あったか連帯ウェブ 日本共産党参議院議員山下よしき
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《録》放送への政治介入について─NHK「シリーズJAPANデビュー”アジアの一等国”」、ETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか”問われる戦時性暴力”」

2009年07月16日

2009年6月25日 参院決算委員会

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 私も、四月五日放送されたNHK、「シリーズJAPANデビュー アジアの一等国」を見ました。世耕委員と違ってリアルタイムでは見れませんでしたので、昨日の夜、録画放送を見させていただきました。一時間十分でした。日清戦争後日本が行った五十年間に及ぶ台湾の植民地支配、統治の実態を、当時の貴重な映像や台湾総督府文書などの史料を基に、また台湾人元日本兵などの証言も盛り込みながらリアルに描いた番組でした。先入観なしに見ましたけれども、非常にいい番組だったと私は感じました。登場する現在の台湾の人たちの表情を見ておりますと、親日的と言われる台湾の人々の心の奥底にある複雑な思いが伝わってまいりました。

 私たちは過去を変えることはできません。しかし、歴史を直視すること、互いに歴史を共有すること、反省すべきは反省し共に生きることはできる、それでこそ相互理解とより深い友好関係が構築できると私は番組を見て感じさせられました。番組制作スタッフの皆さんに感謝を申し上げたいと思います。

 そこで、NHKに対する反響も大変多いと思います。先ほど福地会長は、多数の意見が来ている、高い評価のある一方、批判的な意見もあるとして、批判的な意見だけ先ほど紹介されましたけれども、高い評価の声はどのようなものが来ているんでしょうか。


○福地茂雄NHK会長 この番組でございますけれども、台湾が親日的であるという前提、この事実は多くの日本人の皆様が承知していることでございますが、この番組でもその点は伝えておりました。

 それから、いろんな中で、日本が台湾でなしたいいことが述べられてないという御意見ございまして、私も何度か見直してみまして、ちょうど樟脳産業を後藤さんが立て直したこと、それから台湾縦貫の南北縦貫鉄道を日本が造ったこと、それからキールン港でございますか、港湾の設備といいますかあれに尽力があったこと。それから、この樟脳産業を立て直したことについてイギリスが非常に高く評価をしている、そういったことの中でイギリス、フランスに高い評価を得たというふうなことも触れられておりましたし、それから台湾総督府が欧米向けに出版しました「台湾十年間之進歩」というのがございますが、これを紹介をしまして、台湾の歳入とか内地貿易の金額が非常に増えたということも示しておりました。

 ただ、この番組は、確かに台湾の今日の隆盛に結び付くようなインフラの投資を当時の日本がしたわけでございますが、その点は評価された一方で、この番組の軸足が、このタイトルがそうでございますが、日本がアジアの一等国になる、そのためには、あのままでおったら日本が逆に植民地になっていたかも分からない、そのときに、ちょうど日清戦争のああいうふうなことで台湾の割譲を得た、そこで、日本が台湾の植民地化に対して大きな大きな成果を上げて、評価をされて一等国の仲間入りをしたんですけれども、一方で、植民地は植民地だということで、その植民地の痛みというものがあそこで柯さんの言葉の中にも出てきたと。そういった一面をあの番組は表現しているというふうに私自体もあれを見ておりまして感じました。

 それから、いろんな御指摘がございました。一方的な、恣意的な編集がなされているのではないかというような御指摘もございました。私も前職時代から、前職時代は報道、そういったものを受ける立場にございまして、私が一番やっぱり嫌でしたのは、都合のいいところだけを取られるということが前職時代も一番私にとって嫌なことでございまして、これについても当時のディレクターを呼びました。そういった、要するに都合のいいところだけを取っていることは絶対ないなというふうなことを確認もいたしましたし、私もそういったものを自分の目で検証いたしまして、そういった恣意的な編集はなかったというふうに私自身も実は感じ取ったわけでございます。

 こういった台湾が親日的であるということを前提に、たくさんのこれは台湾総督府のときの数万冊に上る史料からも検証しているわけでございますが、新たな理解を深めていくということについては、これから先の両国の関係にとっても、やっぱり両方の関係にとってもプラスになるんじゃないかというふうに認識をいたしております。

 以上でございます。


○山下よしき 今、福地会長自身の評価が語られました。

 それから、番組に寄せられた好意的意見は紹介ありませんでしたけど、ホームページに載っております。こうした歴史を知ってこそ台湾の人々とより良い関係を築いていける、あるいは、証言を聞いて台湾の人たちがより深い意味で親日家であったことがよく分かった、まさに相互理解をより前進させることに資する番組であるという評価も随分来ているんだなと思います。

 ところが、NHK、「シリーズJAPANデビュー 第一回アジアの一等国」の内容が反日的だなどとして、自民党の国会議員有志でつくる公共放送のあり方について考える議員の会が六月十一日に発足をいたしました。また、自民党の議員連盟、日本の前途と歴史教育を考える議員の会がNHKに対して質問状を出しております。それに対するNHKの回答と再質問、さらに、それに対する再回答を全部読みましたけれども、私はこれを読んで、その質問されている側の中身は、例えば再放送やDVD化に当たっては、ここは削るつもりがあるかないかというようなことがずらっと並んでいるんですね。これは事実上、番組編集の自由、放送の自主自律に関する介入だと、私はこの内容を読んで感じた次第です。

 NHKとして、こうした政治からの圧力にどのような姿勢で臨まれるんでしょうか、福地会長の意見を伺います。


○福地NHK会長 公開質問状には文書で誠実にお答えをしております。

 この番組で申し上げますと、放送内容が放送法に基づく番組基準に適合しているかどうかのチェックにおきまして、企画段階から取材、制作、放送に至るまで、様々な過程で複数の者によりまして多角的に行っております。また、放送の前にも、放送部門とは独立いたしました考査室が番組考査を実施をしております。放送後には番組審議会、この意見をNHKは大変尊重しなければならない義務がございまして、中央番組審議会には毎月私も出席をいたしておりますが、そこでは肯定的な御意見をいただきました。番組内容に偏向はなくて、事実関係や用語に間違いはないと認識をいたしております。先ほど申し上げましたけれども、台湾の方々へのインタビューにつきましても、不適切な編集はなかったというふうに私も信じております。

 以上でございます。


○山下よしき 私は、全体としては今NHKの取っている態度は立派だと思います。政治介入を許さない作り手の毅然とした態度こそ質の高い放送番組の土台になると感じております。

 NHK執行部の毅然とした姿勢が大事だと、その点について、会長、もう一度、毅然とした姿勢が大事なんだということ、どうですか。


○福地NHK会長 NHKは放送法に基づきまして国内番組基準を策定いたしまして、その中でも、全国民の基盤に立つ公共放送の機関として、何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を確保すること、こういったことを明記しております。NHKの自主自律、不偏不党、公平公正の原則こそが、国民の皆様、視聴者の皆様に信頼される公共放送の生命線である、ゆるがせにしてはならないというものと信じております。

 私は、いろんなこのNHKの中の場におきまして、編集権の自律という権利は、ジャーナリストとしての権利は、一方で不偏不党、公平公正という義務で担保しなければならないということで、この路線を絶えず検証しているつもりでございます。

 以上でございます。


○山下よしき そこで、次に、BPOの放送倫理検証委員会が四月二十八日に、NHKの番組、ETV二〇〇一「問われる戦時性暴力」に関する意見書を発表した問題について少し質問をしたいと思います。

 このBPOの意見書を私も全文熟読をいたしました。これも非常に味わい深い内容でした。本文二十九ページ、資料二十ページから成るものですけれども、最高裁の判決が法律論からNHKの番組改変問題を吟味したのとは違って、放送人の倫理観はどうあるべきか、それが放送の質にどうかかわるか、政治と放送の関係はどうあるべきかという角度から論じられておりました。

 委員会として、NHK、ETV二〇〇一「シリーズ戦争をどう裁くか」の全四回の放送を委員みんなで視聴し、その上で、意欲的な問題提起と企画意図を積極的に評価した上で、問題のいわゆる従軍慰安婦を扱った第二回「問われる戦時性暴力」だけが不自然な編集の仕方、散漫な番組になっていることを指摘しております。そして、その背景に政治家とNHK幹部の接触があったことを重視しております。

 私は、放送と民主主義の関係、あるいは歴史発展とのかかわりをも深く考えさせてくれる優れた意見書だと、これは放送関係者だけではなくて広く国民に読んでほしいものだというふうに感じました。これはまたBPO委員会の皆さんに感謝を申し上げたいと思っております。

 そこで、このBPOの意見書で、私はNHKに対して三点、問題提起がされたと思っております。

 第一は、BPOは、NHK番組制作部門のトップである松尾武放送総局長(当時)らが国会対策担当の野島直樹総合企画室担当局長(当時)とともに放送前後に与党政治家を訪ね、番組内容を説明したことについて、面談自体が視聴者がNHKに寄せる自主自律への期待と信頼に対する疑念を起こさせると指摘していること。

 それから二つ目に、放送日前日、番組の試写に立ち会った野島担当局長が番組内容を修正、削除する方針を番組制作者らに指示したことも批判をして、乱暴で性急、放送人の倫理として当然目指すべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにするものとしております。

 そして三つ目に、番組の公平、公正、中立性は、NHKが考えるような特定の意見を機械的に排除したり単純に並立させることによって実現されるものではないとも指摘しております。

 これ非常に三点大事な指摘だと思いますが、NHKとしてこのBPOの指摘、三つのポイントをどう受け止めておられますか。


○福地NHK会長 まず明確に申し上げておきたいのは、政治的な圧力で番組が改編されたという事実はございません。

 安倍氏につきましては、当時女性法廷を四夜連続でドキュメンタリーとして放送するという誤ったうわさが国会議員の間に流れていたことから、総合企画室の担当局長が、安倍氏ら国会議員への予算説明の際に、放送総局長を伴ってうわさが間違っていることを説明いたしました。安倍氏に会う前と後の編集方針に全く変更はなく、安倍氏の政治的圧力で番組が改編されたという事実はないと確信をいたしております。

 最高裁の判決におきましても、このBPOの放送倫理検証委員会の意見においても、政治家が番組の改編にかかわったという認定はなされておりません。この番組は、NHKが自律した立場で自らの編集判断に基づいて制作したものでございまして、政治的圧力を受けて内容を改編したり、国会議員の皆様の意図をそんたくして内容を改編したりした事実はございません。この点は改めて確認をさせていただきたいと思います。

 ただ、今回のこのBPOの委員会の意見の中で、番組の放送前に当時の放送総局長が政治家に面談したり、また総合企画室の担当局長が試写や編集作業に立ち会ったりしたことにつきましては、自主自律を危うくし、視聴者に重大な疑念を抱かせる行為であったというふうに指摘をされております。これについては私どもも、誤解を受けないように、李下に冠を正さずじゃございませんが、真摯に受け止めてまいりたい、かように思っております。

 以上でございます。


○山下よしき そうお答えになるだろうなと思っておりました。

 ただ、最高裁の判決は取材を受けた方々の期待権に対しての判断でありまして、どういうそこに至る経過があったのかという事実認定は高裁判決を踏襲しております。そこでどういうことがあったのかということが問題なんです。だから、安倍氏がかかわってないという判決はしてないんです、最高裁では。そこには触れてないんです。

 そこで、高裁では、これ判決文を持ってまいりましたけど、もう全部読んだら時間ないんですが、事実経過として、二〇〇一年一月二十九日午後、つまり放送前日ですね、首相官邸内にある官房副長官室において松尾放送総局長と野島国会担当局長が安倍官房副長官と面会し、その際、野島氏がNHK新年度の予算について一般的な説明をした後、松尾氏が本件番組について説明をしたと。安倍官房副長官は松尾氏らに対し、いわゆる従軍慰安婦問題について持論を展開した後、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘したわけですね。どういう持論をどういうふうに展開されたかはここでは分かりません、ここでは。しかし、そういうことがあったと。

 それが二十九日の午後あって、二十九日の夕方、NHKの番組制作局長室において、松尾氏それから伊東番組制作局長、野島氏、永田プロデューサーなどが立ち会って本件番組の試写が行われました。これまで何回も試写はやっていたんですよ。そもそも放送前日にこれほどまた試写がやられること自体がおかしいんですね。そして、この前日の異例の試写直後に野島氏が、これでは全然駄目だと発言した後、プロデューサーらを締め出して四人だけで話し合って四点修正することを決めて指示したと。プロデューサーらが難色を示したところ、野島氏は、毒を食らわば皿までだと述べて指示を維持したと。

 翌三十日、今度は放送当日ですけれども、伊東番組制作局長が自民党は甘くなかったわよと発言して、元兵士と元慰安婦女性二人の証言シーンを三分削除することを指示したわけですね。これで番組の全体の長さが四分間縮まったという非常に不自然な放送になっちゃったわけです。

 私はこれを、この事実をもって政治家の改変はなかった、介入はなかったなどということを言い張ることが不自然だというふうに思います。ですから、今ここで言っちゃうと、安倍氏がそういうことをやったということをNHKが認めることになりますから、なかなか言いにくいのは分かります。しかし、しかしこの事実は消せないです。裁判でもこれは認定されました。

 それに対して国民は、ちゃんと放送の自主自律、編集の自由を守ってほしいと、その守れなかったことは残念だけども、四回のETVシリーズの中で二回目だけが大変不自然な番組になっちゃっているというふうに、BPOは四回全部見た上で意見を言っているんですね。非常にこれは、放送関係者が自主的に検証するBPOの委員会として、私は真っ当な良識のある検証の仕方であり、意見の発表と内容だったと思います。

 これ、やっぱり真摯に受け止めないと。これを真摯に受け止めるかどうかは、現瞬間問われているんですよ。現瞬間「JAPANデビュー」が政治の圧力にさらされているんですね。そのときにこれにどう立ち向かえる、過去をどうやって、この教訓を生かすのかということが今まさにNHKに問われている。そういう立場からBPOの意見書をしっかり受け止める必要があると思いますが、最後に会長の意見を伺いたいと思います。


○福地NHK会長 何度も申し上げますけれども、私どもにつきましては、先般でも明言いたしましたとおり、番組の内容につきまして事前に政治家の皆様に番組の制作担当者が説明することは、私はなかったというふうに確信いたしておりますし、少なくともこれから先は絶対にないということをお話を申し上げます。

 以上です。


○山下よしき 終わります。

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