また、やってしまいました！オフの間に重大な政治情勢の進展です。昨日プールに行っている間に、自民党が「新憲法草案 条文案」を発表していました。今夜、大阪憲法会議・共同センターの会合で、「自民党の改憲要綱を斬る」と題して講演する予定なのに、斬る対象が「要綱」から「条文案」に変わってしまいました。先月、自然史博物館に行ったときも、衆院本会議で郵政民営化法案がわずか5票差で可決。あわや解散・総選挙かという緊迫した事態だったことを、夕刻自宅に戻ってから知りました。どうも、私のオフは、とるタイミングが悪いようです。
ボヤいていても仕方ないので、党大阪府委員会の総会で議長を務めたあと、大慌てで「条文案」の全文を読み、講演の中身を再検討することに…。
「条文案」を読んで驚きました。「要綱」の時点よりいっそう踏み込んだ、憲法9条の全面改悪になっているではありませんか！私は、「条文案」の9条改悪のポイントは次の5点にあるとみました。
①「戦争放棄」という文言を、第二章のタイトルからも、9条1項の条文からも削除したこと。これまで自民党は「9条2項は削除するが、1項は残す」と言ってきましたが、ここにも手をつけました。あからさまな「戦争放棄」の放棄です。
②「戦力不保持」「交戦権の否認」を定めた9条2項をすべて削除してしまい、変わりに「自衛軍を保持する」と明記したこと。これで「自衛隊は戦力ではない」「だから海外での武力行使はできない」という、これまで政府自身が説明してきた海外での武力行使の「歯止め」がなくなります。
③その「自衛軍」の任務に、「自衛のために必要な限度での活動」「国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動」「我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動」の3つをあげていること。まず、「自衛」という言葉がクセモノです。舛添要一・自民党新憲法起草委員会事務局長は「自衛には個別も集団も含まれる。その議論は終わった」と説明しています。これは、日本が侵略されていなくても、同盟国であるアメリカが戦争を始めたら、日本も参戦することになる「集団的自衛権」の行使を認めたことを意味します。
さらに「国際社会の平和及び安全の確保」のために「自衛軍」が活動できると書いたことは、まさにむき出しの形での海外派兵宣言です。イラク戦争のような、無法な先制攻撃の戦争に、交戦権を持った軍隊として出動し、アメリカ軍と一緒に戦闘するということです。
④国民に戦争協力を強いる条文が盛り込まれていること。自衛軍の活動について「日本国民は…主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする」（9条1項）としました。主語は「日本国民」です。また「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」（12条）と書いています。政府が行う戦争への反対は「公の秩序」に反するので制限される、場合によっては、「自衛軍」を使って弾圧するという事態にもなりかねません。
⑤「軍事に関する裁判を行うため…軍事裁判所を設置する」としたこと。現憲法が、最高裁判所と下級裁判所にしか認めていない司法権を、軍に与えることになります。軍の規律維持や逃亡兵の処罰などを念頭においたものです。
以上、見てきたとおり、自民党の「新憲法草案 条文案」は、「戦争はしない」「軍隊は持たない」と決めた憲法9条をばっさり削り、自衛隊をわざわざ「自衛軍」に変えて、海外で戦争する国にしようとするもの。国民にも戦争協力を求め、軍事裁判所まで設置するものです。まさに「国を挙げて」「海外で戦争する」ための改憲です。こんな企ては絶対に許せません！自民、公明と民主による改憲の合作策動も強まっています。すべての国民に改憲の狙いを急いで伝え、立場の違いを超えた、憲法改悪反対の一点での共同を、全国津々浦々で広げようではありませんか！
というわけで、大阪憲法会議の講演は、専門家の西晃弁護士から「とてもわかりやすかったですよ」とのお言葉も頂き、なんとか務めを果たすことができました（ほっ）。
