あったか連帯ウェブ 日本共産党参議院議員山下よしき
トップページ ご意見・ご要望をお寄せくださいサイト内検索
論戦・演説・講演原点山下よしき---「おばあちゃんの二つの教え」、「共産党に入ってよかった事」など、自らの生い立ちや政治家としての原点を熱く語った初期エッセイ集  
 

バランス論を克服し、被災者の実態に照らして支援のあり方の見直しを

2011年3月25日 参議院・総務委員会

日本共産党の山下芳生議員が3月25日の参院総務委員会で行なった質問は次の通りです。

○山下よしき 昨日の質疑のちょっと続きをやりたいと思います。
 私の方から、被災者生活再建支援法で全壊世帯に三百万円支給されることになったと、阪神・淡路以来、被災者の皆さんの運動でそうなったんだけれども、やっぱり不十分だ、再検討する必要があるんじゃないかというふうに昨日質問させていただいたところ、片山総務大臣からはバランスの問題というお答えがありました。個々の被災者にとってみればバランスも考えなきゃならないということで、やや消極的な御答弁だったなというふうに私は聞いたんですが、ただこのバランスの問題というのは、振り返ってみて、私は鳥取県知事時代の片山総務大臣は乗り越えられたというふうに思っております。
 昨年の十月二十一日、総務大臣に就任された直後のこの当委員会で、私、質疑をさせていただいて、鳥取県知事として三百万円、住宅再建に県独自で支援を決めたときのことを聞きました。そのときに片山総務大臣は、十月二十一日、こう答弁されています。はてさて災害復興のミッションは何だろうか、生活者がそこに住み続けることを可能にすることだ。それは住宅を直すしかない、住宅再建支援をするしかないということにしたと。そのときに、政府からは非常に激しい反発があったと。貧乏県のくせにそんなことをするな、個人の財産に支援をすることは憲法違反だと言われましたと。しかし、それを乗り越えて三百万円支給を決められた。決めた後も、その後も、やってもらっては困るという話があったと。阪神・淡路のときに憲法違反説でそれで押し通していたのに、鳥取県ができるということになったら困るというふうに国から言われたと。しかし、それも乗り越えて、それをやらなかったら鳥取の被災者の方が困るからやったんだと。
 ある意味で私はバランス論だと思います。過去の被災者とのバランスを考えてやらんといてくれと言われたのに対して、やる必要があるという判断に立たれたと。
 ですから、やはり私は、見事に知事時代に乗り越えられた経験をお持ちの片山大臣ですので、やはり現場の実態、被災者の実態に照らして、見直すことが必要であれば見直すことも検討するというのがやはり大事ではないかと思うんですが、それはいかがでしょうか。

○片山善博総務大臣 私、昨日御答弁申し上げましたのは、今の現行制度をもう何も変えないと、あるんだからその現行制度で、過去この制度の適用を受けておられた被災者とのバランスだけで物事を論ずるということを申し上げたわけではないんです。
 いろんな経緯がありまして、これは私が知事の時代に被災を受けたときには、被災者生活再建支援制度というのは全壊の方に百万円という、しかもそれは住宅に使ってはいけないという制度でありました。それはそれとして、当時、国の制度でありますから受け入れざるを得ませんでしたから、そこで県独自として、鳥取県では三百万円を全壊の世帯に再建を前提にして配分するという、そういうことにしたわけであります。これは独自の政策であります。その後、これがだんだんと大方の理解を得て、国策として、全壊の世帯にはいろんな要件はありますけれども三百万円を配るという、こういうことになったわけでありまして、その下でかなりの被害を受けた方はその制度の適用を受けたわけであります。
 今回の災害、非常に大きな災害でありますけれども、個々の被災者を取ってみると、過去この制度で適用を受けた方と同じような被害程度の方もおられるはずなんです。その方とのバランスはやっぱり考えなきゃいけないでしょうということを申し上げたんです。
 今回の災害は、そういう方もおられるとは思いますけれども、特徴としては、さっきから何回も言っていますけれども、第一次産業なんかは本当に生業をもう根こそぎ奪われているわけです。ちょっと使わないで、まあ一年間待てば作付けできるとかそういうレベルを超えて、もう生業を根こそぎやられている方もおられますんで、そういうことは今次の災害の新しい特徴として、やはり政府のこれから講ずる対策の中に要素として考える必要があるんではないか、そういうことを考えることも含めてこの制度の点検をしましょうということで、今課題として取り上げているわけです。
 ですから、余り決め付けないでいただきたい。まるっきり変えないんだということではありません、しかし今回は災害が非常に大きいんだからみんなにもうどんと大盤振る舞いするんだということでもない。やはりきめ細かく、災害の態様を見て必要な改善を加えていきたいということを、丁寧に言えばこういうことであります。

○山下よしき 見直しも含めてということだと思います。その立場がやっぱり大事だと思います。そういう経験を実際に知事としてされた方なので、是非現場の実態にしっかり適応した制度に改善していただきたいと。
 こういうふうに私が言うのは、もう既に現場ではそういう声が出ているからです。宮城県南三陸町の町長さん、佐藤仁町長に、我が党の地方議員、県会議員の方が三月二十一日にお会いいたしましたら、もう一度家を建てようとなっても現行では上限三百万円の支援金だと、これを取っ払ってもらいたいと。町長ですから、いろいろその地域の現状を踏まえての御発言だと思います。やはり、これからそういうことに直面するであろうということですので、これも是非そういう声を踏まえていただきたいと。
 その上で、例えば阪神・淡路の被災者の方には、私もその皆さんと一緒に運動したんですが、全壊世帯に三百万円という現行の被災者生活再建支援法の恩恵は全くありません。ありませんけれども、今、阪神・淡路の被災者の皆さんに、そのとき皆さんが頑張って運動されたことで三百万円の支給がされることになったことが、今回の東日本の被災者にとっては生活再建の大きな土台となるんですと御報告したときに、大変みんな喜んでくれるんですね。
 私は、これが社会が進歩するということだと思います。自分たちには恩恵はないけれども、今困っている人たちには自分たちが頑張ったことがプラスになるんだったら、それは我が事のように阪神の被災者の方々も喜んでおられると。だから、そういう意味でもバランス論というのに固執するのは政治家としては間違いだというふうに申し上げておきたいと思います。
 それからもう一つ、昨日のやり取りの中で確認しておきたい点があります。
 それは、今もお話ありましたけど、今回、根こそぎ町が潰れて壊滅的な被害を受けているという地域があります。元いたところに再建ということが本当に果たしてふさわしいのかと、昨日、大臣がおっしゃられて、町のプランニング、ゾーニング自体を大幅に変えなきゃいけないということもあるかもしれないと。そのとおりだと思います。
 先ほどの南三陸町の町長も、地盤が七十五センチ沈下した、ここはもう海抜ゼロメートルになったと。被災者救援、仮設住宅建設に直面するが、その後どうするか。下に行って住めないという津波のトラウマがあると。どう後押しするか、トータルとしての支援策が必要だと。
 やっぱりもう、津波にまた襲われるんじゃないか、しかももう海面の下になっちゃったと。そこにどう復興するのかという点は、単に住宅再建だけではやっぱり不十分だと思いますね。トータルにやはり支援する必要があると思います。
 ただ、そのときに、町づくりの計画を作る際に私は阪神の教訓が大事だと思うんですが、阪神・淡路大震災では被災直後に、被災者が避難所に避難している間に、行政が千載一遇のチャンスとばっかりに再開発や区画整理の網掛けをやってしまいました。住民の意見を聞くことなく町づくりの計画を策定したことがその後の被災者の住宅再建と営業再建を一層困難にしたという面があります。この点は昨日、大臣も少しお触れになったことですが、これやったのは国じゃないんです。県や市、自治体がそういうことをやっちゃったんですね。
 ですから、昨日、大臣は自治体中心に町づくりの計画を作り、国が支援することが大事だとおっしゃいましたけど、自治体がやることは全部住民のためになることなんだと言えるかどうかというのは、私は住民参加がなければやっぱりならないと思います。やはり復興に当たっては、何よりも住民参加を保障し、住民の合意で新しい町づくりを進めることが大事だと思いますが、その点確認しておきたいと思います。

○片山総務大臣 最初に議員がお触れになった、南三陸町で三百万円では家が建たないという話を聞かれたというのは、それはそのとおりなんです。この制度をつくったときに、三百万円で家が建つという、それに充足する金額だということでこの制度をつくっているわけではないんです。
 鳥取県で独自に住宅再建支援策を取りまとめたときも、三百万円で家が建つわけでは、幾ら田舎でもそれは無理なんです。そこは、よく言われる自助と共助と公助というこの三つの要素があって、自助というのは、高齢者であっても幾ばくかの蓄えがあって、あと年金が入ってくるでしょうということがありますし、それから、その自助の外延としては息子さんなどの支援もあるでしょうということ、それから、何よりも土地はちゃんと使えるということが前提でありました。それからあと、共助というのは、例えば地域社会がそうはいっても比較的守られているということがありました。その上で公助というものを幾らするかというので、三百万円あれば、その自助と共助を足せば何らかの家が建つだろうと、狭いながらもという、こういう発想でありました。決して三百万円で全部事足りるということではなかったんです。
 今回、これを考える場合に、じゃ自助はどうかと、もう全く財産を失ってしまっているというようなこと。それから地域社会がどうか、全部崩壊している地域があるということ。こういうことを踏まえた上で、この既存の制度が妥当するのかどうかという点検をする必要があるんではないかということが、さっきの答弁よりもっと丁寧に言えば、私の考え方はそういうことだということです。これが一つです。
 それから、地域の再興のためには住民参加が必要であるというのは、これはそのとおりだと私は思います。
 実は、鳥取で震災あったときに、神戸の復旧の模様をある程度検証しました。そのときに、自治体が、神戸市が中心になってやったんですけれども、やはり土木部、土木局中心でありまして、そのときに酒田のケースを参考にされているということも私も伺いました。その酒田はやはり土木中心でやったということでありまして、これは、後から続くものとしては少し反省材料といいますか、教訓にしなきゃいけないと思います。
 手続はちゃんとやられているんです。住民の意向を踏まえて、土地計画なりその種の行政手続にはちゃんと住民の意向を踏まえるということで、公告をして、異論がないということでやっているんですけれども、みんな避難所とか散らばっているときに、住民の意向を事実上は酌んでおられません。
 ですから、この度の町の再興にはいろんな困難もあると思いますけれども、できるだけ住民の皆さんの意向が反映するような、そういうことを前提として自治体が中心になってということを私は申し上げたいと思っております。

○山下よしき 大変大事な観点だと思いますので、是非生かしていただきたいと思います。
 もう時間もありませんので、最後に一問だけ。
 今、被災した自治体の行政機能を回復するための支援が非常に大事だと思います。政府としても、三月二十二日通知を出されて、被災地方公共団体に対する人的支援についてと。恐らく被災地以外の自治体から職員の方を被災地の行政機能回復のために派遣するということがこれからやられるんだと思うんですが、その際、現場にいろいろ自治体の労働者の皆さんがもう既に何人か入って、現場の状況を踏まえて私聞いた提言なんですけれども、被災した自治体の地理やその土地の知識がなければ、なかなか被災者に対してきめ細かな配慮ある対応にならないと。
 そこで、一つ提案なんですが、岩手県や宮城県の県内の余り被災をされていない内陸部の市町村から激震地の被災地に職員を派遣すると。そして、全国の自治体から来られた職員は、その県内で派遣された自治体の補完をするために派遣してもらう。そうすることによって、より少しでも地元のことが分かる方が、しかも行政の職員としてのノウハウを持っている方が応援に行けるということで、より効率的で、いきなり他府県から激震地の自治体へ行くよりはそういう少し考え方でやる方が合理的ではないかと思うんですが、これ、いかがでしょうか。

○片山総務大臣 そのとおりだと思います。
 実は、既に総務省で一つの派遣モデルをつくりまして、同じようなことをやっているんです。総務省の出先が、仙台に通信局があったり、行政評価局があります。それから、盛岡には行政評価事務所がありますけれども、そういう総務省の出先機関の職員で、被災した自治体にアポを取って伺って、迷惑掛けないようにお手伝いをする、できることをするという派遣を今しております、二人ずつチームをつくって。そうすると、派遣した元のところの評価局とか評価事務所は、そんなに大勢人数がいるわけでもありませんし、評価事務所の職員は年金の関係に随分取られていまして、なかなか人手が足らないんです。そして、そこで、本省とか他の全国の出先からそこに補充をするということをやっておりまして、今まさに議員がおっしゃったのと同じ発想で今構築しているんです。
 これを、実は昨日各省にも示しまして、総務省はこんなことをやっていますから、各省も同じようなこと考えてくださいということまでやっています。これを是非、岩手県とか宮城県とか福島県とか、そういうところにも考え方としてお伝えをして、その上で全国の応援システムとの間でネットワークをつくればいいのではないかと実は思っているところであります。

○山下よしき 終わります。


ページ最上部へ   トップページへ    
 

 ■山下芳生国会事務所  〒100-8962 東京都千代田区永田町2-1-1 参議院議員会館1123号 TEL:03-6550-1123 FAX:03-6551-1123

 日本共産党 国会議員団近畿ブロック事務所  〒540-0004 大阪府大阪市中央区玉造2-15-7 USビル2階 TEL:06-6764-9111 FAX:06-6764-9115

本サイトへのリンクや、文書・写真などの複製・転載などにつきましては、事前にご連絡をくださるようお願い致します。
Copyright since 2003, Japanese Communist Party. All right reserved.