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高遠菜穂子さん、アレン・ネルソンさんの講演を聴きました

2005年12月05日

 国際ボランティアの高遠菜穂子さんと元アメリカ海兵隊員アレン・ネルソンさんの講演を同時に聴く機会がありました(11月13日、大阪大学講堂にて)。

 高遠菜穂子さんは、いわずと知れた、イラク戦争で肉親を失った子どもたちを支援するためにイラクで活動中、武装勢力に拘束され、後に解放された行動派の若い女性。一片の大義もないあの戦争を世界で真っ先に「支持する」と表明した政府・与党関係者や一部メディアから「自己責任だ」などという大ネジレした「非難」が浴びせられ、一時体調を崩していましたが、現在は元気でまたイラクに出かけ、国内各地で講演もされています。

 90分間に及ぶ彼女の講演は、一貫して”イラクでいま何が起こっているか、事実を伝えたい”という立場に立ったものでした。パソコンとパワーポイントを駆使して、現地の最新映像もたっぷり紹介し説明してくれました。そこに現れるイラクの”事実”は、彼女の抑制した口調とは違い、非常に衝撃的なものでした。

 結婚式の行われている教会に撃ち込まれた米軍のミサイルが新郎新婦の家族や親戚数十人を一瞬で殺害してしまった現場、数千人の市民が殺害されたといわれるファルージャ掃討作戦のあと、郊外に避難している市民のもとへ米軍のボディバッグに入れられて返された遺体…。腐敗し白骨化した遺体の映像は、戦争の(というより米軍の残虐行為の)非人間性をこれでもかというくらいに伝えてきました。遺体のまわりで、肉親を失った男たちが”報復”を口にする姿は、「テロとの闘い」をかかげる米軍の行為こそが、テロの土壌を広げるものであることをまざまざと示しています。

 高遠さんは「気分が悪くなられた方もいらっしゃるかもしれませんが、これがTVでは報じられないイラクの事実です」と言い切りました。数多くの遺体のなかで、他と違う白色の遺体があることについて「これは米軍がファルージャ掃討作戦で化学兵器を使用したためではないか」とも。イタリアの放送局がこの問題を追っているそうです。

 高遠さんの伝えるイラクの現実を目の当たりにして、まず感じたことは、人間はここまで人間でなくなれるものなのか、ということ。心がどんよりと暗く重たいもので覆われました。

photo 高遠さんの講演に続いて、ギター片手に歌いながら登場したのはアレン・ネルソンさん。元米海兵隊員で、ベトナム戦争に2年間従軍、ジャングルの中での戦闘、集落の襲撃など様々な作戦に携わり帰還します。戦場であんなに恋しかった母親が、帰還したネルソンさんの顔を見て一言。「お前は私の息子じゃない」。ベトナムでの2年間はそれほどまでに彼の心身を蝕んだのです。ネルソンさんはしばらくPTSDに苦しみます。

 そんなネルソンさんの転機になったのは、子どもたちに戦争体験を語ったこと。街で高校時代のクラスメイトの女性、小学校の教師をしていたそうですが、彼女にばったり出会い、帰還後、苦しんでいることを話すと、担任している子どもたちにベトナムの話を聞かせてくれないかと頼まれます。一度は断ったネルソンさんですが、後日、子どもたちから、ぜひ聞かせてとの手紙をうけとり出かけることに。

 教室で、小学校4年生の子どもたちに生々しい話はやめておこうと、オブラートに包んだ話をしたネルソンさん。しかし、質問の時間になると、子どもたちは、戦争の本質に迫る質問を次々とぶつけてきます。「ベトナムではお母さんに会いたいと思いませんでしたか?」「ジャングルではウンチはどうやってするんですか?」。どれも大人は決してしない質問、でもとても大事な質問です、とネルソンさん。戦場で亡くなる兵士がみんな口にするのが「Mama!」という言葉だそうです。そして、ジャングルでいちばん危険で不安なのが、一人離れて用を足すときだそうです。戦争では、用を足している人は撃たない、寝ている人は襲わない、などというルールはないからです。

 ネルソンさんに言葉を失わせる質問が子どもから出されます。「あなたは戦争で人を殺しましたか?」。これこそ核心を突く質問です。じっと目を閉じ考えるネルソンさん。本当のことを言ったら子どもたちは自分を怖がって逃げ出してしまうのではないか、いや、でも子どもたちにうそを言うことはできない…。ネルソンさんは目を閉じたまま答えます。「Yes.」と。

 するとどうでしょう。一瞬の静寂のあと、子どもたちは一人また一人と席を立ち、ネルソンさんに駆け寄り、肩をつよく抱きしめてくれたというのです。ネルソンさんは涙が止まりませんでした。

 以来、ネルソンさんは精力的に反戦の講演を、アメリカでそして日本で行うようになります。米海兵隊員の受ける訓練はどのようなものか、戦場でどんな体験をしたかなどの話とともに、日本の憲法第9条を読んだときに感動した、これこそ人類の宝物だ、ぜひ日本の皆さんに守り抜いてもらいたいとのメッセージも添えられます。

 救われた気分になりました。人間は、戦争によって、自分たちを人間でなくすこともします。同時に、人間でなくされた人に、人間の心を取り戻させる力を持つのも、また人間なのです。ネルソンさんの肩を抱きしめた子どもたちのように。

photo 高遠菜穂子さんとアレン・ネルソンさん。お二人の講演をそろって聞くことができた意味はとても大きいと思います。ありがとうございました。すばらしい講演会を準備してくださった、豊中の憲法を守る運動に取り組む皆さん、阪大9条の会の皆さんにも感謝したいと思います。

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