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(問題提起−雇用と地域経済について
地域経済守る共同の前進を

日本共産党リストラ反対・雇用を守る闘争本部事務局長 山下 芳生

 「リストラ反対、雇用と地域経済を守る全国交流集会」が2003年9月3、4の両日、静岡県熱海市で開かれました。今回の交流集会は、全労連、全商連、新日本婦人の会、自由法曹団、日本共産党の5団体による実行委員会主催で開いたもので、2002年3月の集会に続いて行われました。前回の交流集会は、「共同を広げて運動すればリストラに歯止めをかけることができる」という確信を参加者に与える集会となりました。今回の交流集会は、小泉「構造改革」のもとでの長期不況と、その不況下でも最大の利潤をあげることのできる体制をねらう大企業によるリストラ攻撃がいよいよ本格的に加えられてきている情勢のもとで開かれ、前回を大幅に上回る47都道府県から460人余が参加しました。

 交流集会は、「リストラと雇用」 「雇用と地域経済」をテーマに開かれ、小泉「構造改革」と大企業のリストラ攻撃への反撃が、地域をキーワードにして、労働者はもちろん、住民、業界団体、さらには自治体との共同がすすむなど大きく前進していることが、各地の教計に満ちた報告によって明らかにされました。「リストラ反対の労働者の要求が地域全体の要求になるような新しい状況が生まれている」「リストラ、雇用、地域経済の三つの課題をつなげて考えると大企業の横暴を制する展望がみえてくる」とたたかいの展望をさししめす集会となりました。

 本稿では、同集会の全体集会でおこなわれた「問題提起」のうち、山下よしき氏の発言を再録します。(この発言は、「労働運動」2003年11月号に掲載されたものです。なお文中のなまえ、肩書きは当時のものです:サイト編集者)

一 雇用と地域経済をめぐる状況

 いま、雇用と地域経済が全国どこでも深刻になっています。内閣府の地域経済レポートによると、完全失業率は、北海道から九州・沖縄まで全国8つの地域すべてで上昇を続け、倒産件数も高水準が続いています。

 こうした事態の背景には、大企業、財界の経営戦略があります。日本の大企業は、安価な労働力、工場用地、エネルギーなどを求めて、地域から撤退し、中国、東南アジアへと生産拠点を移転させる多国籍企業化と国際的産業再編成の道を進んでいます。また、効率性の低い部門から高い部門に資本と労働力を移動させるために、国際的規模での企業や事業部門の合併・業務提携も活発化させています。

 この大企業、財界の戦略は、自らの利益のためには日本の経済を顧みないという亡国の戦略といえるものです。

 歴代自民党政府は、こうした大企業、財界の戦略を支援するため、独占禁止法の緩和による純粋持味会社の解禁、産業再生法によるリストラの促進、不良債権処理の加速など、さまざまな政策を展開してきました。

 たとえば、1999年に施行された産業再生法は、大企業の事業再構築、つまり、リストラ計画を政府が認定し、減税などの措置を講ずるという、まさに大企業のリストラ・人減らし推進法です。企業のリストラに政府がお墨付を与え税金をまけて応援する、こんなことをやっている国は、世界でほかにはありません。施行されて3年半、この産業再生法の認定を受けた計画はすでに180件、あわせて7万人以上のリストラ・人減らしが強行されました。

 また、財政難を理由にした国民負担増、大規模開発の浪費は続けながら、公共事業を地方で削減し大都市部に集中させるやり方も、地域経済に重大な影響を与えています。小泉内閣の「構造改革」路線は、これらの政策をあらためるどころか、いっそう強引に進めるものであり、日本経済、地域経済の危機をいよいよ深刻にしています。

 同時に強調したいのは、こうした大企業の一方的なリストラ、農林水産業など第一次産業の衰退、地方からの公共事業の削減などによって、地域経済が深刻な状況になるもとで、立場の違いを超えて、「地域経済む守り、発展させたい←という願いが切実になっていることです。この間題を通じて、従来の保守層といわれる方々との共同の可能性が大きく広がっていることに、注目しなければならないのではないでしょうか。

 雇用と地域経済を守るたたかいは、大企業、財界の戦略、政府の政策と対決し、地域住民の暮らしと経営を守る共同を広げ、日本経済の再建をめざすたたかいです。そうした大義をしっかり握って、全国各地で奮闘したいと思います。

二 雇用と地域経済を守る取り組み、運動の新しい発展

 昨年の交流集会以降、全労連と全商連が共同して、あるいは日本共産党が独自で、雇用と地域経済の調査活動に取り組んできました。私たちが、全国各地を調査して強く感じるのは、雇用と地域経済を守る自治体の取り組み、住民の運動やたたかいに、新しい発展の芽が生まれているということです。

 1 自治体のなかの新しい流れ

 いま、全国の自治体に、雇用と地域経済を守る点で、新しい流れが出てきていると思います。その特徴・教訓は次のようなものです。

 @大企業のリストラにたいし、社会的責任を求める要求と行動の広がり

 昨年来、電機大手など大企業の工場閉鎖・撤退で打撃を受けた東北や四国を訪ねてきました。突然の工場閉鎖にたいする自治体の怒りには、どこでも激しいものがありました。首長や助役は、「まるで夜逃げだ」とか、「企業に倫理はないのか」と憤っていました。

 なぜ自治体は、突然の工場閉鎖に怒るのでしょうか。そこには、自治体税収の低下、誘致時の優遇策にたいする背信など、さまざまな理由があります。しかし、自治体にとってもっとも深刻な問題は、小さな町で突然大量の人々が職を失い、生活の糧を奪われるということです。これは自治体だけではどうしようもない、解決できない問題です。ある助役は、「町全体が暗く沈む。税収より何より、それがいちばんの問題だ」と語っていました。

 こうした自治体からは、共通して、「工場閉鎖・撤退に関する自治体との事前協議を」「企業の経営内容も含めた情報公開を」「労働者の雇用確保は最後の一人まで企業の責任で」などの要求が噴き出しています。これらは、大企業の身勝手なリストラから、雇用と地域経済を守る最小限の要求だと思います。「本当は企業に出ていくのをやめてほしい。しかし、それが無理ならせめてこのぐらいのことはやってほしい」という要求ですから、立場を超えて圧倒的多数の人々が一致できる内容です。そこをよく見て、私たちがこうした要求を積極的に取り上げ、地域のなかで仙抗い人々との共同をつくるために奮闘することが求められていると思います。

 要求するだけではなく、行動も始まっています。自治体首長や商工会議所会頭が大企業本社に足を運び、雇用と地域経済にたいする責任を果たすよう要請するなどの行動は、全国各地に広がっています。

 岩手県は、アルプス電気の工場閉鎖が発表された直後、県としてただちに行動に踏み出しました。工場閉鎖にともなう退職者の再就職は、「企業の責任で行うべし」という要請を行い、工場が閉められた去年の4月から12月までずっと追い続けフォローし、結局、退職者のなかで再就職を希望した人の9割まで、企業の責任で再就職先を確保させることができました。

 地域社会に重大な打撃を与える大企業のリストラにたいし、自治体を中心に、企業に社会的責任を求める具体的な要求が生まれ、行動が始まっていることは、今日の新しい特徴だと思います。

 A雇用を創出し、地域経済を活性化させる努力の始まり

 いま、少なくない自治体が、「雇用と地域経済に責任を持たねばならない」と考え始めていることも新しい特徴です。全国の自治体首長に、「今後10年間に取り組みたい政策課題は何か」と質問したところ、第1位で最も多かったのが、農林水産業や中小企業対策を含めた「産業振興」だったという調査もあります。

 すでに貴重な実践と成果も生まれています。

 長野県は、製造業、農業、観光業の3つが既存の基幹産業ですが、これと福祉・医療、環境、教育の成長分野の連携・融合で、4年間に2万人の常用雇用を創出するプランを策定し努力しています。私も副知事に直接お話をうかがいましたが、非常に具体的なプランになっていました。たとえば、諏訪地方などの製造業の高い技術力を生かした、新しい福祉機器の研究開発にたいする支援といったメニューがいっぱい並んでおりました。これは、国の緊急地域雇用創出特別交付金を活用した臨時的な就労づくりにとどまらない、本格的な雇用創出への挑戦上して注目されています。鳥取県も、高枚生を採用した企業にたいする独自の助成制度を創設しました。

 製造業の集積地では、大阪府八尾市、新潟県燕市などで、地域振興条例を制定し、中小企業にたいする技術開発、販路開拓などの支援を強化して、出荷額の減少に歯止めをかける努力が広がっています。

 農林水産業の分野では、高知県本山町、岩手県紫波町のように、地域農産物の価格保障制度、産直センター、地元産材による学校などの公共施設づくりなど、生産から消費までの総合的な活性化策で成果をあげるところも生まれています。

 どこも、公共事業依存、大企業誘致という従来のやり方が行き詰まるなかで、豊かな自然、人々のもつ技術や技能、あるいは地場産業や中小企業など、地域の資源を生かした経済活性化に、模索と苦労を重ねながら挑戦しているというのが共通した特徴です。
 実は、地域の資源を重視することは、世界ではすでに大きな流れとなっています。多国籍企業が雇用を切り捨て、国際的規模で有利な地域に資本を投下する行動を取ることと対比し、中小企業が特定の地域や特定の社会階層、特に社会的に弱い立場の人々の、生活と雇用を安定させる重要な役割を担っているとの認識のもと、ILOは1998年に、中小企業の発展と雇用確保のための勧告を採択しました。EU、OECDも2000年、それぞれ「小企業は、雇用の源であり、ビジネスの発想を育てる大地である」「経済成長・雇用創出・地域と地方の発展並びに社会的結束における中小企業の重要性が増大している」とした「小企業憲章」「中小企業憲章」を採択し、中小企業中心の政策を推進しています。

 ですから、地域の資源を生かして、雇用と地域経済を守るという、日本で始まっている各自治体の挑戦は、私は、世界の流れに沿う未来ある挑戦だと思います。

 B住民の声と知恵を結集することが成功のカギ

 紹介した各地の取り組みの土台には、どこでも粘り強い住民運動があります。また、行政の側も、住民の声と知恵を広く集め、住民とともに地域経済、産業活性化のビジョンと政策を練り上げる姿勢を貫いています。

 たとえば、高知県本山町では、一五〇人委員会で2年間の調査研究を行い、産業振興策をまとめました。

岩手県紫波町では、町民から公募した一〇〇人委員会で3年間、ワークショップ形式などで議論を重ね、「環境と福祉の町づくり」「地産地消」などの基本方向を打ち出しました。紫波町の町長は、「コンサルタント会社に頼めば、計画はもっと早くできるが、それではうまくいかない」と話してくれました。

 地域経済にもっとも責任を持たなければならないのは自治体です。しかし、地域の経済と産業をどう活性化させるか、地域のなかで仕事と雇用をどう生み出すかという課題は、決して行政だけで活路が見いだせる小さな課題ではありません。行政と住民が知恵と力を合わせてこそ展望がひらけ、成果も現れるということをいくつかの先進的な経験は示していると思います。

 なお、地域の資源を生かすうえで、地域の大学や試験研究機開との連携、国や県の補助金などの制度の研究活用が、積極的に行われていることも付け加えておきたいと思います。

 2 住民の運動、たたかいの発展 − 共通する教訓はなにか

 @地域経済の実態をよくつかむことから

 全国を歩いて、雇用と地域経済を守るために、労働組合、民主団体、日本共産党が全国各地で運動し、成果をあげていることは、本当に貴重だと思いました。

 そこに共通する教訓の一つは、それぞれの地域経済の実態、特徴を調査・把撃し、行政や住民の共通の認識にするところから運動が始まっているということです。

 たとえば、東京都大田区の不況打開実行委員会では、労働者と中小業者が、不況に苦しむお互いの深刻な状況を認識したことから、共同の運動が始まったと聞きました。当初は、お互いのことをよく知らず、自分たちがいちばん苦しいと思い込んで、なかなか力を合わせることができなかったそうです。しかし、お互いの状況をよく出し合ってみると、苦しいのはみんな同じだとわかった。そして、「世界に誇るものづくりの集積地」としての大田区の役割、それを支える労働者と中小業者の役割が自覚され、その後シンポジウムを開催したり、日産、三菱などの大企業本社に出かけて、下請二法を守れという要請を行うなど、運動を継続・発展させています。

 埼労連は、全自治体へのアンケート調査に取り組み、県下のパート・アルバイトの時給で最も低いのが、実は自治体の臨時職員で、民間よりも100円ほど低いことを明らかにしました。これを、地域の賃金底上げのカナメと位置づけて、いま、運動を展開しています。

 まず、運動の中心となる部隊が、自分たちの地域にはどんな産業があり、どんな人たちがどんな状況で働き住んでいるのかなど、地域のことを深く知ることが、運動の出発点になっています。

 A行政にたいして参加、提案型で

 共通する教訓の二つ目は、行政にたいして、参加・提案型の運動を展開し、実際に行政を動かしていることです。

 新潟県燕市では、県の地場産業支援施設の建設計画にたいし、「ハコモノはいらない」との意見が保守系議員から出るなか、日本共産党県委員会は「21世紀の県産業発展に不可欠。単なるハコモノにせず、地元業者の経営を直接支援するソフト面の強化を」との提言を発表し、議会多数の支持を得て実現させました。たいてい 「ハコモノはいらない」というのは、日本共産党のいわば“おはこ”なのですが、この場合は単純ではありませんでした。現在この施設は、地域の半数の業者に利用されており、建設的な提案で議会をリードした日本共産党にたいして、市長や業界団体からも厚い信頼が寄せられていると聞きました。ここでは、市の地場産業振興プランの策定会議に、民商の代表もメンバーとして参加し、中国の視察、それをもとに「燕の業者がバラバラではいけない、力を合わせよう」と立ち上げた共同受注グループなどで奮闘しています。

 埼玉県川越市では、仕事不足で自殺者まで出ている建設職人の現状を踏まえ、埼玉土建が小規模工事業者登録制度、住宅リフォーム助成制度の創設を要望し、実現させました。現在、年間2億円を超える仕事が市内の小規模業者にまわり喜ばれています。

 長野県では、民商が中心となって、ダム建設中止河川の現地調査を行っています。ダムなどの大型公共事業に邁進(まいしん)する一方で、河川改修が長期間放置され、災害の危険にさらされている個所が相当数あるということがわかりました。「脱ダム」政策で建設業者の仕事が減るもとで、民商のみなさんが逆に、河川の危険な個所を改修する調査活動に自ら取り組んで、「こういう分割発注なら小さな業者にも仕事になる」という提案を県に行うという、新しい「仕事おこし」運動が始まっていました。

 大阪府八尾市、守口市などでも、民商や市職労の代表が、市の産業振興会議にメンバーとして参加し、積極的に提案を行って、行政としての全事業所調査や中小企業支援策を実現させています。

 いずれも、行政にたいして提案型の運動を行っていることが共通しています。これは法則的な努力方向ではないかと思います。なぜなら、多くの自治体にとって、雇用の創出、地域経済の活性化策をつくり実践すること、また成果をあげることは、新しい模索中の課題であり、同時に、地域全体の経済の活性化をはかる場合、自治体の役割を抜きに、一団体などではその達成を図ることはできないからです。

 こうした提案を真剣に受け止め、地域住民、中小業者、生産者に役立つ施策を練り上げ、推進している自治体労働者が、どこでもとても生きいきしていたことも印象的でした。

 高知県土佐町を訪ねたとき、低農薬・循環型の農業振興をはかるための中核施設として、牛糞から堆肥をつくる施設があったのですが、そこで日夜、どうすればいい堆肥ができるのかと研究・奮闘している若い町の職員のお話しぶりは、本当に生きいきしていました。

 埼玉県川越市で、先ほど紹介した、地元建設業者のまさに命がけの要望にこたえるために、小規模工事業者登録制度を現行の法制度の枠内でどうすればできるのかを、「一生懸命徹夜して考えたんです」と語ってくれたベテランの市の職員の方々も同様でした。

 みなさんご苦労されているのですが、とても明るくて、住民や業者、生産者に役に立つ仕事をしているというやりがいを感じながら仕事をされていることが伝わってきました。福祉切り捨ての最前線に立たされでいる職員とは、ずいぶん違うなと感じました。

 Bキーワードは「地域」 − 労働組合、民主団体、日本共産党がそれぞれの役割を発揮、連携して

 三つ目に、各地の運動、たたかいにふれて感じるのは、あらゆる運動を前進させるキーワードが「地域」だという点です。

 たとえば、大企業のリストラ攻撃とのたたかいも、職場でのたたかいとあわせて、地域に与える影響を住民とともに考え、企業に責任ある行動を求める運動に発展してこそ大きな力となります。このことは、埼玉のボッシュ、徳島のJTの子会社でのたたかいなどに示されています。また、子どもと教育を守る運動でも、不況やリストラが教育を受ける権利を奪い、深刻な就職難が将来の夢を描けなくさせるもとで、地域のなかに仕事と雇用を生み出す運動への発展が探求されています。教職員組合の先生方に聞きましたら、「もう地域の企業回りをしているだけでは限界だ。どう能動的に仕事を生み出すのかというところまで、教育労働者も考えなければならない」と話されていました。増え続ける不安定雇用労働者の組織化を進めるためにも、特に派遣労働者はいつ職場からいなくなるかわからない状況に置かれている人たちですから、やはり地域での取り組みがその条件を広げると思います。

 地域のなかで、さまざまな団体が、それぞれの持ち味を生かし、力を合わせることが、雇用と地域経済を守る運動を豊かに発展させる土台になります。新婦人が全国で展開した家族からの「サービス残業」申告運動が職場の違法行為をやめさせる力になり、学校・公園ウォッチング運動が地元建設業者の仕事の拡大につながるなど、すでに貴重な成果が生まれています。地域金融を守る運動が、信金・信組つぶし、りそな危機などのもとで進んでいますが、そのなかで、金融労働者と中小業者の新しい交流が広がっています。いままでは、「金融労働者はたくさん給料をもらっているんだろうな」という目でしか見ていなかった業者も、いろいろ交流が進むなかで「そうではない」とわかり、金融相談活動に発展するなどの経験も生まれています。また、日本共産党議員団が、切実な要求を議会で取り上げ、たとえば京都の借換融資制度の実現など、地域の中小業者の経営の守り手となっていることもたいへん心強く感じました。

三 雇用と地域経済を守る取り組み、運動を全国的な流れにするために

 以上見てきた、雇用と地域経済を守る取り組み、運動の新しい芽を、全国的な流れにするために2点提起したいと思います。

 1 政府、自治体、企業にたいする要求を掲げて

 一つは、雇用と地域経済を守るために、政府、自治体、企業にたいして、以下の要求を掲げて全国各地で運動を起こすことです。

 〈政府にたいして〉

乱暴なリストラから、雇用と人権を守る「解雇規制・雇用人権法」の制定、中小企業の経営を守る下請二法の徹底を
長時間労働、「サービス残業」をなくして、雇用を増やす本格的な取り組みを
教育、福祉、医療、防災など、国民生活に必要な分野の人手不足を解消し、雇用の拡大を
自治体の雇用創出の取り組みを支援する財政的な枠組みを

 いま、地方自治体の雇用創出の取り組みにたいして、国の財政的支援の枠組みはほとんどありません。しかし、いろいろな挑戦が始まっているいまこそ、国が財政的な支援をする枠組みをつくる必要があるのではないかと思います。

 〈自治体にたいして〉

製造業、商業、農林水産業など、地域経済、産業の本腰を入れた実態調査を
住民の英知を幅広く結集して、街づくり、雇用、産業政策の練り上げを
地域から企業に社会的責任を果たすよう求める行動を

 実態調査については、東京都墨田区や大阪府東大阪市などで、すでに先進的な経験があります。たとえば東大阪では、2年間かけて、市内3万2,000の全事業所調査が実施されました。零細業者を除かないというのがカギだそうです。市の課長職以上の幹部職員580人が直接事業所を訪問して聞き取り調査を行いました。こうした自治体では、「中小零細企業は、ただ小さくて弱い存在ではなく、すばらしい技術や技能を持つ誇れる存在だということがわかった」「それなのに、行政の施策があまりにも不十分だったと気づいた」など、幹部職員からも認識が改まったという声が共通して出され、それが出発点になってさまざまな施策に生かされています。こうした実態調査をぜひ要求する必要があります。

 〈企業にたいして〉

 ▽雇用と地域経済にたいする責任ある行動を

--- 労働組合、自治体、関係者との協議なしに、リストラ計画のマスコミなどへの一方的公表はしないこと
--- 労働基準法、下請二法など現在あるルールの厳守を

 実は、アイワ岩手の工場閉鎖は、そのことが発表される前日まで、地元町長と社長の間で工場拡張の協議が行われていました。翌日、工場閉鎖が突然発表されて、町長は「度肝を抜かれた」とおっしゃっていましたが、こんなことは外国では通用しません。そこからまず変えさせるということが大事ではないでしょうか。

 〈政府と企業にたいして〉

 ▽若者に仕事を−政府と企業は責任を果たすべき

 若年層の失業率が1割に達し、フリーターが417万人と激増していることは、若者の自立と成長を妨げるだけではなく、少子化の新たな要因ともなり、日本経済の競争力の源泉である技術・技能の継承・発展にも影響を与えかねない、日本の未来がかかった問題として、大いに取り上げたいと思います。政府と企業の責任、とりわけ若者の正社員としての雇用を減らし続けている大企業の責任を重視することが重要だと思います。

 2 運動の継続発展のために、全国的なネットワークを

 もう一つは、各地の運動を交流するための全国的ネットワークの充実です。雇用と地域経済を守る課題は、自治体にとっても、運動を進める側にとっても、新しい挑戦という面が強いものです。それだけに全国の生きた経験、教訓を交流し合うことが大きな力となります。本集会を機に、情報交流がより豊かで活発なものとなるようお互いに努力したいと思います。

四 国と地方の政治を変えるたたかい

 最後に、雇用と地域経済を守るたたかいは、企業の社会的責任を問い、「ルールなき資本主義」を正し、国の予算の使い方を転換することに通じるたたかいであり、また地方政治の新しい希望ある流れを広げるたたかいでもあります。そうした大きな展望も持って、日本列島津々浦々で共同して、この運動を起こそうではありませんか。

(やました よしき)

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