○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
初めに、山根参考人に伺いたいと思います。
私、昨日、「アース」という映画を見てまいりました。美しい地球の上ですばらしい仲間たち、映像ではアフリカゾウですとかホッキョクグマですとかザトウクジラが地球全体を回遊しながら動いている状況が紹介されましたけれども、彼らといつまでも共存するために私たちは今すぐ行動しなければならないんだというメッセージを感じました。人類にその能力があるのかが、四十六億歳の地球から問われているんだなと感じました。
山根参考人は、同時に、温暖化問題は大変難しい、分からない面も多いとおっしゃられましたけれども、その点で、メディアとかジャーナリストの役割は大変大事だと思いますが、この温暖化対策を人類挙げて推進していく上でのメディア、ジャーナリストの役割についてお感じのことがあればお聞かせください。
○山根一眞さん 実は、間違いも結構この問題については多く報道されることがあります。特に一番大きな議論になったのが、ゴア元アメリカ副大統領の「不都合な真実」の映画の中で、非常に海水面が六メーターぐらい上昇してたくさんの地域が水没するという部分、あるいは南極、北極の氷が解けて海水面が上昇するという部分、そういうことが、ちょっとそれはよく分かりませんけれども、非常に誇張されて、あれは正しくないということによって映画そのものの評価は非常に疑問が投げ付けられたということがありました。
昨年十月十二日のノーベル平和賞受賞決定という発表の日の特にアメリカのテレビメディア、どんなふうに報じていたかというと、この受賞はおかしいという、そういう論調で延々と報道して、皆さん、これはおかしいと思いますが御意見をと、こういう言い方をしている人たちがすごく多かったですね。でも、この問題に関して非常に神経質なまでにその温暖化を語る人たちを攻撃する人たちがまたいるということも忘れてはいけないことで、足をすくわれることはかなりあります。
例えば、先ほどの海水面が上昇するという問題、それから氷が解けるという問題、これは研究によってそういうものもある、あるいは以前の研究ではそういうことが言われていたけれども、今は否定されたという時間の経緯ということも考えなければいけないわけですね。今はインターネットで皆さん情報を得る時代になりましたから、ある検索語を入れて出たものがそのまま真実だと思うわけですけれども、実はそれにはいつの情報かというものがいつも落ちているわけですね。実は、温暖化に関しては極めて膨大なデータが検索で出てきます。皆さんがそれを見ます。ところが、それがなかなか分かりやすいページだったりすると、それをうのみにします。ところが、それは実は極めて古い情報であったりするわけです。
私たちの役割というのは、私も、今、日経BP社のECOマネジメントという温暖化のポータルサイトで実は原稿を書くようになりました。紙ではなくてインターネットの時代なんですね。そこに主力が移ってきました。やはり、だれが書いたのか、いつ書いたのかということを、実はこれはこの問題に限らずその情報を受け取るたくさんの人たちが、ほとんどの読者と言われる人たちがその基礎的な目を持たなければいけないと思うわけなんですね。私も、本を書くために当然ながらインターネットで検索し調べますけれども、本当にそういう意味での古い情報の間違いがいかに多いかということを思っています。
私たちの役割は、そこできちんとした、言ってみればだれがどういう形で出しているかということを明示したホームページで、日付がちゃんとある形で、責任を持ってこの問題について語るということが極めて今重要になっているだろうと思うんですね。どうぞ、そういうページだけを御覧になっていただきたいというふうに思います。
○山下よしき ありがとうございました。
続いて、浅岡参考人にお聞きします。
先ほどの陳述の中で、百八十の事業所が日本のCO2の半分以上を排出しているという気候ネットワークの調査報告がありました。このような調査をされていることに対して心から敬意を表するとともに、大変この結果について私驚きました。いろいろ調べていますと、例えば石炭火力発電所の排出するCO2の増加分がもし仮になかったとすれば、九〇年から日本のCO2排出量は減っていたという結果が出るほど大変大きなウエートを占めているということも分かりました。
そういう点を踏まえて、私は、経団連の自主行動計画に任せる従来のやり方を改めて、産業界と政府の間で排出量の削減協定を結んで実効ある政策にしていくことがもう不可欠だと考えているんですが、浅岡さんの御意見を伺いたいと思います。
○浅岡美恵弁護士 先ほど先生が御紹介いただきましたデータにつきまして、私は十三日の議事録を拝見いたしまして、経済産業省が承知をしていないと言われたことには驚きを覚えております。これは、経済産業省の定期報告のデータと、それから省エネセンターが行っております優秀者表彰のデータから作っておりまして、私どもが独自に作成したものではございません。一年間にわたって審議会でも申し上げてまいりました。
私が申し上げたいことは、多いから悪いと言っているのではありません。製鉄所が多いから悪いと言っているのでもありません。しかし、実態を見て対策を立てるのは当然ではないでしょうか。科学的手法ではないでしょうか。そのための情報を一年間に三十回も審議会をしましていまだ開示をされないという中でどうして議論ができるでしょうか。そのことであります。
それから、鉄につきまして、私は、日本が世界に造れない鉄を造る工場を持つと、しかし、どこでも造れることまでしなくてもよろしいのではないかと。国内において必要な鉄は国内のあるものを再利用していくということで十分賄えるのではないか、そういうことを申し上げています。そういうことによって、日本も大幅な削減が長い道のりで必要であります。
その必要なことをどうしていくのかということにつきまして、大規模排出源には、今、自主行動計画は努力目標でありまして、約束ではありません。担保する方法がありませんから、先生が言われるのは協定でという趣旨だと思います。協定は約束であります。しかし、今日におきましては、それはもう遅きに過ぎると私は思っています。
九〇年代の終わりにドイツで協定を導入いたしました。そして、イギリスで二〇〇一年ごろいたしました。それを踏まえまして、欧米の国々では事業所ごとにキャップをかぶせ取引をするという仕組みを入れました。しかし、EUで始めましたところ、グランドファザリングで自ら、あなた方は幾ら排出しているんですかと聞きましたところ、二割も三割も増したものを出してこられました。その当時、そうですかとグランドファザリングいたしましたところ、オーバーロケーションだと今度反対をされていると、こういうことであります。
そういう経験を踏まえてオークションを原則にしていくんだという方向が今出ております。オークションであれば必要ないものは買わないでしょうと、こういうことで、必要なだけ買うでしょうと、それが削減に必要ですと。
イギリスにおきましても、それからヨーロッパ、EUの新しい指令案におきましても、アメリカのリーバーマンの法案にしましても、大幅なオークションを、基本はオークションを原則にして、そこにどう移行するかというオークション割り振りのプロセスまでできているわけです。そうした時代に、今協定でと言っているような悠長なことをしていては日本は全く乗り遅れると思います。
早く私は、来年、再来年には準備を終え、二〇一〇年からオーストラリアと同じように試行期間に入り、二〇一三年からはヨーロッパと並んでしっかりした取引制度を入れる。そのために、先ほど古川先生から大変鋭い質問がございましたけれども、御覧いただきたいのはこの省エネ法の定期報告書です。
これだけ、九四年から新しい設備をどのように導入し、それがどのような削減効果があったのかといいますか、エネルギー効率の変化があったのかまで報告させているところで、公平なロケーションをすることが私はできないとは思いません。ある意味で、一定のものをし、もし不足があると、不満があるというのであれば、事業者にも教えていただければ、それは適正かどうかというすり合わせができる。その意味でのネゴシエーション、協定の話というのに代わるようなものという場面は出てくるかと思いますが、九四年からこれだけのデータを持っているというところはないと思います。
アメリカのリーバーマンの法案では、九四年からの実績をアーリーアクションとして加えようということになっておりますが、これは日本と並ぶデータの、日本においてはそのデータがあります。アメリカは、あるところとないところとがあります。大変大きな違いでありますから、これを日本がしっかり活用して、アメリカよりもしっかり、公平な仕組みはこうなんだという、それがベンチマークでは私はないと思います。ベンチマークは考慮します。しかし、総量の中で考慮する事項として、そうした個々の事業者の一つのベンチマークの指標としてお考えいただくデータがあると、そういうことであります。
○山下よしき ありがとうございました。
最後に、諸富先生にお伺いしたいと思います。
なぜ日本の温暖化対策が企業、経済界の自主行動計画に任されたままになってきたのか。ヨーロッパとどこが違うのか。
私は、ヨーロッパの企業や経済界が元々環境問題、温暖化問題に非常に積極的だったわけではないと思います。科学者の警告を踏まえた政治のリーダーシップがあったでしょうし、それから市民やNGOの活動もあったと思います。是非、これから日本でも温暖化対策の後継者から先駆者にと転換するために、政治の活動についての期待また市民やNGOの活動についての期待についてお聞かせいただければと思います。
○諸富徹京都大学公共政策大学院准教授 なかなかそれを一言で言うことは難しいですが、先生のおっしゃったとおり、ヨーロッパの企業が取り立てて環境に対して先進的であったかというのはなかなか難しいと思います。
では、なぜああいうことが可能になったかということですが、一つは、やはり八〇年代ごろから既に議論の積み重ねがありました。環境税導入の議論なんかは、かなりヨーロッパは早いです。しかも、それが単に環境のために環境税を入れろとかいうだけじゃなくて、例えば、それがもたらす産業界側の懸念に対して環境税支持派がちゃんとこたえる研究も同時にやってきたわけです。
例えば、産業の国際競争力はどうなるのか、それによって失業者が生まれるという批判に対しては、いや実はかえって雇用は増えるんですよと、こういうふうに制度をつくればかえって増えますよというようなことも含めてきちっと論争がありました。その論争の積み重ねの成果が、実は我々が見ている今の姿だというふうに思います。政策が出てくるというのは突然のように見えるんですが、そうではないと思います。
それからもう一つの非常に大きな要因は、政権交代です。なぜイギリスで気候変動税が入ったのか。これはもう労働党が政権に就いたからとまでは極言しませんが、やはりブレア党首の下で入ったことは間違いありません。それから、やはり同時にドイツの場合もシュレーダー政権になったと、緑の党が連立政権の中に入ったと、これは非常に大きなパラダイムシフトであったというふうに思います。
ただ、現在の時点からいいますと、ドイツでは今メルケル首相ですけれども、彼女は必ずしも社民党でもないし緑の党でもない。つまり、イギリスでも同じです。今野党にいる保守党は、じゃ環境に対して反対しているか。そんなことはないです。もう今やヨーロッパにおいては両方の政党がむしろ環境政策の前進を競っている。それは有権者が変化したということです。
そういう意味では、環境やメディアの役割も非常に重要だというふうに思います。
○山下よしき 終わります。