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労働者の雇用と権利を守ろう
企業に社会的責任を果たさせよう

リストラとのたたかい 教訓と展望

本文は2002年8月9日に五区労働者日本共産党後援会結成総会でおこなった山下よしきさんの講演録を加筆し、後援会事務局で編集したものです。

 5区労働者後援会の結成棒会に、お集まりいただいてありがとうございます。

 去年(2001年)の暮れに候補者になって10カ月。小泉内閣を解散・総選挙に追い込み、小選挙区で日本共産党の議席をかちとるためにがんばっています。

 今日は、日本共産党がリストラに反対し、雇用を守る国民的たたかいを提起してから1年経ちますので、その成果と教訓を紹介し、これからのたたかいに役立てていただければと思っています。

 去年の9月に党は、リストラ反対・雇用を守ゑ闘争本部をつくりました。本部長は市田書記局長です。私が事務局長です。

 一部上場企業だけで55万人も 地域、日本経済に大きな打撃

 去年の夏ぐらいから電機大手を中心として、リストラ計画が相次いで発表されました。これは、未曾有の規模です。今年の3月まで闘争本部は、毎日、リストラ計画を新聞から集約していました。非常に暗い仕事です。昨日は、どこがなんぼ減らした。今日はどこがなんぼ滅らす。去年の夏から3月までの間で、一部上場企業だけでも、55万人のリストラ計画になっています。これだけの規模ですから、その影響というのは、直接対象となる労働者だけではなく、地域経済にも大きな打撃を与えます。

 例えば、全国で120カ所の工場閉鎖が計画されています。群馬県前橋市では、ダイハツ車体の工場がなくなります。全部大分県に移転するんです。そうすると前橋市の工業出荷額の14%が一気になくなります。

 それぐらい大きな影響を地域経済に与えますし、当然、関連中小企業の倒産ですとか商店街にたいする影響もでます。

 さらに言いますと日本経済は、今、国民の所得が落ち込み、消費が落ち込み、生産も落ち込むという悪循環に陥っています。

 こういう日本経済の連鎖的な縮小の背景に、小泉内閣による社会保障切り捨て、国民負担増とともに、大企業の大規模なリストラがあることは間違いないと思います。

 ですからリストラとのたたかいというのは、労働者の雇用を守るたたかいだけではなくて、地域経済を守り、日本経済を立て直す大義あるたたかいなんです。この立場から、職場でたたかうと同時に、国民的なたたかいで反撃をしようじゃないか。日本共産党が先頭にたってたたかいを組織しようじゃないか、というよぴかけをおこなったわけです。

 社会的反撃がはじまった リストラ攻撃の2つの弱点

 よびかけから1年たって、全国の職場や地域で、たたかいが大きく広がっています。攻撃を跳ね返す貴重な成果が数々生まれています。

 私ほこの1年間、リストラ攻撃に対する社会からの反撃がはじまった。国民的たたかいに発展しつつあるということを実感しています。

 具体的な事例を紹介する前に、全国のたたかいに共通する教訓についてお話をしたいと思います。

 それは、相手の攻撃の弱点を突いたたたかいをやっているということです。私たちは今の大企業のリストラ攻撃には、2つの弱点があると思っています。

 労働者保護法制をじゅうりん

 一つは、労働者保護法制をじゅうりんしているという問題です。よく日本は「ルールなき資本主義」といわれますけれども、どっこい、日本にも労働者が人間らしく働くためのルールはあります。憲法がありますし、労働基準法をはじめとする労働法制や判例法があります。また、職場のなかには、労資の労働協約もあります。ところが今の大企業のリストラというのは、こういうルールをふみにじった無法なやり方が特徴です。

 一番典型的だと思うのは、NTTの11万人のリストラです。50才をこえる労働者を一旦退職させて、賃金を3割カットして、新しくつくった子会社に再雇用する。

 これは、60才を下まわる定年を定めてはならないという「高齢者雇用安定法」、60才定年法とよばれていますが、事実上これに違反します。50歳を越えたらみんな辞めさせるわけですから。それから、企業分割にともなう労働者の移籍については、労働条件を下げてはならない、という「労働契約承継法」という法律がつくられましたが、これもかい潜っているわけです。こういう数々のルール無視を、日本最大の企業、しかも国が株を半分もっている企業が堂々とやっている。ここに異常さがあります。

現行法 判例法

退職転籍の強要は違法

  • 「転籍や退職の勧奨行為は、限度をこえれば違法な権利侵害となり、損害賠償の支払い義務が生じる」(1980年7月10日、最高裁第一小法廷判決・下関商業高校事件)
  • 民法第625条 別会社への転籍は本人の同意がなければできない(「使用者は労務者の承諾あるにあらざればその権利を第三者に譲渡することを得ず」)

労働条件明示なしの転籍は無効

改定労基法第15条 労働契約を結ぶさい契約期間、就労場所、業務に関する事項、労働条件などを明示しなければならない。

パートの雇い止め解雇は無効

契約が反復更新されている場合、最高裁の考え方は「有期労働契約が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になった場合には、解雇に関する法理が類推適用される」(1974年7月22日、最高裁第一小法廷判決・東芝柳町工場パート解雇事件)

 企業の社会的責任の放棄

 二つ目の弱点は、企業の社会的責任を放棄しているという問題です。

 日本経済の基本を握り動かしているのは、大企業です。私たちは、中小企業は日本経済の主役だといいます。たしかに、数の上でも、技術や技能のうえでも大きな役割を担っています。しかし、日本経済の基本を握り動かしているのはやはり大企業です。そういう大きな影響を与える大企業には、それにふさわしい社会的な責任があるんだ。ただ、自分が儲かれば、労働者のくらしや、地域経済がどうなろうが知ったことではない、というのほ、通用しないんだ。ヨーロッパでは、こういう考え方が当たり前になってきています。

 社会的責任を果してこそ企業も発展する

 去年の7月にEUの政府にあたる欧州委員会が、企業の社会的責任についての政策提案を発表して、討論をよびかけました。その根本にある考え方というのは、企業は株主のためだけにあるのではない。従業員にたいする責任も取引関連会社にたいする責任、地域社会にたいする責任、環境にたいする責任、人権にたいする責任をもっている。そして、そういう責任を果たしてこそ、企業も経済もまともな発展が可能となるんだという考え方であります。

 こういう考え方にもとづいて、英国では、すでに2年前から企業の社会的責任担当大臣という独自の大臣がつくられて、色々と仕事をしています。デンマークでは、それぞれの企業が社会的責任をどれぐらい果たしているか、0点から100点まで格付けする機関ができまして、労働者をどんどん首切りしたり、下請けを使い捨てたりしている企業は点数が下がる。そうすると株価も下がる仕掛けができているそうです。

 日本では残念ながら、そういう仕掛けはありません。ひどい場合は、新聞発表で初めて自分が首を切られることを知る。自治体のトップも新聞で地域の工場がなくなることを知る。本当にひどい社会的責任の放棄がまかり通っています。

 しかし、労働者保護法制をじゅうりんする、社会的責任を放棄する、ということは、彼らの弱点でもある。そこを突いてたたかうことが大事だということが、この間の全国のたたかいの教訓です。

 退職の強要をはね返す

 具体的な成果を紹介します。先ず、職場でのたたかいですけれども、私たちは、この間、「職場にルールの確立を」を合言葉に、労働基準監督署などの公的機関を活用したたたかいをすすめてきました。二つの大きな前進がありました。

 一つは、「希望退職」や転籍の強要を跳ね返すたたかいであります。ご存じのように、最高裁の判例では整理解雇は自由にできない、合理的な理由なしに勝手に首切りはできないんですね。ですから、大企業が人を減らす時にやる手法は「希望退職」。聞こえはいいのですが、しかし、自分から望んで辞めていく人はひとりもいません。

 「変身大学」の名で人権侵害

 松下電器では、50歳を越えた労働者を対象に肩たたきがやられて、それでも残りますと、言った人には「変身大学」に行ってもらう。工場でゴミを拾わせるとか、松下の社訓をなんべんも復唱させるとか、仕事に関係ないことをやらせる。イジメ、人権侵害ですね。これは、さすがにひどすぎると、連合の組合にも提起してやめさせました。次に待っていた「変身大学」の研修は、コンピューターをマスターせよ、英会話をマスターせよ、というもの。永いこと現場でがんばってきて、50歳を越えて英会話をマスターせよ、パソコンをマスターせよ、といわれても、なかなかついていけるものじゃありません。それでもそれをやらせて、「あァ自分には能力ないんだなぁ」と思わせて、こんな嫌な思いをするんなら、退職金チョット上積みされる今のうちに辞めとこかなぁと、いう気持ちにさせる。松下電器の場合13000人がそういう形で辞めていった。

 私は、「希望退職」というのは、労働者から希望を奪って退職に追い込むのが本質だと思います。

希望退職・転籍強要をはねかえす4カ条

ルールにもとづいて堂々と

「私はこの会社に残ります」・・・このひと言が、あなたと家族の生活を守るたしかな力です。転籍(移籍)とは、いまの会社を解雇されることですから、法律は「本人の同意」を厳格に決めています。これが社会のルールです。

「イエローカード」で警告を

それでも会社は、「同意」を迫ってくるでしょう。そのときは、「これ以上の説得や面接はやめてください」ときっぱり。

「レッドカード」をだしましょう

この“警告”を無視して「『同意』するまで面談をやる」「応じなければ職場はない」などと迫れば違法です。「労基署か弁護士に相談します」とレッドカードをだしましょう。

労働基準法は「不利益扱い」を禁止 一人で悩まず、みんなで相談を

そうはいっても「後でどうなるかが心配だ」と悩んでいる方も多いでしょう。そんなときのために、労基法には「労働者を守るルール」があります。

悩んでいるのはみんな同じです。職場の仲間と相談しましょう。「3人よれば文殊の知恵」。知恵も勇気も出てきます。日本共産党も応援します。

 限度を超えた退職勧奨は違法

 転籍というのも本人同意が必要ですが、これも本人に同意させるために手段を選ばないやり方が行われています。

 そういう攻撃にたいして反撃が起こっています。住友金属和歌山製鉄所では、この間、9,000人の出向者全員を出向先に転籍するという攻撃をかけてきました。

 転籍になると貸金が8〜6割になるそれを本人に同意させるために何べんも呼び出しをする。そういう中で、41歳の労働者が日本共産党の市委貞会事務所に相談に来た。「生活相談所」の看板を見て飛び込んだそうです。その方の話を聞きますと、すでに、4回も呼び出されて説得されてきた。しかし転籍すると貸金が6割になる。月々の総支給額が17万円になる。子どもが生まれたばかりで、住宅ローンが1500万円残っているので、とても生活できない。転籍に同意する判子は押したくないのですが、どうしたらいいのでしょう、というのです。よし、いっしょにがんばろうと、住金の党委員会が小沢和秋衆議院議員に相談、小沢議員が国会で、この問題をとりあげました。

 厚生労働省に「本人に意思がないのにくりかえし退職を迫る、転籍を迫ることは違法ではないか」と追及。労働基準局長が、「限度を越えた退職勧奨は違法だ」と明言をしました。これをすぐビラにして住金の職場で配布しました。一週間も経たないうちに管理職が、その労働者に謝罪をして、転籍は撤回する、住金本体で仕事してもらう、ということになった。管理職は、「実は気の毒やなぁと思っていた」と言ったそうですが、それなら、最初からするな、と言いたい。この成果が力になって住金では、転籍に応じないでがんばった人が100人も生まれました。

「整理解雇4要件

大量の人減らし・整理解雇には4要件が必要

企業経営上必要性による解雇をする場合
  1. 「整理解雇の必要性」
    人員整理をしなければ、、どうしても企業が倒産するなど経営危機が差し迫っているのか。
  2. 「解雇回避努力」
    新規採用をやめるとか希望退職を募るなど会社が経営上の努力をしたか。
  3. 「解雇手続きの適正」
    労働組合や労働者に十分説明をして労働者の納得を得る努力をしたか。
  4. 「人選の適正」
    誰を解雇するのか基準がはっきりしていて、その基準が適正で、基準の適用が正しくされているか。

「4つの要件を満たしていない場合、その整理解雇は無効」(1979年10月29日、東京高裁判決・東洋酸素事件)

 「【希望退職】 『転籍』跳ね返す4力条」を武器に

 小沢議員の質問ポイントを「しんぶん赤旗」が「希望退職、転籍強要はやめさせられる」という特集(2002年1月29日付)で紹介しています。

 1970年代の最高裁の下関商業高校事件判決。これは、いまでも生きているということを言わせたんです。退職勧奨は、5項目の判断基準を超えると違法となる。一つは、出頭を命じる職務命令が繰り返される。つまり、なんべんも呼び出すのは、ダメということ。二つ目に、退職する意思がない労働者に新たな退職条件を提示することなど、特段の理由もなしに、ただ同じ事を言うのもダメ。さらに、面接の際、労働者が、弁護士などの立会人を要求すれば認めなければならない、などです。こういうことを全部クリアしなければ「限度を超えた」退職勧奨となり違法となるのです。

 私たちは、これを生かして「希望退職、転籍をはね返す4カ粂」というものにして、全国の職場でがんばっています。これまでも、退職勧奨はね返す何力粂というものがありましたね。一回目呼ばれても「辞めません」、二度目に呼ばれても「辞めません」。要は、根性だして辞めません、と言おうというものでした。それに加えて、今度は、「くり返し呼び出すことは法律違反になりますよ」と言える。これだと、仮りに根性の無い人でもがんばれる。新たな「武器」として活用したいと思います。

公的機関の活用

労働基準監督署や都道府県労働局へ

「希望退職」や転籍の強要をはじめ労働者保護法や判例法に反する行為にたいしては、労働組合に訴えるとともに、公的機関に申告し、是正をもとめることができます。

労働基準監督署には、法違反には申告、判例法違反には指導を求めることができます。労働基準法で、労働者が労働基準監督署に申告したことを理由に会社が不利益を与えることを禁じています。

2001年10月に思考されたのが「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」。解雇、配点、出向などの争いで個人として各都道府県にある労働局に申し立てることができます。これをうけて労働局長は、助言、指導、紛争解決機関にあっせんします。

 遠隔地配転にも反撃

 NTTでは、子会社への転籍か、遠隔地への配置転換かの選択を迫る攻撃を加えてきました。子会社に行かなければ全国どこへ飛ばされるかわからないぞ、といういわば脅迫です。これにたいしても反撃が開始されています。

 たとえば、介護の必要な父親と小学生の子どもをもつ山口県の女性労働者が、大阪での長期研修を命じられましたが、改正された育児・介護休業法を活用して反撃しました。育児・介護休業法には、育児や介護の必要な労働者にたいする「配慮義務」が規定されているのです。

 山口県労働局への指導要請や国会での追及も力になり、とうとう遠隔地配転を撤回させる成果をかちとりました。その後、NTTでは同様の遠隔地配転を次々撤回させています。

 こうして、既存のルールを駆使してたたかう。相手側が新しい攻撃を加えてきたら、さらに、知恵を発揮して反撃するというたたかいの発展があると感じています。

 サービス残業根絶で前進 一人の訴えでも行政はうごく

 二つ目は、サービス残業を根絶する たたかいの画期的な前進です。

 今のリストラというのは、大量に人減らし、首切りをすすめる一方で、残った労働者には、長時間・過密労働、ただ働きを強いています。日本共産党が永年、国会で追及してきた結果、去年の4月に厚生労働省がサービス残業根絶の通達をだしました。

 この通達を活用したたたかいが全国にひろがっています。口火をきったのは、東京の沖電気という企業です。去年までは、どんなに残業しても月5万円しかださない、「疑似裁量労働制」というシステムが導入されていました。実際には、5万円分はるかに超えて、残業している労働者がたくさんいた。まさに、・ただ働き強制システムです。沖電気の党支部が、こんなことはなくそうじゃないか、と残業日誌をつける運動をよびかけた。たった一人の労働者の残業記録で労働基準監督署が企業に立ち入り検査をし、このシステムは是正されました。

 厚生労働省の通達は、大変大きな力になってきている。その後、三菱電機伊丹、大阪のシャープや住友生命などで、サービス残業の是正と未払い貸金の支払いが大規模におこなわれました。毎日新聞は、一面トップで特集を組みました。そして、7月15日、東京の千代田区、中央区、文京区を管轄している中央労働基準監督署。大企業の本社が一番集中しているところにある労働基準監督署ですが、ここが過重労働とサービス残業を改善するために、企業向けの説明会をやりました。一部上場企業360社500人を集めておこなわれた内容はすごいですね。通達で大企業を指導した事例を具体的に説明してるんです。

 例えばA社、一万人以上の大企業。ここでは、自己申告で労働時間を記録していた。それが嘘だった。事実と違うと指導して数億円支払わせた。物凄い額です。こうして大企業の本社がひしめくところで本格的に行政が指導をおこなっているわけですから、全国にひろがっていくと思います。

 通達がでてから僅か1年余りですが、ここまで、たたかいがひろがってきていることを確信にしたいと思います。

家族の訴えも本人と同じ

労働基準局長が明言

労基法では、労働者に労基法違反を労基署に訴える権利(申告権)を認めていますが、家族などの訴えも、本人に準じて取り扱われます。

新日本婦人の会の井上美代会長(日本共産党参議院議員)の申し入れ(2月1日)に日比徹労働基準局長が「家族の訴えも本人と同じように扱う」と明言しています。同会は、夫などが労基法違反で働かされている実態を労基署に申告する運動に取り組んでいます。(「しんぶん赤旗」2002年3月17日付より)

 日本の資本主義は これでいいのか

 大規模なリストラの強行によって職場の中で今、何が起こっているのか。松下電器の副社長が、人事の担当者を集めた会議で反省をのべているんですね。大量の人員削減について、「より深い本質的な総括がいる。削減を繰り返してきた結果、生産力、現場の力はまさに立ち腐れ状態に陥っている。日本のモノづくりをどう残していくのかを考え、努力する取り組みを、我われは、してこなかった」。どんどん辞めさせた結果、労働者が意欲をなくし、技術や技能の継承もされなくなっている、現場のモノをつくる力が立ち腐れになっていると、減らした当事者がいわざるを得ない事態になっている。やはり、大規模なリストラは、こういうことを生む。リストラとのたたかいというのは、労働者の雇用を守り、地域経済を守り、日本経済を立て直すたたかいだと言いましたが、同時に、企業を救うたたかいでもあるということです。また、今週号(2002年8月8日付)の『週間ポスト』には、トヨタの会長であり、日本経団連の会長である奥田碩さんが、「リストラより雇用を守れ」という提言を出しています。大変まともなことをいっています。「いまの経営者は、株価至上主義というか、目先の数字をよく見せたがる。そのためには、人を減らすのが一番てっとり早い。一番安易じゃないか。」、「希望退職を募ってばかりいて、企業に将来の展望がもてず、有能な人材が逃げ出しら、先行きは、もっと不安にならないとも限らない。長期雇用で熟練度をもっと高めていくことの大切さに気づいていない」。目先の利益だけを追求し、人減らしに走る「安易」な経営で、企業の長期的利益が得られるのかと、財界トップからも危惧の声がでているわけです。

 いまの職場の中で、「日本の資本主義のあり方、企業のあり方は、これでいいのか」と、経営者や中間管理職も含めて、広く問いかけていくことが大切ではないでしょうか。

 中小企業の二面性

 さて、こういう中で、中小企業の労働運動はどうたたかうのか。また、どのようにたたかっているのか。中小企業というのは、二面性をもっています。

 一つは大企業によって収奪されている面。もう一つは、中小であっても資本家であるという面です。大企業に収奪されているという面は、外国とは根本的に違います。外国にも中小企業は多い。むしろ外国の方、ヨーロッパの方が日本より比率は高いといってもいいんですが、日本みたいに、大企業の1次、2次、3次下請け、自動車産業では、10次下請けまでありますけれども、そういう大企業の言いなりになる構造というのはありません。ところが、日本では、大企業が中小企業を潰そうと思ったら、単価を下げる、今はもう以前に比べ半分以下です。あるいは、仕事を打ち切る。生かすも殺すも、大企業の胸三寸というのが、日本の中小企業のおかれている状態です。外国でも中小企業が倒れることはあります。それは同じ市場競争の中で競争に負けて倒れるのであって、大企業によって潰されるということではありません。そういう大企業に収奪されている側面と、中小企業家であっても資本家だという二面性をもっているわけで、それにどう対応していくのか、ということを日本の中小企業の労働運動は考えなければなりません。

 この間、日本の中小企業労働運動は、そうした両面をしっかり捉えて発展していると思います。労働組合が労働者の要求とともに中小企業家の要求も含めて、親企業と正面きってたたかうとか、中小企業家との対話を中小企業の労働組合が、どんどん外に出ていってやっています。これらは、国際的に言っても日本の労働運動の積極面です。

 大阪五区も中小企業が多い地域です。調べてみると、船舶用塗料などの化学関係や武田、藤沢など大手のもとでの薬業関係の中小企業が多い。また、東淀川区は晒、淀川区は松下の下請けが多いのも特徴です。つまり、大企業で使うものを生産している中小企業が多いわけです。

 経営守る新しい労働運動  「対話と提案」で共同ひろげ

 こうした中で、淀川区の関西金属工業という会社が大変な事態になっています。従業員約100名で照明器具をつくっている松下電工の一次下請けです。これまで、松下電工からの発注が約9割を占めていました。ところが、今年になっで松下電工は、生産計画の変更で発注をストップするといってきた。実際に仕事がなくなって、今は休業状態になっています。それにたいして、全大阪金属労組と関西金属工業分会が、最近、松下電工本社に出掛け、従来どおり仕事を回すように要請をおこないました。社長が取引先大企業に<FONT size="4">モノを言えない状況のもとで労働組合が行動するというのは、非常に大事だと思います。これで、直ちに経営が好転しているわけではありませんが、教訓的なたたかいです。

 また、全国一般労組の活動は、中小企業の労組は、地域に出ていこうという万針を掲げています。そして、地域の中小企業家、中小企業経営者との懇談、対話をすすめています。毎年2〜3000名の経営者と対話をすすめているそうですが、なんでこんなことをやりはじめたのか、と聞きますと、90年代の半ばから中小企業の経営が大変深刻になってきた。

 しかし、日本経済全体が大変な事態になっている。そのうえ親企業からのいろんな圧力があるなかで中小企業の経営が大変になっているのですから、企業の中だけで、経営者を突き上げていても展望がでない、元気が出ない。いったい他の中小企業はどないなってんのやということで始めたそうです。やってみると驚いたことに、中小企業の経営者に歓迎される、対話になる。それで、中小企業経営者の要求を署名にして集め、政府に持っていくようにした。「小泉さんに提出するときは、私の名前が一番下になるようにしてだしてくれよ」と、いう経営者もあったそうですが、ここまで共同ができるようになった。しかも、この取り組みは、職場のたたかいへの波及効果も大きいそうです。たたかいに幅がでてくる。労働組合が、ひろく地域経済や日本経済を見渡したうえで、職場の中で経営者と交渉するようになると、交渉そのものに重みがうまれ、要求を突き上げるだけでなく、さらにすすんで経営改善の提案をするようになる。こうしたら製品がよくなる、こうなればもっと生産性が上がるなど、労働組合から提案をするようになる。

 中小企業の経営者というのは、経営のことを一生懸命考えている。しかし、大企業と違って相談相手がいない。どうしていいかわからない。だから、ほっといたら人減らしなど安易な道に走ることになる。そこに労働組合が、真剣に、かつ道理ある提案をするなら、まともな経営者なら取り入れるわけです。

大幅な人員削減を計画していた経営者に、事業改善提案をしたら、経営者が、「組合がいい提案をしてくれた」と、喜んで受け入れ、人員削減が撤回された経験もあるそうです。

 いま、日本の中小企業労働運動は、日本経済や地域経済の深刻な事態の中で、職場を守り、労働条件を守るために、中小企業家との共同も必要に応じてすすめるなど、視野の広いたたかいが必要なのではないでしょうか。

正社員とパートのバートの均等待遇は世界の常識です
国名 ドイツ フランス イギリス オランダ
待遇 同一事業所内でパートを理由として差別的に扱ってはならない 権利均等原則、報酬比例原則・パートから正規への優先権 パートタイム労働者に対する不利益取り扱い禁止(有期・派遣も) 労働時間の違いを理由とする差別は禁止
賃金 フルタイム労働者の賃金に時間比例した賃金 法定労働時間35時間に改正、パートの労働時間短縮・時給アップ フルタイムと同一の時間賃金 すべての面でフルタイム労働者と同じ権利
休暇 権利均等原則 権利均等原則 時間比例による同一資格 労働時間に応じて均等配分
解雇 フルタイムとして、不利な処遇を受けない

【パート・臨時労組連絡会作成資料・「しんぷん赤旗」日曜版2002年3月17日付より】

 日本の労働運動を本格的に前進させるチャンス

 最後に、純粋持ち株会社化、企業組織再編などの形で、大企業のリストラは、これからも続きます。リストラとのたたかいは長期的なたたかいです。

 同時にそれは、職場や地域で、たたかいが発展するあらたな条件を生みだしています。

 すべての労働者を対象にしたリストラ攻撃のもとで、連合労組の職場でも、怒りと要求が、かってなく噴き出し、「組合らしい組合」を求める声がつよまっています。そういう目でみるならば、いまの局面は、職場を基礎に日本の労働運動を本格的に前進させるチャンスでもあるわけです。

 また、突然の工場閉鎖で、地域経済と雇用に大打撃を受けるところでは、自治体の首長が、大企業の本社に抗議するなど、企業に社会的責任を求めるうごきが広がっています。

 職場で日本共産党を大きく

 まさに、職場でも、地域でも、「たたかいの組織者」としての日本共産党の出番です。

 とりわけ、職場のなかにどれだけ大きな党をつくるのか、これがリストラ攻撃を跳ね返す土台、労働組合を階級的民主的に強化する土台となることはまちがいありません。

 日本共産党員は、労働者、国民の利益を守るためにたたかうことで元気になります。そのたたたかいを通じて職場の労働者との結びつきを深め、人間的・階級的信頼関係を強め、入党してもらう。自分と同じ道を歩いてくれる仲間が一人増えるということは、職場の党支部にとって、何よりも感動的なことではないでしょうか。

 いま、リストラ攻撃を受けている多くの労働者が、本当に自分のこの苦しみを解決してくれる人や頼りになる力を求めています。その頼りになるものに日本共産党がならずして、誰が、いま職場のなかで頼りになるのかということです。その意味で、職場に強く大きな党をつくるという活動は、労働者の願いにもっとも応える活動であると思います。

(おわり)

日本共産党 市田忠義 宮本岳志 しんぶん赤旗
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