環境影響評価(アセス)法改定案についての参考人質疑
環境影響評価(アセス)法改定案についての参考人質疑。▼東京科学大学名誉教授・千葉商科大学前学長の原科幸彦氏▼全国再エネ問題連絡会共同代表・弁護士の室谷悠子氏▼電力中央研究所副研究参事の阿部聖哉氏に 戦略的環境アセスメント 等についてお聞きしました
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環境影響評価(アセス)法改定案についての参考人質疑。▼東京科学大学名誉教授・千葉商科大学前学長の原科幸彦氏▼全国再エネ問題連絡会共同代表・弁護士の室谷悠子氏▼電力中央研究所副研究参事の阿部聖哉氏に 戦略的環境アセスメント 等についてお聞きしました
○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
お三方、ありがとうございました。
まず、原科参考人に伺います。
原科先生の論文、「戦略的環境アセスメントの導入に向けて」を拝読いたしますと、事業アセスの限界として、一つ、事業実施段階では保全対策が限られる、二つ、計画自体の見直しが難しい、三つ、累積的影響への対処ができないことを挙げておられます。その上で、事業よりも上位の意思決定段階での環境配慮の必要性が明確になった、それが戦略的環境アセスメントの導入で、個別事業の位置、規模の検討段階で行う日本型環境アセスメントは国際基準の戦略的環境アセスメントとは言い難いと述べておられます。
そこで伺いますが、それでは、この国際基準の戦略的環境アセスメントを日本で導入するためには何が必要だとお考えでしょうか。
○参考人(原科幸彦君) 大変大事なポイントですね。計画段階という表現使っているので、あたかも上位計画のように誤解しますけど、今、配慮書が、これ事業アセスですからね、事業の計画段階なんですね。SEAは上位の計画ですから、これ対象が違いますね。これは先ほど申し上げたように、その政策決定の手続自体を、基本の構造を変えないと、これは難しいと思います。
ということで、二〇〇六年から二〇〇七年にかけて、環境省が設けたSEA検討会では、それぞれの国の関わる計画のプロセスを全部分析したんですよ。私、ワーキンググループ、これを担当しましたので覚えておりますが、なかなか難しいです、本当に。だから、個別の、日本の計画決定のいろんな手続がありまして、それ詳細に分析しなきゃいけないんですが、ともかく、そういうプロセスで、情報公開がとても遅れているんです、いろんな段階で。だから、国民の意見を出しようがないとかありまして、だから、そこのところの構造を変えないとなかなか先へ行かないです。
一つ可能性がありそうだったのは、実際、エネルギー問題で、三・一一の後、政府がそういう検討会議で始めたでしょう。ああいうようなプロセスをいろんな公的な計画の内容でやれば、これは生まれてくると思います。ポイントは、通常のアセスメント、文書をベースにやりますけれども、それだけではなくて、会議の場を構成して、いわゆる熟議です、熟議をするような格好に進めていけば、これは可能性あります。
例えば、廃棄物処理施設の立地の問題を長野県でやりました。もう二十数年前です。当時は田中康夫知事なんですけれども、それを私、頼まれてやりましたけど、そのときは本当に公開の場で議論したんですよ。そうしたら、最初はもう反対反対って大将が、エビデンス、データを基に、データを公開して、そして議論したんですよ。そうすると、一方的に議論できなくなっちゃうんですね。で、事実関係分かってきますと、そうすると、反対派の大将が、いや、これ造る必要全くないと言ったんですけど、だんだんだんだんデータ分かってきたら、やっぱり処理しなきゃいけないものは残るんだと、どんなに頑張っても。そうすると、最小限、これこれの施設は造らないかぬということで、最後こう言ったんです。最後といっても、十回目ぐらいかな、一桁の回数のときに言いましたね、施設の必要性は否定しないと言ったんです。造ってもいいとは言わないんだけど、そういう言い方したんですよ。つまり、理解が進んだんですね。だから、そういうのが政策段階のアセスメントです。だから、政策段階で十分情報公開して、そのデータをベースにして議論していくと。その議論も公開でやることなんですよ。
このときに大事なことは、私、ハイブリッドモラルと言っているんですけれども、メンバーをハイブリッド、一つは専門家ですね。でも、専門家だけでやっては駄目なんです。ステークホルダー、もう一つは、いろんな組織の代表ですよ、このハイブリッド。そうすると、アセスというのは科学性と民主性が大事です。合理的で公正な判断するためには科学性が必要です。まず、合理的、科学的分析、だけど、みんなの意見が必要ですから、民主的な手続、この両方を含む、そのためには科学専門家の意見が出ること、それから、いろんな人の意見ですね、価値判断も入って、それも意見出ること、このハイブリッドの視点でそれはうまくいきます。
それでやったので、結局、反対派の大将までオーケーと言ったので、立地まで行ったんですけど、その後、いろいろややこしいことがありまして、そういうところへ行きまして、そのいいモデルになって、ほかにも使われまして、実はさっき申し上げた愛知万博のときにも、そのモデルを適用してもらったんですよ。そうしたら、それもやっぱり専門家とステークホルダー、うまくいきましたね。計画が改良できたんですよ。そして、さっきお話ししたような結果になりましたので、だから、政策段階の環境アセスメントというのは、通常の文書のやり取りだけではなくて、たくさん会議の場を設けて、しかも、それを公開でやることです。
二十数年前やりましたけど、そのときは、私、約束してもらったんです、引き受けるとき、この会議は全てテレビで放送してくれと。で、地元のテレビが毎回入ってくれていた。そうすると、県民がみんな注目するわけですよ。それ、みんなが見ているから、おかしな議論はできないですね。だから、反対派の大将も、やっぱりデータに基づいた議論していけば、一方的な議論しなくなった。だんだんまとまってきまして、合意形成できたと。
こんなことでございますから、政策段階のアセスメントというのは、そういうようなことで、通常のこれまでのアセスメントとちょっと考え方を切り替えるとより効果的だと考えます。
○山下芳生君 ありがとうございました。
もう一問、原科先生に伺いたいと思いますが、さきの論文で、今言われたことなんですが、環境アセスメントとは科学性と民主性であると、合理的な判断には科学的な分析が必要であり、公正な判断には参加が保証されなければならないと、大変納得いたしました。
米国の国家環境政策法に基づく環境アセスメントの核心部分は代替案の検討と市民の参加だとよく言われますが、この日米の比較で日本はどこを見直せばよいとお考えか、特に代替案の検討という点で、いかがでしょうか。(発言する者あり)
○委員長(青山繁晴君) 御発言は挙手をなさって委員長の許可を得てからお願いします。
○参考人(原科幸彦君) いいですか。
○委員長(青山繁晴君) どうぞ。
○参考人(原科幸彦君) これはとっても難しいんですけど、ただ、今もお話の例がありますから、やれないことはないんですよね。結局、長野県の例は、首長、田中康夫知事がそういうことをやってくれたおかげでいったんですね。だから、そういう首長の判断があれば結構できますよ。だから、そういった事例をだんだん積み重ねることがとても大事かと思いますね。で、日本でやったことないから、やっぱりそれはできるかはみんな心配しますよねということなんです。
アメリカの場合も、随分長い民主主義の手続の歴史がありまして、例えばNEPAを作るときには、民主党、共和党、それぞれ随分議論したんですよね。だから、議会しっかり議論するんですよ。それによって中身がだんだん詰まってきたんですよ。この制度、あたかも民主党がつくったように思いますが、実は共和党の政権ですよ。ニクソン大統領が一九七〇年一月一日、サインしたんですから。ですから、双方が歩み寄ってつくるのがそういう仕組みなんですね。
そういった風土が日本でもできないとなかなか難しいとは思いますけど、ただ、さっきみたいな例もできていますから、そういうものを参考にすれば私は可能性があると思います。
そこで、これから我々は、考えるべきは、例えば国会の議論、委員会、もっと議論してくださいよ、熟議。一方的に説明して、あとという格好じゃなくて、本会議でも本当は議論してもらいたいですね。そういうしっかり議論するようなカルチャーに変えていかないと社会はなかなか変わっていかないと思いますね。だから、国会自体が変えていただく、例えば、先ほども言いました、参議院で是非目的を、大臣の目的を六文字削除ぐらいは今回皆さんで議論して変えてもらいたいですね。そういうことがあれば社会変わっていきますよと思います。
○山下芳生君 続いて、室谷参考人に伺いたいと思います。
添付していただいている、日弁連のメガソーラー及び大規模風力発電所の建設に伴う、災害の発生、自然環境と景観破壊及び生活環境への被害を防止するための意見書では、温対法に基づく促進区域の設定の際に、住民と十分に情報を共有する機会を設けた上で住民参加の手続によって住民との事前協議を行うことを義務付けるべきであり、それなしの配慮書の手続の省略はされるべきでないと明記されております。大事な観点だと思いました。
そこで、二点質問させていただきます。
一つは、住民との事前協議、これは原科先生からも協議ということが非常に大事なんだというふうに意見陳述でありましたが、この住民との事前協議とは、日弁連の言うところのこの事前協議とはどういうものなのか、で、どうしてそれが必要とお考えなのか、これが一点です。
二つ目に、私は、計画段階配慮書手続では、先ほども申しましたが、位置等の異なる複数案の検討の義務付け、その際にも住民参加と協議というものが環境アセスメントの実効性確保のために極めて重要だと考えますが、いかがでしょうか。
○参考人(室谷悠子君) 住民との事前協議というのは、住民参加を図る上で重要だというふうに日弁連も位置付けています。
促進区域の設定というのはいわゆるゾーニングであります。誘導をしていくというような場所と、あと、逆に避けていく、ここはつくらないというような場所についても考えていく過程で住民の意見が十分反映されていなければ、思いもしなかったところに発電施設ができて、自治体の中なので生活環境に重要な影響を及ぼすというような中で、やっぱり協議ということを入れていくことというのは必要不可欠なことであるというふうに考えています。
今の環境影響評価法の手続であれば意見は言えますけれども、言いっ放しで、それが反映されたかどうかというところまで住民は関与できないというようなことになっていますけれども、環境影響評価法でやるかどうかは別の問題として、きちんと住民の意見に対してこういう検討をしましたというようなことをきちんと事業者が協議する場が不可欠だというふうに思っていて、それは、議員がおっしゃるとおり、早い段階でそういうことをしていくというようなことが必要なので、その環境影響評価の配慮書が出るようなタイミングで説明会というのは行われていますけれども、もっと幅広く住民の意見を反映させるような、そういう手続を条例等によって補完すべきであるというようなことも考えています。
○山下芳生君 複数案の検討ってどうでしょうか。(発言する者あり)
○委員長(青山繁晴君) 許可を求めてから、許可を得てからにしてください。
○参考人(室谷悠子君) はい。
複数案の検討についてですけれども、複数案の検討というのはすごく重要で、一応今の環境影響評価法の中でも複数案を検討するというようなことになってはいますけれども、実際に本当に細かく検討をされているかというとそうではなくて、当初のものから変更される場合はありますけれども、でも、事業の回避をすべきかというようなことの、そこも含めての検討というのは十分されていない事例というようなところがほとんどで、ここに住民の意見を反映させていくというのは、先ほど申したように、極めて重要だと思っています。
○山下芳生君 阿部参考人に伺いたいと思います。
阿部参考人の「既存資料を活用した火力発電所における陸域動植物の簡易な影響評価手法」を拝見いたしました。主な成果として、火力発電所の立地特性として、低地や沿岸域に位置していたと。周辺環境の大部分は工場と水域であり、植生自然度の高い環境の占める割合は僅かであったと。こうした立地特性を踏まえた評価対象の絞り込みを行うことでアセスの効率化や簡略化が期待できると述べておられました。
そこで、火力発電所がなぜ低地や沿岸域に位置しているのかといいますと、それは、タービン蒸気の冷却が発電所の復水器で行われると。その冷却に海水や河川水が用いられるからであって、この温排水が魚類などの遊泳動物、底生生物、動植物、プランクトン、それから干潟、藻場、サンゴ礁などに重大な環境影響を与えるということは知られております。
そうした海生生物へのアセスの効率化や簡略化が期待できる研究というのはあるんでしょうか。
○参考人(阿部聖哉君) 私は陸域が専門ですので、一応陸域の方で分析した結果をまとめさせていただきました。
海域につきましては、アセスの手続としては、温排水については、きちんと温排水の拡散範囲を調べて、その中にどういった生き物がいるかというのを調べて、過去の事例を引用してきて、何か影響が出そうな温度範囲なのかどうかというのを詳細に調べていただくというプロセスは行っております。
これは、やはり長い期間を掛けてこういった手法が確立されてきておりまして、まだまだ分かっていない知見というのは確かにあるんですけれども、アセスの中でできる範囲というのはある程度年限等も限られておりますので、かなり努力をして、あとは自主的なモニタリング等もされて、どの程度影響があるのかというのを調べてきております。
分析結果でいうと、やはり都市部が多いですので、都市地域に温排水が出てくる影響ということで、そんなに自然の豊かなところということでは大部分はないんですけれども、それをどう簡略化していくのかというのは、実は私のいろいろ検討した結果では難しいんではないかなということは少し考えております。
本来はこういったところも簡略化すべきなんだろうなとは思っているんですけれども、ただ、大きくその温排水の範囲が変わらないとか、現状と全く影響の範囲が変わらないというような、そういったケースについては何らかの簡略化の方向というのも検討できるのではないかとは思います。
○山下芳生君 終わります。