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論戦・演説・講演原点山下よしき---「おばあちゃんの二つの教え」、「共産党に入ってよかった事」など、自らの生い立ちや政治家としての原点を熱く語った初期エッセイ集  
 

小宮山厚労副大臣が「保育所面積基準下げない」と答弁

2011年4月28日 参議院・総務委員会

日本共産党の山下芳生議員が4月28日の参院総務委員会で行なった地域主権改革一括法案に関する質問は次の通りです。

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 資料の一枚目に、児童福祉法の抜粋を配付しております。
 児童福祉法四十五条には、厚生労働大臣は児童福祉施設の設備及び運営について最低基準を定めなければならないと明記され、省令で児童福祉施設最低基準が定められております。そこには、「最低基準の目的」として、「最低基準は、児童福祉施設に入所している者が、明るくて、衛生的な環境において、素養があり、かつ、適切な訓練を受けた職員の指導により、心身ともに健やかにして、社会に適応するように育成されることを保障するものとする。」とあり、また、「最低基準の向上」として、「都道府県知事は、」「その監督に属する児童福祉施設に対し、最低基準を超えて、その設備及び運営を向上させるように勧告することができる。」、「厚生労働大臣は、最低基準を常に向上させるように努めるものとする。」と明記されております。
 何回読んでもすばらしい内容だと思います。私は、ここには、子供たちが健やかに発達できる環境を国が保障するんだと、その水準は時代とともに引き上げていくんだという決意と哲学が込められていると思っております。
 そこで、まず小宮山厚生労働副大臣にこの児童福祉施設最低基準についての認識を伺いたいと思います。

○小宮山洋子厚生労働副大臣 今委員がおっしゃいましたとおり、本当に子供たちがしっかりと育っていけるための環境を整備するということで、私もこの文章を読みまして、本当にこれはすばらしい文章だと思いますし、しっかりとこの方向で子供たちの環境を守り、さらに都道府県とも協力をしながらその質を上げていくべきものだと考えております。

○山下よしき  ところが、提案されております地域主権改革一括法案にはこの児童福祉法の改定が含まれておりまして、そこには、最低基準をなくすこと、そして都道府県の条例に委任することが明記されております。実際にこの法案見ますと、現行児童福祉法にある最低基準という文言、全部で九か所出てまいりますが、これ全部ばっさりと落とされております。
 私は、これでは、私たち大人社会が現在と未来の子供たちに対して約束してきたこと、健やかに発達できる環境を私たちが保障するんだと、それは時代の発達とともに水準を上げていくんだというこの約束を放棄することになると、こう思うんですけれども、そう思われませんか。

○小宮山副大臣 確かに、おっしゃるとおり、今回の法改正では都道府県がそれを条例で定めるとなっておりますけれども、これは決して最低基準がなくなるということではありません。今回の地方分権の推進計画、その内容によりましても、保育所の最低基準は条例で都道府県等が定める。その際に、国の基準と同じ内容でなければならないものが、保育士の配置基準、居室の面積基準、保育の内容、保育指針や調理室などの問題は、こうした課題につきましては国の基準と同じ内容でなければならないとされております。
 また、国の基準を参考にすればよいという参酌基準のところが、屋外遊戯場の設置、必要な用具の備付け、耐火上の基準、保育時間、保護者との密接な連絡などとなっておりますので、これは、先ほどの児童福祉法に定められていることに基づきまして、都道府県は更にそれよりも良い水準を目指してやるべきものだというふうに思っておりますので、最低基準がなくなるということでは決してないと考えています。

○山下よしき  しかし、児童福祉法の中から最低基準という文言はなくなるんです。
 資料の二枚目を御覧になっていただきたいんですが、上の表は保育所の現在の最低基準の抜粋であります。そこには、今、小宮山副大臣からお話があった職員の配置基準、それから設備の面積基準が具体的な数字で示されております。それから、下のグラフは三歳以上児の一人当たりの面積基準の国際比較であります。御覧になっていただけますように、ストックホルム市やパリ市と比べまして日本の面積基準は大体三分の一程度の狭さになっております。これ、下げるなんてとんでもない、もう一刻も早く引き上げることが求められていると思います。
 そこで、小宮山副大臣に二点質問をいたします。
 一つは、先ほど、遵守すべき基準、これを国が新たに決めて従ってもらうんだということですが、その遵守すべき基準を新たに省令で定めるということですけれども、では、現行の最低基準に示されているこの職員配置基準の数字、それから面積基準の数字、これよりも低い基準を定めることは絶対にないと約束できますか。これが一点。
 それから二つ目に、現行の「最低基準の向上」という、先ほど読み上げました、大臣も引き上げることは大事だというふうにおっしゃいましたけど、この向上という項目は新たに定める省令で明記されるんですか。
 この二点、お答えいただけますか。

○小宮山副大臣 一点目ですけれども、この保育所の居室の面積基準、それから職員の配置基準など従うべき基準として厚生労働省令で定める基準につきましては、現行の基準を基本とすると考えておりますので、下げることはないとお約束をしたいというふうに思います。
 それから、その向上の方ですけれども、これは今御承知のように、子ども・子育て新システムの検討会議などで、ちょっとその財源の方が今回の大震災の方に、相当復旧の方にお金が行ってしまう関係上、社会保障制度の改革の中で、現政権としては子供たちにしっかりと、年金、医療、介護だけではなくて予算を割きたいと考えているんですが、それが実際上、復興との関係でどれだけ確保できるかというところはちょっと懸念材料にはなっておりますけれども、ここでしっかりと、社会保障の改革と税の一体改革の中で、子供たちのための様々な質の向上のためにしっかりと財源措置をしたいと、今の政権としては考えております。

○山下よしき  基準の数字については下げることはないと、今約束がされました。ただ、向上させるという文言が明記されることは、約束が残念ながらいただけませんでした。
 もう一つ、この遵守すべき基準に抜け穴が用意されております。附則第四条に「保育所に係る居室の床面積の特例」というものがあります。この特例とは何か、どこの地域でどのぐらいの期間特例を認める考えか、お答えいただけますか。

○小宮山副大臣 今回これは、私どもとしては子供にとっての質を切り下げることはあってならないとは思っておりますけれども、都市部の待機児童の深刻な状況ということがございますので、一時的な特例措置として、地域を限定して、保育室等の面積に係る最低基準だけについては標準として条例に委任をするということにいたしました。
 その保育所の居室面積基準に関する特例措置は、一つは待機児童が多い地域でかつ地価の高い地域を対象とするなど、保育所を整備するための場所の確保が困難な大都市部の待機児解消に資する要件になるべく限定をしたいと考えています。
 それから、特例措置の期間につきましては、例えば、潜在需要を含めた待機児童の解消を図るために保育所整備等の目標を掲げた子ども・子育てビジョンというのを作っておりますけれども、これが、平成二十二年一月二十九日の閣議決定されたそのビジョンの計画が終わる時期と考えているその作ったときから五年後、平成二十六年末というこの数字、この平成二十六年度末までを期間を区切って考えたいというふうに思っています。
 その具体的な地域や期間の設定につきましては、様々な御意見があることは十分承知をしておりますので、改正法の施行までの間に検討いたしまして、なるべくその限定ができるように私としては是非したいというふうに考えております。

○山下よしき  これ、本当に抜け穴なんですね。全国どこで生まれ育っている子供さんでも最低この水準は国が責任持って保障しますよというのが今の最低基準なんです。ところが、今お話があったように、待機児が多いところでは守らなくていいと。これはあからさまなナショナルミニマムの放棄だと言わなければならないと思います。しかも、潜在的な待機児がなくなるまでということになりますと、子供の数が減るまでは詰め込めばいいということにもなるわけでして、これは少子化の進行を前提にした非常に志の低い話になっているというふうにも思います。
 こういうことがもしやられたらどうなるか。東京都児童福祉審議会専門部会は、この法案を先取りして、一月にゼロ―一歳児の面積基準三・三平米を二・五平米に緩和する議論を既に行っていると聞いております。この法案が通れば、東京都の最低基準が引き下げられることは火を見るよりも明らかだと思うんですね。
 二〇〇九年十一月二十六日、保育所最低基準と待機児童解消を考える緊急院内集会というものがありました。私も参加をいたしました。そこで、女性の弁護士の方から、詰め込み保育は子供の命を危険にさらすと、現に今、認可保育所でも子供の死亡事故が増えているという非常に深刻な報告がされまして、そこに副大臣になられる前の小宮山洋子議員も出席をされておりました。私の隣に座っておられました。小宮山議員はそこで、保育所の基準の引下げは絶対にあってはならない、ただ東京だけは力が及ばなかったと、こう本当に残念そうにおっしゃっていました。
 今、副大臣になられたわけです。力が及ぶ立場になったと私は思いますけれども、少なくとも特例の抜け穴は防ぐべきじゃありませんか。

○小宮山副大臣 そのとき私が、別に副大臣になったからといって私の考えが変わるわけではございませんので、本当にそのときは、山下委員も一緒に、子供のことを考える超党派の議員が何とか子供の質を守りたいということで院内集会を、およそ、多分、一つの部屋に入り切らないほど、四百人ぐらいの方にお集まりいただいたと記憶をしておりますけれども、そのときの思いはそのまま持っております。
 ただ、これは私が副大臣になる前に決められていることでございまして、そこを、さっきおっしゃったように、いつまでもそれを、本当に待機児がなくなるまでと言ったら切りがないので、せめて、先ほど申し上げた子ども・子育てビジョンが今五年間を設定してやっておりますので、その終わる二十六年度末までということで切らせていただきました。
 その中で、先ほど少子化になることを前提としているというお話がありましたけれども、というよりは、先ほど申し上げた新システムの会議などで、幼稚園と保育所の一体化を含めて、就学前の全ての子供に質のいい教育、保育ができるようにということも今検討をしておりまして、その受皿の方を増やすことによって、今保育園が待機児さんが多いんですけれども、幼稚園は三割空きがあるわけです。東京でも二割以上空きがあるわけです。ですから、その縦割りを廃して全ての子供たちに教育、保育が受けられる場をつくるという、これは政権交代をしないとなかなかできない話だと思いますけれども、そこのところを今検討をしておりますので、決して少子化を待つというよりも、子供たちの良い環境をつくる、そちらを増やすということによって何とか一刻も早く切り下げられた基準というのがなくなりますように最大限努力をしたいと考えています。

○山下よしき  私は、やはり最低基準をなくすこと、そして抜け穴を地域によって認めてしまうこと、これは子供の発達に対する国の責任放棄にほかならないと思います。それから、子ども・子育て新システムのことも少し出ましたけれども、これは市町村の保育の実施責任をなくしてしまうということですから、保育に対する公的責任が縮小される、これの流れなんだということも一言指摘しておきたいと思います。
 次に、修正案提案者に聞きます。
 児童福祉法の最低基準を廃止し都道府県の条例に委任するという問題は、修正によって変更されたんでしょうか。

○坂本哲志衆議院議員(修正案の提出者) お答えいたします。
 内容が変更されたわけではありません。ただ、地域主権という用語が削除されたことで、仮にナショナルミニマムを逸脱したような条例が制定された場合、その独善的な自治体の主張に対して正当性を与えないという抑制効果は私は出てきたというふうに思っております。
 それと、水準を守るために附帯決議を付けました。児童福祉施設などの水準の維持向上を図るとともに、必要に応じて運用の実態について検証を行うことというような文言にいたしました。これは衆議院で共産党さんの様々な御意見を取り入れての文言にしたということでありますので、御理解いただきたいと思っております。

○山下よしき  最低基準をなくすという点は修正はされていないんですね。この法案の最も本質的な問題点は修正によって何にも変更されておりません。
 加えて言うなら、昨年の委員会審議で私が指摘したとおり、地域主権という言葉は、元々、小泉内閣が二〇〇五年にまとめた二十一世紀ビジョンという文書の中に出ておりました。自分たちが先に使っていた言葉を気に入らないから削除せよというのも理解に苦しみますし、これぞ一丁目一番地の改革だと言っていた言葉をあっさり削除するというのも理解し難いと。はっきりしたのは、法案の中身では初めから両者に違いはなかったということだと思います。
 最後に、総務大臣に質問をいたします。
 私は、国が憲法二十五条に基づいてナショナルミニマムを定めることと地方自治体の自主性を保障することとは対立するものでも矛盾するものでもないと考えますが、大臣の認識を伺いたいと思います。

○片山善博総務大臣 結論においてはそうだと思います。対立するとか矛盾するものではないと思いますが、私は、むしろ住民の皆さんに一番かかわりのある仕事というのは自治体が責任を持って決めていくという、そういうことを励行するようになるのが一番いいと思います。
 正直言いまして、今、国が基準を決めていますと、それさえ満たせばいいということで、思考がかなり停止されている面があります。そうではなくて、本当に、国の基準にかかわらず、自治体は住民の皆さんのためにどうあるべきかと考えるべきだと思います。その上で、サーベイといいますかリサーチをして、それでひどい状況がもし現出したとします、そんなことはないと思いますが、したとすれば、それは国がきちっと国法でもって必要な基準を改めて作るということはそれは大いにあり得ることだと思います。

○山下よしき  私は、ナショナルミニマムをしっかりと守りながら、その上に市町村が更に努力を重ねてより良いものを子供たちに、あるいは国民の皆さんに、住民の皆さんに提供するという、両方が相まってより良い公的サービスを提供していける、そういう社会になっていくんだと思うんですね。ナショナルミニマムをなくさなければ地域の主体性がかなわないというのは何の根拠もない、ナショナルミニマムがなくなることによって下がることがあるという条件をつくるだけのことではないかと思っております。
 この法案は、先人たちが多年の努力で築いた制度である最低基準、ナショナルミニマムを崩すものにほかなりません。狙いは、福祉の分野まで公的責任を放棄して市場原理に委ねることにあるというふうに思います。そういうやり方が国民から否定された結果、一昨年の政権交代があったはずなのに、これは全く逆戻りするものだということを指摘して、終わります。


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