日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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万博の安全 責任体制を 爆発濃度ガス問題で提起

参議院環境委員会 2025.4.15
速記録 資 料 動 画
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(写真)質問する山下芳生議員=15日、参院環境委

日本共産党の山下芳生議員は15日の参院環境委員会で、大阪・関西万博の会場内(大阪市夢洲〈ゆめしま〉)で6日、着火すれば爆発の危険がある下限濃度を超えるメタンガスが検知された問題を巡り、万博協会の対策のずさんな実態を追及し、対応をただしました。

山下氏は、夢洲で昨年3月に起きたメタンガス爆発事故を受け、万博協会が9月「ガス濃度把握と安全確認の徹底」を表明したが、実施されていなかったのは明らかだと批判。茂木正・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理は「当該地点においては十分な対策ではなかった」と認めました。

今回ガスを検知した日本共産党の寺本けんた守口市議は直後、責任者に伝えるよう、現場近くの万博スタッフに要請しましたが、火器の取り扱い制限などはなく、防災センターに非常事態を伝えようとしても警備員に阻まれました。

万博協会の「対策」は「会場内の連絡・連携体制の確立および研修」も明記していますが、山下氏は「絵に描いた餅だ」と批判。茂木氏は「必ずしも適切な対応ではなかった」と認め「現場の警備員やスタッフ等も含め万博協会において万全の対応が行われるよう指導する」と答えました。

山下氏は「来場者の命と安全に真剣な考慮を払い、責任ある体制を構築しないなら万博を運営する資格が問われる」と強調。大阪市繁華街で起きた都市ガスの爆発事故(1970年)や、兵庫県姫路市の埋め立て地でのガス爆発事故(2010年)の実例を示して危険性を指摘しました。

山下氏は、すべての地下ピット(地下に設けられた空間)に強制換気装置とメタンガスの常時モニターを設置し、会場全体にメタンガスの知識を習得し、訓練されたスタッフを配置することを提案。茂木氏は「ご指摘の提案も万博協会に伝え検討させたい」と述べました。

速記録を読む

○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
四月十三日に開幕した大阪・関西万博の来場者の命と安全を守る立場から質問します。
資料一に朝日新聞の記事も添付しましたが、万博開幕直前の四月六日、テストランの最終日、会場西側のグリーンワールド工区で、着火すれば爆発する濃度のメタンガスが検知されました。通報したのは、我が党の寺本健太守口市議で、元消防士でもある寺本市議は、携行していたガス検知器の、検知器で、屋外の電気設備地下ピットの蓋、マンホールの穴にガス検知器の測定部を差し込んだところ、メタンガスの爆発下限界を超える一〇〇%LEL、五ボリュームパーセントの値を検知しました。
政府、国際博覧会推進本部事務局に今日は来ていただいておりますが、まず二点、事実確認をしたいと思います。
一つ、四月六日、万博会場で、着火すれば爆発する濃度のメタンガスが検知された。二つ、それを発見し通報したのは我が党の守口市議、つまり来場者だった。この二点、間違いありませんね。イエスかノーで答えてください。

○政府参考人(茂木正君) 委員御指摘のとおりです。

○山下芳生君 この記事中、寺本市議が、客側から指摘されて初めて分かったのは本当に恐ろしいことだと話しているように、万博来場者の安全にとって極めてゆゆしき問題だと思います。
実は今回、爆発下限界を超える一〇〇%LEL、五〇ボリュームパーセントの、あっ、五ボリュームパーセントのメタンガスが検知された会場西側のグリーンワールド工区は、昨年三月にトイレの建物建設工事現場でメタンガスの爆発事故が起こった工区であります。場所も非常に近いです。
資料二に添付いたしましたが、その昨年三月の爆発事故を受けて、昨年九月、万博協会は、この「メタンガス対策について」とする会期中の安全確保対策を示しました。ここには、一、ガス濃度把握と安全確認の徹底として、会場内全域でガス安全管理について、専門家の指導の下、ガス濃度の測定方法、安全確認の体制を構築し、安心して御来場いただける環境を確保するとあります。
しかし、万博協会は、着火すれば爆発する濃度のメタンガスを把握できていませんでした。ここに書いてあるガス濃度把握と安全確認の徹底が実施されていなかったことは明らかではありませんか。

○政府参考人(茂木正君) お答え申し上げます。
昨年の六月二十四日に博覧会協会が公表しました会期中の安全対策、今委員からも御紹介がございましたが、まず、ハード対策として、このグリーンワールド工区の建物に機械換気設備やガス検知器を設置するということ、それから、今回ガスが検出されました屋外の雨水排水、電気設備等のマンホール等の蓋の有孔化、穴を空けるということですね、こういう対策を実施することとしておりました。こうした対策については開幕前に全て完了しておりまして、人が入る可能性がある建物については、対策後、現時点において基準値を超えるメタンガスは検知されておりません。
一方で、雨水排水、電気設備等のマンホールについては蓋を有孔化する、穴を空けるという対策を取っておりましたが、これについては、今回のように短時間で濃度が上昇することがあることから、結果的には、当該地点においては十分な対策ではなかったというふうに認識をしております。

○山下芳生君 そうなんですね。この日も、朝検知したときには高濃度は観測されなかったと。で、昼に、まあ三時ですけれども、寺本議員が検知したら爆発下限界を超えているという濃度が検知されたということですが、そういう点では十分ではなかったということだと思います。安心して御来場いただける環境を確保したのは寺本市議だったと、結果的には、ということになるわけです。
更に重大な問題があります。爆発下限界を超える、一〇〇%LEL、五ボリュームパーセントのメタンガスを検知した寺本市議は、近くにいたスタッフにその旨伝え、責任者に言うよう要請しましたが、スタッフは責任者に伝えはしましたという反応で、その後、火器の取扱いを制限する等の対応はなかったと言います。
一〇〇%LEL、五ボリュームパーセントのメタンガスを検知したマンホールのすぐそばにはキッチンカーがあり、すぐそばのトイレには多くの人が行き交っている状態で、これは非常に危険だと、このままでは駄目だと思った寺本市議は、消防が詰めていると聞いていた防災センターに駆け込もうという考えに至り、そこに行こうとしましたが、防災センターの入口付近で警備員に制止されました。これ以上先に進むためには許可証が必要ですと言われ、防災センターに駆け込んで直接消防にメタンガス発生の事実を伝えることができない状態でした。十五時頃に高濃度のメタンガスを検知しましたが、非常に多くの時間を浪費して、十四時になって、これではらちが明かない、このまま放置するわけにはいかないと、一一九番通報するに至ったと言います。これは極めて深刻な事態だと思います。
万博協会のこの「メタンガス対策について」では、三、会場内の連絡、連携体制の確立及び研修として、「各施設管理者・事業実施者と協会との間で、会場内の連絡・連携体制を確立するとともに、現場で対応にあたる各施設運営スタッフ等への研修を徹底する。」とあります。
しかし、元消防士でもある寺本市議の報告は、昨年三月に爆発事故が起こり、メタンガス発生の危険が高いこの工区で対応に当たるスタッフに、メタンガスに関する知識を習得し、現場で的確な対応ができるような研修がなされていなかった。さらに、消防が詰めている防災センターに非常事態を伝えようとした寺本市議が警備員によって遮断された。会場内の連絡、連携体制が確立されていなかった。ここに書いてある会場内の連絡、連携体制の確立及び研修は十分やられていなかった、絵に描いた餅になっているということではありませんか。

○政府参考人(茂木正君) お答え申し上げます。
四月六日のテストランの際のこれ警備員と今御指摘あった市議さんとのやり取りでございますけれども、こちらについては、私どもそういったやり取りがあることは承知をしておりますが、正確なやり取りについては確認ができておりません。
ただ、いずれにせよ、必ずしも適切な対応ではなかった、十分な対応ではなかったということは事実でございます。会場内の安全確保については、今回の事案も踏まえまして、現場の警備員やスタッフ等の対応も含めて博覧会協会において万全な対応が行われるように指導してまいりたいというふうに存じます。

○山下芳生君 万全の体制だったらこういうことは起こらないわけですね。やっぱり十分じゃなかったとお認めになりました。
私は、今おっしゃいましたけど、やはり来場者の安全確保のためにこのグリーンワールド工区のスタッフ、それから防災センターの警備員を含め、会場内の連絡、連携体制の確立及び研修がどのようになされていたのかやはりちゃんと把握する必要があると思います。そして、どう改善するのか、今回の経験含めて、万博協会に報告を求め指導するべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(茂木正君) 今申し上げましたとおり、今回の検知を踏まえまして、博覧会協会が専門家の意見を聞きながら改めて安全対策に万全を期すものと承知をしておりますので、その点についてはしっかりと把握をしてまいりたいというふうに存じます。

○山下芳生君 私、これから改善するのは当然だと思うんですがね。もう去年の三月に爆発事故が起こった、その周辺でスタッフをしていた方が全く知識を欠いていたと。一体何をやっていたんだと、どんな研修をやっていたんだと。これ、やはり報告してもらわないとちゃんとした改善はできないと思うんですよね、反省とともに。ちゃんと、どうやっていたのかと、この研修あるいは連携、連絡体制。これをちゃんと確認する必要がまず前提としてあるんじゃないですか。

○政府参考人(茂木正君) お答え申し上げます。
博覧会協会が行っていた研修も含めまして、これまでの対応についてはしっかりと検証してまいります。

○山下芳生君 それで、私はやはり、「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げながらですよ、こうして来場者の命と安全に真剣な考慮を払い、責任ある体制を構築しないんだったら、万博運営する資格が問われると思います。
これまでの万博協会の対応を見ますと、メタンガスの危険性に対する認識が弱い、甘いと言わざるを得ません。
今日、消防庁にも来ていただいておりますが、天六ガス爆発事故について概要を報告してくれますか。

○政府参考人(鳥井陽一君) 御指摘の火災でございますけれども、昭和四十五年四月八日に大阪市において発生した火災でございまして、地下の工事現場におきましてガス配管より多量のガスが漏れ、爆発に至ったものと承知をしております。
この火災によりまして、死者七十四人、負傷者四百十一人、焼損面積千七百七平方メートルの被害が生じたものと承知をいたしております。

○山下芳生君 地下鉄工事に伴って都市ガスが噴き出して爆発したということですが、確認ですが、都市ガスの主成分はメタンガスではありませんか。

○政府参考人(鳥井陽一君) そのように承知をしております。

○山下芳生君 資料三、四に当時の新聞報道を添付いたしました。地下鉄工事現場、この資料四の方ですけれども、で起こった爆発事故ですが、地下鉄工事現場の上に敷き詰められていた一枚の重さが〇・四トンある鉄板千五百枚が爆風で吹き飛ばされて群衆に大きな被害が出たということで、メタンガスの爆発の威力はすさまじいということが示されています。
この都市ガスとは異なりますが、万博会場の夢洲一区は廃棄物最終処分場、二区はしゅんせつ土砂や建設残土の処分場で、いずれもメタンガスが発生します。
環境省、一区と二区のそれぞれの特徴とメタンガス発生のメカニズムについて御説明いただけますか。

○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
大阪・関西万博会場である夢洲地区は、昭和五十二年埋立てを開始した埋立地でございまして、四つの工区に分かれてございます。このうち、今御質問いただきましたまず夢洲一区、これはグリーンワールドが位置するところでございますが、この夢洲一区は一般廃棄物と産業廃棄物の最終処分場でございます。また、パビリオンワールドが位置する御質問ありました夢洲二区につきましては、しゅんせつ土砂や陸上発生残土の埋立場所となっているところでございます。
また、メタンガス発生のメカニズムでございますけれども、廃棄物が埋め立てられている部分につきましては、埋め立てられた廃棄物は、生物学的作用、物理化学的作用により分解、安定化していく中で、微生物反応によりメタンガスを含む埋立てガスを発生させるものでございます。
特に海面最終埋立処分場におきましては、埋立廃棄物の大部分が水没しており、酸素が存在しない環境下においてメタン生成菌により廃棄物中の有機物が分解され、メタンガスが生成されるものと承知しているところでございます。

○山下芳生君 二区のメタンガスの発生のメカニズムはありますか。

○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
二区はしゅんせつ土砂や陸上発生残土の埋立場所と承知しておりますけれども、基本的にメタンガスが発生する場合には、そこに有機物が存在している場合にそれが分解をされて出てくるものと承知をしております。したがいまして、この部分に有機物があればそれは出てまいりますし、それは有機物の量にもよりますし、あとは、そのときの環境によるものと考えております。

○山下芳生君 あの二区は大阪湾に流れ込んだしゅんせつ土砂を処分する区域ですから、当然、有機物は含まれておりますし、実際に地下鉄の駅の付近からはメタンガスが発生しております。
ですからね、メタンガスが、確認ですが、発生する条件があるんです。このメタンガスは、いつどこでどれだけの量発生するかは予測することは困難だと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
この有機物、中に入っているものが安定化するには相当程度時間が掛かるものと承知をしております。したがいまして、いつどこでどのタイミングでということについては、私どもとして、そこのところを正確に予見するのは必ずしも容易ではないと考えております。

○山下芳生君 夢洲一区は今、廃棄物処分場としてはどういう段階にあるか。設置、埋立ての終了、廃止、どこにありますか。

○政府参考人(角倉一郎君) お答えを申し上げます。
夢洲一区につきましては、このパビリオンがあるエリアとは違うエリアで、まだ埋立処分が続行しているエリアでございまして、その廃棄物処分場としてはまだ廃止手続に至っていないものと承知をしております。

○山下芳生君 廃止でないだけでなくて、まだ埋立てが終了もしていないという区域でございまして、当然ながらメタンガスが発生し続けるところなんですね。
したがって、メタンガスが発生するのは当然でありまして、今、夢洲一区グリーンワールド工区は八十三本のパイプが地中から突き出してメタンガスを廃棄、排出しております。しかし、それだけで全部捕捉するわけでは、できるわけではありません。
そこで伺いますが、万博推進本部に。マンホールの穴で高濃度のメタンガスが検出された電気設備のこの大きさ、どのぐらいのスペースがあるんでしょうか。

○政府参考人(茂木正君) お答え申し上げます。
電気設備そのものの地下ピットの大きさについて、私、今、現時点では正確な数字を持っておりません。

○山下芳生君 後で資料提出していただけますか。

○政府参考人(茂木正君) 確認をさせて、御報告させていただきます。

○山下芳生君 何でこんなこと聞くかというと、やっぱりどれだけのガスがたまっていたのか、ガスの容量は非常に重要なんですね。今、手元に「物質安全の基礎」という論文、これは資料には添付しておりませんが、土橋律さんの可燃性気体とその危険性という論文見ますと、やはり、着火後、形成された火炎は爆発限界内の濃度の混合気の中を伝播していく、そのときに高速な体積膨張を伴うためガス爆発現象となる、燃焼可能な混合気の燃焼が完了すればガス爆発現象は終了すると。
どれだけのガスがあるかによって爆発の規模、威力が変わってくるわけです。だから、非常に大きな空間にガスが充満していたとすると、それこそ物すごい威力になりますから、危険度は増すわけなんですね。是非これは公表していただきたいと思います。
兵庫県姫路市網干の健康増進センター爆発事故というものがありました。資料五に付けておりますが、二〇一〇年三月二十五日、姫路市網干区網干浜の建設工事現場から、爆発が起き、けが人が出ていると一一九番通報があった。工事作業中の男性四人が瓦れきの下に一時生き埋めになり重傷、男性五人が軽傷。爆発したのは建設中の健康増進センター、鉄骨二階建て、一階にある温水プールろ過施設。作業員八十人が建設工事に当たっていた。半地下の現場に作業員四人が入り、配管に断熱材を巻く作業をしていた。断熱材の形を整える作業をするためにバーナーに点火したところ、突然爆破したという。爆発で温水プールの外壁が吹き飛び大幅に崩れるなどの被害があるというと。
資料六には、事故原因は、地中の廃棄物から発生した可燃性ガスに引火したとの見方が強まっている。市が約八十か所のマンホールや床下を調べたところ、九か所から高濃度の可燃性ガスが検出された。濃度は測定機器の最大値で、爆発の危険性が極めて高かった。ガス発生の考えられる原因は、埋立地の約二割を占める廃棄物だ。埋め立てた県によると、一九八五年から九九年にかけて下水道汚泥や建設廃材、焼却灰などが運び込まれたという。ということなんですが、私、これ、九九年までに埋め立てた廃棄物から二〇一〇年にガスが発生し爆発事故を起こしたというところは非常に重要だと思うんですね。今の夢洲の状況に大変よく似ております。
そこで、最後に提案があります。こういう教訓を生かして、夢洲の万博会場、今からでもですよ、一つは全ての地下ピットに強制換気装置を付けること、二つ目、全ての地下ピットのメタンガスの常時モニターを行うこと、それから三つ目、会場全体にメタンガスの知識と技術を習得して訓練されたスタッフを配置すること、この三点、これは万博協会に実施させるべきではありませんか。

○政府参考人(茂木正君) お答え申し上げます。
今回の検知を踏まえまして、博覧会協会が引き続き専門家の意見を聞きながら安全対策に万全を期すものと承知をしております。今委員からの御指摘の御提案も博覧会協会に伝えて対応を検討させたいというふうに存じます。

○山下芳生君 時間が参りました。
最後に、環境大臣、この爆発事故がもし起こった場合の責任は、いろいろ万博協会とか大阪府市とかありますけど、最終的には博覧会推進本部、本部長は総理です。環境大臣もメンバーです。本部長、総理に今の議論を伝えていただいて、本部長の開会式の挨拶ではガス爆発の、ガスの危険性は一言もありませんでした。こういう危険性があるんだということを本部全体で認識を高めて、万博協会を指導できるように総理に伝えていただけませんでしょうか。

○委員長(青山繁晴君) 時間ですので、お答えは簡潔に願います。

○国務大臣(浅尾慶一郎君) 国内外から多くの方々の参加が、来場が見込まれる大阪・関西万博について、安全、安心な開催の実現は極めて重要であるというふうに考えておりまして、そうしたことについてしっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

○山下芳生君 終わります。