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任期付き職員制度は見直しを--参院総務委質疑【会議録】

2010年11月11日

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 全国の自治体で約五十万人の臨時・非常勤職員が働いております。これは一週間に二十時間以上働いている職員に限定した数で、実際はもっと多いと思います。自治体職員の二割から三割近くが非正規職員だと思われます。
 こうした事態の背景には、集中改革プランを始め総務省が厳しい数値目標を一律に設定して行革の実施を迫り、正規職員が削減される一方で、行政需要が増大あるいは多様化するのに対応して臨時・非常勤職員が急速に拡大してきたということがあると思います。その結果、今や臨時・非常勤職員は補助的、一時的な業務ではなくて基幹的、恒常的な業務を担っているというのが実態だと思います。
 片山総務大臣は、臨時・非常勤職員など自治体の中で非正規職員が増えていく現状を好ましいと思われますか。私は公務の継続性、安定性、公平性ということからいっても、本来、公務というのは任期のない常勤職員で運営するというのが基本であるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

片山善博総務大臣 基本的認識は今、山下議員がおっしゃったことと私は全く同じであります。

山下よしき その基本的認識、大事だと思うんですね。
 保育所の現場を訪ねますと、非正規職員が半分以上という自治体も少なくありません。正規職員と同じ保育士の資格を持って、同じように担任を持って、同じように保護者への対応もしている臨時・非常勤の保育士が年収二百万円以下のワーキングプア状態に置かれて、私が直接話を聞いた方は生活のために夜、保育士の仕事が終わった後コンビニでダブルワークしていると、こういう方まであります。しかし、この方々の話を聞くと、低い賃金しかもらっていないからといっていいかげんな保育はできない、子供たちには全力で向き合おうとお互いに話し合っているということでありました。私は、身分は臨時・非常勤だけれども志はプロフェッショナルだと感じた次第であります。
 二年前に、当時の増田総務大臣にこういうことを紹介して、仕事の中身が同じならお金も権利も同じでなければならないんではないか、公務の職場でこんな差別があっていいのかと、こう質問をいたしましたら、増田大臣は業務が同じなのに待遇に違いがあってはいけないと答弁をされました。
 ただ、その後の経過を見ますと、非正規職員の待遇改善、正職員化を進めるのではなくて、総務省が音頭を取って任期付職員あるいは任期付短時間職員に置き換えていくことが広がりつつあります。そこでどんな問題が起きているか。各自治体で非常勤職員を雇い止めにして、任期付職員に置き換えることが進んでおります。公募、競争試験による任期付職員の任用が行われて、十年、二十年と任用を継続してきた経験豊かな非常勤職員が職を失う事態になっております。
 例えば、大阪市の非常勤保育士は、突然の試験でふるいに掛けられ不安でいっぱいだ、子供と共に過ごせる保育士の仕事が大好きだ、これからも大阪市で働き続けたいとか、私たちは使い捨てカイロじゃないという悲痛な声を上げておられます。また、大阪茨木市では現役のベテラン学童保育指導員が十六人も任期付きの試験に不合格となりました。元いた指導員がゼロになった学童保育所がそのために五つも生まれ、子供たちへの影響も大きくなる事態となっております。学童保育指導員からは、今の子供たちや次年度入ってくる子供たちのことを考えると辞めたくない、悔しいという怒りの声が寄せられております。
 これは任期付職員制度の導入時だけの問題ではないと思います。保育所や学童保育所は恒常的に業務が継続しておりますけれども、任期付職員は三年しか働けません。せっかく築いた父母と子供との信頼関係も途中で断ち切られてしまう、そしてその先の自分の将来の生活設計も見通しもなくなってしまう。これは労働者のモチベーションを下げ、ひいては住民や子供たちへのサービスの質の低下をもたらす大きな問題があると思いますが、総務大臣の認識を伺いたいと思います。

片山総務大臣 私も、今議員がおっしゃったのは大阪の方の事例だと思いますが、別の地域で似たような事例を聞いたことがありまして、非常に憂慮しております。
 いずれも、非常勤の時代も、それから任期付きに移行する場合も、本来のそれぞれの非常勤として非常勤職がする仕事にふさわしいのかどうか、それから、任期付きの職員が従事するのにふさわしい仕事なのかどうかという吟味がよくできていないんではないかと思います。
 非常勤にしても任期付きにしても、それぞれ役割といいますか意義があるわけでありまして、非常勤の場合ですと、それは恒常的な事務でないとか臨時的、まさに臨時的、臨時職員の場合は臨時で期間を限定とかということなんですけれども、それが恒常化して何年も続くところに臨時や非常勤が当たる、正規職員の代わりとして当たるというのは、やっぱりこれは本来の姿ではないと思います。任期付きもそういう本来の役割ではないような使い方がされているというのは、やっぱりこれは見直す必要があるだろうと私は思います。
 いずれにしても、こういう非常勤とか任期付きというものを単に賃金の単価を削るための便法として使うということは、これはやはり本来の在り方ではないと私も思います。
 今おっしゃった非常勤から任期付きになるというのは、多分いろんな批判にこたえて善かれと思ってやっている面もあるんだろうと思います。今までの一年単位を数年に変えるんだから、身分保障が少なくとも数倍になるじゃないかということがあるんだろうと思いますけれども、実態としては、非常勤というのはどこでもそうなんですけど、一年限りとなっているけれどもずうっと続いているという人は慣例的にありました。
 じゃ、そういう方に戻すのがいいのかというと、これはまた議論のあるところでありまして、さっき言いましたように、本来のやっぱり職務に見合った職員の処遇というものをきちっと考えていただくということがこれは必要だろうと私は思います。

山下よしき 非常に大事な御答弁だったと思います。
 私は、恒常的に継続する業務を三年、五年の任期で区切る、ここに一番本質的な問題があると思います。その矛盾が一番激しく表れているのが生活保護行政ではないかと感じているんです。
 大阪市などでは多くの生活保護ケースワーカーが任期付職員として任用されております。しかし、もう御存じのように、生活保護のケースワーカーというのは、窓口に住民の方が相談に来られる、その方に制度を丁寧に説明する。そして、その制度は憲法二十五条に基づいた、利用するのは権利であるということもちゃんと理解していただく。そして、例えばもう行き倒れ同然で来る方もあります。緊急の治療が必要な方もあります。そういう場合には地域の医療機関と連携してすぐ措置をしてもらうような、そういうネットワークも持っていなければできない仕事です。そして、保護を受けている方々の各世帯を訪問して、世帯全員の顔と名前を覚えることによって信頼してもらって自立促進をする。こういう仕事をケースワーカーとしてやろうと思えば、経験と知識の蓄積というのが一定期間、絶対必要です。これどうしても三年の任期付職員では対応できないと思います。
 実際、この間、そういうことがメディアでも問題視されておりまして、四月二十一日付けの朝日新聞、「広がる非正規職員雇用」、「福祉の窓口「質保てない」」という特集で、生活保護世帯が全国最多の大阪市、昨年まで約二年半、任期付ケースワーカーを務めた女性四十一歳は、自分自身の先行きが見えないのに他人の支援なんて難しかったと振り返る。乳幼児を抱えた母子世帯、うつや依存症、認知症の高齢者、根気よく相手に向き合い、適切に助言する力量が必要で、医療や介護などの制度も熟知していなければならない。思うような援助ができずに焦りが募った。三年目には、自分の次の就職先も気に掛かるようになった。不眠になり、任期途中で退職した。こういう声が紹介されております。
 大阪市で長年ケースワーカーを務められたベテランの方は、十年ぐらい経験を積んで一人前、三年限定では援助する力が育たないと指摘されておられますけれども、私は是非、こういう事態が起こっているわけですから、任期付職員が広がりつつある下で、自治体の現場でどんな問題が職員にとっても住民にとっても起こっているのか、やはり総務省として一度しっかり調査、把握する必要があるんではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

片山総務大臣 任期付職員というのは、さっきも言いましたけど、数年でこの業務が終わる、そのために専門的知見を持った人をその期間働いてもらうという、そういうケースが多分典型的な予想されるケースだろうと思うんですが、例えばケースワーカーの場合にそれに該当するかというと、皆無とは言いませんけど、余りないのではないかと、私も現場の経験ありますので、思います。おっしゃったとおり、ケースワーカーにしてもそうですし、それから学校の教員にしてもそうですし、図書館の司書にしてもそうですけれども、やはり経験を積んでそれなりに仕事が熟度を増してくるということだろうと私も思いますから、基本的な認識は議員と変わらないと思います。
 そこで、どういう実態になっているかということ、今すぐどういうことをできるかということはちょっと今お答えできませんけれども、こういうこの種の問題に強い関心を持っているということを取りあえず申し上げておきます。

山下よしき 是非、関心を持って調査もしていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 次に、国、自治体の業務委託を受注した企業における労働者の劣悪な労働条件、低賃金について質問をいたします。
 中央官庁の合同庁舎を管理する業務は、市場化テストの手法で民間の管理会社が、警備、清掃、設備の業務委託を競争入札で受注しています。競争入札による業務委託の下で、安ければ安いほど良いという異常な実態が生まれておりまして、警備員を始め労働者の賃金は低下するばかりであります。また、自治体においても、例えば大阪市の地下鉄清掃業務を受注している会社で働く男性は、余りに低い賃金で月収が生活保護基準額を下回り、生活保護の一部受給が認められました。
 国や自治体の業務委託が競争入札によって行われ、受注金額がダンピングされ、受注企業の労働者がまともに生活できない低賃金で働かされている。こうした現状を放置していいのかと。私は、社会保険の加入、労働基準法の遵守など、国や自治体は、公共サービスの提供者、業務委託の発注者として責任を果たす必要があると思います。総務大臣、国としてこれも実態をつかんでいるのか、そして、やはり国としての公契約法の制定、あるいはILO九十四号条約、公契約における労働条項に関する条約の批准を検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

片山総務大臣 自治体で今、自治体の話も一部ありましたけれども、自治体で今おっしゃったようなことが懸念されているという声は私もよく耳にします。特に、指定管理者制度が導入されて以来、競争入札によって外部化するということが随分盛んになってきました。本来はこの指定管理者制度といいますのは、公務員だけ、役所だけでやっている仕事がとかくお役所仕事になりがちなので、そこに民間の活力と知恵と創意工夫を入れて行政サービスの質を上げようというのが目的だったわけですけれども、結果的にはその面よりも競争性を導入することによってコストを下げるということの、そのツールとして使われていることが多い、その結果、今おっしゃったような問題が出てきているのではないかと思います。
 例えば私の経験でいいますと、発注するときに、発注者側でどういう賃金体系にするのかということには関心を持って、募集するときの条件にしたりもしておりました。ですから、そういうことで劣悪なワーキングプアを生まないという工夫はそれぞれの管理者の段階でできるんだろうと思います。それが一つです。
 それからもう一つは、指定管理者制度というものが、従来ともすれば、そういうふうに安かろう悪かろう、単価を切り下げるツールとして使われていたという実態がこれありますから、そうではないんですよ、これはあくまでも行政サービスの質を向上させるための手段なんですよということを改めて自治体の皆さんに認識していただくように、何らかの当方の意思を伝達したいと思っているところであります。

山下よしき 時間が来たので終わります。

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