日本共産党 参議院議員 党副委員長
山下よしき

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暮らしも平和も破壊 2025年度予算可決 山下氏が反対討論

予算委員会 2025.3.31
速記録 動 画

 

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(写真)反対討論に立つ山下芳生議員=31日、参院本会議

2025年度政府予算が31日、参院で修正、可決を経て衆院に回付され、衆院本会議で同意され、成立しました。

同日の参院予算委員会で25年度の高額療養費の負担上限引き上げを見送る修正案を全会一致で可決。修正部分を除く予算案は自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決しました。

参院本会議では、修正部分を含む25年度予算案全体が採決に付され、自公と維新が賛成し、日本共産党と立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、沖縄の風などが反対しました。

修正部分を含む予算案は衆院に回付され、参院で修正された部分について同意するかどうかが衆院本会議ではかられ全会一致で同意しました。衆参両院で修正された予算案の成立は現憲法下で初。

参院本会議で日本共産党の山下芳生議員が討論に立ち、予算反対理由の第一として「予算の前提である政治への信頼が大きく崩れているからだ」と強調。自民党の裏金事件への無反省、首相の商品券10万円分配布などを批判し、商品券の原資である疑いのある官房機密費の支出公開や企業・団体献金の全面禁止を求めました。

第二に「物価高騰の特効薬である消費税減税・廃止に背を向け、暮らしに冷たい一方、大企業への大盤振る舞いが過ぎる」と指摘。消費税の逆進性の実態を明らかにし、大企業向け減税・優遇にメスを入れ、超富裕層への応能負担を徹底する税制改革を行えば消費税の減税が可能だと強調。ラピダスなど半導体企業への10兆円以上の公的支援は重大だと批判しました。

第三として軍事費の突出が暮らしも平和も壊す予算となっていると指摘。コルビー米国防次官候補の要求通り「軍事費をGDP(国内総生産)比3%以上」にすれば軍事費は年18兆円になるとして「平和も暮らしも壊す大軍拡の中止を求める。外交の力で平和をつくる取り組みこそ政治の責任だ」と強調しました。

高額療養費負担上限引き上げを見送る予算修正は「がんや難病に苦しむ方々の声に応えるものであり賛成だ。『凍結』ではなく撤回し、上限引き下げを」と求めました。

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○関口昌一議長 山下芳生君。

○山下芳生 私は、日本共産党を代表して、二〇二五年度予算案に反対の討論を行います。
反対理由の第一は、裏金事件への無反省、石破総理の商品券配付などにより、予算の前提である国民の政治への信頼が大きく崩れているからであります。
昨年の総選挙では、自民党の裏金事件に対する国民の怒りが爆発し、自民、公明は衆議院で少数与党となりました。ところが、自民党は裏金事件について全く反省していません。
総選挙後、参議院政治倫理審査会に二十七人の裏金議員が我も我もと弁明を申し出てきました。これまで二十六人の議員が弁明し、質疑が行われましたが、個々の議員が知らぬ存ぜぬで済まそうとしているだけでなく、自民党全体が裏金事件の真相解明に背を向け、幕引きを図ろうとしていることが明らかとなりました。
さらに、政倫審で、還付金の収支報告書不記載について違法性を認識していた秘書に派閥事務局が違法行為を強要したという重大な証言がありながら、石破総理は党総裁として調査することを拒否しています。
このように、総理始め自民党全体が裏金事件に無反省であることが、収支報告書にも書かれない新たな裏金配りとも言うべき十万円の商品券配付の根っこにあることは明らかであります。
総理は、商品券配付について、私費で賄い、政治活動ではない、だから法違反ではないと繰り返しますが、政治資金規正法は、私費であろうがポケットマネーであろうが、政治活動に関わって政治家個人に寄附することを禁止しています。また、総理公邸で、総理、官房長官、副長官が国会議員と会食し、政策と選挙の話をすれば、誰が見ても政治活動です。総理の行為は完全にアウトです。
商品券配付が歴代自民党政権の慣行であり、原資として官房機密費が使われた疑惑も浮上しています。
総理は、商品券配付について自らの非を認め、裏金事件の真相を解明するとともに、裏金中の裏金である官房機密費の支出の実態を国民に公開すべきです。それができないのなら、民主政治を担う資格がないことは明らかであり、速やかに退陣すべきであります。
裏金事件を始め政治と金の問題の根本には企業・団体献金があります。日本共産党は、経団連による毎年の自民党の政策評価と企業献金のあっせんによって、消費税率が連続して引き上げられる一方、法人税率が四〇%から二〇%台に引き下げられるなど、企業献金が政治をゆがめている具体例の数々を明らかにしてきました。企業献金は公開してもその本質である賄賂性は変わりません。企業・団体献金の全面禁止こそ金権腐敗政治の根を絶つ決定打であり、党派を超えて進むべき道であります。
予算案に反対する第二の理由は、物価高騰対策の特効薬である消費税の減税、廃止に背を向けるなど、国民の暮らしに冷たい一方、大企業への大盤振る舞いが過ぎるからであります。
自民党政治の下で、失われた三十年と言われる日本経済の長期の停滞と衰退が続いている上に物価高騰が襲いかかり、国民生活は極めて困難になっています。
所得税の課税最低限である百三万円の壁を引き上げることは、生計費非課税の原則から当然です。しかし、日本共産党が独自に試算した勤労世帯の年収別税負担率によると、年収一千万円未満の世帯では所得税よりも消費税の負担の方が大きい、つまり、中間所得層も含めて消費税が最も重い税金になっていることが浮き彫りとなりました。さらに、年収に応じて税金の負担率が大きくなる税の累進性が、消費税の逆進性によって、年収八百万円以下の世帯ではなくなっていることも明らかとなりました。
消費税の減税は、物価高騰対策としても最も効果が大きい上に、税制のゆがみをただし、格差を是正する点でも急務であります。
消費税減税の財源はあります。一つは、安倍政権以来の年間十一兆円に上る大企業向けの減税優遇にメスを入れることです。参議院での我が党の質問に、総理も、この間の法人税減税について、賃上げや下請の支払が増えることを期待したが意に反しそうならなかったと、効果がなかったことを認めました。実際、大企業向けの研究開発減税による二〇二三年度の減税額トップは、トヨタ自動車の八百二十三億円で、全体の八・七%を占めています。トヨタは三十兆円を超える内部留保をため込んでおり、こんな減税は必要ありません。
いま一つは、超富裕層への応能負担の徹底です。金融所得に対する税率が低いために所得が一億円を超えると所得税の負担率が下がる一億円の壁を取り払うべきであります。
こうして大企業向けの減税優遇にメスを入れ、超富裕層への応能負担を徹底すれば、消費税五%への減税は可能です。
総理は、我が党の質問に、各国の消費税減税の効果について知識を持ちたいと述べました。しかし、食料品や水道光熱費、ガソリンなどあらゆる消費に課される消費税の減税こそ、今求められる強力な物価高騰対策であることは明らかであります。総理に求められているのは、知識を持つだけでなく、実行することであります。
消費税減税に背を向ける一方、ラピダスなど半導体企業に十兆円以上の公的支援を行おうとしていることは重大です。かつて、半導体メーカー、エルピーダメモリの破綻で公的資金二百八十億円が毀損した際、政府は誰も責任を取りませんでした。同じことを繰り返すことは許されません。
熊本県に進出した台湾の半導体企業、TSMCの工場の処理水が放水されている河川で、海外で規制されている有機フッ素化合物PFASの濃度が上昇したことが確認されました。政府として、全国の半導体工場を調査し、住民の健康と環境を守るための対策を取ることを強く求めます。
反対理由の第三は、軍事費の異常な突出が暮らしも平和も壊す予算となっているからであります。
新年度予算案は、軍事費、防衛関係費だけが前年度比九・五%増と突出し、社会保障費、文教科学振興費、中小企業対策費は、物価上昇率以下で実質マイナスです。まさに、大軍拡が暮らしを押し潰す予算となっています。
五年間で四十三兆円という安保三文書に基づく大軍拡計画によって、軍事費は、二〇二二年度五・四兆円から二〇二五年度八・七兆円へと三・三兆円も急増しています。このまま進めば、二〇二七年度には十兆円に達することが確実です。その中身も、長射程ミサイルの配備など、敵基地攻撃態勢の構築であり、軍事対軍事の悪循環を招き、戦争の危険を増大させるものであります。
しかも、石破総理は日米首脳会談で、二〇二七年度より後も抜本的に防衛費を強化するとトランプ大統領に約束しました。その後、コルビー米国防次官候補は、日本の防衛費をGDP比三%以上に引き上げるべきだと公然と要求しています。三%といえば年十八兆円の軍事費となり、暮らしも財政も破綻します。
日本共産党は、平和も暮らしも壊す大軍拡の中止を求めます。外交の力によって東アジアに平和をつくる取組こそ政治の責任です。
最後に、高額療養費の上限額引上げを見送る予算修正は、がんや難病に苦しむ方々の声に応えるものであり、賛成です。凍結でなく撤回し、むしろ上限額を引き下げるべきであります。
声を上げれば政治は動く。日本共産党は、選択的夫婦別姓、学校給食無償化、学費値上げ中止と値下げなど、国民の切実な要求を実現するために奮闘するとともに、国民の要求を阻んでいる大企業、財界中心、日米同盟絶対という自民党政治のゆがみをただすために全力を尽くす決意を表明し、討論とします。(拍手)