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兵庫県立こども病院のポートアイランド移転問題で小宮山厚労相に質問

2012年08月20日

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 お盆休みも終わり今日から国会。さっそく行政監視委員会で兵庫県立こども病院をポートアイランドに移転する問題について質問。いい論戦ができたと思います。

photo 兵庫県立こども病院は1970年、全国2番目にできた小児専門病院。重い病気を抱える子どもと家族にとってかけがえのない存在です。

 そのこども病院が、老朽化、狭隘化に伴って「建て替え」が必要となり、兵庫県は、現在こども病院がある神戸市須磨区の高台から、海の中の人工島・ポートアイランドに「移転」する計画を推進しようとしています。しかし、「ポートアイランドへの移転」には兵庫県医師会はじめ医療関係団体がこぞって反対しているのです。

 委員会では「私たちは兵庫県立こども病院の神戸ポートアイランドへの移転に反対します」と書かれた2回の意見広告(4月、6月)を資料配布しました。そこには兵庫県医師会・兵庫県歯科医師会・兵庫県薬剤師会・兵庫県看護協会、神戸市医師会・神戸市産婦人科医会・神戸市小児科医会、さらに神戸市地域医療推進協議会(医師会などともにNPO神戸市難病団体連絡協議会・神戸市重度心身障害児(者)父母の会などで構成される協議会)の名前が並んでいます。

 県立病院の移転に県の医療関係団体がこぞって反対するなど聞いたことがありません。

 医師会などが反対するのはなぜか。最大の理由は、災害など緊急時に最も機能を発揮しなければならない高度医療機関を、災害に弱い人工島に移転することです。あまりにもリスクが大きいのです。

 17年前の阪神・淡路大震災で、ポートアイランドがどういう状態になったか。約50センチの地盤沈下と液状化現象による泥水の湧出が各所で起こり、道路は25カ所でクラックなどの損傷が生じました。さらに、陸地とポートアイランドを結ぶ唯一の道路橋・神戸大橋は内陸部の取り付け部分が損壊し「緊急車両のみ通行可」などの交通規制がかけられました。新交通システム・ポートライナーは橋げた落下、橋脚傾斜により不通になりました。

 じつは、ポートアイランドにある神戸市立中央市民病院が「大震災を体験した市民病院からの報告」(1995年7月)をまとめています。そこには病院が埋め立てによって造られた人工島にあったことによる特別の困難が報告されています。

 ひとつは「ライフラインの途絶」。「特に1か月余に及ぶ断水の影響は甚大であった」「当院では平常時1日700t〜900tの上水を使用しているが、水道局や自衛隊の給水車による供給は、当初1日20tで絶対的に不足状態であった」とあります。断水は人工呼吸器や消毒装置の使用不能などをもたらしました。

 もうひとつは「病院への交通の遮断」。震災当日、「来院した患者のほとんどはポートアイランドの住民であり、軽症の外傷患者が多かった」とあります。また「いち早く病院に駆けつけてきた島内に住む若手医師」「一部職員は、神戸大橋の通行規制にあって当院への出務を断念」とあります。要するに、患者も、職員も、島外から病院へ行くことが困難となったのです。さらに「制約はありながらも病院機能が維持できた段階において、患者の来院を妨げた当院へのアクセスの悪さは、病院機能の有効利用を妨げる極めて大きな要因となった」と報告されています。

 当時の病院長は、「神戸市立中央市民病院は、神戸市の基幹病院として、また、救命救急センターとして大きな役割をもっていますが、今回の震災に際し、ライフラインと交通、情報、通信の寸断の中で、十分にその役割を果たすことはできませんでした」と述べています。じくじたる思いだったでしょう。

 そういう場所に県立こども病院を移転させることに医療関係団体がこぞって反対するのは当然です。

 兵庫県選出の辻厚労副大臣に見解を求めると、「県が総合的に勘案して決めた。防災面は対策がとられる」と兵庫県とまったく同じ立場の答弁。がっかりです。

 「対策をとる」といいますが、医師会の先生方は「対策をとらなければダメなリスクの高い場所になぜわざわざ移転するのか」と批判しているのです。

 そのポートアイランドにこども病院を移転させたらどんなリスクが予想されるか。兵庫県産科婦人科学会会長と兵庫県小児科医会会長が連名で「県立こども病院のポートアイランド第二期用地への建替移転についての反対声明」を出しています。

 そこには「県立こども病院は県内最大かつ唯一の小児・周産期専門施設。建設用地には盤石の立地場所を選択しなければならないことは自明の理。大災害時に県立こども病院の救急医療機能が制限されることは、まさに県の小児・周産期救急医療の破綻を意味する」

 「県立こども病院においては院内に常時40〜50名の人工呼吸器装着患者を収容している。大災害発生時にこれらの重症患者に対して安心・安全な医療を長期・安定的に施すことは極めて困難。県の兵庫県地域医療再生計画にはこの視点が全く欠落していると言わざるを得ない」とあります。

 子どもたちの命を守る最前線で活動されている両会長の指摘は非常に重い。

 小宮山厚労相は「指摘は重要。対応が必要」と答弁しましたが、ポートアイランドという場所では「対応」できないことは明らかです。

 患者と家族の声も紹介しました。全国心臓病の子どもを守る会・兵庫県支部のみなさんの意見です。

 「心疾患のため小児救急医療センターでしょっちゅうお世話になっており、近くに引っ越し、学校を決め、住居も構えたのに、ポートアイランドに移転してしまったら、かなり離れてしまうので、それだけで救命の可能性は低くなり、非常に不安である」

 「バスや電車などは不特定多数の人が乗るため感染症のリスクが高く、月2〜3回の受診をほとんどタクシーで通っているので、ポートアイランドに移転してしまったら、経済的負担が大変大きくなってしまう」

 「入院中、自宅と病院やファミリーハウスの間を、生活に必要な荷物を運ぶために頻繁に行き来することが多く、ポートアイランドに移転してしまったら、それも容易には行えず、非常に不便になる」

 子ども病院は心臓病など重い病をもつ子どもたちにとって通院や入院で頻繁に利用しなければならない「命の砦」なのです。災害に弱い遠くのポートアイランドでなく、すぐ行ける場所にあってほしいーーこれが子どもと家族の願いです。

 加えて、東日本大震災の教訓、津波被害の教訓も踏まえる必要があります。
 
 中央防災会議の「南海トラフ巨大地震対策について(中間報告)」(7月19日)では、医療機関の津波対策についてどのように述べているか、防災担当相に質問。

 中川防災担当相は、「『発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波』により重大な被害が発生することは少なくとも回避すべき。このため、これらの建物の耐浪化等を推進するとともに、これらの施設を浸水の危険性の低い場所に立地するような配置の見直しなど、地域の実情等を踏まえた津波対策を講じることが必要」と明記されたと答弁しました。

 大事な指摘です。実際、東日本大震災では、津波被害で沿岸部の拠点病院が軒並み機能しなかった一方で、高台に位置していた日赤病院が非常に大きな役割を果たしました。
 
 そこで厚労相に、一般論として聞くが、災害時に拠点となる高度医療機関の新設・建て替えに際しては、中央防災会議の「中間報告」の指摘を踏まえる必要があるのではないか、と質問。

 小宮山厚労相は、「おっしゃるとおり。拠点病院の移転に際しては中間報告を踏まえる必要がある」と答弁しました。重要な答弁です。

 兵庫県、神戸市も南海トラフ巨大地震に備える必要がある地域です。兵庫県は、想定する津波高を2倍に引き上げ、浸水する区域をシミュレーションした結果を3月に発表しました。そこでは「人工島のポートアイランドは進入口などが漬かって道路が途絶し、孤立状態になる可能性がある」とされています。「想定津波高を2倍に引き上げた」という兵庫県のシミュレーション自体「甘い」という指摘もあるのですが、それでもポートアイランドは「孤立する」とされているのです。

 そういう場所にこども病院を移転していいのか!?高台から「浸水の危険性の高い」場所に「配置を見直す」など、中央防災会議の提起に対する「逆行」そのものではないか!

 じつは、兵庫県立こども病院の移転・建て替え計画には厚労省の「地域医療再生基金・交付金」が利用されることになっています。しかし、医師会はじめ地元の医療関係団体がこぞって反対している計画を強行して果たして「地域医療再生」に資するのか?私は厚労相に、計画の再検討が必要ではないかと迫りました。

 小宮山厚労相は、「厚労省としても、基金も使われたり、バックアップしていくので、ご指摘の懸念が生じないよう目配りしていきたい」と答弁。

 「目配り」だけでは足りません。私は、
 @医師会はじめ地元医療関係団体がこぞって反対している計画を強行すれば、安心・安全な地域医療構築にあらたな障害をつくる。
 A県立こども病院のポートアイランドへの移転も含む「兵庫県地域医療再生計画」(昨年11月)がつくられた後で、中央防災会議の「中間報告」(7月)が出た。事態は変わった。
 Bポートアイランドへの移転・建て替えの「設計」も「用地取得」もまだ済んでいない。
 ことを挙げ、このまま移転計画を進めて取り返しのつかない事態を招いてはならない。それが政治の責任だ。厚労省として主導的に調査し、計画の見直しも検討すべきではないかと再度答弁を求めました。

 小宮山厚労相は、「ご懸念がないよう検討させていただきます」と答弁しました。

 委員会室では他党の議員のみなさんも「これはおかしい」と応援してくれました。それほどポートアイランドへの移転には道理がないということでしょう。

 委員会終了後、小宮山厚労相がわざわざ私のところに駆け寄ってきて、「以前から聞いている件なのでしっかりチェックしたいと思います」と言いました。珍しいことです。その場で秘書官に指示も出していました。

 ことは子どもたちの命がかかった問題。医師会はじめ医療関係団体、患者と家族のみなさんの心配が解消されるよう、こども病院のポートアイランドへの移転計画の見直しにむけて引き続きがんばりたいと思います。

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