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朝もやの駅のホームに立つ男

2003/08/03

 私は週のはじめ、東京の党本部に向かうため、自宅近くの駅から朝5時台の列車に乗ります。5月のことでした。まだ夜明け前の薄暗いホームに、見覚えのある長身のシルエットを見つけました。近づくとそれは、NTTではたらくKさんでした。

 「えらく早いですね。どうしたんですか」とたずねると、「いまから出勤です」とKさん。「出勤にしては早すぎませんか」というと、「名古屋に出勤するんです」。思わず「えっ?」と声を上げてしまいましたが、私はすぐにピンときました。

 NTTは一昨年、50歳を超える労働者を全員退職させ、給料を3割カットしたうえで、あたらしくつくる子会社に再雇用する、という前代未聞の大リストラ計画を発表し、強行しました。対象となる労働者の数はなんと11万人にも上りました。

 「これが何十年も会社に尽くしてきた労働者に対するNTTのやり方か。納得できない」と、Kさんたちは退職に同意することを拒否し、NTTに残ってがんばる道を選んだのです。

 ところが、NTTはKさんたちに「広域配転」を命じてきました。九州ではたらいていた人を大阪に飛ばし、大阪ではたらいていた人を名古屋に飛ばす、という具合にです。それでKさんは名古屋勤務になったのでした。

 「名古屋ではどんな仕事をしているんですか」と聞くと、Kさんは、「私もこれまでは技術畑一筋でしたが、名古屋では営業の仕事をしています。マンションの居住者にBフレッツ加入をすすめています」と教えてくれました。おかしな話です。技術畑の人間に、まったく土地カンのない場所で営業をやらせるとは。なんの合理性もない、私に言わせればただの嫌がらせです。

 おなじ資本主義の国でも、ヨーロッパではこんなやり方は通用しません。そもそも50歳を超える労働者を一律に退職させるなど、あきらかに年齢による差別です。そして、それに従わない者を、見せしめのために遠隔地に飛ばすとは人権侵害です。これが日本最大の企業、しかも株式の半分を政府が持っているNTTで行われているリストラの実態なのです。

 日本社会の遅れの現れです。こんなことでは労働者の意欲も失われ、企業の発展の障害にもなるでしょう。

 それでも、Kさんたちは明るくたかっています。あたらしい場所で、あたらしい仕事に一生懸命とりくんでいます。50歳を過ぎての単身赴任や新幹線通勤はとてもきついけれど、仲間どうし連絡を取りあい励ましあってがんばっています。

 不当な扱いを裁判に訴えるとともに、先日は、スイスのジュネーブまで行って、国連人権委員会やILOに、自分たちの問題を告発してきたそうです。「どちらも私たちの話をよく聞いてくれました。そしてとても驚いていましたよ」。Kさんは笑顔で報告してくれました。

 すごいことです。私が「広域配転されたら、ついでにもっと広域に、世界に飛び出してたたかってるんですね」と冗談っぽくいうとKさんは大笑い。そしてきっぱりいいました。「こんなこと許したら大変な社会になる。絶対に勝ちますよ」。

 不当なことには声を上げてたたかう。それこそ人間の歴史をすすめる原動力です。新大阪でKさんとがっちり握手を交わし、私は東京行きのひかりに乗ったのでした。

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