、事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか。」と述べておりました。

 消費税の納税額は、売上高にかかる消費税額から仕入れに含まれる消費税相当額を控除して決まります。したがって、仕入れ消費税額の控除が認められなければその分納税額がふえる。

 今回税率引き上げとともに仕入れ税額控除の適用要件が変更されようとしております。どういう変更でしょうか。

●薄井 主税局長 簡易課税制度についての御質問かと思います。

 現在年額四億円のものを二億に下げます。したがって、適用対象者がその分減るということになります。

●山下よしき そうじゃなくて、仕入れ税額控除の適用要件の変更です。

●薄井 主税局長 失礼しました。

 いわゆる帳簿方式に加えて証票を保存してほしいということで、現在商売されている方々はほとんど証票を行き来させているわけですから、それを同時に保存していただきたいということを法令上明定しました。

●山下よしき これは重大な変更なんです。これまでは帳簿の記載が不十分であっても請求書が保存してあればカバーできる、仕入れ税額控除が認められるということでしたが、「帳簿及び請求書等」の保存に変更になる。しかも、帳簿の定義、請求書等の定義が大変厳しい。消費税法に基づくこの二つの定義、どうなっているでしょうか。

●薄井 主税局長 帳簿とは、事業者が行った課税仕入れ等につきまして、課税仕入れの相手方の氏名、名称、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れの内容、課税仕入れの支払い対価の額等が記載されているものというふうに規定されております。

●山下よしき 今聞いたとおり、今の四つの項目を取引のたびに全部帳簿に記入しなければならなくなるわけです。これは、現在の中小事業者の実態を全く無視したやり方だと言わなければならない。もし帳簿に不備があったら仕入れ税額控除が認められなくなるんです。それが否認されたら、売上額に丸々消費税が課税されることになって、納税額が一気に四倍、五倍にはね上がることになります。これも中小企業にとっては大変な足かせになるんじゃないか。

 私、こういう事態を、ぜひ総理、どうでしょうか、そういうことは大丈夫だとお思いになりますか。

●薄井 主税局長 むしろ、消費税がいわゆる益税にならないようにとかいろんな意味できちんとするべきであるというのが世の中の声だと思います。そういう意味で、帳簿はある人はインボイスにしろという方までいらっしゃいますが、日本の実情から考えてまだそこまでは行けないと思っております。そこで、帳簿に加えて、通常証票のやりとりをしているわけですから、それを保存していただく。

 ただし、御指摘のように一件一件細かく全部出さないとだめだとは申しておりません。これは国税庁において執行いたしますが、それは実情に応じてまとめて出していただいたり、品目別でなくていいというようなことで整理をしていると聞いております。

●山下よしき 結局、法律のとおり中小事業者に記載を求めると無理がある、だから今おっしゃったように執行の段階で配慮するということですけれども、それは大変な負担がかかるということをお認めになっているということであります。ですから、それはきちっと、そんなことで税額控除が否認されるようなことはないというふうにしていただきたいんですが、しかし法律どおりにやるならばこれもまた大変な事務負担になるということも否定できないというふうに思うんです。

 私は結局、アメリカの財務省やあるいは竹下元総理が懸念された逆進性の問題、貧困層に対する絶対的負担の問題、それから中小企業の転嫁と事務負担の増大の問題、これは一つ一つ聞いても結局それ自身については否認はされなかった、否定はできなかった。これはやっぱり消費税そのものの持っている本質的欠陥だからだというふうに思います。それを増税など、私はもってのほかだと思うわけであります。

 ぜひこういう悪税は廃止するのが民主的税制の確立にとって大道だ。私は、この際改めて増税中止、そして特別減税の継続の一点で今国会でも努力することを表明して、質問を終わります。

●橋本首相 冒頭から、税それぞれの性格というものの中で逆進性を私は否定いたしませんでしたところ、その後、竹下総理の九つの懸念を引用して、しかも全部ではなく引用をされましたので、一点竹下総理が懸念しておられた第四の懸念というものがどうであったかを思い出していただきたいと思います。

 第四の懸念は、「いわゆる痛税感が少ないことから税率の引上げが容易になされるのではないか。」という懸念でありました。それがいかに難しいか、今御理解のとおりであります。

●山下よしき 終わります。

日本共産党 市田忠義 宮本岳志 しんぶん赤旗
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