JR福知山線の事故から1ヶ月のきょう、尼崎の事故現場に立ちました。
抜けるような青空の下に建つ、列車がぶつかったマンション。赤くさびたレールの上につくられた献花台。ユリの花束をお供えし手を合わせながら想いました。
日常普段の生活から、突如数秒間の恐怖体験に放り込まれ、一瞬にして死へと追いやられた107人の命。幼い子どもを残して逝ったお母さんのほほに残った涙の跡が物語るように、さぞかし無念だったことでしょう。それぞれの命とつながっていた人々の人生もまた大きく変えられました。負傷された方も549人にのぼります。
鉄道など大量輸送機関でひとたび事故が発生したらいかに大惨事となるか、あらためて考えさせられました。大量輸送機関にとって、「安全」は絶対的な優先課題でなければなりません。
にもかかわらず、利益優先で「安全」をあとまわしにしてきたJR西日本と、それを容認・推進してきた政府・国土交通省。失わなくてもよかった107人もの命を思うと、怒りと悔しさがこみあげてきます。政治にかかわるものとして、両者の問題点をあらゆる角度から掘り下げ、底を突いた再発防止策がなされるよう努力することを誓いました。
その点で、けさの「朝日」に掲載されたJR西日本の井手正敬・取締役相談役のインタビューには驚きました。
いわく「効率を上げるのは当り前だ。もちろん、安全を無視してまでは効率一辺倒にはしていない」「実際に事故が起きたから、安全について何を言っても弁明できない。だが、我々としても手をこまねいていたわけではない」「ダイヤが過密というが、東京に比べたら宝塚線ははるかに余裕度がある」。
開いた口がふさがりません。107人もの命を「奪った」という自覚と反省がまったくない。言い訳と開き直りだけです。この井手氏こそ、社長、会長を歴任しJR西日本の経営を築き上げた人物。垣内剛社長も井手氏の国鉄時代からの直属の部下です。
「利益第一主義」にどっぷりつかってきた者の頭は、人間の心が届かないほどゆがんでしまうのか。そう思わざるをえない発言です。ますます、根源に迫る責任の検証が必要です。
※写真は、事故が起きたカーブの手前にある速度制限標識とレール