あったか連帯ウェブ 日本共産党参議院議員山下よしき
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論戦・演説・講演原点山下よしき---「おばあちゃんの二つの教え」、「共産党に入ってよかった事」など、自らの生い立ちや政治家としての原点を熱く語った初期エッセイ集  
 

 

2007年12月12日 参議院・総務委員会

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 初めに、一冊の本を紹介したいと思います。昭和女子大学の竹山昭子先生が一九九四年にお書きになった「戦争と放送」という本であります。この竹山昭子先生は、太平洋戦争のさなかの放送を自分で直接お聞きになった経験がおありです。紹介します。
 太平洋戦争の開戦は女学校に入った年の十二月であった。寒い朝で、私はまだ布団の中にいた。すると、九州から上京し我が家に泊まっていたジャーナリストの叔父が、朝七時のニュースを聞きながら、これは大変なことになったと大きな声を上げた。本八日未明、西太平洋において、アメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れりの大本営発表が響いてきた。このときの驚きはいまだに忘れない。こんなことをして大丈夫だろうかが、そのときの感慨であった。
 そして、先生は終戦の日の玉音放送もお聞きになっています。私は玉音放送を聞き終わると、一人で靖国神社に向かった。そのときの情景は今もまぶたに焼き付いている。社殿の玉砂利にぬかずいていたのは、ほとんどが私と同年齢の勤労動員の生徒たちであった。なぜ靖国神社に足を運んだかの理由は、あなた方の死が無駄になったことへのおわびであった。長兄も祀られていた。私はぬかずいて、申し訳ございませんでしたとつぶやいた。
 こういう体験をされた竹山先生が、その後、戦後、東京放送、TBSにお勤めになった後、教職に就かれて、そのときに書かれたのがこの「戦争と放送」という本です。
 先生は、この本を書かれるに当たって、戦前の放送の実態を示す原典の史料にお当たりになり、また当時の戦前のラジオ放送に直接携わった幾人かの方々の証言を聞いて書かれたと述べられています。
 その先生がいろいろ調べた結果、こういう一節を書かれてあります。一九二五年、大正十四年にラジオ放送を開始して以来、戦前、戦中の我が国のラジオはジャーナリズムではなかった。ジャーナリズム足り得なかったと言えよう。ジャーナリズムの定義を時事的な事実や問題の報道と論評の社会的伝達活動とするならば、戦前、戦中のラジオには報道はあっても論評はなかったからである。報道と論評を車の両輪とするならば、一方の車輪が全く欠落していた。さらにその報道も、放送局独自の取材による報道ではなく、太平洋戦争下では国策通信社である同盟通信からの配信であり、放送は政府、軍部の意思を伝える通路にすぎなかった。大変重い私は史料だなと思いました。
 総務大臣に伺いたいんですが、日本とアジアのあまたの命を奪った戦争という愚かな行為に我が国の放送は深くかかわり、そして人々の考えや心情に強い影響を与えてまいりました。こうした戦前、戦中の放送の痛苦の教訓を踏まえて、一九五〇年に制定された放送法第一条第二項には、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」と明記がされました。この意味は極めて重いと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。

増田寛也総務大臣 お答え申し上げます。
 今、竹山さんという方の御認識といいましょうか、その著作御披瀝ございましたんですが、やはり放送法の中に考え方として、理念として、今お話がございましたとおり、放送の不偏不党ということ、それから、真実そして自律を保障することによって放送による表現の自由を確保すると、こうしたことが一条の二で規定をされているということがございます。
 そして、全体として、この放送法を読んでみますと、放送事業者の自主自律ということを基本としているわけでございまして、私ども、こういった放送法を所管をし、そして放送法を運用していくという中で、今、放送法の中に規定をされてございますそれぞれの考え方、条文というものを十分踏まえて、正に、広く言いますと、放送法の趣旨を十分踏まえて放送行政に取り組んでいく必要があると、こういうふうに考えております。

山下よしき 私は、放送法の、放送の不偏不党というのは、戦前のように国家が放送事業を縛るための手段にするのではなくて、国家や政党などからの介入から放送事業者の表現の自由を守る手段だと、国家を縛る手段として定められたものだと思います。これ本当に、これこそしっかりと堅持されなければならない、未来永劫ですね、放送に携わる者として、そういうものだと考えます。
 そこで、NHKの会長に伺います。
 第二次世界大戦中の日本放送協会の実態が、大政翼賛報道はあっても、論評を放棄した疑似ジャーナリズムに堕落した苦い経験を経て、国民からの負託として放送の自由を与えられたことを忘れてはならないと思います。一九五〇年、放送法が制定され、現在の日本放送協会がつくられました。その最も大事な点は、政府からの独立、放送による表現の自由の保障にあったと思いますけれども、御認識いかがでしょうか。

参考人・橋本元一(NHK会長) 正に民主主義国家として、この放送の役割大きいと思いますし、その中で我々NHKとしても、当然この編集権の自主自律、何者からも、政治だけではございません、いろんな勢力から独立した組織として機能を果たすと、これが基本中の基本だと考えております。

山下よしき NHKの前身に当たる戦前の日本放送協会は、本来は純然たる民間の公共的な事業体でしたけれども、政府の強力な一元的統制の下で事実上の国家管理に組み込まれ、軍国主義的な世論指導の国策宣伝機関となって国営放送の役割を果たしてまいりました。
 先ほど紹介した竹山先生の本の中にも、むしろそういう役割を、積極的に役割に同調していった当時の状況が記されておりまして、日本放送協会の当時の会長、小森七郎さんが、一九四二年、昭和十七年一月一日、聴取者の皆様へと題する放送で、昨年十二月八日、我が国がついに多年の宿敵、米英に対し矛を取って立つに及びまするや、我が放送事業もこれに対応する新たなる体制を取るに至ったのであります。番組内容はことごとく戦争目的の達成に資するがごときもののみといたしました。私ども全国五千の職員はこの重大なる使命に感激しつつ、もって職域奉公の誓いを固くし、全職員一丸となって懸命の努力をいたしておるのでありますと。正に、戦争推進の一翼を自ら担うという宣言までしてしまったわけであります。
 そこで伺いますけれども、公共放送と国営放送の決定的な違いはどこにあるか。私は、言論報道機関、ジャーナリズムとして、先ほどお述べになりましたけれども、政府から自立しているかどうかということだと思います。もう一度、NHK自身の歴史的な教訓も振り返って、御認識を伺いたいと思います。

参考人・橋本 山下委員がおっしゃるとおり、我々、特定のあらゆる勢力から独立しているということがこの公共放送のNHKと国営放送との違いということで、しっかりそこは認識してございます。

山下よしき 是非、それがNHK自身の歴史的な教訓だということもお忘れのないようにお願いしておきたいと思います。
 さて、総務大臣にまた伺いますけれども、国家からの独立、政党等の介入から放送事業者の表現の自由を守る、そういうことで放送法が作られました。その際、NHKを政府ではなくて国民や視聴者の代表が管理監督する組織として経営委員会が設置をされました。これも極めて重要なことではないかと思いますが、この経営委員会が設置された意義について、大臣の認識を伺いたいと思います。

増田総務大臣 NHKについて、やはり民放放送とは異なっておりまして、受信料を財源とする公共放送、しかも全国あまねく放送を行うといった高い公共性が期待されると、そうしたことがございますので、こうしたことの経営をどのようにやはり見ていくかというゆえでは、今お尋ねの経営委員会というもの、しかもその経営委員会を構成する委員については国会の同意ということで大変重たい規定も置いて、そしてそういう経営委員から成る合議体の経営委員会がこのNHKの最高意思決定機関として権限と責任を有すると、このように規定をされたものというふうに受け止めております。
 正に、このことがこういう体制でNHKというものを構成していく、そして経営委員会とそれから執行部とそれぞれがあると、こういうことがNHKとしての公共放送を提供する事業体として適切である、このように考えているわけでございます。

山下よしき 私がお聞きしたいのは、先ほどの戦前の教訓を踏まえて、NHKを政府ではなく国民や視聴者の代表が管理監督する組織とするために、あらしめるために経営委員会が設置された、こういう意義は大事ではないかという御認識、おありでしょうか。

増田総務大臣 もちろん、この経営委員会、国民の代表である国会がこうした経営委員という者一人一人について同意をしていくと、人事について同意をしていくということは、やはりそれだけの一人一人の委員の重みということを考えて、そして当然のことながら政府から独立したそれぞれの見識でNHKというのを見ていくと、こういうことの認識に立っているんだというふうに考えております。

山下よしき 荘宏さんという方がいらっしゃいます。戦後、郵政省電波監理局長として放送法の制定にかかわった方でありまして、この荘宏さんが「放送制度論のために」という著作の中で、戦後の放送法の初志、志をつづったくだりがあります。紹介します。放送法は、独任制の会長を長とする執行機関を設けた、NHKについてですけれども、経営委員会委員の任命だけは内閣総理大臣が両議院の同意を得て行うが、政府がこれらの機関の組織及び運営に関係するのはこの一点のみに限り、その他一切、経営委員会及びその下にあるNHKの機関に一任してある。国は経営委員会委員の任命のみを行い、その他の人事構成、NHK業務方針の決定、人事権に基づく執行機関に対する監督をすべて経営委員会に信託している。NHKはその組織及び人事について非常に強固な自主性、独立性を与えられていることになる。これは、言論報道その他国民の常識を形成する行為を行う機関として、NHKを政府、政党その他各種の団体及び個人の勢力に支配されない中正なものに確保しようとの放送法の考えに基づくと。こうNHKの経営委員会の組織とその選ばれ方について意義付けをされております。
 この経営委員会についての位置付け、今回変えるつもりはございませんね。

増田総務大臣 そうした経営委員会の考え方とこれは当然同じ考え方でございます。

山下よしき 改正案にうたわれている経営委員会の権限強化がこの方向で行われるなら私はいいことだと思います。これまで以上に国民や視聴者の代表がNHKを管理監督することができるようになるのか、さらに、公共放送としての政府からの独立性がより強められることになるのか、こういった観点から経営委員会の改革は行われなければならないと私は考えます。そこで、法案がそのような方向で経営委員会の権限を強化することになるのか、幾つかただしたいと思います。
 まず一つは、法案第二十三条の三で、協会に監査委員会を置くというふうにしてあります。今までと少し変わるようですけれども、なぜこうされるんでしょうか。

政府参考人・小笠原倫明(総務省情報通信政策局長) 今回の法案におきます監査委員会の設置につきましては、これまでの監事に代わるものでございます。そして、監事に代えてその監査委員会を置いた趣旨ということになるかと思いますけれども、監査委員は経営委員により構成されますので、経営委員としての業務執行を通じて得た知見、それを監査に生かすことができることになるというメリットがございます。
 そのほか、今回の法改正に合わせまして、監査委員会が役員の非違行為に差止め請求権を行使できる等の措置も講じているところでございます。

山下よしき 加えて、監査委員は経営委員会の委員の中から経営委員会が任命し、そのうち少なくとも一名以上は常勤としなければならないとありますけれども、これは常勤にするのはなぜでしょうか。

政府参考人・小笠原 監査委員会あるいは監査委員の業務といいますのは、これまでの監事のお仕事に加えて当然行うことになっているわけでございまして、それについては一定の業務量がございます。そして、例えば現在のNHKの監事というのは現時点で二名いらっしゃいますけれども、一名の方は常勤でございます。
 そうしたような事情等も考えて一名以上は常勤とするというような規定を設けさせているところでございます。

山下よしき そのような方向が、私が最初、戦前からの教訓ということに照らして経営委員会の設立がされたという趣旨から見て、今なぜ必要なのかというのがなかなか私にはその面からは理解できないんです。いろいろ資料を読んでおりますと、通信・放送の在り方に関する懇談会、いわゆる松原委員会が去年の六月六日の報告書の中でNHKの抜本改革というものを提案されております。ここに今述べられたような一部委員の常勤化というものも入っておるんですが、この松原委員会の提言を受けての改革というふうに考えていいんでしょうか。

○政府参考人・小笠原 今回の放送法改正の中に盛り込みましたNHKのガバナンス強化ということにつきましては、これまで様々なその議論を踏まえてのことでございまして、先生の今お取り上げになったそういったことも議論のプロセスとして、まあ経過としてそういうことも当然踏まえてなされているということでございます。

山下よしき 松原委員会の議論も踏まえたということでございます。
 それからもう一つ、法案の中で次に聞きたいのは、経営委員会委員の任命要件の地域条件の緩和ということがあります。改正案では経営委員の任命要件である地域条件、これは今までは八つの地域から各一人ずつ経営委員が選ばれるという条件がありましたけれども、これを緩和して、「全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない。」というふうに改めようとされております。具体的な地域区分や選出人数は定められておりません。これは経営委員会が視聴者の利益、意見を代弁する機能を後退させるものではないかと感じるんですが、いかがでしょうか。

政府参考人・小笠原 今回の改正案におきましては、経営委員会の機能の様々な意味での充実ということが行われるわけでございます。そうしますと、経営委員会の委員として適任者を選任するというのは、今までももちろん重要なことですが今後ともより一層重要になると考えております。
 先ほど先生がお取り上げました常勤の経営委員あるいは監査委員となる経営委員につきましては、相当程度の業務量が想定されるところでもございまして、このような経営委員会の委員として適切な方を選任するということに対応するため条件というものを柔軟にしたという、こういう趣旨でございます。

山下よしき 私は、NHKの経営委員の過去二十年間の全委員のリストをいただきました。北海道とか東北とか八つの地域ごとに二十年間だれが経営委員になられてきたかということを全部一覧表に御苦労いただいてしてもらったんですけれども、これを見て非常に驚いたことがあるんです。八つの地域ごとの代表、それぞれあるんです、中には主婦代表という方ももちろん入っているんですが、ところが、関東・甲信越それから東海・北陸、私の地盤でもあります近畿、この三つのエリアはもうほとんど一貫して大企業の代表、財界の代表がそこから選ばれているということになっております。
 八つの地域代表枠があってもこういう大企業の代表がかなり入っておられるということになっているわけですから、その地域枠を外されたらより一層そういうふうに傾斜していくのではないかというおそれを私は抱いておるんですけれども、この経営委員の選任の仕方について、これまでこういうやり方でよかったんだろうか、そして、その枠をなくすことによって、こういう経済界の声が一層強く反映されることになる心配はないのか、いかがでしょうか。

政府参考人・小笠原 経営委員の任命に関する考慮要素といいますのは、放送法の、現行の放送法の十六条におきまして、教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されることを考慮しなければならないという要請がございまして、私ども政府といたしましては、これまでもこういった各分野の、言わばバランスといいますか、そういったことについて、全体として、十二名の経営委員の全体としてこういった分野のバランスということを考慮して選任を行ってきたものでございます。
 そして、先生がおっしゃるいわゆる関東、近畿がちょっとどのようなことであったかというのは、私、今ちょっと手元に持ってはおりませんが、ただ、すべからく産業分野だけから選ばれているということもないかと思います。その関東から続いている地域がすべて経済ということでは必ずしもないかと思いますけれども、いずれにしても我々としては、その十二人の委員全体について、こうした各分野のバランスということが実現されることが必要だというふうに法の要請がありますので、これに基づいて委員の選任を図っているところでございます。
 こうした考え方は、この部分につきましては今回の法改正でも変わるものではございません。また、その地域の配慮につきましても、柔軟にするよう法改正ではなっておりますけれども、その地域の方々を代表する方の経営委員に選任することの重要性といいますのは、我々、今後とも配慮しながら選任を行ってまいりたいと考えております。

山下よしき 私のいただいた資料で関東・甲信越は、ここしばらく、もう十年以上は第一生命、東京海上、富士フイルムなど、一貫して大企業の代表になっております。その前は何人か朝日新聞の方とかありましたけど、だからやっぱりそういうことになっている。
 それから、何を言いたいかといいますと、やっぱり何のための経営委員会の改革なのかということがぶれているんじゃないかと。私は、最初に申し上げた国民の代表が管理し監督すると、そして権力からの独立、ここに一番、経営委員会の存在意義があったと思うんですが、その大事な方向が今回の改革では見えてこない、むしろ見えてくるのは松原委員会が言っているような方向なんです。
 松原委員会の趣旨は、やっぱり放送の中にも競争力の強化というものを持ち込もうということが一つの大きな柱になっておりますし、NHKの改革についても、NHKのチャンネルを削減して民間に開放すべきだとか、そういう流れの中で経営委員会の改革が提案されております。松原委員会の改革の提案の中には、一般の株式会社の取締役会と執行役会の関係にNHKの経営委員会と理事会の関係を近づけるんだというふうになっておりまして、これではそもそも公共放送であるNHKを国民・視聴者の代表が管理監督する組織として経営委員会を設置したという面が大きく後退して、企業経営のガバナンスを行う組織として経営委員会が変質されるのではないか、そういう心配が大いにあるということを申し上げて、質問を終わります。

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