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生命を守ること、健康を維持すること、
なによりも人間としての尊厳を確保すること

参議院災害対策特別委員会 1999年3月24日

○山下よしき 日本共産党の山下です。

 私は、戦後未曾有の大災害である阪神・淡路大震災の教訓を現在と将来の災害、特に被災者にどうやって生かすのか、そのために知恵と力を尽くすことが現在国会あるいは政治に携わっている者の重大な任務だと考えております。

 長官は三月四日、衆議院災害対策特別委員会で、国土庁の被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会に関して、一つは被災者生活再建支援法では住宅そのものに対する対策が講じられていない、したがってこれを検討するんだと、二つ目に検討委員会は私的なものではない、省を挙げて長官の重みを持って指導するんだと、三つ目に政治家同士の意見交換、国会審議も踏まえて結論を出したい旨の御答弁をされました。私は、いずれもこれは大事な観点だと思いました。

 そこで伺いたいんですが、まず長官はなぜ住宅そのものの再建に対する支援が、対策が必要だと認識されているんでしょうか。

○関谷勝嗣国土庁長官 なかなかちょっと難しい質問だろうと思うんですが、やはり人間として、ヒューマンビーイングとして、住むところがなければ生活そのものがありませんから、何といってもやっぱり住宅が第一、重要なことではないかなと、そのように私は認識をいたしております。

 そういうようなことで、先生から御指摘をいただきましたように、被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会においては、住宅に対する支援をどうするか、例えば今は金融公庫の低利の融資であるとか延べ払いにするとかいろいろあるわけでございますが、そういうようなことも含め、あとの二つの点につきましても鋭意努力をしていきたいと思っておるわけでございます。

 政治家同士がいろいろ話し合ってやっていかなければならないと私が言いましたのは、先ほど本岡委員からも御質疑がございましたように、ああいうような問題はここの委員会で話されて、そして国会の方で主導をしていくということをやっていかなければならないと思うわけでございます。そういう意味で、私は政治家同士で、またそれぞれの立場で対処をしていきたい、そのように述べたわけでございます。

○山下よしき 私はきょう、地震災害等に対する国民的保障制度を求めて全国二千五百万署名をお集めになった、中心的な役割を果たされた日本生活協同組合連合会会長理事の竹本さんが被災一年後に「なぜ、今この運動が緊急課題か」という短い文章をお書きになったのを持ってまいりました。そこにこうあります。

 住民ひとりひとりが自分の街に戻ってこられるような施策が必要なのです。街の復興は市民ひとりひとりの生活の再建なくしてはありえず、生活の再建には「住まい」が必要なのです。

 これは今大臣がおっしゃったように、人間住まいなくしては生活できない、住まいの復興こそ町の復興、震災の復興なんだと。私は、ここに今日の原点がやはりあるし、このためにどうするのかということを今我々が知恵を出さねばならないんだというふうに理解しております。大臣とその点は認識が一致しているというふうに理解をしておきたいと思います。

 そこで、我が国は言うまでもなく地震、噴火、津波など、世界でも有数の災害危険度の高い地域であります。そこで我々は生活をしているわけですが、それに対する備えが余りにもおくれていることを私は阪神・淡路大震災の経験を通じて痛感したというふうに思います。特に個人の生活の再建に対する対策のおくれ、これが今の被災者の困難を大きくしている。

 なぜこういう生活再建の対策がおくれたのか。私は、これは日本の経済力や技術力のおくれの結果ではなくて、やはり政治の中でこの問題に対する優先順位がこれまでずっと低かった、優先度のおくれの結果だと。これは大方の国民の皆さんが一致して認めていると思うんですが、これは生活再建、住宅再建の対策がこういうふうにおくれている、その政治の優先順位のおくれだと私は理解するんですが、大臣、この点での認識いかがでしょうか。

○関谷国土庁長官 今戦後五十四年たったわけでございますが、やはり終戦直後においては、何といいましても社会資本整備を初め我々の生活の基盤を再構築していくということが第一でございました。ましてや我々の子供のころには食べるものがありませんでしたし、あるいはお砂糖なんというものはありませんでした。ですから、まずそういう食料を確保するということ、そしてまた住宅を確保するということ、あるいはまた、社会の組織をいろいろ再構築するというようなところに政治も目を向けていかなければなりませんでしたから、まずそういうところに行って、それからこの防災の分野に進んできたと思うんです。

 ただ、先生御指摘のように、そういう状態の流れの中でもまだ防災に対する認識が遅かったのじゃないかという意味だろうと思うんです。それは私も甘受しなければならないなという感じはいたしますが、とにかく最初は花よりだんごでございましたから、食べることがまず第一であった、そういうことであっておくれたと私は認識いたしております。

○山下よしき 例えば、雲仙それから奥尻の大災害というのもありました。ここでも生活再建支援、住宅再建支援というのはいろいろ努力されました。県の基金あるいは市と町の基金などで住宅の全壊の場合には一千百五十万円等支給されるということがあったわけです。それがあって大規模災害でも生活の再建、住まいの再建ということが非常にスムーズになされたと。私はこれを、そのときの教訓をしっかり生かしてほしい。そういう制度がなかったら大規模災害の場合には自助努力による回復という点では限界がある、そういう支援制度がやっぱり必要だということが雲仙、奥尻で明らかになったわけです、それで復興したわけですから。

 ですから、そのときも当時自治体のトップの方などからこの経験、教訓を今後の全国の災害に生かせるようにしてほしいという要望がありましたよ。ところが、残念ながらその災害どまりのものとされちゃった。そのことが、全国制度に至らなかったことが、阪神・淡路大震災のような大規模災害が起きても、残念ながら備えがなくて被災者が大変な苦しみに直面するという事態を招いたと思うんです。

 私は、これを今変えなければならないというふうに思うわけですが、その点のもう一歩踏み込んだ、胸の痛みを感じる必要があるんです。そのとき責任者じゃなかったですけれども、担当大臣として、その点での行政の責任、やはり一言いただきたいと思うんです。

○関谷国土庁長官 そういう意味におきましては、この阪神・淡路大震災というのは、一に政治家だけではなくして国民一人一人の皆様方が防災ということ、あるいはその対策、そしてまたその意識というものを大きく高揚されたと私は認識をいたしております。国土庁あるいは建設省においても、そういうようなことで防災にはなお一層の努力をしていきたいと思います。

○山下よしき なお一層の努力と言うんですが、私は生活再建、住宅再建のおくれの背景に、やはり政府が個人財産に対する保障はしない、自助努力による回復が原則だという立場をずっととり続けていることがあると思うんです。

 しかし、私は大臣とぜひこれは議論したいんですが、住宅というのは人間にとって財産であるというにとどまらず、これは生存のための不可欠の土台としてとらえなければならないんじゃないか、そうとらえなければ災害の際の支援というのは本当に手かせ足かせで縛られて十分なものができないと思うんです。

 どうですか、住宅というのは財産であるというにとどまらず、生存のための不可欠の土台だという認識、大臣に伺いたいと思います。

○関谷国土庁長官 それは私もそのように思います。

○山下よしき 素直にお認めになっていただいたんですが、今検討委員会で住宅再建に対する今後のあり方を検討されている。私は、そういう住宅を生存の不可欠の土台という見地からどう支援していくのかという議論が当然ここではあってしかるべきだと思うんですが、そういう議論、大臣はリードされるおつもりでしょうか。

○関谷国土庁長官 その委員会においてもそういうような感覚で御討議をいただけるものと思っておりますし、また私たちもそういう感覚で協力をしていきたい、そのように私自身は考えております。

○山下よしき 非常に重要な御答弁だったと思うんです。これまでの個人財産に対する保障はできないというものも踏み越えて、その壁に縛られずにぜひ議論をしてほしいということだと思うんですが、大臣、もう一遍確認したいんですが、それでよろしいですか。

○関谷国土庁長官 何かがんじがらめに締められるような感じがしないこともありませんが、私はそれはそうだろうと思うわけでございます。

 先ほど言いましたように戦後五十数年たちまして、衣食住というものを国民は皆求めてきたわけでございますが、衣食というものは達成することができた。今国民が最終的に望んでおりますものは住宅であるわけでございますから、そこでもやはり重要性というものが認識されると思うわけでございます。とにもかくにも、私の責任におきまして一生懸命やっていきたいと思いますが、いつまでも大臣を務められるわけではございませんので、その間はなお強力に、終わりましてからも私のライフワークとしてやはりやっていきたいと思います。

○山下よしき ぜひそういう方向での議論が進むように、私たちも政治の場で議論に参加をしていきたいと思うんです。

 私は、人間に値する生き方をするということは人間としての基本的権利である、そして人間に値する生き方は人間にふさわしい住居がなければ不可能であると思っております。六畳一間に家族が四人、五人も住んで、あるいはいつ追い出されるかもわからない居住不安にさいなまれていては人権は守れない。憲法二十五条が保障している国民の生存権、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、こういう見地から見ても、被災者の生活基盤である住居を再建するための公的な支援というのは当然なされてしかるべきだと思っているわけであります。憲法上の要請だというふうにも理解しております。

 それで次に、その検討委員会で検討される結論、私は個人保障も含めて検討されると思うんですが、その結論は当然阪神・淡路大震災の被災者にも適用されるべきだと思うんですよ。これはいかがでしょうか。

高橋健文阪神・淡路復興対策本部事務局次長 被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会は、阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえて、将来の自然災害により住宅を失った被災者に対する住宅再建支援のあり方について総合的な見地から検討を行うものと聞いております。

 阪神・淡路では、生活再建の前提となります住宅確保対策といたしまして、公営住宅の大量供給や家賃の大幅引き下げ、住宅金融公庫の金利引き下げ、あるいは復興基金による利子補給など、政府としてできる限りの措置を実施してまいりました。今後ともこれらの支援策を着実に推進してまいりたいと思っております。

○山下よしき そこが私は理解できないんですよ。

 阪神の教訓を生かすというために検討会をつくられた。つまり、生かされていない教訓があるんですよ。一生懸命やっていますと言うんだけれども、一生懸命やってもまだなお住宅再建についてはほとんど効果的な支援がないじゃないかという声もたくさんあるわけです。ですから、阪神の問題を土台にして教訓を生かすんだったらなぜ阪神を対象外にするのか、これはどう考えても納得できないと思うんです。それとも、阪神はもう十分やっているという認識なんでしょうか。

○高橋次長 検討委員会での議論というのがこれからどういう形になるか、今の段階では我々は何とも申し上げるわけにはいかないわけでございます。

 検討委員会における結論が、既に起こった災害についても適用できるようなものがその中で出るかどうか、そういったことを踏まえ、その検討委員会での成果を見た上で、またその時点で検討する話ではないかと思っております。

○山下よしき 私は、これは大事な問題だと思っているんですよ。つまり、阪神・淡路大震災に適用を最初からしない、将来の災害を対象にするという発想で議論しても、私は本当に阪神の教訓を将来に生かす議論にはならないと思うんです。それはそうですよ。そうならざるを得ないんです、議論が。阪神には適用せぬけれども、将来に適用するために知恵を出しましょうといっても、普通の人だったらそんなことはできないというブレーキがかかりますよ。

 やっぱり阪神で今何が足らないのかということを率直に出し合って、それを今後の教訓にするんだったら、その教訓を今苦しんでいる被災者に適用するのは当たり前だと。法的にいろんな問題があるとは思いますけれども、最初から排除してしまうということは絶対とるべきではないと私は思いますが、大臣、これはいかがでしょうか。

○関谷国土庁長官 なかなか理詰めの鋭い御意見でございますが、例えば阪神・淡路の問題にこれを遡及するとかしないとかいうようなことは、その委員会での結論が出た時点でそれはやるべきだというようなそういう状態になっておるかもしれませんし、そういう意味においては、それは無理かなというようなこともあるかもしれませんので、その時点で対処をしたいと思います。結論は一年半先だそうでございますから、そのあたりの周辺の情勢もまた変わってくるでしょうから、その時点で私は判断をまたやらせていただきたいと思います。

○山下よしき 余りにも先送りし過ぎると思うんです。その背景に、私はやっぱり今の阪神・淡路大震災の生活再建、住宅再建に対する認識の甘さがあると思っているんですよ。

 私たちが聞きますと、阪神の住宅再建はようやっているんや、いろんなことをやったという答えが国土庁なんかからよく返ってくるんです。その一つの指標に住宅の回復率というのがよく言われますよ。もう当初の目標よりも、あるいは震災時よりも住宅がふえていると。

 しかし、住宅は確かに建っているかもしれぬけれども、人口が戻ってきていない。被災六区では、例えば東灘区九五%、灘区九一%、中央区九七%、兵庫区八七%、長田区八三%、須磨区九〇%と、住宅は建っても人がもとに戻ってこられないという現状があるわけです。それはなぜかということを今やっぱり阪神からしっかり導き出さないとだめだと思うんです。

 神戸新聞が震災四周年の被災者追跡アンケートをやっていますよ。持ち家が再建できた五九%、借家に戻った三〇%。一方で、戻ることを断念したが借家で五一・八%、持ち家も一八%。二極分化している。戻れない理由は、持ち家の場合は資金問題が最も多い。借家では、家主が再建しない、次いで資金問題ということになっているわけです。ですから、こういうことを踏まえてこれを解決できるような支援策を講ずる必要がある。

 そのためには、私は住宅を財産と見るんじゃなくて、これは生存に必要な不可欠の土台として、大臣が問題意識を披露してくれましたけれども、そういう視点でこれは洗い出す必要があると思っていますし、阪神にこの問題がまだ残っているということをしっかり理解していただきたいと思うんです。大臣、この点はよろしいですか。うなずいていらっしゃいますので、次の質問に移りたいと思います。

 最後に、いわゆる二重ローン問題について私も伺いたいと思うんです。

 家が壊れて住宅ローンが残ったという方がたくさん生まれました。最近、島本慈子さんという方が「倒壊」という本をお書きになって、この問題をまとめられました。この中には、冒頭、三十代の夫、二十代の妻、新婚夫婦が二千九百万円のローンを組んで、その二カ月後に大震災で全焼してしまったという話も紹介されておりますが、家が壊れて家を失って住宅ローンが残ったという問題は、これはやはり特別の手当てが要ると私は思うんです。何もかも失いゼロから出発するのではない、何もかも失った上に未返済の住宅ローンという重荷を背負っている人たちが被災地には大量に生まれたということであります。

 これは特別の対策ということで先ほどもう答弁がありましたので、今やられていることはもう重ねて聞きません。しかし、例えば既往ローンの元金の五年据え置き、その間の利下げということなんですが、これをやられたとしても逆に返済額自身はふえちゃう、その間延びますから。それから、新たにローンを組めば一定の補給がされるというけれども、しかしそれは新たなローンがふえるわけですから。いずれにしても、支援を受けたら、家を建てようが建てまいがローンはふえちゃうという残念ながら内容になっているわけです。

 そこで、今こういう方々からやるせないという思いで声が上がっているのが、公的資金を注入した銀行によるゼネコンの債権放棄の問題なんです。これはぜひ考えていただきたい。大手ゼネコンによる銀行への債権放棄要請が相次いでいる。青木建設二千億円、フジタ二千五百億円、長谷工コーポレーション三千五百億円等々、合計一兆円を超えておるわけですが、これはいずれも公的資金を注入される銀行に要請されているわけです。なぜこんなことができるのか。金融再生委員会の金融機関に対する資本増強の基本的考え方という中に、こうあります。「債権放棄に当たっては、残存債権の回収がより確実となる等の合理性、借り手企業の経営責任の明確化、及び当該企業の社会的影響等を考慮するものとする。」と。

 この概念でいきますと、住宅を失ってローンだけ残っている人に対する債権放棄をやるというのは、例えば社会的影響から見れば、神戸でもこういう方々の生活再建がなかなか進まずに税収が落ちている、もとに戻らずに商売がなかなかしんどいという状況あるわけですから、私は社会的影響は大きいというふうにみなすことができると思うんです。しかし、それはやらない。一方は自己責任ですよ、バブルのときに乱脈な融資、投資をやったわけですから。そのゼネコンの借金は棒引きしてやる。自己責任の全くない、自然災害で住宅が壊れてローンだけ残った者はもう返済をずっと続けなければならない。

 これは被災者からおかしいじゃないかという声が出るのは当然なんですが、だから私は借金を棒引きしてくれということをストレートに求めているわけではないんです。やっぱり一段踏み込んだ、住宅を失ってローンが残った方々への支援にさらに踏み込む必要があると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○関谷国土庁長官 山下委員が最初に住宅は個人財産ではなくして生活権であると、そこから今の結論が出されたなと思ったんですが、確かに債権放棄を銀行にしていただくというのは企業なんです。そして、片や住宅ローンの方々は逆に言えば個々人であるわけでございまして、ですからなかなか判断が正直言って難しいところであるわけでございます。

 先生おっしゃられましたように、その住宅ローンをすべてただにしろという意味ではないという意見、そういうところでもう一歩踏み込んだことができないかということはまた考えてみる余地はあると思いますが、とにもかくにも、もう四年間たちまして、いろいろあらゆることを考えてきたのは事実であるわけでございます。また、なお一層のことが考えられるかどうか、考えてみたいとは思っております。

○山下よしき 終わります。

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