○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
前回、二〇一一年法改正の附則に基づく十年見直しという重要な機会にもかかわらず、本改正案の内容は、建替配慮書の作成、アセス図書の公開にとどまりました。
そこで確認しますけれども、今年三月の中環審の風力発電事業に係る環境影響評価の在り方についての二次答申には、建て替え事業に係る効果的かつ効率的な環境影響評価手続の実施が記載されていますけれども、この建て替え事業というのは、いつの時点でこの答申案に挿入されたんでしょうか。
○政府参考人(秦康之君) 中央環境審議会においては、その風力発電事業に係る小委員会と全体的な小委員会と二つ並行して動かしておりまして、後者の方におきましては、割と初期の段階から全体的な議論がなされておったというふうに理解をいたしてございます。
○山下芳生君 ずっとウォッチしている日弁連の会長声明とかで、これ唐突だというふうに言われております。
それからまた、さらに、風力発電事業に係る建替配慮書の作成が、いつの時点から、風力発電以外の原子力あるいは火力発電所まで対象事業が拡大したんでしょうか。簡潔にお答えください。
○委員長(青山繁晴君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(青山繁晴君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(秦康之君) 具体的な時点については、ちょっと今手元に持ち合わせておりませんけれども、途中から急に出てきたというような話というふうには認識をいたしてございません。
○山下芳生君 具体的な資料もなしに、そういう認識だというのは根拠がないですよ。
中環審の環境影響評価制度小委員会、この会議録、去年の十二月ですけれども、臨時委員である平石雅一電気事業連合会環境専門委員会委員長は、今回のアセス法見直しの機会を捉え、風力発電などの特定の電源種に限らず、アセスの手続の合理化を進めていただきたいなどと、度々、風力発電以外の発電事業まで対象を広げるよう求めています。これに対して、環境省も、今回、風力を切り口として検討していますが、やはり環境影響評価法は十三事業種全体を対象として詰めていく必要があると回答しております。要するに、電事連の要求になびいていっているということだと思うんです。
この電事連の強い要求で対象事業となった原子力発電所の建て替え、資料一に概要を添付しましたが、今年二月に閣議決定された第七次エネルギー基本計画では、原発依存度の低減を削除いたしました、これまでの。原発依存度の低減を削除し、代わりに原発の最大限活用と新たな原発建設を明記いたしました。
さらに、国内では十八基の原子炉の廃止決定が行われており、今後順次廃止措置が本格化すると見込まれているとして、資料二枚目ですけれども、一枚めくっていただいて、赤線部分、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えを検討していくとも明記されたわけですね。
そういうことになっているわけですが、結局、エネルギー基本計画に合わせて、原子力発電所も計画段階の建替配慮書の対象にしたのではありませんか。
○政府参考人(秦康之君) 本件につきましては、環境アセス制度が施行されてから二十五年、四半世紀余りを経過いたしまして、建て替えに関する規定というのがそもそも存在しないといったようなところからこの議論について議論を始めたということでございまして、別にエネルギー基本計画がどうたらということであるというふうには我々としては認識をしておりません。
○山下芳生君 だって、その最初に示したこの中環審の二次答申は風力発電事業におけるって書いてあるんですよ。その中に突然、今年の三月になって建替配慮書というものが入ってきて、建て替え事業が入ってきて、風力以外の原発あるいは火力などが入ってきたわけですね。
で、資料二に、見ていただいたら、これはエネ基の閣議決定についての電事連の林会長のコメントが載っておりますけれども、そこには、このコメントの二枚目になると思いますが、廃炉を決定した発電所を有する事業者のサイト内での建て替えに限定しない開発、設置が必要であると。もうサイト内に限定しないで原発の新増設が必要だというふうに一層迫っているわけですね。
ですから、今回の、原子力発電所を建替配慮書の対象とすることによる記載事項の簡略化というのは、電力業界の要求を強く反映したものだと言わなければなりません。
で、次に、建替配慮書の対象事業となった火力発電所なんですけれども、実は、火力発電所の環境影響評価手続については、環境負荷の低減が図られ、かつ土地改変等による環境影響が限定的となるなど一定の条件を満たすリプレースについては、方法書段階で事業者による合理的な環境影響評価の実施を可能にしています。もう現在そうなっております。
実際、横須賀石炭火力発電所の新増設では、このリプレースだとして手続が簡略化されました。既に十基がリプレースによって建設されています。今回、建替配慮書という入口による手続の簡略化が実施されたら、続く方法書段階のリプレースで更に合理化されることになると思うんですね。
私の本会議質問に対し、浅尾環境大臣は、既存の事業の稼働中に実施した調査結果を活用する等により、方法書以降の手続において評価項目の絞り込み等を行うことが適切と答弁しています。既にリプレースとしてアセス手続が簡略化されている実態の中で今回の建替配慮書による簡略化がなされれば、環境影響評価制度の空洞化になるのではありませんか。
○国務大臣(浅尾慶一郎君) お答えいたします。
今回の改正は、環境影響評価法上の手続を緩和するものではなく、既存業者の環境影響を考慮した環境配慮の内容を配慮書に記載させることにより、建て替え事業の特性を踏まえた手続の適正化を行うものであり、適切な環境配慮が確保されていることは大前提であります。また、めり張りの利いた環境影響評価を実施し、環境保全の実効性を高める観点から、配慮書段階の検討結果をその後の環境影響評価手続に反映、活用していくことが重要と言えます。
具体的には、既存事業の稼働中に実施した調査結果を活用すること等により、環境影響が限定的となり得ると判断される場合には、方法書以降の手続において環境影響評価の評価項目の絞り込み等を行うことが可能であり、このことをもって手続の空洞化には当たらないと考えています。
○山下芳生君 私、建替配慮書による簡略化で何が簡略化されるかということを見ますと、事業の位置、規模等の検討、その中には位置、規模等に関する複数案の検討も入っています。重大影響を回避するための調査、予測、評価等も入っております。これらを不要とするわけですね、建替配慮書になりますと。そういうことをもう入口でそうおっしゃったら、それ以降の、方法書以降の手続も簡略化され、アセスの重大な後退になると言わざるを得ません。実際それがどういう影響を及ぼすかということを見る上で、根本的問題が一つあると思うんですね。
本会議でも提起いたしましたが、環境影響評価法で規定しているアセスの最終段階報告書の送付及び公表、環境大臣の意見、経産大臣の意見は、電気事業法第四十六条の二十三により、発電所については適用除外となっております。これでは、アセスの各段階を踏まえて事業所が最終的に行った環境保全の措置の内容あるいは効果、不確実性の程度などが全く明らかにされないわけです。除外されているわけですから。
私の本会議の質問に対し、これは経産大臣です、経済大臣は、講じた環境保全措置等を記載した報告書の公表を義務付けています、このため、環境保全措置等の内容が明らかにされないとの御指摘は当たらないと強弁されましたけども、これは電気事業法の手続であって、環境影響評価法の手続ではありません。
現に、環境省の環境影響評価法に基づく環境影響評価手続の実施状況を見ましても、資料三に付けておりますけども、この表ですね、これを見ますと、二〇二四年三月現在、発電所の配慮書は四百六十二件、準備書、評価書は二百五十九件ある。しかし、報告書はゼロ件となっているわけですね。やっぱり出ていないわけですよ、発電所については。
環境アセス法に基づく報告書の送付及び公表、環境大臣の意見が出ていないと、こんな実態で建替配慮書に反映するということは絵空事になるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(浅尾慶一郎君) お答えいたします。
その前に、先ほど私の答弁で既存業者と発言した部分、既存事業の誤りでありますんで、訂正をいたします。
そして、発電所事業に係る環境影響評価手続においては、事業実施後の報告書の国への送付は適用除外となっているものの、講じられた環境保全措置の内容等を含め報告書の公表は事業者に対して義務付けられており、その内容は明らかにされていると認識しております。
その上で、本法律案では、過去に事業者が環境影響評価法に基づいて報告書を作成しているか否かにかかわらず、建て替え事業においては、既存事業が現に環境に及ぼしている影響に関する調査結果や情報を活用することでより効果的な環境配慮が可能であることから、建て替え事業に係る配慮書手続を適正化したものとなっています。
また、仮に事業者が作成した建て替え事業に係る配慮書について既存事業の環境影響の把握等が不十分であると判断される場合には、当該影響を把握するための調査、予測の再実施や、事業計画の見直しも含めた環境大臣意見を述べることで、適正な環境配慮を確保してまいります。
○山下芳生君 大臣も認められたように、報告書は作られても、送付されない、公表もされない、だから大臣の意見も言えないということになるんです。これで環境配慮を反映できると言えるのかと。これでは事業者の都合の良い建替配慮書が作成されることになることは明らかではないかと思います。それをチェックすることがどうやってできるのかということなんですね、送られていないんだから。
さらに、今回の建替配慮書手続は陸上風力発電事業が対象になっております。現在稼働している風力発電事業は、一定部分で計画段階での環境紛争が起こっています。東京工業大学の村山武彦氏の風力発電事業計画に対する環境紛争発生の状況によりますと、二〇一七年度、百八十七件中七十六事業、実に四六%で計画段階での紛争が発生しております。四割が計画段階で紛争を発生していると。恐らく、解決されずに、計画変更されずに実施された事業も少なくないと思います。
ならば、同じ場所で建て替えるとしてもやはり紛争は起こり得るということですから、建替配慮書での手続の簡略化は到底住民の理解が得られないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(浅尾慶一郎君) お答えいたします。
陸上風力発電については、景観への影響や騒音等に関する地域の懸念が生じている事例があると認識しております。新設か建て替えかにかかわらず、適切な環境配慮が確保されることが重要であります。
その上で、本法律案においては、位置や規模が大きく変わらない建て替えの事業について、事業実施想定区域を選定する際に必要となる周囲の概況などの調査は不要とする一方で、既存事業の環境影響を考慮した環境配慮の内容を配慮書に記載しなければならないこととしています。これは、位置や規模が大きく変わらない建て替えの事業であれば、既存事業は現に環境に及ぼしている影響に関する調査結果を活用することで、具体的かつ効果的な環境配慮を確保することが可能となるとの理由によるものであります。
このように、今回の改正は、環境影響評価法上の手続を緩和するものではなく、建て替え事業の特性を踏まえ、配慮書手続を適正化するものであります。
○山下芳生君 風力発電に係る手続の実績を見ますと、二〇一一年から二〇二三年までの十年余りで五百五十五件あります。二〇二三年だけで三十五件、環境大臣意見が発出されておりますので、決してトラブルがないわけではありません。建替配慮書による手続の簡略化によって、こういうトラブルが表に出ないままでずっと闘いは続くということになるというのは、これは後退ではないかと思うんですよね。
それから、現行の配慮書の制度は、現行ですけれども、位置、規模の複数案、ゼロオプション、これ造らないということも含めて検討すると。配置、構造に係る複数案、これが設定されていますが、設定されているものの、必ずしも有効に機能していないケースも多いと思います。なので、複数案の設定、配慮すべき対象の回避等、環境配慮機能の拡充を求める声が強まっているわけですが、このことは資料四に、昨日の参考人質疑でも触れました日弁連会長声明、建て替え事業について重要な手続を省略できることとすることは重大な問題があるという指摘にも現れていると思います。
にもかかわらず、二〇二〇年、環境省は、風力発電所のリプレースに係る環境影響評価の合理化に関する事業者向けのガイドラインを公表していますが、今回の環境影響評価法で建替配慮書を導入すれば、これ法律としてこういう簡略化を制定してしまうことになるわけで、環境配慮機能の一層の低下につながるのではないかと思いますが、こういうこの実際に拡充が求められているときに逆行するようなことになるんじゃありませんか。
○政府参考人(秦康之君) 先ほども御答弁申し上げましたが、今回の制度改正の趣旨は、法律が施行されてから四半世紀を経た中で、新設に対する規制は、規定はあるんだけれども、建て替えに対する規定がないというところからこの議論をしておるところでございまして、一方で、新たに建設する構造物につきましては、既存の環境影響も踏まえてそこはしっかり見ていきましょうということで制度構築をしておるものであって、私どもとしては、決して後退しているものではないというふうに認識をいたしてございます。
○山下芳生君 それは評価が違うなということでございますが。
もう一つ、時間が迫っていますので、アセス法制定時に、電気事業連合会など産業界の反対で戦略的環境影響評価制度の導入が見送られました。本会議質問で大臣は、これについて、慎重に検討を進めるべきであると、引き続き更なる知見の収集に努めると答弁されました。しかし、環境基本法が一九九三年、環境影響評価法が九七年、前回の法改定は二〇一一年、ずっとその都度検討されてきたと思うんですが、結局三十年以上たった今日も戦略的環境影響評価制度が見送られ、大臣は、引き続き知見の収集に努めるというふうにまた先送りされたということですが、先日の参考人質疑でも、戦略的環境アセスメントは事業者による早期の情報公開と参加という考えさえあれば実行できると陳述がありました。
少なくとも、代替案の検討、市民の参加を法の目的に明記する、これは検討すべきじゃありませんか。
○国務大臣(浅尾慶一郎君) お答えいたします。
御指摘の戦略的環境影響評価については、その考え方を踏まえ、早期段階の効果的な環境配慮の確保や、地域における適切なコミュニケーションの推進等を図る観点から、地球温暖化対策推進法に基づく促進区域制度の導入や、計画段階での環境配慮を可能とする再エネ海域利用法に基づく仕組みの導入などの取組を進めてきたところであります。
また、環境影響評価法では、事業者が行う環境影響評価に対し、一般公衆等が環境保全の見地から意見を述べる機会を確保するとともに、事業者に対しても方法書及び準備書の内容についてそれぞれの説明会の開催が義務付けられており、一般の公衆関与のための仕組みが設けられております。さらに、一般公衆等から意見の提出があった場合、事業者は、その後の手続で、準備書又は評価書を作成する際に、これらの意見に配意するとともに、意見の概要及び意見についての事業者の見解を記載することとされています。
環境影響評価制度において、早期段階における環境配慮の確保や地域における適切なコミュニケーションは重要な観点であると認識しておりまして、引き続き、更なる知見の収集に努めるとともに、環境影響評価制度の充実に向けて不断の検討を行ってまいります。
○山下芳生君 時間参りましたので、事業アセスメントではアワセメントになるという指摘がずっとされております。
電事連の要求で発電所のアセスは規制緩和する一方で、同じく電事連の抵抗で戦略的環境アセスメント制度のずっと先送りをし続けていたのでは環境省の存在意義が問われるということを申し上げて、終わります。
(中略)
○山下芳生君 私は、会派を代表して、環境影響評価法の一部を改正する法律案及び山本太郎議員提出の修正案に対し、いずれも反対の討論を行います。
改正案で新たに規定される計画段階建替配慮書による評価の簡略化は、電気事業連合会の強い要請で、風力だけでなく、原子力、火力などの発電所アセスまで適用対象にしたことに厳しく抗議するとともに、以下の理由で反対するものです。
反対する第一の理由は、巨額の公費を投入する国策事業の半導体工場やデータセンターが大量の電力、水を消費し、PFASやCO2を大量に使用、放出いたします。前回の法改正時にも附帯決議に盛り込まれていたにもかかわらず、こうした個別事業の計画実施に枠組みを与える上位の計画や政策の検討段階を対象にした戦略的環境影響評価制度を今回も導入しなかったことです。
第二は、原子力発電所の安全性は、原子力規制委員会のいわゆる新規制基準で一〇〇%担保され、重大な環境影響が回避されるわけではありません。なのに、環境影響評価法では放射性物質も評価項目に入っていながら、他の事業と違い、供用時における原子力発電所においては環境影響評価法に基づいた評価がされないことです。
さらに、二〇一一年に東京電力福島第一原発事故が発生し、放射性物質の拡散により広範囲が汚染され、十四年経過した今でも二万四千人余りが避難計画を余儀なくされています。しかし、原子力規制委員会の審査任せで、米国の国家環境政策法のような原子力発電所アセス評価項目に事故の設定がないことも重大です。
第三に、環境影響評価法で規定している報告書の送付及び公表、環境大臣の意見、経産大臣の意見は、電気事業法第四十六条の二十三により、発電所については適用除外のままになっています。これでは、既存事業の報告書にある調査結果を踏まえた、環境配慮を反映した建替配慮書を作成することができません。
第四に、横須賀石炭火力発電所でのリプレースのように、既に環境影響の調査、予測、評価を行うことなく方法書が簡略化されています。今回、新たに建替配慮書による簡略化で、事業の位置、規模等の検討、重大影響を回避するための調査、予測、評価等を不要とするならば、事実上、アセス手続の後退となることです。
第五に、北海道北部での風力発電の建設、青森の下北半島、秋田県の男鹿半島など、日本では陸上でも洋上でも計画が多く、既設の風車も多々ある地域があります。そのために、このような地域では累積的影響評価をしっかりと行う必要があります。環境影響評価図書の公開情報の収集、情報交換等は必要ですが、累積的影響評価は義務付けていないことは問題です。
なお、山本太郎議員提出の修正案は、原案の建替配慮書による手続の簡略化を容認したまま、火力発電所と原子力発電所のみを除外するものであり、賛成できません。
日本共産党は、環境影響評価の目的に代替案の検討と市民参加の位置付けを明確にすること、欧米並みの戦略的環境影響評価制度を実施すること、原発ゼロの日本を目指し、省エネと再エネの促進を強く求めて、反対討論とします。