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WTCのてっぺんから大阪市政を考える

2005年11月13日

 突然の市長選挙(11月13日告示、27日投票)となった大阪市政。テレビや新聞は「職員厚遇」を焦点に描こうとしているようですが、大阪市政の最大のムダづかいはなんといっても「巨大開発」です。

photo 先日、大阪湾に集中する巨大開発が一望できるスポットに足を運んでみました。大阪南港コスモスクエアにそびえたつWTC(ワールドトレードセンター)ビル最上階にある展望台です。地下鉄中央線コスモスクエア駅を降りると、地上250メートル、西日本一高いWTCが目に飛び込んできます。高い。歩いて近づくとさらに高い。ところが、中に入ると午前10時過ぎなのに人影はまばら。しかも展望台へ上がろうとすると、「申し訳ありません。11時からです」と案内の女性に言われました。なんと、展望台への高速エレベーターの運行は、これまで午前10時開始だったのに今年から11時に遅らせたそうです。これも赤字対策のひとつでしょうか。

photo 仕方がないので、2階のテラスで大阪湾巨大開発ウォッチングには欠かせない手引書、『週刊つりサンデー』元会長、大阪湾会議代表幹事の小西和人さんの『大阪沈没』に目を通しながら時間をつぶしました。2003年に出版された本ですが、小西さんの撮影された上空からの写真が、大阪湾ですでに行われた、あるいは現在進行中の巨大開発の全容を見事に伝えてくれます。個々の開発のずさんさや破綻ぶりも簡潔に解説されています。大阪市政の一番の問題点を知るための必読書といっていいでしょう。

 ご存知のとおり、このWTCこそ、大阪市のムダ使いの先駆けのひとつ。まだバブルが華やかなりし頃、「どうせ建てるなら西日本一の高層ビルに」とあまりにもいい加減な理由でどんどん膨らんだ計画を、そのまま見直しもせず、バブルがはじけてから強行した”インテリジェントビル(要するに贅沢な賃貸オフィスビル)”です。大阪市が主体となった第3セクター方式(自治体と民間企業が共同出資して行う事業方式)で建設されました。総事業費は約1200億円。大半は、銀行からの借金でまかなわれました。95年開業時の入居率は33%。その後も、三井物産などの大手が「不便」「高家賃」などを理由に相次いで撤退し、大ピンチに陥りました。

 大阪市の取った救済策は、市の各部局のWTCへの引越し。玄関ホールや、エレベーター内の各階案内表示を見ると、なるほど大阪市港湾局、建設局、水道局、下水道局、都市環境局、ゆとりとみどり振興局の6局に、大阪市土地開発公社など外郭団体の名前がずらりと並んでいます。WTCのオフィス部門の入居者の実に7割は大阪市関係。現在、WTCは「大阪市役所“第2庁舎”」と呼ばれています。情けない。くわえて、ホールや駐車場の買取り、毎年数十億円もの長期低利融資など、大阪市の出費は半端ではありません。それでもWTCの累積赤字は数百億円にも上るというのですから、なつかしの夫婦漫才ではありませんが、“責任者出て来い!”と叫びたくなります。

 怒りながら、11時になったので、800円払って展望台直行エレベーターに乗り込みました。高速エレベーターと長いエスカレーターを乗り継いで展望台に到着。地上250メートルから見る大阪の街と大阪湾の360度のパノラマはなかなかの眺めです。天気がよかったので、遠くは明石海峡大橋まで見ることができました。しかし、きょうは景色を楽しみに来たのではありません。WTCの建つ咲洲(さきしま)、すぐ目の前の夢洲(ゆめしま)、その奥の舞洲(まいしま)の3つの巨大埋立地を中心に、どれほど無駄な開発がすすめられているか、この目で確かめに来たのです。

photo 『大阪沈没』を片手にチェックすると、まずあきれたのが、咲洲−夢洲間で進行中の地下鉄工事。2008年オリンピック招致を“錦の御旗”に進められた地下鉄建設工事が、オリンピックが来なくなっても(ご承知のとおり、大阪市はわずか6票しか得られず惨敗)そのまま継続されているのです。工事は海の底でやられているので上から見てもよくわかりません。でも、人がひとりも住んでいない人工島に向けて、2キロの海底トンネルを掘って地下鉄を通す工事が着々と進んでいるのです。恐ろしい話です。(写真:手前の「咲洲」の丸い「海の時空館」あたりから、奥の「夢洲」へ海底で地下鉄工事が進んでいる…)

photo その夢洲の沖合いに目をやると、海面を杭で囲んだ場所で、なにやら作業している船が10隻ほど小さく見えます。どうやら、あそこが「新人工島」の埋め立て現場のようです。展望台にある望遠鏡で覗いてみると、驚きました。船はすべて土運船です。しかも、大きな鉄のショベルで船倉から土砂をつかみ取り、海面に次々とぶちまけているではありませんか。不気味な光景でした。大阪湾の自然環境が目の前で破壊されている感じです。

photo なぜいまさら「新人工島」か?大阪市によると、大型貨物船の着岸できるコンテナバースを造るためだそうです。冗談じゃありません。今でも大阪港には、水深14〜15メートル級の大型コンテナバースが10基もあるのです。間口の岸壁が350メートル、奥行き500メートルの広大な用地に、巨大なクレーン2台がセットになっていて、1基造るのに250億円かかります。それだけの巨費を投入して10基も造ったのに稼働率は低く、ほとんど使われていないバースもあります。隣の神戸港にもたくさんのバースが余っています。なのに「新人工島」を埋め立てて、新たに6基もコンテナバースを造るなんて、正気の沙汰とは思えません。(写真:「夢洲」のコンテナバース)

 地下鉄工事と「新人工島」埋め立てにかかる事業費は合わせて4000億円!莫大な税金が海の底に沈んでいるのです。大阪市民の目には見えないところで…。

 そのほかにも、オーストリアの芸術家による奇抜な(というより奇異な)デザインのごみ焼却場(621億円)、わざわざ浮体開閉方式で造られた高価な夢舞橋(635億円)など、財政危機に瀕しているはずの大阪市の金使いの思い切りのよさに思わず脱帽したくなるような建造物の数々が一望できました。

photo ため息をつきながら、WTC展望台を降り、隣接するATC(アジア太平洋トレードセンター)に向かいました。ここは私にとって思い出深い場所。10年前、参議院議員に当選させていただいたあと、初めての国会質問(95年10月)で取り上げたのがATCの問題だったのです。「世界最大の国際卸売りマート」「日本で唯一の保税地域にあるFAZ(輸入促進地域)施設」などのうたい文句で、政府も支援して開業(94年4月)した大阪市の第3セクターがATCです。しかし開業一年半たってもテナントは埋まらず赤字続き、テナントとして入居した中小業者からは高すぎる賃料を下げよと裁判まで起こっていました。(写真:ATCの外観)

photo 責任を問う私に対し、当時の通産省の橋本龍太郎大臣や官僚の答弁は、「あと何年かすれば人も集まって黒字になる。初めはこんなもの」という無責任なものでしたが、10年経った現在も赤字続きは変わらず。中核施設のITM棟の中に入ると、巨大な建物の中に人通りも少なく薄暗い。12階建ての吹き抜けをエスカレーターで上り下りすると、大型家具店「大塚家具」の入っている6、7、8階だけが明るいのが、かえって寂しさを強調しているようでした。他の階はアウトレット店などが入居していますが、当初の目的からはかけ離れた完全な「雑居ビル」状態。このATCの総事業費は約1500億円です。巨額の公費を投入して赤字の雑居ビルを作ることが、どうして自治体の仕事なのか。どう考えてもおかしい。

 結局、WTCもATCも、莫大な累積赤字を抱えて経営が破たん。大阪市は銀行との間で特定調停を成立させ、新たな負担(追加出資各40億円など)をかぶることとなりました。しかし、3、40年かければWTC、ATCが債務を返済できるという保証はありあせん。2次破たんすればさらに大阪市の負担は莫大なものとなります。まさに大阪市財政にとって、第3セクターは重たい「負の遺産」なのです。

 巨大開発の失敗のツケを、市民サービスの切りすてや負担増という形で、大阪市民に押し付ける。そんなことは絶対に許されません。そのためには、「オール与党」体制で市長を担ぎ、“赤信号みんなで渡れば怖くない”とばかりに巨大開発にのめりこみ、破たんしてもなおしがみつく、大阪市政の流れをおおもとから変えることがどうしても必要です。

 それができるただ一人の人、姫野きよしさんを大阪市長に押し上げるたたかいがいよいよ今日から始まります。

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